ローカル5Gとは | 5G・Wi-Fiとの違い、免許取得方法

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記事の情報は2020-05-21時点のものです。

ローカル5Gとは通信事業者以外の、企業や自治体が個別に利用できる5Gネットワークです。5GやWi-Fiと比べて、セキュリティが高く汎用性もあるのが特徴です。地域活性化にも役立つローカル5Gの活用法を紹介します。
ローカル5Gとは | 5G・Wi-Fiとの違い、免許取得方法

ローカル5Gとは

ローカル5Gとは通信事業者以外の、企業や自治体が地域・産業のニーズに応じて個別に利用できる5Gネットワークです。携帯キャリアが提供する5Gとはシステムがやや異なります。

建物や土地の内部で自らネットワークを構築し、ネットワークを自己利用できる特徴があります。専門の業者にネットワーク構築を依頼すれば利用できます。

ローカル5Gの周波数

ローカル5Gの周波数帯は、4.6〜4.8GHzと28.2~29.1GHzです。なかでも28.2~28.3GHz帯は制度がすでに整備されており、免許の申請も2019年12月から受け付けています。実際に、富士通では富士通新川崎テクノロジースクエアにて、商用のローカル5Gが運用されています。

ローカル5Gのメリット

ローカル5Gのメリットは、セキュリティの確保された空間で独自の5Gを利用できる点です。

ものづくりであれば、生産現場の無線化や自動化が可能です。ヘルスケアでは、膨大な量のカルテをすばやく送信したり高精細な画像をやり取りしたりして、人手不足を解消できるでしょう。農業のインフラ整備や高齢者に配慮したまちづくりといった、地方創生の起爆剤としても期待されています。

ローカル5Gの活用事例

ローカル5Gの活用法として、ヘルスケアとものづくりを取りあげて紹介します。

ヘルスケア

ローカル5Gによって、患者の状態を離れた病棟から把握したり、精細な医療データを病院内でやりとりしたりできます。医者が患者の状態を地域のネットワークから確認できれば、患者の病院へ通う負担が軽減されます。病院での待ち時間減少にも役立つでしょう。

ものづくり

ローカル5Gによって、工場のケーブルレス化や高精度な映像解析が可能になります。これまで生産現場の自動化は、ネットワークの通信制限が主な問題となって進展していませんでした。しかし、ローカル5Gがあれば工場内の通信機能は改善され自動化へ一歩踏み出せるでしょう。

ローカル5Gと5Gの違い

ローカル5Gと5Gの違いをまとめます。共通している点は多いものの次のような点で異なります。

狭く・限定的な環境

5Gは、スマートフォンやタブレットにて利用します。データをすばやく送受信できる反面、使用用途は端末内でのアプリに限定される場合がほとんどです。

ローカル5Gは、特定のエリアにおいて接続できるシステムで使用されます。企業の用途に合わせてデバイスや機能を設定し、安全性の高いネットワークを構築します。限定された地域での通信は、現状Wi-Fiを利用していますが、ローカル5Gに置き換えれば安定かつ高品質な通信環境を構築可能です。

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セキュリティレベルが高い

5Gは、高速で無数の端末と接続できる反面リスクのあるデバイスとも接続しやすく、セキュリティの危険性が指摘されています。IoTによって多くの機器をネットワークに接続するのは便利であるのに対し、接続している数が多いだけに侵入された際の被害も甚大です。

ローカル5Gは、5Gとは切り離されており、外部のネットワークから影響を受けない場合が大半です。外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクは低いといえます。

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非常時に有効活用

ローカル5Gは非常時に対応した通信手段としても検討されています。雪害の発生する地域において、除雪車の位置情報や除雪状況をローカル5Gにて伝送し、町民に配信するといった運用が可能です。実際に福井県で実証実験が行われています。

ローカル5Gの組みこまれたドローンを利用し、登山者を見守るシステムが構築されています。空撮映像をリアルタイムに配信することで、遭難者の状況を把握し、迅速な救助活動につなげるという試みです。

