2021年、AIのビジネス価値は3兆ドル規模へ 投資家が熱視線を注ぐ企業

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AIの技術は細分化され極めて専門的だ。そのため、AIを手がける技術系企業に熱い視線が注がれ、投資対象になっている。たとえば9月には画像検索技術を提供するSyteが2,000万ドル以上の調達を発表。世界的にもAIのビジネス価値は拡大が見込まれ、2021年に3兆ドル弱もの規模へなるという予測もある。

2021年、AIのビジネス価値は3兆ドル規模へ 投資家が熱視線を注ぐ企業

熱い視線が注がれるAI企業

人工知能(AI)、正確にはマシンラーニング(機械学習)やディープラーニング(深層学習)、ニューラルネットワークといった技術を応用した情報処理システムが、生活のさまざまな場面で使われ出した。利用者の増えているスマートスピーカーも、店舗や駅などで顧客対応するロボットも、AIベースのアルゴリズムで動いている。AIは監視カメラの映像解析にも利用され、実用化を目指して開発競争の進む自動運転もAI抜きで語れない。それどころか、AIを創作活動に活用する取り組みもある。

当然AIの技術開発が盛んに行われ、AI関連特許の出願も急増している。AI技術開発ではNVIDIA(エヌビディア)など一部の企業が注目されやすいものの、関連する領域は多く、裾野は広い。そのため、AIを手がける多種多様な技術系企業に熱い視線が注がれている。

AI開発は投資対象に、大型調達続く

製品やサービスでAIを使う場合、関連する技術は多岐にわたる。各技術は細分化され極めて専門的なので、一朝一夕に開発できない。そこで、AI活用に欠かせない技術を得意とする企業が投資対象となり、多くの資金を獲得できる。ここでは、そんな資金調達の事例を紹介しよう。

クラウドで低コストなAI導入を支援

何らかのAIアプリケーションを開発しようとすると、膨大なデータに対する高速な演算処理を実行しなければならず、大量の演算リソースが必要になる。AI演算リソースを用意しているクラウドサービスは存在するが、既存サービスではNVIDIA製の高価格GPUを使うため、高額な使用料が発生してしまう。

これに対し、Pegara(ペガラ)はディープラーニング技術の「コモディティ化を促進する」手段として、「Deep Learningの学習・推論に最適化されたGPUクラウド」サービスである「GPU EATER」を開発。世界で初めてAMD製GPUをディープラーニング向けに搭載することで、AIアプリケーションで必要とされる演算処理を安価かつ高速に実行可能にした。具体的には、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などの大手クラウドに比べ、総所有コスト(TCO)を最大80%削減できるとしている。しかも、最大50%の高速化も可能だそうだ。提供開始から約1年半経過したGPU EATERは、これまでに40カ国300以上の顧客が利用し、NVIDIAも顧客だという。

こうした実績や将来性が評価され、Pegaraは先日104万ドル(約1億1,251万円)の資金調達に成功した。これにより、同社の累計調達額は約153万ドル(約1億6,552万円)になった。今後は、AI処理用APIサービスの開発を進める計画だ。

ビデオで人の表情をリアルタイムに操作

AIベースのCG基盤技術とアプリケーションを開発するEmbodyMe(エンボディミー)は、約2億3,000万円の資金調達を実施し、創業3年で累計調達額を約3億6,000万円とした。

EmbodyMeが実現を目指すのは、「誰もがAIで目に見えるあらゆるものを自由自在に作り出す世界」。現在、ビデオに録画された人の表情をリアルタイムに操作できるスマートフォン用アプリ「Xpression」で話題にあがっている。Xpressionはディープラーニングを応用しており、ビデオ内の人物にユーザーの表情を合成するディープフェイクが行える。ユーザーが話す際の顔の動きに合わせ、ビデオ内の人物も同じように動かせるのだ。

これだけでも驚きだが、「映像の中の人物の表情を動かす技術からスタート」とのことなので、XpressionはEmbodyMeの第一歩に過ぎない。「あらゆる人物を生成したり、どんな場所の背景でも生成できるように」技術を進歩させるとしている。

期待の高いAIによる画像検索

AIベースの画像処理技術を提供しているSyte(サイト)は、2,150万ドル(約23億2,587万円)の資金を調達し、累積調達額は3,000万ドル(約32億4,540万円)に達した。

Syteの技術を使うと、高度な画像検索が可能になる。たとえば、気に入った洋服の取り扱いがある通販サイトを探そうとしても、洋服のブランドや商品名が分からないとなかなか見つけられない。Syteの画像認識技術を取り入れた画像検索サービスであれば、似たデザインの商品を容易にピックアップできる。通販サイトで類似商品を顧客にレコメンドする際など、この技術はとても有効なはずだ。

Syteと業務提携しているウェブマーケティング会社のギャプライズによると、通販サイトだけでなく、店舗に設置するスマートミラーやインストアスタイリストにも活用できるという。

AIのビジネス価値は2021年に3兆ドル規模へ

このようにAI熱は高まっていて、調査会社も世界AI市場の拡大を予測している。IDCは2019年の対AIシステム支出額を375億ドル(約4兆568億円)とし、これが2023年に979億ドル(約10兆5,908億円)へ達するとした。また、ガートナーは2021年におけるAIのビジネス価値を2兆9,000億ドル(約313兆7,220億円)規模と見積もった。

日本のAI市場も、このトレンドから外れていない。富士キメラ総研の調査結果によると、国内AIビジネス市場の規模は、2018年度が5,301億円、2030年度が2兆1,286億円で順調に拡大すると予想した。AIビジネスには、AI活用分析サービス、AI環境構築向けコンサルティングおよびシステムインテグレーション(SI)、AI環境向けアプリケーションやプラットフォームなどが含まれ、大きな市場になりそうだ。

出典:富士キメラ総研 / 『2019 人工知能ビジネス総調査』まとまる(2019/6/7発表 第19039号)

AI技術が進化し、市場が拡大すれば、応用範囲が広がるとともに、導入も容易になる。日常生活AIと出会ったり、AIに頼ったりすることがますます増えるだろう。

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※編集部追記:2019年9月28日タイトルを修正しました。訂正してお詫び申し上げます。