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アンゾフの成長マトリックスとは?成長戦略のフレームワーク

最終更新日:(記事の情報は現在から2390日前のものです)
企業の成長戦略立案に役立つフレームワークであるアンゾフの成長マトリックスについて、基本的なところから事例を交えて説明していきます。また、他にも代表的な戦略フレームワークついても、いくつか紹介します。

本記事では、企業の商品戦略を考える上で昔から取り入れられてきたフレームワークであるアンゾフの成長マトリックスについて説明します。

いまや定番の考え方であるため、大学の経営学部などでは必ず教えられますが、マーケティングに興味のない人には今ひとつピンとこないかもしません。今回はそういった人のために、基本から一通り説明していきます。

アンゾフの成長マトリックスとは

アンゾフの成長マトリックスについて知るために、まずはこのフレームワークを生み出したイゴール・アンゾフについて、彼の活躍した時代とともに簡単に紹介しましょう。フレームワーク自体の詳細な説明は、その後にしていきます。

イゴール・アンゾフとは

イゴール・アンゾフは1918年にロシア生まれた経営学者です。『企業戦略論』を、『経営戦略論』を発表し、それまで軍事用語として扱われていた「戦略」という概念を取り入れた経営論が有名です。

彼は、これまで曖昧に考えられていた商売上のライバルを「競合」として明確に定義しました。そして、長期的な計画の下での戦略的な経営が、長期的な繁栄には必要だと説いた経営学者です。今でも多くの経営者が彼の考え方を参考にしています。

アンゾフの成長マトリックスとは

彼が『経営戦略論』のなかで説いたのが、今では企業経営者やマーケターにとってなじみ深い「成長マトリックス」です。人によっては「成長ベクトル」や「事業マトリクス」などとも呼んでいるようです。

成長マトリックスは企業の事業領域の位置づけを明確にして、各々の事業のポジションに最適な戦略を提示するものです。このマトリックスはそれぞれ2つずつの行と列で構成され、一方の軸で「既存市場」と「新規市場」を表し、もう一方の軸で自社製品を「既存」と「新規」に分けてポジショニングします。それによって企業の成長戦略を簡素に表現しているのです。

そのため成長マトリックスは「製品・市場マトリックス」とも呼ばれています。以下でこれら4つの項目(象限)の一つひとつについて、簡単に説明していきましょう。

4つの成長の考え方

市場への浸透

成長マトリックスで「既存市場」と「既存製品」が交わる象限は市場への浸透を表します。この場合、既に販売している商品の売上を成長させていくために、市場に製品を浸透させるための戦略を立てることを推奨しています。ただし、既に既存市場が飽和状態にある場合、さらに当該製品を浸透させてマーケットシェアを高める施策は非常に難度の高いものになります。

市場の開拓

「新規市場」と「既存商品」が交わる象限は「市場に開拓」を表します。この場合、新しい市場に既存商品を開拓していくための戦略を構築します。具体的には、これまで無視していたターゲット顧客や販路について模索していくことになります。新しい地域に試験的に店舗を出すようなケースも考えられるでしょう。

製品の開発

「既存市場」と「新規製品」が交わる象限は「製品の開発」表します。この場合、既存の市場に新しい製品を開発して投入するための戦略を練ります。関連製品を導入してみたり、新機能を付加したり、全く新しいコンセプトの製品の開発を検討します。製品自体は新しいですが、あくまでも既存客にどうやって売り込むかを考えます。

多角化

成長マトリックスにおいて、最も複雑な戦略が必要とされるといっても過言ではないのが「多角化」です。新しい市場に新しい製品を投入します。多角化戦略を成功させるには、新市場に関する徹底したリサーチと経営資源が必要になるのが普通です。

また、アンゾフはこの多角化戦略について、具体的に以下の4つのタイプがあると述べています。

水平型多角化

同じ業種、同じ分野で水平的に事業を拡大するパターンです。自動車販売業者がレンタカー事業に進出するといったケースが考えられます。

垂直型多角化

バリューチェーンの上流あるいは下流へと事業を展開するパターンです。製品を製造しているなら販売事業に進出したり、販売しているなら生産事業へと展開させるケースがあります。

集中型多角化

既存製品に近い種類の製品を開発して新市場への開拓を狙います。PCメーカーが音楽プレイヤー市場に進出した有名な例があります。

コングロマリット型

その企業にとって全く新しい製品を開発し、新しい市場に打って出ようとするパターンです。当然、大きなリスクを伴いますが、これまで流通業者やIT業者が銀行業に進出した例などがあります。

4つの成長事例

それでは、成長マトリックスのそれぞれの象限における成長事例について簡単に紹介します。

既存の市場×既存の製品(市場への浸透)

