3万超え、アップルのスマスピ「HomePod」誰が買う? 広告価値増す市場で生き残るのは

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アップルのスマートスピーカー「HomePod」が、2018年2月の米国発売から遅れること1年半、2019年夏に日本でも発売される。スマートスピーカーが普及し、アマゾンとグーグルの製品が大きなシェアを占める今、HomePodは高音質を武器に日本市場へ食い込めるだろうか。
3万超え、アップルのスマスピ「HomePod」誰が買う? 広告価値増す市場で生き残るのは

画像出典:アップル / HomePod

1年半後れで日本に上陸、アップルHomePod

周囲のようすから、日本でもスマートスピーカーが普及期に入ったように感じる。試してその便利さに気付き、自宅のどこででも使えるように2台目、3台目を購入した人も多い。人気が高いのは、世界的なシェアの大きいアマゾン製「Amazon Echo」などと、グーグル製「Google Home」などだ。メッセージアプリで馴染んでいることもあり、可愛らしいデザインのラインナップが特徴のLINE製「Clova Friends」も注目されている。

ここで思い出すのは、アップル製スマートスピーカー「HomePod」のこと。アップルのブランドと、実績のある音声アシスタント「Siri」搭載が評価されたのか、2018年2月の発売直後は販売が好調だったと思われる。アップルも、スマートフォンに続く希望のデバイスと考えていただろう。

Siriはすでに日本語化されているので、日本でもすぐ発売されると予想していた。アップルの知名度や、お得意の「iPhone」「iPad」「Mac」などと連携するエコシステムで得られるメリットを訴えれば、購入者は増えたかもしれない。2018年中盤の国内スマートスピーカー市場なら、新規参入の余地も大きく、先行するアマゾンおよびグーグルと肩を並べた可能性がある。

それなのに、米国発売から1年経過してもHomePodは日本で発売されなかった。お膝元の米国でも後継機が登場しないせいか、話題にされず、すっかり忘れられている。

ところが、2019年7月になり、突如HomePodの日本発売がアナウンスされた。具体的な発売日は明らかにされず、ウェブサイトには「この夏、登場」とだけある。税別直販価格は3万2,800円。セールで大幅に値引きされることの多いアマゾンやグーグルのスマートスピーカーと比べ、はるかに高い。

今さらというほど日本でのスタートが遅れたアップルのHomePodに、勝ち目はあるのか。

HomePodの現状は?

世界のスマートスピーカー市場において、HomePodがどのような位置にあるかみていこう。

発揮できない存在感

調査会社カナリスによると、2019年第1四半期の世界スマートスピーカー出荷台数は2,070万台で、前年同期比131%増と好調が続いている。地域別では、中国市場の占める割合が急増した。

出典:カナリス / China overtakes US in fast growing smart speaker market

メーカー別の出荷台数は以下のとおり。やはりアマゾンとグーグルが強い。ただし、中国市場が急成長している影響か、バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、シャオミ(小米)がグーグルに迫る勢いだ。アップルの名前は見当たらない。その他に丸められており、存在感を発揮できていない。

●アマゾン
・出荷台数:460万台
・シェア:22.1%
・成長率:84.7%

●グーグル
・出荷台数:350万台
・シェア:16.8%
・成長率:7.0%

●バイドゥ
・出荷台数:330万台
・シェア:16.0%
・成長率:前年同期は未発売

●アリババ
・出荷台数:320万台
・シェア:15.5%
・成長率:204.3%

●シャオミ
・出荷台数:320万台
・シェア:15.4%
・成長率:411.4%

●その他
・出荷台数:290万台
・シェア:17.3%
・成長率:89.8%

出典:カナリス / China overtakes US in fast growing smart speaker market

性能がイマイチ?