ローカル5GとWi-Fiの違い

ローカル5GとWi-Fiの違いを解説します。両者は利用目的や利用方法、コストにおいて大きな違いがあります。

セキュリティに強い

Wi-Fiは、基本的にSSIDおよびパスワードで認証しますが、それらが漏えいした場合、敷地外でも電波が届けばアクセスされてしまいます。

ローカル5Gは設定をすれば敷地以外に電波が出ていきません。建物外、敷地外へ電波を漏えいしかねないWi-Fiに比べてセキュリティは高いです。

また、ローカル5GはAPN(Access Point Name)とパスワードでの認証に加え、SIMカードによる認証もあるため、部外者がネットワークに侵入することは困難です。電波の「ただ乗り」を防ぎやすく、広域のネットワーク環境でも安心して使用できます。

利用料金が高い

Wi-Fiの方がコストは安い場合が多いです。Wi-Fiのアクセスポイントは、高くても1台数十万円程度で販売されています。

一方、ローカル5Gの基地局は1台数百万円ほどかかります。他の設備も導入すると数千万円に達するケースもあるでしょう。規模の小さな設備や地域に設置する場合は、料金の高さがローカル5Gのネックとなりえます。

広範囲とも通信可能

ローカル5Gは特定の広範囲にて通信可能です。他方、Wi-Fiは企業の敷地内など狭い範囲でのみ使えます。ローカル5Gは1台の基地局で広範囲をカバーできるため、空港やスタジアムでの利用にも適しています。大容量の専用ネットワークを活かして、サービスを提供したい企業・団体におすすめです。

ローカル5Gの免許取得方法

ローカル5G事業者になるために必要な免許申請について簡単に紹介します。本記事では、地域の企業や団体がローカル5Gを利用するための免許について解説します。なお、解説する周波数帯は、先行して整備された28.2~28.3GHzです。

電気通信事業運営に該当する方や導入を本格的に検討されている方は総務省のガイドラインで詳細を確認してください。

1. 無線局の開設

ローカル5Gの免許を申請するには、次のような書類が必要です。

  • 28GHz帯の無線局開設手続
  • (必要に応じて)自営等BWAの無線局開設手続
  • 無線局事項書及び工事設計書
  • (自己土地利用の場合)当該エリアの範囲を示す図
  • (自己土地利用の場合)登記事項証明書
  • (システム構築の依頼を受けている場合)依頼状やその証明書類など

いつでも申請できるものの、資料を提出してから処理されるまでに1か月半程度かかるので注意しましょう。ちなみにBWAとは、広帯域移動無線アクセスシステムの略称です。

2. 無線従事者の要件

無線従事者として第三級陸上特殊無線技士の資格者を選任します。空中線電力が100Wを超える場合は、第一級陸上特殊無線技士の資格が必要です。

また、ローカル5Gの環境を構築する無線従事者は、導入予定の土地や建物の所有者、賃借権や借地権をもつ土地利用者、あるいは所有者からシステムの構築を依頼された事業者のいずれかでなくてはなりません。

3. 技術基準適合証明の適用

ローカル5Gの無線局は、特定無線設備として位置づけられます。そのため、基地局および端末設備(端末移動局)は、技術基準適合証明の対象です。電波法に基づいて、専門業者による特定無線設備の技術基準適合証明を受けましょう。

認証業務を行っている業者は、総務省の「電波利用ホームページ」にて確認してください。

4. ローカル5Gの免許人の範囲

ローカル5Gの免許は、基本的に携帯キャリアの親会社を除き、ほとんどの企業・団体が取得できます。携帯電話キャリアでも子会社や関連企業は免許人になれます。

ローカル5Gを利用するには相応の設備や申請、資格者が必要で、かなりの費用と時間がかかります。法的には小さな企業や個人でも免許を取得できるものの、実際に免許人になるには土地や技術をもっている地域企業や団体に限られるでしょう。

ローカル5Gを活用し効率化を図る

5Gの広がりとともに、注目され始めたローカル5Gについて解説しました。

ローカル5Gは簡単にいえば5Gを自営するもので、活用できれば生産性が向上します。ネットワークの活用で人手不足を解消したり仕事の精度を改善したりするのに役立つでしょう。ただし、利用には免許が必要なので総務省のガイドラインを参考にして検討しましょう。