乱立するQRコード決済、ユーザー急増も継続利用者は半数未満 - キャンペーンのその後はどうなる?

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大盤振る舞いのキャッシュバック施策でユーザー数を急増させたQRコード決済サービスは、2023年度の市場規模が8兆円と見込まれている。しかし、現金決済が全体の9割を占める日本で、存在感はまだ小さい。しかも、QRコード決済を継続使用している人はサービス登録者の半数に満たない。20%還元など大型キャンペーンの「その後」へ向けた施策が普及のカギを握りそうだ。

乱立するQRコード決済、ユーザー急増も継続利用者は半数未満 - キャンペーンのその後はどうなる?

乱立するのQRコード決済サービス

少し前まで、QRコード決済は中国などで広く使われているものの、日本では主に海外からの旅行者が使うもの、というイメージだった。ところが、2018年末に実施された「PayPay」の100億円キャッシュバックキャンペーンなど大盤振る舞いのユーザー獲得策が注目され、利用者が急増した。

2019年10月に予定されている消費税率の引き上げと関連する、QRコード決済や電子マネー決済などが対象のポイント還元政策も、利用者数の増加に寄与している。これと平行して、QRコード決済は「Suica」などの「FeliCa」系電子マネー決済より店舗への導入が容易なこともあり、使える場所も増えた。

急拡大した国内QRコード決済市場では次々と新しい決済サービスが誕生し、乱立といえるほどの状況だ。市場規模の拡大も予想されており、たとえば日本能率協会総合研究所は2023年度の市場規模を8兆円と見積もった。ただ、そこまで順調に成長するだろうか。

急成長したQRコード決済

まず、QRコード決済を含む、モバイル決済サービスの利用状況をみてみよう。

QRコード決済の利用率は9%

博報堂が2019年2月から3月にかけて実施した調査によると、調査対象期間の1カ月にモバイル決済サービスを利用した人の割合は、20.0%だった。

モバイル決済手段の種類別では、「QRコード決済」が9.0%でもっとも多く、以下「キャリア決済」(7.5%)、「スマホ等に設定したクレジットカード」(4.9%)、「スマホ等に設定した交通系ICカード」(4.3%)、「スマホ等に設定した流通系ICカード」(2.7%)の順。日本で後発といえるQRコード決済がトップになったことは驚きだ。

出典:博報堂 / 博報堂金融マーケティングプロジェクト モバイル決済に関する生活者調査を実施

意外と少ないモバイル決済の地域差

モバイル決済の利用状況に地域差はあるのか。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)と首都圏以外で比べたところ、モバイル決済サービス利用率は、首都圏が21.8%、首都圏以外が19.3%で大差なかった。

ただし、「スマホ等に設定した交通系ICカード」の利用率に限れば、首都圏は8.1%、首都圏以外は2.8%といった具合で、Suicaが普及している首都圏の特性が表面化した。各モバイル決済サービスの利用率は以下のとおりで、首都圏では交通系ICカードの利用者がQRコード決済に次いで多い。

●首都圏
・QRコード決済:10.1%
・交通系ICカード:8.1%
・キャリア決済:6.9%
・クレジットカード:5.5%
・流通系ICカード:3.1%
・その他ICカード:1.9%
・デビットカード:0.9%

●首都圏以外
・QRコード決済:8.6%
・キャリア決済:7.7%
・クレジットカード:4.6%
・交通系ICカード:2.8%
・流通系ICカード:2.5%
・その他ICカード:1.6%
・デビットカード:0.8%

モバイル決済の利用頻度は、全体的に首都圏の方が首都圏以外より高かった。こちらも、Suicaなど交通系ICカードの影響が考えられる。

出典:博報堂 / 博報堂金融マーケティングプロジェクト モバイル決済に関する生活者調査を実施

今も現金決済が9割を超える

続いて、最近の調査結果を紹介しよう。9割以上が現金決済を利用しており、モバイル決済の利用率は変わらず20%を割り込む。

認知度は9割近いが利用者は2割未満

MMD研究所が2019年6月に調査したところ、普段の支払方法は93.0%ある「現金」が圧倒的に多かった。これに「クレジットカード」(72.3%)、「カード型の交通系電子マネー」(29.7%)、「カード型の交通系以外の電子マネー」(22.7%)が続く。Suicaのようなタッチ式とQRコード式を合わせたモバイル決済の利用率は14.3%で、まだ少ない。

