富士キメラ総研は2日、企業向けSaaSおよびパッケージの国内市場を調査し、「ソフトウェアビジネス新市場 2017年版」にまとめた。
同社では、ソフトウェア市場は2021年度には2016年度比38.3%増の1兆6,265億円と予測している。
デジタル化、IT化によりビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きがさまざまな分野、企業で進んでおり、これが市場の拡大をけん引しているという。
国内市場は「働き方改革」推進に伴い拡大傾向、2021年には1.5兆円超え予想
(出典:ソフトウェアビジネス新市場 2017年版:ソフトウェアの国内市場規模推移グラフ)
上記の各分野でそれぞれ年平均成長率4%を超える伸びが予想される。
特に「働き方改革」の実現に向けた取り組みやセキュリティ対策によりコラボレーション系や基本ソフト系、また、デジタルデータを効率よく活用できるデジタルマーケティング系の伸びが大きい。
基本ソフト系はセキュリティ対策や「働き方改革」を支援するツールとしてデスクトップ仮想化ソフトが大きく伸びているとのこと。また、システムの開発・運用・保守の内製化への対応により高速開発支援ツールの導入が増えているという。
グループウェアは増加傾向、SaaS型の導入障壁の低さが理由か
コラボレーション系は、「働き方改革」実現のために既存のワークスタイル変革を進める企業が増えていると予測している。また、コラボレーション系で大きく伸びるとは次の3つ。
- グループウェア
- ワークフロー
- ファイル共有サービス
中でもグループウェアは近年、インターネット・イントラネット技術の向上に伴い、Webブラウザをクライアントアプリケーションに利用したシステムが主流となっているようだ。市場拡大のさらなる理由として同社は、パッケージ型からの移行や新規利用取り込んでいることが要因であると発表している。
2016年度 | 2021年度予測 | 2016年度比 | |
---|---|---|---|
パッケージ型 | 170億円 | 141億円 | 82.9% |
SaaS型 | 990億円 | 1,845億円 | 186.4% |
合計 | 1,160億円 | 1,986億円 | 171.2% |
(富士キメラ総研発表資料から作成)
(ネットワークを利用し、企業内での情報共有を目的とした非同期型コミュニケーションシステム製品を対象)
グループウェアが開発された当初は、企業がそれぞれの商習慣を重視していたため、カスタマイズ性の高いパッケージ型の利用が中心だったようだ。
しかし、導入時のハードルの低さから数年前よりSaaS型の利用が急増し、2016年度時点で85%を占めているとのこと。時間・場所を選ばないSaaS型の需要が今後も大幅に増加するとみられているようだ。
グループウェアのクラウドサービスは以下から。
API管理・運用ツールはほぼ10倍に、連携需要の増加が進む傾向
ソフトウェア間のやり取りを行うインターフェースであるAPI管理・運用ツールは、既存システムの生産性向上・自社内のシステム連携を目的に導入が進んだとのこと。複数システムを安全に連携できる点が受け入れられ、需要は増加しているという。
2016年度 | 2021年度予測 | 2016年度比 | |
---|---|---|---|
パッケージ型 | 21億円 | 200億円 | 9.5倍 |
SaaS型 | 4億円 | 37億円 | 9.3倍 |
合計 | 24億円 | 237億円 | 9.9倍 |
(富士キメラ総研発表資料から作成)
(APIの作成・配布・保守・監視・保護を目的とし、主機能としてバージョンやライフサイクルの管理機能をもつ製品を対象)
提供の形態は、2016年度時点でパッケージ型が約9割を占めている。そして、自社内の基幹システムにおけるAPI活用が積極的に進められており、基幹システムの多くはオンプレミス環境にあるため、パッケージ型の導入が中心となっているという。
それに比べSaaS型は、情報系システムやSoE(Systems of Engagement)などで、システムの標準化や、外部リソースを活用した新規ビジネスの創出を目的とした利用が主体であるとのこと。
プロセスの自動化や新規パートナーとの協業の立ち上げにおける負荷軽減などを目的とした企業間でのAPI連携が進むことで市場はさらに活性化するとみられる。
出典:『ソフトウェアビジネス新市場 2017年版』まとまる(2017/8/2発表 第17072号)
このように、今後はデジタルトランスフォーメーションのコア技術の一つとして市場が拡大していくという。