育児休暇取得率の現状 | 男性の取得率が低い原因と改善策を探る

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記事の情報は2020-02-20時点のものです。

女性の社会進出とともに注目される育児休業制度。しかし「パタハラ」や企業環境、経済的理由などから、男性取得率はまだまだ低い現状があります。「なんちゃって育休」なる言葉もうまれる現状をふまえ、男性の育児休暇取得率アップのための改善策を解説します。
育児休暇取得率の現状 | 男性の取得率が低い原因と改善策を探る

育児休暇取得率について

育児休暇取得率とは

育児休暇取得率とは、調査した年に子どもが生まれた人のうち、育児休暇を取った人の割合です。これには配偶者が出産した男性も含み、出産を機に仕事を辞めてしまった方や、フリーランスの方などは含まれていません。

背景

育児・介護休業法が制定され、平成29年10月1日からは最長2歳まで育児休業の再延長ができるようになりました。

今後さらに育児休業、育児休暇をとる人は増えるとされており、企業にも「両立支援の取り組み」が求められています。

また育児休暇が「とりやすい=働きやすい」企業として、企業価値に関しても重要なファクターであると考えられています。

育児休業の制度

育児・介護休業法により、企業としても育児・介護休業規程などを定めることが求めれています。具体的には、社員の育児休業、育児休暇、子が3歳の誕生日を迎えるまでの育児短時間勤務、育児中の社員の申請に基づく時間外労働の制限、子の看護休暇などです。

そして一部の育児休業・育児休暇を除いて、育児休業中に無給となることから、公的支援として、育児中の社会保険料の免除、育児休業給付金として休業開始時賃金の7割弱の生活費補償がなされています。

育児休暇取得率の現状

育児休暇制度の利用状況

育児休暇制度は、大企業ではある程度浸透しているといえます。

しかしながら、まだ一部の中小企業においては、休暇中の人材確保のむずかしさなどから、休暇を取りにくい風土が残っていると言われています。さらに男性の育児休業・休暇の利用に関しては、利用が進んでいない現状があります。

平成28年度雇用均等基本調査の結果

平成28年度雇用均等基本調査では、育児休業取得者の割合は、女性81.8%、男性3.16%となっています。このように、男女の育児休業の取得率の差は25倍以上という大きな違いがあります。

雇用均等基本調査とは、厚生労働省が毎年雇用均等問題の実態把握を目的に実施しているものです。

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男性の育児休暇取得率が低い原因

男性の育児休暇取得率が低い要因は、企業環境と家庭環境の両面で考えられます。

有給休暇すらとれない?膨大な仕事量

そもそも仕事が忙しすぎて有給休暇すらとれないという男性も少なくありません。企業として仕事量や働き方をまずは見直し、育児休暇をとりやすい環境づくりがまだまだ不足しているといえます。

企業で「パタハラ」が蔓延している?

男性が育児休業・休暇などの制度を使用することへの意識的ないじめや、無意識的な反発をパタニティハラスメント(パタハラ)といいます。一部企業では、いまだにパタハラ文化が強く残っているといわれており、育休取得を阻む心理的要因になっています。

家庭における経済的理由

男女共働きが増えてきたとはいえ、いまだ男性の所得が世帯の中心という家庭が少なくありません。
育児休業制度で収入の7割を保証されるとはいえ、収入減には変わりがなく、男性が休暇を取得するのは経済的理由から難しいという家庭も多いのです。

夫と妻、役割の固定化

女性が社会で活躍する基盤はできつつあるも、いまだ夫は仕事、妻は育児をするというステレオタイプ的な考え方も根強くあるといわれています。まずは一人ひとりが、そういった固定観念から脱却することが必要なのです。

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「なんちゃって育休」の実態も

男性の育児休暇取得の実績がある企業でも、男性の育児休暇取得は短く、出産時の数日のみというケースが多いようです。産前から子供が1歳(最長2歳)になるまでと、長期間にわたる女性の育児休暇にくらべると、「企業の実績づくり=なんちゃって育休」といわれても仕方ない短さです。

育児休暇取得率向上のポイント

育児休暇のメリットを周知させる

育児休暇は、長時間労働があたりまえという働きぶりを見直し、効率的な働き方を考える機会になります。

また、男性が育児休暇を取得し、育児を経験することで、育児をしながら働く女性や同僚の状況を理解することができ、よりよい社内コミュニケーションのきっかけともなることでしょう。
これらのメリットを周知し、企業としても、育児休暇を取得する人、その周囲の人の理解を浸透させていくことが重要です。

公的生活費補償を増やすことも重要

男性が育児休業を取得した場合に、育児休業給付金で休業開始時賃金の7割弱が保証されますが、世帯で考えると3割弱の収入低下は大きなインパクトがあります。

育児休業給付金の生活費補償を増やすことで、男性の育児休業取得における経済的な障害を取り除くことができます。

育児休暇取得率の義務化

日本は有給休暇取得率も先進国に比べると低い現状があります。年5日の取得義務化が取りざたされているように、育児休暇取得率の義務化の検討も一つの手段ではあると思われます。

フランスでは男性産休制度が法制度化されたこともあり、日本はそういった育休先進国を手本に制度改革を進めていくことが重要です。

育児休暇の現状を知り、男女問わずに働きやすい環境づくり

労働人口の減少や独自の視点での商品開発、マーケティングなど女性の活躍が求められており、今後さらにその傾向は強まっていきます。

まずは自社の育児休暇取得率を知り、男女性別を問わず働きやすい就業環境を整えていくこと。それこそが優秀な人材を確保・定着させ、企業の競争力を高めるための鍵になることでしょう。

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