出典:MMD研究所 / QRコード決済の認知は84.8%、内容理解は47.6%、現在利用は15.6% 利用経験は「PayPay」がトップ、次いで「LINE Pay」、「楽天ペイ」

少数派であるものの、派手なキャンペーンやテレビCMの効果なのか、QRコード決済の認知度は高い。具体的には84.8%もの人が「認知」しており、「サービス名認知」は56.6%あって、「内容理解」も47.6%ある。「利用経験」(19.1%)と「現在利用」(15.6%)の割合は高くないが、サービスの存在は確実に知られており、当たり前の決済手段になる可能性は感じられる。

ちなみに、認知度と利用経験率の上位3サービスブランドは以下のとおり。また、もっとも使っているQRコード決済サービスを1つだけ選んでもらったところ、「PayPay」が27.7%、「LINE Pay」が21.6%、「楽天ペイ」が20.2%という結果になった。

●認知度
・PayPay:70.4%
・楽天ペイ:61.9%
・LINE Pay:59.7%

●利用経験率
・PayPay:43.2%
・LINE Pay:35.3%
・楽天ペイ:34.4%

出典:MMD研究所 / QRコード決済の認知は84.8%、内容理解は47.6%、現在利用は15.6% 利用経験は「PayPay」がトップ、次いで「LINE Pay」、「楽天ペイ」

ポイント還元とキャンペーンが呼び水に

QRコード決済サービスの利用開始時期については、「2018年7月~2018年12月」が16.6%、「2019年1月~2019年6月」が50.8%だった。やはり、2018年末に始まったサービス提供会社各社のキャンペーンが切っ掛けのようだ。

出典:MMD研究所 / QRコード決済の認知は84.8%、内容理解は47.6%、現在利用は15.6% 利用経験は「PayPay」がトップ、次いで「LINE Pay」、「楽天ペイ」

そこでMMD研究所が使い始めた理由を集計したところ、「キャンペーンを知って興味を持ったから」という回答が43.5%あり、「ポイントがたくさん貯まるから」(44.0%)に次いで多かった。「普段使っているサービスとポイントが連動しているから」という回答も26.0%あり、キャッシュバックとポイント還元がQRコード決済を利用する動機になっていることがわかる。

出典:MMD研究所 / QRコード決済利用上位6サービスの総合満足度は64.7%、総合満足度1位は「メルペイ」

継続使用者は登録者の半数未満

QRコード決済サービスの利用目的がキャッシュバックやポイント還元であると、そうした特典のうまみが失われたら利用者は減るはずだ。この点に着目し、リサーチ・アンド・ディベロプメントは2019年4月に調査を実施した。

ある決済サービスの「所有・登録しているが使っていない」という中止率は、「カードタイプ電子マネー」が22.9%ある。これに対し、「スマホタイプ電子マネー」は14.2%、「スマホQRコード決済」は同じく14.2%で、QRコード決済の中止率は高くない。

しかし、登録者数に対する中止者の割合は、「スマホQRコード決済」が48.6%あり、使い続けている人は約半数だけだ。一方、この数字は「カードタイプ電子マネー」が25.8%、「スマホタイプ電子マネー」が42.5%で、いずれもQRコード決済に比べ継続使用する人が多い。

出典:リサーチ・アンド・ディベロプメント / QRコード決済は浸透しつつも継続使用者は約半数

リサーチ・アンド・ディベロプメントによると、「キャンペーンが終われば(QRコード決済を)使わない」「クレジットカードで済む」という声があるそうだ。QRコード決済利用のメリットを消費者に理解してもらわない限り、キャンペーンを繰り返して登録者をいくら増やしても継続使用は望めない。増えすぎた競合サービスによる過当競争の危険もある。

QRコード決済の認知度は十分高まった。持続可能なサービスとなるには、今が正念場だ。

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