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マズローの欲求5段階説とは?自己実現理論でモチベーション維持、ビジネスへ活用

最終更新日:(記事の情報は現在から1601日前のものです)
人間の欲求を5段階層にわけた、マズローの欲求5段階説。自己実現理論として知られており、モチベーションを語るうえで欠かせません。マズローが提唱した欲求5段階説について、心理学における動機づけや、モチベーションに関する理論の変遷とともに解説、ビジネスシーンへ活用するポイントを解説します。

マズローの欲求5段階説とは

マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者アブハム(アブラハム)・マズローが提唱した理論であり、人間の欲求を5つの階層で段階的に表したものです。
自己実現理論とも呼ばれ、マズローはこの理論で「人間は自己実現に向かって段階的に成長する」と仮定しました。

理論自体には諸々の批判はありますが、今では心理学の世界だけではなくビジネスやコーチングなどの分野でも広く受け入れられている考え方です。

マズローとは

マズローはアメリカでユダヤ系ロシア人移民の家庭に生まれました。

1937年にニューヨーク市立大学ブルックリン校に教授として着任し、1967年からはアメリカ心理学会会長も務めた人物です。

マズローは人間性心理学の第一人者として非常に有名です。
欲求5段階説をはじめとする人間の自己実現を中心に、それまでの心理学では避けてきたような人間的な要素の研究の道を拓いたことが評価されています。

マズローの「人間の欲求はピラミッド状の階層を成し、徐々に高い次元に成長していく」という理論は、それまでの心理学の動機付けに関する考え方に哲学的な視点を与えた点で、多くの心理学者に衝撃を与えました。

ヒューマニスティック心理学

マズローが欲求段階説を唱えた当時の心理学界は、これまでのフロイトの精神分析学とワトソンやスキナーといった心理学者によって発展した行動主義が流行していました。
しかし、この頃からこれらに代わる新しい理論としてヒューマニスティック心理学が登場しました。

ヒューマニスティック心理学の基本的な考え方は、これまで主流だった生物学的な欲求および刺激に反応する人間を解釈することではなく、ありのままの人間に対する本質的な理解を重視することでした。

マズローはその中で、人間の動機づけにおける「自己実現」をもっとも重要なテーマとして掲げました。

動機付けとは

欲求5段階説を理解する鍵となる、多くの心理学者がさまざまな理論を発表してきた人間の「動機づけ」とは、本来どういうものでしょうか?

動機づけとは、簡単にいえば私たち人間をはじめとした生物の行動理由にあたり、そのもっとも基本となる大原則として「不快な状態を避け、快を得ようとする」という考えがあります。

この考え方は今でも基本的に変わっていないのですが、動機づけに対する説明は、心理学の発展とともに大きな変化を遂げてきたといえます。

本能

初期の心理学においては、人間の行動は本能によって決まるとされていました。
つまり、生得的に生物に備わっている生きるという目的のための内部的な推進力で説明できるとされていたわけです。

たとえば、怒りや未知のものへの恐怖、愛情といった本能によって、行動の動機づけが決まるという考え方です。

しかし、この考え方だけでは、人間の謙虚さや虚栄心、嫉妬といった生得的とは言い難いものについての説明が上手くできませんでした。
どこまでが本能による動機づけで、どこからが学習された行動によるものなのかが明らかではなかったわけです。

欲求および動因

このように本能による動機づけの説明が力を失うにつれて、行動主義と呼ばれる心理学が勢いを増してきました。

人間の空腹や喉の渇き、あるいは眠いといった欠乏状態を欲求といい、それが満たされていない人間の内的な状態を動因といいます。
行動主義心理学者たちは、動機づけはこの動因を減らそうとする力であると定義しました。

たとえば、空腹という動因は何かを食べるという行動を引き起こしますが、食物が十分に食べられれば、この空腹動因がなくなるということです。

こういった生理的欲求を満たす動因のほかに、学習と経験によって発達する動因もあります。
たとえば子供が学校の成績が上がったときに、親から褒められたことをきっかけに、さらに勉強を頑張ろうという動因がこれにあたります。

目標および誘因

そして1950年代あたりから、動機づけに関して、さらに認知の役割が重視されるようになってきました。これは簡単にいえば、動機づけを目標と誘因という観点から説明しようとするものです。

