女性活躍推進法とは | 働き方改革で注目の法律を徹底解説

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

女性活躍推進法とは、女性が活躍できるように雇用主が推進することを義務化した法律です。それによって日本の労働者会はどう変化したのかを検証。えるぼし認定で得られるメリットとくるみんについても解説します。
女性活躍推進法とは | 働き方改革で注目の法律を徹底解説

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法とは、301人以上の労働者を雇用する国や地方自治体、民間企業を対象に、仕事において女性が活躍できるよう、雇用主が推進していくことを義務化した法律で、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に冠する法律」といいます。
2015年8月28日に国会で成立、2016年4月から施行されました。具体的な目的は次のものです。

自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

管理職での女性比率、男女間での平均勤続年数差などを把握し、女性が活躍するための自社課題を分析します。

数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定と情報の周知・公表

課題を解決するための行動計画を、具体的な数値目標・取り組みを盛り込んで策定し、社内での情報周知、外部への公表を行います。

数値目標と取組を盛り込んだ行動計画を労働局へ届出

策定した行動計画を労働局へ届け出ます。

以上の3項目を行っていくことが求められ、労働者の雇用が300人以下の事業主に対しては、努力義務とされています。

女性活躍推進法が施行された背景

女性活躍推進法が施行された背景には、少子高齢化に伴う将来的な労働力不足が懸念される中、多様な人材を活用、なかでも、大きな潜在能力を持つ女性を活用する機運が高まってきていることが挙げられます。

しかし、1985年の男女雇用機会均等法以降、さまざまな施策が行われてきたにもかかわらず、職場における女性の地位や待遇の改善、能力の活用が行われてきたとはいいがたく、次のような課題も多いのが現状です。

  • 育児といった事情で働けない女性の数は300万人
  • 6割の女性が第一子出産を機に離職
  • 女性労働者における非正規雇用の割合は56.6%
  • 女性の管理職2020年30%目標に対し現実は11.2%で、世界的にも低水準

こうした課題を「企業単位で把握して分析し、継続的な改善を行うことによって、女性の一層の活躍を推進する」という目的で施行されたのが女性活躍推進法ということになります。

女性活躍推進法で社会はどう変化したのか

日本には、301人以上の労働者を雇用する企業が、少なくとも15,000社あるといわれていますが、女性活躍推進法が施行されて以来、その6割を超える約9,500社が行動計画を労働局に届け出ています。

この行動計画は、厚生労働省のWebサイト「女性の活躍推進企業データベース」で自由な閲覧が可能となっており、逆にいうと、ここに情報が掲載されていない企業は「女性の活躍に積極的ではない」という見方をされる危険があるといえます。

女性活躍推進法には罰則規定が存在しませんが、優秀な人材を確保したい企業にとっては、こうした風評が起こるリスクは避けたいはずであり、行動計画を未届けの企業も、順次その策定と届出を行うでしょう。

また、各企業が届け出ている行動計画には「短時間正社員制度の導入」「非正規社員から正規社員への積極的な登用」などがあり、女性が活躍できる社会へと変化しつつあることが見て取れます。

その他、女性の能力を積極的に活用して活躍してもらおうとする取り組みも行われています。

女性のキャリア形成意欲促進

男性にとっての昇進、キャリア形成は無意識に意識するもの、いわば当たり前のことですが、女性の場合は、自身の昇進やキャリア形成をイメージする人が少ない、というデータがあります。

これにはさまざまな理由が考えられますが、いずれにしても、優秀な女性がキャリア形成への意欲を持たないということは、企業にとっても機会損失であるといえるでしょう。

阪急電鉄株式会社では、この課題に取り組むため「先輩従業員である女性管理職が、これまでの経験やキャリア形成を話す交流会」や「育児休職者の復職を支援するセミナー」などを実施しており、女性自身がキャリア形成に意欲を持てる機会づくりを行っています。

管理職の意識改革で女性の能力アップ

女性がキャリア形成に意欲を持てない理由のひとつに、管理職側が女性の能力を理解できず、管理者候補としての教育や育成を行ってこなかった、という側面があるでしょう。
女性に限らず、上司からの期待が感じられなければ、モチベーションにつながらないものです。

女性活躍推進法が施行される以前から、女性の活躍推進を進めていた東急リバブルでは、この課題に早くから気付いており「約500人の管理職に向けたダイバーシティマネジメントセミナー」を実施する他「2年目以降の女性社員全員に期待を伝えるポジティブアクションセミナー」も実施、双方のケアを行うことにより、コース転換制度を使って、一般職から総合職への転換を希望する女性が5倍以上になるなど、成果をあげています。

