70歳以上でスマホ所持半数超える - ネットも動画もECも「PC使わない」

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記事の情報は2019-12-10時点のものです。

所有率が向上し誰もがスマートフォンを使うようになったが、年代によって活用方法は大きく異なっていた。それが今は、年配層もインターネット利用や動画視聴にスマートフォンを多用する時代だ。新元号「令和」発表時には、全世代でYouTube利用者が上位を占めた。
70歳以上でスマホ所持半数超える - ネットも動画もECも「PC使わない」

普及の反面、販売不振が続く

調査会社IDC Japanによると、国内ではスマートフォンの販売不振が続いているそうだ。具体的には、2019年第2四半期(2019年4月~6月)におけるスマートフォンの出荷台数は693万3,000台で、前年同期に比べ1.8%減ってしまった。

MM総研も同様の調査結果を公表し、2019年度上期(2019年4月~9月)のスマートフォン出荷台数は1,286万1,000台と、前年同期比7.5%減という大幅縮小だという。また、フィーチャーフォンと合わせた総出荷台数は、1,461万5,000台で前年同期比5.8%減。これは、2000年度に統計を取り始めて以降、最低の出荷台数だそうだ。

スマートフォンは、誰もが持つまでに普及したうえ、機能や性能の面で最新モデルに乗り換える必要性も低下した。そのため、新規購入が減り、買い替えサイクルも長引き、以前に比べ売れ行きが鈍ったのだろう。

年代別の所有率は?

誰もが持つデバイスになったとはいえ、スマートフォンの普及状況は年代によって大きな差があると考えられる。それでは、年代ごとの所有率を確認してみよう。

スマホ率が全年代で上昇

NTTドコモのモバイル社会研究所は、スマートフォンまたはフィーチャーフォンの所有者を対象に調査を実施。そして、年代別スマートフォン所有率を算出した。

それによると、全体で男性の82.9%(前年は74.2%)、女性の85.0%(同74.3%)がスマートフォンを持っていて、いずれもスマートフォンの割合が高まった。こうしたスマートフォン率の上昇は、すべての年代で見られる現象である。

70歳以上のスマホ率が5割を突破

15歳から24歳のスマートフォン率は男女ともほぼ100%あり、49歳以下のスマートフォン率は90%以上あった。また、70歳から79歳のスマートフォン率は、男性が56.2%、女性が53.4%で、初めて5割を超えた。

高齢者のスマートフォン普及率がここまでになれば、高齢者向けの事業でも、スマートフォンのアプリやサービス、コンテンツを利用した施策の効果が高まるはずだ。

出典:NTTドコモ / 基本レポート(スマホ比率:性・年代)

全年代でスマホシフト進む

全年代にスマートフォンが広まったものの、昨年(2018年)の調査では年代によって用途が大きく異なっていた。たとえば、18歳から34歳はソーシャルネットワーク(SNS)へのアクセスにスマートフォンを多く利用しており、55歳以上は天気予報やニュースといった用途に限定されがちだ。さらに、65歳から75歳になるとウェブブラウザの使用頻度が低下し、インターネット接続デバイスとしての使い方が影をひそめる。

ところが、わずか1年で状況は変化しているらしい。

スマホは「ネット利用のメインデバイス」に

ニールセン デジタルは、PCおよびスマートフォンの利用実態を調査し、「Digital Trends 2019上半期」として発表。スマートフォンへのシフトが進み、「全世代でスマートフォンがネット利用のメインデバイス」になったと指摘した。

まず、インターネットへアクセスする際にスマートフォンを使用した人数は、2019年第2四半期の月平均で7,078万人となり、前年同期比5%増だった。インターネット利用時のスマートフォン使用率はすべての世代で上昇したが、50代と60代の上昇率が特に大きい。その結果、スマートフォンの使用率は、全世代でPC、タブレット、フィーチャーフォン(ガラケー)を抜いた。

全体的には、フィーチャーフォンの使用率が下がっている。また、10代のみPCの使用率が大幅に低下した。

出典:ニールセン デジタル / 全世代でスマートフォンがネット利用のメインデバイスに

令和発表時はYahoo! Japanがトップだが

新元号の「令和」が発表された4月1日、発表内容を確認するためにスマートフォンから利用されていたサービスは、利用者数の1位が「Yahoo! Japan」(169万人)、2位が「YouTube」(101万人)、3位が「Twitter」(86万人)だったという。

35歳から49歳と、50歳以上の上位2つはYahoo! Japan、YouTubeの順番なのに対し、18歳から34歳は1位YouTube、2位Twitterとなり、情報源の違いに年代別の個性が表れた。とはいえ、全世代で1位ないし2位にYouTubeが入っている。情報源として動画を選ぶ人が増えていることの現れかもしれない。

出典:ニールセン デジタル / 全世代でスマートフォンがネット利用のメインデバイスに

スマホから動画視聴とEC利用増える

年齢の高い層はスマートフォンで動画をあまり視聴しない、と考えていたが、以前に比べると利用者が増加したようだ。

そこでスマートフォンを使った動画視聴時間を調べたところ、2019年6月時点の月間平均利用時間は7時間13分に及んでいた。2015年6月は1時間51分に過ぎず、5年で約4倍に増えたことになる。

高速なモバイルネットワークや無線LAN(Wi-Fi)の普及が、スマートフォンからの動画視聴を後押ししているのだろう。

出典:ニールセン デジタル / 全世代でスマートフォンがネット利用のメインデバイスに

ネット通販サービスについても、スマートフォンからの利用が増えている。

2019年第2四半期の利用人数は「Amazon」が4,771万人で前年同期比4%増、「楽天市場」が4,657万人で同3%増だが、スマートフォンからの利用人数はそれぞれ同15%増、同13%増と、全体を上回る割合で増えた。PCからの利用人数と、PCおよびスマートフォンを併用する利用人数はいずれも減少し、スマートフォンへのシフトが見られる。

出典:ニールセン デジタル / 全世代でスマートフォンがネット利用のメインデバイスに

10代で強まるスマホ偏重

前記ニールセン デジタルの調査では、10代のPC使用率低下が明らかになった。同様の傾向は、LINEの実施した調査でも確認できる。

15歳から19歳のユーザーがインターネットを利用するために使ったデバイスは、「スマホのみ」が81%、「スマホ+PC」が17%、「PCのみ」が0%で、スマートフォンしか使わないユーザーがほかの世代に比べ目立って多かった。しかも、スマートフォンのみ使うユーザーの割合が増加傾向にある。50歳から59歳も同様の傾向にあるが、20歳から49歳の増加ペースはそれほど速くない。

出典:LINE / 〈調査報告〉インターネットの利用環境 定点調査(2019年上期)

デジタル機器を使いこなしている、という印象を10代に抱くものの、スマートフォン・ネイティブたちは意外とPCの操作やキーボード入力が不得手なのかもしれない。逆に、スマートフォンが苦手と考えられていた高齢者でも、難なく使いこなしている人も多いだろう。

何らかのサービスを提供する場合、これまでの先入観にとらわれず、時代に合った適切なアクセス手段を用意するようにしなければならない。