心理学的には、動機づけられた行動の対象を目標といい、目標がもっている魅力を誘因といいます。
たとえば、優秀な成績をとることは、周囲からの賞賛という高い誘因があるため、多くの学生が勉強して高成績を目指すことが説明できるでしょう。

こういった動機づけに関するさまざまな理論を、肯定的あるいは否定的に取り入れることで、マズローは欲求段階説を提唱するに至ったわけです。

欲求の5段階とは

それでは、マズローの提唱した欲求5段階説のそれぞれの欲求について、具体的に解説していきましょう。

彼は心理学の世界において、理論化されてきた人間の欲求について、優先順位を備えたピラミッド型の階層として概念化を行いました。
この階層はピラミッドの下にあるものほど根源的で優先されることを意味しています。

下の階層から順に説明すると、以下のようになります。

生理的欲求

生理的欲求は、人間の生存に必要となる基本的かつ本能的な欲求です。
人間にとってこれを満たすことが、上層にあるどの欲求よりも優先され、食欲や睡眠欲などが当てはまります。

この欲求が満たされなければ人間は命を永らえることができませんし、他の生物にとっても必須の欲求です。
ただし、一般的な動物がこの欲求レベルを超えることはないのに比べ、人間がこの欲求レベルに留まり続けることは、ほとんどないといっていいでしょう。

安全の欲求

生存のために安全な「場」を求める欲求です。
人間でいえば、身体的な安全性や経済的安定性、よい健康状態や人間らしい生活水準の維持など、予測可能で秩序ある生活状態を獲得しようとする欲求といえるでしょう。

上述の生理的欲求と安全欲求は、これらを合わせて人間の生存と安全を守るための基本的な欲求をいうことができます。

社会的欲求

社会的欲求は所属と愛情の欲求などといわれ、家族や友人、周囲の人々から受け入れられたいという欲求のことです。

一定の集団に帰属して、そこから愛情を得たいという欲求であり、生理的欲求と安全欲求が満たされてはじめて現れる欲求であるといわれます。
これが満たされない状態が続いてしまうと、人間は不安になったり、孤独感を感じたりするようになります。

承認の欲求

承認の欲求は自尊心の欲求ということもできます。
所属する集団から価値のある人間だと認められ、尊重されたいという欲求であり、いわゆる出世やステータスを追求するような行動の源がこの欲求といえます。

ちなみに、この承認欲求には低いレベル高いレベルの2種類があるとマズローは説明しています。
前者は地位や名声などを得ることによって満たすことができるとしており、後者は自己肯定感や自己信頼感を得ることや、(心理的に)自立することによって得られるとしています。

マズローによると、低いレベルの承認欲求に留まることは危険だと唱えています。
高いレベルでの承認欲求を満たすことが望まれるのであり、この欲求が満たされないと無力感や劣等感を覚えるとされています。

自己実現の欲求

これまで説明してきた欲求がすべて満たされると、自己実現に至る欲求が現れます。

自己実現とは、自己の可能性を実現したいという欲求で、自身のもつ才能や技能を最大限に発揮し、それを具現化したいということです。

それによって「本当に自分がなりたいものになる」ための欲求ということができるでしょう。
人間は自己実現欲求にしたがって創造性を発揮したり、自己啓発的な行動をしたりするようになります。

マズローも、精神的に健康で自身の可能性を十分に発揮することを実現している人を「自己実現的人間」と呼んでおり、そういう人の特徴として、思慮深い哲学的なユーモアのセンスがあるといった説明をしています。

欲求の5段階を理解するためのポイント

次に、この欲求5段階説を理解するために重要となるポイントについて解説しましょう。

種類ではなく段階

欲求5段階説で重要なのは、一つひとつの欲求は、たんなる種類ではなく「段階」であるということです。

すでに説明したように、人間の欲求はピラミッド構造になっています。
生理的欲求や安全欲求のような基本的な欲求から、上の階層に向かって順番に満たしていくことによって、最終的に自己実現に至るというのがマズローの考え方です。

そういう意味では、下位欲求で満足してしまうことは、人間としてまだ成熟の余地があるということです。
最終的に自己実現を目指すような動機づけをしていくことが、正しいモチベーション管理の方法ということになるでしょう。

人間は主体的存在

マズローはそれまでの心理学の常識でもあった、人間の心の問題が無意識に関わると考える精神分析学や、それが学習されたものの結果であると捉える行動療法とは違う考え方を提示しました。

