フードデリバリーが自動配達をリードする - ロボットやドローンが出前する時代に

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フードデリバリーサービスにより、これまで出前を行っていなかった飲食店の料理を手軽に食べられるようになった。現在は人間の配達員が食品を運んでくるが、世界では自動走行ロボットや自律飛行ドローンによる自動配達が広まり始めている。フードデリバリーはほかの荷物の配達と違って自動化しやすいからだ。

フードデリバリーが自動配達をリードする -  ロボットやドローンが出前する時代に

フードデリバリーが世界で人気

都市部では、大きな四角いバッグを背負って走る自転車やバイクが目立つようになった。その多くは、配車サービス企業ウーバー(Uber)が手がけているフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達員だ。

ここでのフードデリバリーとは、すぐに食べられる調理済み食品を配達すること。サービスそのものは昔ながらの出前と変わらない。大きな違いは、かつての出前は飲食店の従業員が配達していたのに対し、Uber Eatsの配達員は飲食店と無関係という点。食品を届けてほしい飲食店と、配達でお金を稼ぎたい人がそれぞれ個別にウーバーと契約し、ウーバーが両者を仲介する。つまり、出前サービスをギグエコノミーで実現させている。

配達業務をウーバーとその配達員という外部へ簡単に委託できるため、これまで出前を行っていなかった飲食店も料理を配達するようになった。その結果、フードデリバリーの人気も高まっている。

eマーケッターの調査によると、米国では2019年のフードデリバリー用アプリ利用者数は前年比21.0%増の3,800万人になるという。その後も利用者は増え、2023年には5,950万人に達すると予測した。なお、2019年における消費者の支出額シェアは、「DoorDash」が27.6%、「Grubhub(Seamlessを含む)」が26.7%、Uber Eatsが25.2%、「Postmates」が12.1%、「Caviar」が2.7%となる見通し。

出典:eマーケッター / US Food Delivery App Usage Will Approach 40 Million Users in 2019

配車サービスとフードデリバリーは似ている

Uber Eatsなどのフードデリバリーサービスは、消費者からの注文に応じて調理された食品を店舗で配達員がピックアップし、注文者の指定した場所へ届ける。この処理の流れは、配車サービスとよく似ている。運ぶ物が人から食品に変わるだけで、アプリ経由の注文または配車依頼、働きたい人が好きなときに配達員またはドライバーとなるギグエコノミー、ある場所から別の場所への移動、という特性は共通する。

さまざまなノウハウを流用しやすいため、配車サービス企業にとってフードデリバリー事業は参入しやすい。冒頭に紹介したウーバー以外だと、たとえばグラブ(Grab)の「Grab Food」がそのパターンだ。

実用化段階に入った自動フードデリバリー

現在日本で見かけるフードデリバリーは、人間が食品を運んでいる。一方、世界では自動走行ロボットや自律飛行ドローンによる食品配達サービスが実用化済みだ。

5万回配達の実績を持つ自走式ロボット

スターシップ・テクノロジーズ(Starship Technologies)は、車いすや大型ベビーカーといった大きさの自走式ロボットで配達サービスを手がけている企業。たとえば、2019年1月よりジョージ・メイソン大学(GMU)で、3月より北アリゾナ大学(NAU)で、それぞれキャンパス内ロボット食品配達サービスを提供している。

2018年4月のサービス開始以来、世界100以上の都市、大学キャンパス、企業内で食品のほか日用品のロボット配送サービスを展開。2019年4月の時点で、配達回数は5万回を超え、総走行距離は20万マイル(約32万km)に達した。

出典:北アリゾナ大学(NAU) / “Hello! Here is your delivery:” Starship robots roll onto NAU’s campus

立ち乗り式2輪車で有名なセグウェイ・ナインボットも、配達用の自律走行ロボット「Loomo Delivery」の開発に取り組んでいる。

スターシップと似た発想のロボットであるものの、段差を越えるのは不得意そうな形状だ。オフィスビルやショッピングセンターといった屋内と、それに準ずる環境での使用を想定しているのだろう。商用サービスとしての運用はまだ始まっていないが、オフィスなどで使われそうだ。

