介護ロボットの導入メリット | 現状と今後の課題とは

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

高齢化が進む現状において介護ロボットは需要が高まっています。しかし、介護というヒトとの対話が必要な場でロボットが使われることについては激しい議論がされています。導入するメリットを中心に現状と課題を解説します。
介護ロボットの導入メリット | 現状と今後の課題とは

介護ロボットとは

介護ロボットとは、歩行や食事などの介護される側の自立を助けたり、入浴や車いすへの移乗などの介護する側の仕事を支援したりするロボットです。

介護ロボットは、装着して体の動きを支援するパワードスーツや、排泄を支援するトイレや、ベッドや車椅子、風呂などへの移乗介助ロボット、人間型のコミュニケーションロボットなど、種類はさまざまです。

また介護ロボットという表現には法的な定義がなく、介護ロボットとして紹介されたているものでも「医療機器」「福祉機器」「介護機器」に分類される場合もあります。

介護ロボットの現状

日本の人口の高齢化は、世界でもっとも低い出生率と最も高い平均余命の結果が生み出すものであり、現在日本は超高齢化社会にあたります。

そして、介護職の人手が足りていないため、介護ロボットの需要は高いものとなっています。今後も高齢化が進んでいくことを考えると、その需要はさらに高まっていくでしょう。

そこで、経済産業省と厚生労働省は、2012年(平成24)に「ロボット技術の介護利用における重点分野(※次の項目で説明)」を策定し、翌年の2013年(平成25)から国が本格的に介護ロボットの開発に対して積極的な支援をはじめました。しかし、その支援を受け、介護ロボットの開発は進んでいるにもかかわらず、一般的にはあまり普及しているとは言えないのが現状です。

その理由としては、介護ロボットができるのは単純な作業のみであり、要介護者一人を任せられないということ、開発されている技術と介護者や要介護者のニーズがかけ離れているということなどが挙げられます。

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「ロボット技術の介護利用における重点分野」とは

介護者や要介護者のニーズに応えるために、国は介護ロボット技術の特に重点的に扱う項目をリスト化しました。一番最新のものでは、ロボット技術の介護利用における重点分野として、2013年(平成26)に1分野5項目を追加し、合計で6分野13項目となります。

1. 移乗介助

  • ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
  • ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

2. 移動支援

  • 高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
  • 高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
  • 高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器

3. 排泄支援

  • 排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
  • ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
  • ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器

4. 見守り・コミュニケーション

  • 介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • 在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • 高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器

5. 入浴支援

ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

6. 介護業務支援

ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それをもとに、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器

介護ロボットが抱える課題「愛」がない問題

介護ロボットを導入しない理由として挙げられるのは次のようなものです。

  • ロボットでは人の繊細心に気づけないから
  • 価格が高いから
  • 機器の扱いが難しそうだから
  • 補助制度などが煩雑だから

そしてこのような理由を持つほとんどが今後も導入する予定はないとしています。

はたして介護はロボットがやるべきなのでしょうか。

上記のように、介護ロボットを導入しない理由で、まず考えなくてはならないのが、ロボットでは人の繊細な心に気づけないから、という心理的な観点です。これにはロボットと人間の大きな違いである「愛」の有無が問題となってきます。確かに介護の場においては人と人との間に生まれる「愛」が一番重要になるかと思われます。

介護者と要介護者の間に生まれる会話にはロボットとの会話とは違った温かみが感じられ、その温かみは要介護者の心を和ませるものとなっています。つまり、愛がない介護ロボットは、要介護者にとってニーズがないものと言わざるを得ないでしょう。

しかしその一方で、「むしろ人間のほうが嫌な事がある。羞恥に関わる部分。自分はやってるけれどオムツ交換や入浴を他者に直接見られる触られるのは恥ずかしい」という意見も見受けられるため、介護ロボットのニーズは人それぞれ違い、開発が難しくなっています。

介護ロボットを導入するメリット

介護ロボットの開発は難しいものであると記載したので、介護ロボットは導入しないほうがいいと考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、介護ロボットを導入することで、さまざまなメリットを得られます。

介護者の負担を減らす

介護者は、要介護者を支えながら歩いたり、抱きかかえて移動させたりなどをするため、身体的に負担がかかります。そこで介護ロボットを用いることで、そのような身体的な負担を解消できます。

要介護者のプライベートを保護する

要介護者の中には羞恥に関わるプライベートな部分を介護者にさらすのは恥ずかしいという声もあるということは上述しました。このような要介護者が恥ずかしいと思う部分を介護ロボットが補うことによって、プライベートを保護でき、要介護者の心理的負担を除去できるのです。

人件費を削減できる

介護者の人手が足りていない現状においてはどうしても人件費が高くなってしまいます。そこで、介護ロボットを用いることで、介護者の作業が減って作業効率が上がり、その結果人手不足解消や人件費の削減を実現できます。

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介護は介護者と介護ロボットの協力体制で!

いかがでしたでしょうか。介護ロボットについて理解いただけましたか?

介護ロボットは高齢化が進むにつれて開発が進んでいる一方、介護者や要介護者のニーズを忠実に再現できていないという課題があります。また、介護ロボットを導入することで得られるメリットは大きいものであるため、導入を進めたいという考えがある中で、介護ロボットでは愛がないから人間の介護を任せるのは難しいという声もあります。

そこで、代替できる作業はロボットに任せ、人らしい温かさを要求する部分を人間がやるという、作業を協力体制でやる形が一番、介護者・要介護者のニーズに沿った介護体制を実現できるのではないでしょうか。