市場浸透戦略の事例としては、その企業でしか開発できないような専門性の高い製品を開発して、既存客のロイヤルティを高めるという方法などが考えられます。

アウトドア商品を開発・販売しているメーカーが、顧客の要望を汲みながらアフターサービスを強化することによって売上に繋げるというアプローチが一例として挙げられます。

新規の市場×既存の製品(市場の開拓)

市場開拓には、新しい場所を開拓するというアプローチや顧客セグメントを変更するという方法などが考えられます。前者は県外に店舗を出店するレストラン、後者は玩具メーカーが子供向けの商品にアレンジを加えて大人向けに販売するといった例が挙げられるでしょう。

既存の市場×新規の製品(製品の開発)

既存の市場に新しい製品をどんどん売り出していきます。毎年のように新商品が投入される季節モノのビールやアイスクリームなどの事業がこれに当てはまるでしょう。顧客ニーズの変化を機敏に捉え、商品へと繁栄させる努力が欠かせません。

新規の市場×新規の製品(多角化)

全く新しい市場に新しい製品を投入するわけですから、非常にリスキーで難度の高い方法となります。ですがITベンチャー企業が飲食店の経営を行ったり、エンターテイメント事業に進出するといった事例がたくさんあります。特にフットワークの軽いベンチャー企業では珍しくない手法です。

その他経営戦略フレームワーク

成長マトリックス以外にも、経営戦略の構築に役立つフレームワークがたくさんあります。蛇足になりますが、最後にそういった汎用フレームワークのなかから、特に有名なものをいくつか簡単に紹介します。

マイケル・ポーターの競争戦略

その名の通り、ハーバード大学教授のマイケル・ポーターが提唱した「競争の戦略」の類型です。企業が自らの事業戦略を構築するための基礎となる3つの競争戦略をまとめたものになります。

具体的には「コストーリーダーシップ戦略」「集中化戦略」「差別化戦略」の3つであり、特に「差別化」という概念は有名でしょう。競争の戦略の概略を知らなくても差別化については何となく知っているという人も多いのではないでしょうか?この競争戦略のフレームワークを自社の事業に適用することで、どこに自らの競争優位を確立すればよいかが分かります。

SWOT分析

自社の事業環境がどういう状態にあるのかを俯瞰し、自らの強みと弱みを明確にすることを目的とするのがSWOT分析です。これも成長マトリックス同様、縦横それぞれ2つの軸を用意し、自社を取り巻く外部環境と内部環境、そして強みと弱みを抽出して当て嵌めていきます。

これによって自らの強みをもって市場にニーズに応え、脅威を回避するための施策を考えます。逆に自社の弱みに市場における脅威要因がかち合わないように何を回避するべきかを明らかにします。

ブルーオーシャン戦略

これは比較的新しいフレームワークとして登場した考え方ですが、非常に有用ですので紹介します。元々はフランスの経営大学院であるInseadの教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱されました。

同戦略では市場が飽和状態となり、限られた顧客を巡って争う様子をレッドオーシャンと呼称し、そういった市場から抜け出して未開拓で非常に魅力的なブルーオーシャンを開拓することを目的とし、そのための戦略フレームワークを提唱しています。

まず業界における自分自身や他社の取り組みを整理し、現状における競争要因に対してどうすればブルーオーシャンを確立できるかどうかを検討します。具体的には「増やすべき要素」「減らすべき要素」「加えるべき要素」「取り除くべき要素」をそれぞれ明らかにするためのアクション・マトリクスを作成することになります。

さらに戦略キャンバスによって顧客が求めている価値や要素を明確にします。そこで自社や競合の提供している商品・サービスと顧客が求めている価値やメリットとの整合やギャップを明らかにし、他社の提供していないポイントで自社の優位を確立できる点があれば、そこがブルーオーシャン創造の鍵となるのです。

単純な差別化戦略ではなく、あくまでも高い付加価値を実現する新市場の創造というのがポイントです。

ブルーオーシャン戦略については、次の記事を参考にしてください。

ブルーオーシャン戦略とは | 用語解説・事例紹介
ブルーオーシャン戦略とは、「競合がいない市場でビジネスをする戦略」のことです。そこで今回はブルーオーシャン戦略の詳...
詳細を見る

アンゾフの成長マトリックスを活用しよう!

アンゾフの成長マトリックスについて、アンゾフ自身の紹介からフレームワークの説明、そしてそれぞれのマトリックスに当てはまる事例についても紹介してきました。

アンゾフのマトリックスは今では常識です。しかし、常識であるがゆえに今一度見直すと良いかもしれません。

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