出典:セグウェイ・ナインボット / Loomo Delivery

無人の自動運転車がピザを配達

出前といえば思い浮かべるピザも、自動配達の対象になる。ドミノピザが、テキサス州ヒューストンで自動ピザ配達を試験している。

ドミノピザが採用したのは、ニューロ(Nuro)が開発した「R2」という無人自動運転車。R2は他車と混在して公道を走行し、注文した人のもとへピザを届けてくれる。

なお、ニューロにはソフトバン系の投資ファンドが9億4000万ドル(約998億3,740万円)を出資している。

出典:ドミノピザ / Domino’s and Nuro Partner to Bring Autonomous Pizza Delivery to Houston

グーグルも食品ドローン配達に参入

ドローンを使ったフードデリバリーも、すでに始まっている。グーグル兄弟会社のウィング・アビエーションが、オーストラリアの首都キャンベラとフィンランドの首都ヘルシンキで提供を開始し、米国のバージニア州で提供予定だ。

出典:ウィング・アビエーション / Virginia

また、アイスランドの首都レイキャビクと米国ノースダコタでは、フライトレックス(Flytrex)製ドローンを使った同様のサービスが提供されている。

さらに、ブルームバーグの報道によると、ウーバーもドローン食品配達を計画中だ。米国のサンディエゴで、この夏にもマクドナルドと共同で試験運用を始めるという。

日本でも始まったドローン配達

住宅密集地が多くドローンを自由に飛ばすことの難しい日本でも、限定的ながら商用のドローン食品配送サービスが開始された。楽天と西友が神奈川県横須賀市で行っているもので、東京湾にある猿島へ対岸の西友店舗からバーベキュー用食材などを運ぶサービスである。

墜落が心配なドローンであるが、このサービスの飛行ルートは大半が海上で安全を確保しやすい。そのため、商用サービスに踏み切れたのだろう。

自動配達の普及はフードデリバリーから

自動走行ロボットや自律飛行ドローンを使った配達は、運ぶ荷物が食品だろうと日用品やその他製品だろうと、技術的には変わらない。ところが、次々と実用化され始めている自動フードデリバリーに対し、そのほかの自動配達は広がりに乏しい。

自動配達を拒むラスト50フィートと留守宅

その原因の1つとして、ラスト50フィート問題が考えられる。ラスト50フィート(約15m)とは、道路から配達先の玄関に至る通路のこと。公道は広い車道や滑らかな歩道が整備されていて、自動走行ロボットもスムーズに移動できる。しかし、住宅の玄関へ向かおうとすると、通路の幅が狭くなる。行く手を段差に阻まれたり、砂利が敷き詰められていたり、飛び石が設けられたりして、走行できないこともあり得る。ドローンによるアクセスが困難な住宅もあるだろう。

フォード・モーターが開発中の自動運転車と2足歩行ロボットを組み合わせた配達サービスであれば、ラスト50フィート問題は解決できる。しかし、1回の配達コストが許容できないくらい高くなりそうだ。

自動配達にとって、最後のたった50フィートが大きな障壁になる。

もう1つの問題は、配達先で荷物を受け取ってもらえる保証がないことだ。配達したタイミングで留守だとしても、人間の配達員なら宅配ボックスに入れる対応ができる。しかし、自走ロボットやドローンだと、特殊な仕組みを用意しない限り荷物を持ち帰るしかないだろう。

留守の多い人に、こうしたサービスの利便性は低い。

“人間が受け取る”からいいフードデリバリー

調理済みの食品を届けるフードデリバリーには、すぐに食べようと待ち構えている依頼主が荷物を受け取る、という特徴がある。アクセスしやすい所まで人間に出てきてもらえるので、ラスト50フィート問題を考えずに済む。しかも、配達先の不在で荷物を持ち帰る必要もない。しかも、運ぶ荷物が比較的軽くコンパクトで、小さな自動走行ロボットやドローンに載せやすい。

このような理由により、各種配達サービスのなかでフードデリバリーは自動化が容易なのだ。配達の自動化は、こうしてフードデリバリーで一般的になり、次第にほかの種類の荷物へと広がっていくかもしれない。

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