すなわち、人間とは自己成長や自己実現を目指す主体的な存在であると考え、人間の心の問題を人間性全体の問題として捉えなおしたわけです。

この考え方はカウンセリングなどの分野に広がり、今でも欲求5段階説がビジネスやコーチングなどの場で参考にされています。

自己超越階層

マズローは後に、これまで提唱してきた5段階の欲求階層に加えて、さらにもう一段階上の階層があると発表しました。

これが「自己超越(Self-transcendence)」と呼ばれる階層で、統合された意識をもちながら高みを目指し、自我を放棄して目的に没頭する状態を指します。
マズローによると、この状態に至ることのできる人間は人口の2%ほどであり、ほとんどの人間はこの階層に至ることはないとしています。

トランスパーソナル心理学

マズローがこういった自己超越階層を提示するに至った背景としては、上述のヒューマニスティック心理学の研究の発展があります。
至高体験や神秘体験といった超越的な体験が、人間の心の成長につながるという臨床的なデータが観察されはじめたのです。

そこで彼は、これまでの心理学の枠組みで捉えることのできない、より高度で深い意識体験があることや、個人の力を超えたより大きな力が存在することを認めました。
そして、そういった領域を探求するトランスパーソナル心理学を創設しました。

これは、神秘体験や超越体験といった超常体験を取り上げながら、そういった体験がおこる心的領域を含んだより包括的な心の構造モデルを提示することを目的としたものです。

科学的見地からの批判はありますが、現在の心理学の世界でも、一定の立場を確立している分野です。

マズローの欲求5段階説の活用

最後に、現在マズローの欲求5段階説が活用されている分野について、簡単に説明をしておきましょう。

組織のマネジメント分野

組織の効果的なマネジメントのために、経営者や管理職が欲求5段階説を活用するケースは多くあります。

現代のほとんどの組織では、下位層の生理的欲求や安全欲求は満たされていますから、そこからさらにスタッフの欲求水準に合わせた効果的なマネジメントをしていくことが必要となります。

たとえば社会的欲求を満たす段階にあるスタッフには、基本的な作業が行えるような教育を施すなどして、チームの戦力として役立っていることを自覚させるといった施策が有効となるでしょう。
そして承認欲求の段階にあるスタッフには、比較的難易度の高い作業を行わせ、その結果を褒めるといったやり方が効果的なはずです。

このように、欲求段階説を参考に、部下の欲求レベルがどの段階にあるかを見計らいながら効果的なマネジメントをしている管理職はたくさんいます。

マーケティング分野

企業のマーケティング分野でも、同理論が活用されるケースは少なくありません。

たとえばターゲット層がどの欲求レベルにいるケースが多いのかを知ることができれば、その欲求を満たすようなセールスレターをリリースできるでしょう。

逆に新商品のプロモーションなどでは、5段階欲求のうち、どこにフォーカスを当てるべきかといった観点から戦略を立てることができるようになります。
顧客のニーズやウォンツを知るうえでの指標となるのも、この理論の特徴といえるでしょう。

モチベーション維持・コーチングなどの分野

マズローの欲求5段階説は人間の動機づけやモチベーションに関する理論なので、当然、企業スタッフのモチベーション管理や、コーチングといった分野で積極的に活用されています。

コーチングで扱うテーマの多くは自己実現欲求に関するものです。
しかし、当の本人がそれ以前の階層の欲求を放置したまま自己実現を目指そうとして、結局はモチベーションにつながらないというケースが少なくありません。

そこで欲求段階説に照らして現在の欲求段階を明らかにし、まずはそのレベルを満たすことによって、最終的に自己実現に向かうようにアドバイスをすることができます。
汎用性のある考え方であるため、さまざまなカウンセリングの場で応用することができるのです。

欲求5段階説を自己のモチベーション維持につなげる

マズローの欲求5段階説について、その心理学的な背景から現代の応用分野にいたるまで、解説してきました。

この理論はさまざまな分野で参考にされていますが、実証的な検証の難しさもあって、理論構造に関する批判も多くあります。いかなるケースにも絶対に当てはまるというわけではないので、そのあたりは注意が必要でしょう。

しかしそれでも、人間の動機づけに関して汎用性の高い説得力のある考え方を提示してくれていることは事実です。私たち自身も実体験として、この階層のとおりに自己実現に向かっていることを感じることが多いはずです。

ぜひマズローの欲求5段階説について理解し、自社のマネジメントや自己実現に活かしてみてください。

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