働き方改革実行計画とは | 9つのテーマに沿った政府改革案

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

働き方改革実行計画とは、労働参加率向上、労働生産性向上、非正規の待遇改善、ワークライフバランス実現などを目的に、政府主導の働き方改革実現会議で決定された計画です。その計画の背景にはどのような現実があったのか、9つのテーマとともに解説します。
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働き方改革実行計画とは

働き方改革とは、女性を含む日本人の労働参加率向上、労働生産性向上、非正規労働者の待遇改善、ワークライフバランスの実現などを目的に、政府主導のもと、日本で働くということに対する在り方を、企業文化を含めて改革していこうとするものです。

この働き方改革の実行を計画・検討するため、2016年9月、安倍首相を議長とした働き方改革実現会議を設置、全10回に渡って行われた議論を経て、2017年3月28日に決定されたのが「働き方改革実行計画」です。

この働き方改革実行計画には、テーマとなる9つの分野それぞれに改革への方針が示されており、今後は計画に沿った関連法案の審議、成立を目指すことになります。

働き方改革実行計画が必要になった背景

働き方改革は、日本の労働者が抱える課題「賃金の処遇改善」「時間・場所などの制約の克服」「キャリアの構築」を解決することを主眼とします。背景には、次の日本の労働における問題をあげられるでしょう。

  • 少子高齢化・労働人口減少
  • 長時間労働問題
  • 低い労働生産性

つまり、高齢化による労働者リタイアと、少子化が進行することによる労働人口の減少、36協定をはじめとした労働基準法を超える長時間労働、それにもかかわらず、OECD平均を下回る低い労働生産性という、日本が労働において抱えるさまざまな問題があり、それを解決するために働き方改革実行計画が必須の状況となっているのです。

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働き方改革実現会議

この働き方改革実行計画を具体化するために設置されたのが「働き方改革実現会議」です。

働き方改革実現会議の構成メンバーは、労働者の立場に立った最良の具体案を検討するにあたり、多種多様な意見を必要としたため、議長の安倍首相をはじめとした関係閣僚8名の他、有識者、一般企業経営者、日本労働組合総連合会会長の神津氏を含む、15名とされました。

以降、2016年9月27日に開催された第1回会議を皮切りに、全10回におよぶ議論を経て具体化された働き方改革実行計画は、2017年3月28日に実行が決定されたのです。

働き方改革実行計画の概要

労働における「3つの課題」を「9つのテーマ」に分け、それぞれの分野での改革方針を、ロードマップにしたがって実行すること、これが働き方改革実行計画の概要です。

具体的な改革内容を9つのテーマに沿って見ていきましょう。

(1)非正規雇用の処遇改善

計画では、日本の労働生産性向上を阻害する要因として、非正規雇用と正規雇用の間に存在する合理性のない待遇差が挙げられていますが、これを是正して「同一労働同一賃金」を実現するため、「労働契約法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」の法改正が計画されています。

これにより、従来、対象外であった期間契約労働者も待遇差の説明義務対象とされ、正規雇用以外の雇用者に対し、事業者が待遇差の理由を説明することが義務化されます。

労働派遣法について詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

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(2)賃金引き上げ・労働生産性向上

バブル崩壊やリーマンショックの教訓からか、景気が穏やかに回復している現在でも、内部留保の拡大に努め、国内投資や人件費を抑制する企業が少なくありません。国民の7割が景気を実感できず、労働生産性が向上しない要因はここにあります。

これを是正して年率3%程度の賃金引き上げ・労働生産性向上を実現するため、税制の整備と同時に、生産性向上と賃上げを実現した企業に対する助成金制度の創出を計画しています。

(3)長時間労働の是正

労働者個別の事情にあわせた柔軟な働き方の実現や、労働者の健康確保には、長時間労働を是正することが必須となります。

このため、長時間労働の一因にもなる36協定に罰則付き上限規定を制定する、過重労働が認められた企業への立入調査・指導を行うなどが計画されていますが、時間外労働の上限に関しては賛否両論がありまだまだ紆余曲折がありそうです。

(4)転職・再就職支援

戦後の日本では長らく終身雇用制度が守られてきたため、転職がキャリアアップと捉えられる欧米と異なり、新卒以外の転職・再就職が不利になる場合が多く、採用機会の拡大が課題とされてきました。

これを解決するため、転職者受け入れ促進の指針策定、年齢を問わない能力評価人事システムの奨励・助成が計画されており、これによって企業側でも、変化の激しいビジネス環境の中、必要な人材を確保できるようになります。

(5)柔軟な働き方

日本では在宅によるテレワーク、兼業や副業を認めている企業が極めて少なく、労働者個別の事情にあわせて労働に参加するという、柔軟な働き方が困難な状況といえます。

これを解決するため、雇用契約のあるなしに関わらずテレワークを普及させるためのガイドライン制定、労働時間管理や健康管理、労災保険給付を含めた兼業・副業の在り方ガイドライン策定、が進められていきます。

(6)女性・若者の活躍

結婚・出産・子育てを機に離職して再就職がままならない女性や、就職氷河期に非正規となり正規雇用が難しい若者が多いという日本の現状があり、労働力を充分活用しているとはいえません。

この状況を打破するため、女性活躍推進法の制定が行われ、配偶者控除の引き上げが計画されるほか、同一賃金同一労働の制度を元にした、若者への集中的な支援が行われます。

(7)高齢者の就業促進

少子高齢化の進行で高齢者の人口が増える一方、60代の労働人口は急激に減少しています。医療の発達により、健康寿命の伸びた日本においては、高齢者の就業促進が労働人口確保のうえでもっとも有力視されています。

具体的には、定年延長や継続雇用延長を目的としたマニュアルや事例の作成、助成措置の強化を通じて、企業への働きかけを行っていきます。

(8)子育て・介護と仕事の両立

子育てによる離職、介護による離職をせざるを得ない現状が、日本ではまだまだ存在します。これによって労働者のキャリア形成が中断されてしまうだけでなく、労働参加率の減少にもつながってしまいます。

これを解決して、子育て・介護などと仕事を両立させるために、最長2歳までの育児休業取得を可能とする育児休業法の改正が行われ、介護離職ゼロを目指した介護職員の処遇改善を計画しています。

(9)外国人材受け入れ

経済のグローバル化が進み、世界が競争相手となる現在では、イノベーションによって日本経済を活性化させるため、高度な技術や知識を持った外国人材を受け入れ、労働生産性を向上させていく必要があります。

そのため、高度外国人材グリーンカードを創設し、資格在留期間を大幅に短縮することが計画されているほか、それ以外の外国人材受け入れに関しても検討を進めていく予定です。

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企業トップを巻き込んだ労働環境の変革を

経済のグローバル化が進展する中、一部では日本企業の終身雇用制度は崩壊したと見られています。しかし、実際には年功序列型の評価システムは依然として継続されており、正しい能力評価とそれに見合った対価を労働者が受けているとはいえません。

このような状況が、雇用形態の中途半端な欧米化を招き、非正規雇用の拡大を許したといえないでしょうか。

政府主導の働き方改革実行計画では、さまざまな問題を分析したうえで、法整備を含めた対策が盛り込まれていますが、なによりも企業トップを巻き込み、日本全体で労働環境に変革をもたらすことを考えていく必要があるでしょう。

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