パーソナライゼーション予算「2018年より増額」8割以上 - 世界中で熱視線

通販サイトなどのレコメンデーション機能が進化し、個々のユーザーに合わせたサービスや商品を提案する「パーソナライゼーション」が世界中で試みられている。パーソナライゼーションにかける予算を2018年より増やすとした企業も8割以上にのぼり、まさに熱視線が注がれている。マクドナルドやスターバックス、ZOZOTOWNの事例をみながら、いかに注目されているか、また問題・課題は何か調べよう。

パーソナライゼーション予算「2018年より増額」8割以上 - 世界中で熱視線

百貨店の外商員と似ているパーソナライゼーション

「Amazon.co.jp」「楽天市場」「ZOZOTOWN」などの通販サイトにアクセスすると、気になるおすすめ商品が表示されるので、ついクリックして買ってしまう。これは、ユーザーの登録した年齢、性別といったプロファイルや購買履歴、似ているユーザーの購買履歴などを参考に商品をピックアップする、レコメンデーション機能による成果だ。

レコメンド技術は常に磨かれており、最近では個々のユーザーに関する情報や活動状況を人工知能(AI)で分析し、よりユーザー個人に合ったサービスや商品を提案するパーソナライゼーションが試みられている。うまく機能させられれば、単に適したものを見せるだけでなく、先回りして潜在的な欲求を掘り出すような、かゆいところに手が届くサービスが実現できる。

スケールや仕組みは異なるが、顧客の経済状態や好みを把握し、気に入ってもらえるであろう商品を最適なタイミングで紹介する百貨店の外商員も、一種のパーソナライゼーションサービスである。喜んでもらえる顧客体験(CX)で顧客満足度を高めると同時に、商品販売で収益を上げられれば、双方が満足するwin-winとなる。顧客とのよい関係を長く続けることにもつながる。

実店舗でも導入が始まった

競合するサービスや商品を簡単に比較できてしまう現代において、パーソナライズドマーケティングは顧客ロイヤルティ構築にも貢献しそうだ。そのため、パーソナライゼーションは注目の的で、Amazon.co.jpや楽天市場といった通販サイトにとどまらず、飲食店などの実店舗でも試験的に導入され始めている。

マックがドライブスルーをパーソナライズ

たとえば、ハンバーガーチェーンを展開するマクドナルド(McDonald's)は3月、イスラエル企業のダイナミック・イールド(Dynamic Yield)を買収すると発表した。買収の狙いは、ダイナミック・イールドが持つAI搭載パーソナライゼーションプラットフォームだ。

マクドナルドは、ダイナミック・イールドの技術でドライブスルーのメニュー表示を強化しようとしている。具体的には、時刻や天候、混雑具合、人気メニューなどの条件に応じ、来店者の見るディスプレイに表示するメニューを変更するという。さらに、店員が「ポテトはいかがですか」とすすめるかのように、注文に合った追加メニューを示すことも行う。

将来的には、このシステムをセルフサービス店やモバイルアプリなどにも導入する可能性がある。スマートフォン経由でユーザー個人とひも付けることができれば、さらに高度なパーソナライゼーションが可能になるだろう。

スタバはAIバリスタで接客をパーソナライズ

スターバックスは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を導入し、店頭でのパーソナライゼーションとCX向上に取り組んでいる。

在庫情報、人気商品、天候、時刻、注文履歴などのデータを組み合わせて分析する機械学習(マシンラーニング)システムをAzure環境で動かし、スマートフォン用アプリにおすすめ商品を表示するのだ。バリスタが常連客に好みのコーヒーを選んで出すのと同様に、AIでパーソナライズ化した接客を実現させる試みである。

マクドナルドと逆に、スターバックスはアプリで試験中のパーソナライゼーション機能を、今後ドライブスルーでも提供する予定。

出典:マイクロソフト / Starbucks turns to technology to brew up a more personal connection with its customers

スマスピでコーデを提案するZOZOTOWN

ZOZOTOWNの運営を技術面で支えているZOZOテクノロジーズは、アマゾンの音声アシスタント「Amazon Alexa」向けスキルとして、ファッションコーディネート提案サービス「コーデ相談 by WEAR」の提供を開始した。スマートスピーカー「Amazon Echo」やスマートディスプレイ「Amazon Echo Show」などのAlexa対応デバイスに音声でおすすめコーデを相談すると、ユーザーの好む提案をしてくれるという。

