ホワイトカラーエグゼンプションとは | 導入の目的と問題点を解説!

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

現在注目のホワイトカラーエグゼンプションとは何か?ホワイトカラーエグゼンプションの目的や具体的な効果、メリットとデメリット、そして他国の事例について紹介します。
ホワイトカラーエグゼンプションとは | 導入の目的と問題点を解説!

ホワイトカラーエグゼンプションとは

ホワイトカラーエグゼンプションとは、ホワイトカラー、つまりデスクワークの仕事を中心とするホワイトカラー労働者に対する制度です。

具体的には労働基準法の規制を適用免除、もしくは緩和するものです。もともとホワイトカラーエグゼンプションはアメリカで導入された制度ですが、近年は日本で導入が検討されています。

日本での導入をめぐる背景

この制度が検討されている理由は、事務系の職種の動労者では、労働時間の長さで労働の価値や成果を判断できないという点にあります。

日本での議論でも、一定の高収入の知識作業労働者に限定しての導入が議論されてきました。

ホワイトカラーエグゼンプションの導入目的

給与の歪みの是正

ホワイトカラーの労働者に対し、労働時間をベースに単純に給与を決定すると、意図するかどうかに関わらず、どうしても、同じ作業と成果を長時間かかって完成させた労働者の方が残業代を多く支給され、効率よく業務を完了させ定時に帰った労働者の方が、残業代が少なくなります。

このような給与の歪みを修正するという目的があります。

効率的な働き方の実現

時間給でなくなることによって、さらに効率の良い、生産性のある働きへつながっていきます。社員全員の、効率を改善するモチベーションが上昇し、それが労働生産性につながるということです。

国際競争力の強化

ホワイトカラーエグゼンプションは、経営者側からみると社員が意欲的に働く環境を作ることで生産性が向上し、さらに残業代の削減で収益アップが期待できます。

日本は世界的に見て労働生産性が低いと言われ、国際競争力は伸び悩んでいるのが現状です。
ホワイトカラーエグゼンプションを導入し労働生産性を向上させることで、国際競争力を高まることが期待できます

ホワイトカラーエグゼンプション導入のメリット

労働生産性の向上

企業において、1人の従業員が新しく生み出す付加価値である「労働生産性」を向上することは国際競争力を高めるうえでも重要です。

適正な評価ができ社員の意識改革につながる

正当な評価を受けられることは報酬に対する納得感につながり、社員の中には「専門性をより高めていこう」とする成長意欲もみられることが多いです。

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企業の人件費削減につながる

ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入すると、残業代を支払う必要がなくなるので人件費の削減につながります。

ホワイトカラーエグゼンプション導入のデメリット

残業代がなくなり経営者側に有利

一方で、労働時間を重視しないということは、結果としてどんなに効率よく仕事をしても残業してしまった場合でも、いくら長時間を要しても、長時間に見合った残業代は払われないということになります。

過労死を助長する可能性

日本の長時間労働が社会的問題となっていて、過労死がたびたびメディアを通じて報道されます。
ホワイトカラーエグゼンプションは経営者側に有利なので、過労死を助長する可能性があります。

労働時間の短縮を実現する方策を打ち出すべきで、ホワイトカラーエグゼンプションのような新制度を入れるのは間違っているという主張があります。

   

諸外国の事例

アメリカ

米国のホワイトカラーエグゼンプションは一定の俸給(賃金)や職務の要件を満たす労働者がエグゼンプションの対象になり、この対象者への最低賃金および割増賃金の規定の適用が除外されます

米国の制度はあくまで割増賃金支払義務の適用除外に過ぎません。

ドイツ

ドイツでは、労働時間法にて規定されています。

同法には時間外労働への割増賃金制度はなく、代わりにある期間内で調整して結果的に一日8時間労働が成り立てばよいとしています。

医師長、公共部門において独立の人事権を持っている部門長、法定の管理的職員には労働時間法の対象外になります。

イギリス

労働時間の長さが測定されていないまたはあらかじめ決定されていない、もしくは労働者自身が決定できるなどの場合に、労働時間規制(深夜労働規定も含む)の適用が除外されます(労働時間規則20条1項ないし2項)。

この適用対象者の例としては、幹部管理職(managing executive)が想定されています。

フランス

フランスの労働時間規制の適用除外対象は経営幹部職員(労働法典L.212-15-1)といった人で、管理職に限定されています。

たとえば経営幹部職員に該当する場合、労働法典上の労働時間規制の適用を受けないことになりますが、年次有給休暇に関する規定は適用されます。

その他幹部職員の場合には、労働時間や日数を法律で制限しています。

諸外国と比べた日本の環境とは?

日本の企業において職務をベースにして人事管理しているところは、いまだ少数のようです。
ホワイトカラーエグゼンプション導入にあたり「職務を明確にできる」という要件が挙げられていますが、制度導入に必要とされる職務の明確化は簡単ではありません。

アメリカでは、労働者は特定分野における専門性を高めようと目指すため、能力を有する人は転職がしやすくなります。

転職のしやすい労働市場では、長時間労働の問題がある職場では優秀な社員は転職してしまうでしょう。そのため、企業として過酷な業務を強いることが少なくなります。

このようなことから日本と諸外国とでは労働環境を違うので、諸外国のホワイトカラーエグゼンプションを日本で実施することは難しく、さまざまな検討が必要になります。

ホワイトカラーエグゼンプションの展望

「ホワイトカラーエグゼンプション制度は、『日本にはなじまない』」という主張があります。

日本人労働者は、個人ではなくチームで仕事を行う傾向にあるということや、日本では成果主義の運用が上手くいっていないため、単なる賃下げで終わってしまう可能性が高いことから、まずは導入に慎重な意見が多く存在します。

ホワイトカラーエグゼンプションの導入判断基準

職務の範囲が明確に定められている労働者であること

使用者との間の書面による合意に基づき職務の範囲が明確に定められ、職務の範囲内で労働する労働者である必要があります。

年収が基準を上回る労働者であること

年収が、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1,075万円)以上である労働者です。

4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日を与えること

健康確保の観点から、使用者は健康管理時間(省令で定める「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した労働時間」の合計)を把握したうえで、これに基づく健康・福祉確保措置を講じることが必要です。

対象労働者の同意が必要なこと

制度導入には労使委員会の決議が必要ということが定められています。

ホワイトカラーエグゼンプションを導入にするには

「ホワイトカラーエグゼンプション」が導入されたときの影響として、人事制度の改定が必要になるということが一番懸念されています。日本で導入するのにも、透明性の高い評価制度が必要、業務の進捗状況やプロセスを評価する人事制度に改定しなければなりません。導入前の環境改善がいかになされるかが重要になりそうです。