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人事考課とは?人事考課制度の目的と方法・運用のポイント

最終更新日:(記事の情報は現在から288日前のものです)
人事考課とは、社員の能力や業務成績、勤務態度などを一定の基準にもとづいて査定し、報酬や等級に反映させる制度です。人事考課と人事評価との違い、人事考課制度の目的と評価項目、導入と運用のポイント、人事考課表の書き方について解説します。

人事考課とは

人事考課とは、社員の能力や業務成績、勤務態度などを一定の基準にもとづいて査定し、報酬や等級に反映させる制度のことです。

人事考課は、次のような従業員の処遇に利用されます。

  • 賃金の決定
  • 昇進や昇給の決定
  • 配置転換
  • 能力開発・研修

人事考課は定期的に行うことが一般的で、半年または一年に一回のペースで実施する企業が多いです。

人事考課と人事評価の違い

人事考課と人事評価の意味に大きな違いはなく、両方を区別せずに使用している企業も多数あります。人事評価は、人事考課よりも大きな概念で、人事評価の中に人事考課が含まれているという見方もできます。

人事考課は、社員の昇給・昇格といった処遇を行うための人事制度を指し、とくに査定のレーティングに対して使われる場合が多いです。

人事評価制度については、次の記事で詳しく解説しています。

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人事考課の目的

人事考課の目的としては、次のようなものが挙げられます。

社員のモチベーション向上

人事考課には、社員のモチベーション向上を図り、企業の成長にプラスの影響を与える目的があります。

社員ごとに目標があれば、日々の仕事に意義を感じ、目標達成のためにモチベーション向上につながります。さらに人事考課の評価が上がると、社員の自信になり、会社への貢献度の向上も期待できるでしょう。

社員の能力・スキル向上

人事考課により、個人の不足しているスキルや能力を把握して、適切な社員教育や能力開発が実施可能です。社員の能力を上げることにより、生産性や業績の向上につながります。

人材配置の最適化

人事考課で、個人の適性を正しく判断できれば、より成果や生産性が見込める配置転換や人事異動が可能です。これにより、個人のモチベーションが上がり、退職リスクや離職率を減らす効果があります。

人材配置の最適化により、個人のやりがいやパフォーマンスが上がれば、企業の業績向上につながるでしょう。

人事考課の評価項目

人事考課の評価項目は、大きく分けて業績考課・能力効果・情意考課の3つの項目があります。

業績考課

業績考課とは、社員の目標達成度(MBO)をもとに個人の業務成績を査定することです。個人単位の目標達成率が向上することで、チームや組織全体への成果へと反映されていくことが目的です。

業績考課では、目標がどの程度達成できたかによって評価が決まります。業績までの過程も評価対象に入るため、最終目標だけでなく、目標達成に向けたパフォーマンスの動向も人事考課表に書く必要があります。

MBO(目標管理制度)については、次の記事で詳しく紹介しています。

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能力考課

能力考課とは、難易度の高い仕事の達成度や、業務課題への対応方法や結果により評価される項目です。社員の保有能力、発揮能力、潜在能力の3つから総合的に評価します。

必要とされる能力は担当する職務によって異なります。客観的な評価を行うためには、社内で職能に対する規定をしっかりと定め、それに則した査定をする必要があるので注意しましょう。

また、潜在能力については社員の将来性を表すものではあるものの、評価するには不確かな点もあるため、査定に加えない企業もあるため注意が必要です。

情意考課

情意考課とは、評価対象の社員がどの程度意欲をもって勤務しているか、どの程度会社のビジョンに沿った行動をしているかを査定するものです。

規律性、積極性、責任性、協調性といった要素から総合的に判断します。会社の理念を実現するには社員の協力が欠かせません。これを評価対象にすることで、社員の経営理念、ビジョンに共感する姿勢を養います。

人事考課の実施手順

次に、人事考課の実施手順について解説します。

(1)社員の目標設定

まず人事考課の期間内で達成すべき目標を社員が設定します。明確な目標ほど自己評価・上司による評価が客観的になり、人事考課の信頼性が増します。

(2)自己評価

社員が自身の目標の達成度や目標達成のためにどのように行動したかを評価します。自身の貢献度を客観視し、過大評価・過小評価せずに評価することが求められます。

(3)上長評価

社員の目標と実際の実力を踏まえ、上司が最終的に評価を下し、人事考課表や人事評価シートにコメントします。

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(4)フィードバック

上長が、達成できた点と不足点を社員にフィードバックします。人事考課でフィードバックをする目的は次の2点です。

  • 新しい目標を設定するため
  • 社員のモチベーションを維持・高めるため

これらの目的を達成するために、フィードバックは重要なプロセスです。

人事考課表の書き方

人事考課制度の運用においては、「人事考課表」・「人事考課シート」と呼ばれる帳票が使われています。社員と上司がそれぞれ人事考課表に記載し、その内容をもとに人事考課の査定を行います。