出典:ZOZOテクノロジーズ / 株式会社ZOZOテクノロジーズ、着たいコーデが話して見つかるAmazon Alexaスキル 「コーデ相談 by WEAR」の提供を開始

これだけでは以前からのレコメンデーションと変わらないが、コーデ相談 by WEARはユーザーの好みを学習してパーソナライズ化される。しかも、使うに従い「仲良し度」が高まってユーザーと打ち解けていき、次第に親しげなコミュニケーションへ変化するそうだ。

気に入ったコーデは「お気に入り」に保存できるほか、画面付きデバイスの場合はコーデ画面に表示されるQRコードから商品の詳細ページへ誘導できるなど、購買への導線もしっかり用意している。

パーソナライゼーションを企業はどうみている?

このように有望視されるパーソナライゼーションは、企業の期待も大きい。SoDAとサイトコア(Sitecore)が米国、カナダ、欧州、オーストラリア、日本で実施した調査「Global Trends in Personalization」(SoDAサイトコア)から、企業がどうパーソナライゼーションをとらえているかみてみよう。

予算に現れるパーソナライゼーション重視

企業のマーケティング責任者と経営幹部にどの程度パーソナライゼーションを重視しているか尋ねたところ、50%がマーケティングエコシステム内で重要な位置を占め、35%が競争力強化につながると答えた。つまり、85%がパーソナライゼーションを重視しているのだ。

この姿勢は、対パーソナライゼーション投資に反映されている。2019年のパーソナライゼーション施策に対する予算は、2018年から「大幅に増やす」ところが32%、「増やす」ところが52%もあった。2018年と「同水準」という回答は15%で、「減らす」という回答は1%にとどまった。

導入障壁は「適切なロードマップの不足」

パーソナライゼーションに熱い視線を送り、予算を増やすなど企業は前のめりのようだが、戦略的なプランやプラットフォームの機能、必要な予算は能力を生かし切るのに不十分とみられる。

たとえば、適切なロードマップと戦略的な投資計画の不備を指摘する回答者が52%にのぼった。「予算不足」(40%)、「プラットフォームの機能制限」(37%)、「チャネルの複雑さ」(37%)、「データ」(35%)がパーソナライズ強化の障壁になるとみる声もある。

また、自分たちのパーソナライゼーション能力を「マスターレベル」(12%)、「エキスパートレベル」(54%)と高く評価する回答者が多い一方、まだまだの「ノービスレベル」(21%)、「ビギナーレベル」(12%)と判断するところも少なくない。

プライバシー保護を最優先に

顧客対応やマーケティングでパーソナライゼーションを活用しようとすると、ユーザーの個人情報を大量に集めることになる。ところが、SoDAとサイトコアの調査では、8割弱の回答者が自組織でデータ流出を起こしたことがあると答えた。それにもかかわらず、データプライバシーを優先課題としている企業は35%、データプライバシー改善策を講じている企業は32%という状況だった。

EUの「GDPR(EU一般データ保護規則)」やカリフォルニア州の「California Consumer Privacy Act of 2018(カリフォルニア州消費者プライバシー法)」など、消費者の個人情報管理に対する目は厳しくなっている。

安易なパーソナライゼーションの導入でデータ漏えいを起こしてしまうと、地道に築き上げた顧客との関係が一瞬で壊れてしまう。本末転倒の結果を招きかねないので、プライバシー保護は最優先に考えるべきだ。

グーグル、フェイスブックを脅かすGDPR 「炎上」の火の粉は日本企業にもかかる恐れ | ボクシルマガジン
EU加盟国市民のプライバシー保護目的で定められた「GDPR(EU一般データ保護規則)」には、厳しい罰則が設けられて...
カリフォルニア州「プライバシー保護法」 本質は企業活動円滑化?企業と消費者をゆさぶる8項目 | ボクシルマガジン
カリフォルニア州で消費者の個人情報を守る法律「消費者プライバシー法」が成立した。欧州の「GDPR(EU一般データ保...