アップルにとって不名誉なデータがもう1つある。ボイスボット.aiが各社の音声アシスタントを比較したところ、HomePodの性能が低かったのだ。

ボイスボット.aiは、さまざまな質問を各音声アシスタントに投げかけ、適切な反応があるか、分からないと答えるか、誤った反応があるかを調査した。それによると、スマートフォン上の「Google Assistant」が92.5%という高い正解率を記録し、これにGoogle Homeの81.0%が続いた。以下「Amazon Alexa」の33.8%、サムスン電子製「Samsung Bixby」の31.8%で、HomePodは28.0%にとどまった。

「分からない」という結果に着目すると、Google Assistantは0.6%と極めて小さく、Google Homeは12.0%、Amazon Alexaは44.9%、Samsung Bixbyは30.1%あった。これに対し、HomePodは63.1%と、目立って高い結果となってしまった。

出典:ボイスボット.ai / Voice Assistant SEO Report For Brands

どうにもアップルはふるわない。

音声広告メディアへの期待値が高まる

さて、スマートスピーカー市場では面白い動きがある。広告メディアやマーケティング媒体、通販プラットフォームとしての役割が期待され始めているのだ。

スマートスピーカーの広告配信はアリ

アドビシステムズは、スマートスピーカーで配信される音声広告が受け入れられている、といった内容の調査結果を発表した。

スマートスピーカーを使っているとき、特に音楽ストリーミングサービスなどの無料版を利用していると、ときおり音声による広告が流れる。そうした広告を聞いた経験のある消費者は25%おり、その35%は無料サービスを使うのと引き換えに音声広告を受け入れていた。

興味深いのは、スマートスピーカーの音声広告があまり嫌われていないことだ。「YouTube」やウェブサイトで表示される広告は邪魔者扱いされやすいが、スマートスピーカー所有者の43%は「テレビ、印刷物、ウェブ、SNS」広告の方が目障り、耳障りと答えた。しかも、42%はスマートスピーカーから流れる音声広告の方が魅力的と考えている。

さらに、スマートスピーカーは商品購入の入り口になってきた。スマートスピーカーで音声広告を聞いたことのある人のうち、広告を切っ掛けに買い物した人が39%いたのだ。受け手の属性に応じてターゲティングできるため、同じ音声で情報を伝えるラジオ広告よりも効果が高いはずだ。

日本でも音声広告マネタイズ可能に

スマートスピーカーやポッドキャストを活用する新たな音声広告市場は、日本でも立ち上がってきた。

たとえば、ロボットスタートの開始したメディア音声化サービス「Audiostart」は、Amazon Alexaおよびポッドキャストへの音声配信に対応しており、音声広告のマネタイズも可能なサービスだ。

ちなみに、ロボットスタートも「音声広告の受容性は非常に高い」としている。具体的には、音声広告を聞いたユーザーの5割が「好感」を抱いていたそうだ。また、音声広告で音声ニュースコンテンツの質が向上することについて尋ねたところ、18%が「許容できる」、48%が「やや許容できる」と答え、受け入れる人の多いことが分かる。

出典:ロボットスタート / スマートスピーカーなどに対応したメディアの音声化サービス

出典:ロボットスタート / スマートスピーカーなどに対応したメディアの音声化サービス

HomePodの高音質は武器になるか

スマートスピーカー市場は、これからユーザーがまだまだ増え、広告やマーケティングの面でも有望だ。しかし、アップルのHomePodが置かれた状況は厳しい。

まず、価格の高さが問題だ。数千円出せばアマゾンやグーグルのスマートスピーカーが買える状況で、3万円を超えるHomePodには手を出しにくい。アップル製品のファンでない限り、購入はためらうだろう。

ストリーミング音楽サービス「Apple Music」を手がけているだけあり、アップルはHomePodの高音質を前面に打ち出している。確かに、HomePodの音質は優れているらしい。しかし、このジャンルは「Sonos One」などを販売しているソノスの評判がよいほか、ソニーの「LF-S50G」、オンキヨーの「G3」、ボーズの「Bose Home Speaker 500」、JBLの「LINK 10」などオーディオメーカーの製品がすでに存在する。

アップルは、Apple Musicとのシームレスな接続や高音質を武器に、レッドオーシャンになりつつある市場を切り開いていけるだろうか。