出産・育児サポート

女性がキャリア形成に意欲を持てない最大の要因は出産、およびそれに伴う育児だといえるでしょう。

さくら情報システム株式会社では、早くから育児休業制度や育児短時間勤務制度が整備されており、さらに「在宅勤務など時間成約のある社員の柔軟な働き方支援検討」および実施を通して、女性の活躍を支援、これによって、ほとんどの女性社員が出産・育児を経た復職を行うなど、成果をあげています。

これらの取り組みは、どれかひとつということでなく、複合的に実施することによって大きな成果が期待でき、実際、上述した企業はすべての取り組みを行っています。

「えるぼし」とは

女性活躍推進法では、女性の活躍に関する課題を具体的な行動計画として策定・公表・届出することを義務付けていますが、この行動計画に基づく取り組みが優秀な結果であった場合、厚生労働大臣から「えるぼし」認定を受けられます。

上述した取り組みで紹介した中にも「えるぼし」認定されている企業がありますが、「L」と「星」をあしらったそのマークは、女性へのエールと、星のように輝く女性が増えて欲しい、という願いが込められているそうです。

それでは、具体的にえるぼし認定を受けるということは、どのようなことを意味するのでしょうか。

「えるぼし」認定を受けるメリット

えるぼし認定された企業には、次のようなメリットがあります。

  • 国の公共調達の入札時に加点評価される
  • えるぼしマークを自社製品に盛り込める
  • 女性の活躍を推進する優良企業としてのイメージアップ

女性の活躍というキーワードは、社会的な関心事になったともいえるので、えるぼし認定は企業イメージアップにつながるだけでなく、それによって優秀な人材を集めやすくなるということを意味します。

また、公共調達時の加点評価は、ビジネス面でも大きなメリットといえるでしょう。

「えるぼし」認定を受けるには

えるぼし認定を受けるには、下記の5項目のうち、1つ以上の基準を満たす必要があります。

  • 採用:採用時に男女の競争率が同程度
  • 継続就業:男女間の平均勤続年数が同程度、もしくは現在も働いている、10年前の新卒採用者が男女間の比率で同程度
  • 労働時間などの働き方:法廷時間外労働と法定休日労働時間の合計平均がすべての月で45時間未満
  • 管理職比率:女性の管理職に占める割合が産業毎の平均以上、もしくは直近3年で課長級に昇進した労働者の割合が男女間で同程度
  • 多彩なキャリアコース:女性の非正規から正規への転換、正規への再雇用などが整備されている

また、えるぼし認定には3段階のステップがあり、1つまたは2つを満たす場合は「星1つのえるぼし認定」3つまたは4つを満たす場合は「星2つのえるぼし認定」5つすべてを満たす場合は「星3つのえるぼし認定」となっています。

「くるみん」とは

女性活躍推進法とは直接関係しませんが、女性の活躍を推進するものに「くるみん」認定があります。
これは、次世代育成支援対策推進法によるもので、えるぼし認定同様、具体的な行動計画を策定した上で、目標達成などの要件を満たした場合、「子育てサポート企業」として「くるみん」認定を受けられます。

くるみん認定には2段階のステップがあり、「くるみん認定」と「プラチナくるみん認定」にわかれています。

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「くるみん」認定を受けるメリット

くるみん認定を受けた企業は「くるみんマーク」を自社製品や広告、求人票に使用が可能となり、子育てサポート企業をアピールできます

これにより、えるぼしマーク同様、企業イメージアップおよび、それによって優秀な人材を集めやすくなります。

「くるみん」認定を受けるには

くるみん認定を受けるには、9つの認定基準すべてを満たす必要があります
具体的には「75%以上の女性社員が育児休暇を取得」「育児短時間勤務制度や在宅勤務制度の整備」などが挙げられますが、男性の育休取得や育児目的の休暇も対象となっています。

これらがより厳しくなった認定基準を持つのがプラチナくるみん認定になります。

女性活躍推進のために継続した取り組みを

将来的な労働人口の減少予測や、多彩な働き方を容認する労働環境の変化により、女性が働きやすい社会になりつつある現状の中、女性活躍推進法も一定の効果を上げていると思われます。

しかし、女性活躍推進法は10年間の時限法になっており、各企業が行う行動計画に基づいた取り組みは、期限内に成果を出す必要があるといえます。
また、女性の活躍推進に消極的な企業の場合は、期限が過ぎると、なし崩し的に元の状態に戻ってしまうかもしれません。

女性の活躍を欧米並みの水準にするには、継続した取り組みが必要であり、それに伴う法整備も、継続したものにしていく必要があるでしょう。