評価者が人事考課表を書く際のポイントは次のとおりです。

  • 具体的な事実や数字を引用して客観的に書く
  • プラス評価とマイナス部分のフィードバック

具体的な事実や数字を引用して客観的に書く

評価者は、業績考課、能力考課、情意考課の評価項目をもとに、社員の評価期間中の業績や目標達成度について、具体的な事実や数字を引用して客観的に書くようにします。

プラス評価とマイナス部分のフィードバック

評価者は人事考課表で、「部下を伸ばす視点を第一に」、前向きなプラス評を意識することが大切です。とくにマイナス部分についての記述は、否定的なダメ出しではなく、「こうすればさらに良くなる」という、相手の能力を引き出すようなフィードバックを心がける必要があります。

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人事評価システムを活用する

人事評価システムには、適正な人事考課表を作成するために役立つ機能が搭載されています。システム上でチームや個人の目標管理を行い、達成度の進捗や評価を記録することで、データにもとづく客観的な人事考課を可能にします。

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人事考課制度の構築のポイント

人事考課制度を構築する際には、何を評価するのか、どのように評価するのか、評価をどのように反映させるかという、3つの軸があります。それぞれ詳しく解説します。

何を評価するのか

人事考課の対象は、「成果の実現度(どれくらい目標を達成したか)」「発揮能力(どのように能力を発揮したか)」「服務態度(まじめに取り組んでいたか)」に分類できます。もちろん、実際にはよりわかりやすい目標に落とし込まなければなりません。

「成果の実現度」「発揮能力」については、各社員で個別に決めた方がよいでしょう。「服務態度」については、人事で一律に決めても問題ないと思われます。

どのように評価するのか

人事考課の査定は、主観が入ると評価エラーになりがちなので、客観的に評価できる仕組み作りが重要です。

評価をどのように反映させるか

人事考課の反映方法には、「賃金」「賞与」「配置転換」「教育訓練」といった処遇が考えられます。とくに賃金・賞与・配置転換は、評価基準を明確にしましょう。社員のモチベーションに大きく関わるからです。


人事評価制度の成功事例は、次の記事で詳しく紹介しています。

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人事考課で起きがちな評価エラー

評価エラーとは、人事考課の評価者の主観や感情によって評価のぶれが起きることです。人事考課は定性評価も含むので、同じ従業員に対してでも、上司によっては評価が変わる可能性があります。社会的マイノリティや労働組合といった、法律上禁止された差別や、極度にバランスを欠いた評価は違法だと認定されることもあるので十分注意しましょう。

意識的なエラー

意識的な評価エラーとしてまず考えられるのが、上司の個人的な好き嫌いや感情によって、意図的に評価を変えているエラーです。客観的な人事考課を妨げるので、必ず防止する必要があります。

無意識的なエラー

意図的に評価を上下しなくても、無意識的に評価エラーを発生させる場合もあります。典型的な無意識の評価エラーは次のとおりです。

ハロー効果

ハロー効果とは、評価対象者の特定の特徴に引きずられて、評価を歪める傾向のことです。たとえば、1つの優れた能力や経歴によって、他の能力も高めに評価してしまうケースが考えられます。

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寛大化傾向

部下思いの上司は、評価を甘めにつける傾向があります。これを寛大化傾向と呼びます。評価基準が曖昧なときに発生しがちです。

中心化傾向

中心化傾向とは、良し悪しの評価をせずに、平均的な評価をする傾向です。考課者が評価対象者をよく知らなかったり、評価に自信がなかったりすると起こります。

厳格化傾向

寛大化傾向と反対に厳しめに評価する傾向を、厳格化傾向と呼びます。寛大化傾向と同様、評価基準が曖昧なときに発生しがちです。

対比誤差

人事考課は絶対評価ですが、自分自身や他の部下と比較して評価をするエラーのことです。絶対評価なのについ相対評価してしまうことを、対比誤差と呼びます。

論理的誤謬(ごびゅう)

評価者が評価項目について理解しておらず、独自解釈して、評価を歪める評価エラーを論理的誤謬と呼びます。

人事考課制度を運用する際のポイント

このような人事考課の評価エラーを防いで、人事考課制度を適切に運用するためには、どうしたらよいのでしょうか。

評価基準の明確化

一番重要なのは、評価基準の明確化です。評価基準を明確にすれば、寛大化傾向や厳格化傾向といった評価エラーを防止できます。

評価根拠の明確化

根拠のある評価も重要です。部下を観察していない上司が、人事考課で査定するとハロー効果や中心化傾向、対比誤差が頻繁に発生します。人事考課制度で評価に根拠を求めるようにすれば、これらの評価エラーを防止できます。

個人のバイアスを防ぐ試み

さらに、人事考課を行う側も自身がどのような評価をしがちなのか、どのような価値観で評価しているのか俯瞰しながら人事考課を行いましょう。複数人で評価基準を共有したり、人事考課の研修を実施したりして、個人のバイアスをなくすことが有効です。

複数の評価者による「360度評価(多面評価)」の実施や、1on1ミーティングの実施も効果的です。

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最適な人事考課制度で人材と会社の成長を

人事考課制度には、目標設定、自己評価、上司の評価、フィードバックの流れがあります。業務考課、能力考課、情意考課の3点が評価項目になります。

人事考課表で、評価を部下に報告する際には、言葉選びには気をつけましょう。もちろん、足りない要素をしっかり伝えることは大切ですが、それが部下のモチベーション向上につながるかどうかを判断する必要があります。人材を育てる人事考課制度を正しく運用し、社員と会社を成長させましょう。

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