SaaS BEST 30に共通する一つの特徴とは?【表彰式レポート】| BOXIL SaaS AWARD 2019 特集 Vol.4

SaaSならではの価値を体現するSaaS BEST 30
BOXIL SaaS AWARD 2019ではユーザー投票によって選ばれたSaaS BEST 30の表彰を行いました。
投票が集まったサービスは、コラボレーション系SaaS、マーケティング・営業系SaaS、HR系SaaS、バックオフィス系SaaSの大きく4つのカテゴリーに分類され、すでに普及が進んでいるHorizontal SaaS(業界横断型SaaS)が幅広く選ばれる結果となりました。
コラボレーション系SaaS
SaaSならではの価値として、いつでもどこでも利用できる点、部門外・社外を含めた多人数で同時に利用できる点がよく挙げられます。
ビジネスチャットSaaSのChatworkやLINE WORKS、オンラインストレージSaaSのDropbox Business、タスク・プロジェクト管理SaaSのAsanaやBacklogなどは、多人数かつタイムリーなコミュニケーションを実現するSaaSとして票を集めました。
マーケティング・営業系SaaS
マーケティング・営業系SaaSは、顧客データの共有といったコラボレーションの機能に加え、顧客データや営業活動のデータをもとにした施策立案・実行を実現するデータプラットフォーム機能がとても重要な価値となっています。
そのような背景から、SansanやSalesforce Sales Cloud、b→dash、Reproなど、データ活用を強みとしたSaaSが票を集めています。
HR系SaaS
HRに求められる役割がオペレーションから戦略へと変化しており、特にこの1年で戦略人事を実現するツールとしてwevoxやカオナビのような組織改善SaaS、HRMOS採用管理やWantedly Admin、MyReferのような採用管理・支援SaaSが経営者、人事担当者の票を集めました。
今後もHRの役割の変化とともに大きく拡大していくことが見込まれる領域です。
バックオフィス系SaaS
ジョブカン勤怠管理やjinjer勤怠管理を代表とする勤怠管理SaaS、クラウド会計freeeやマネーフォワードクラウド経費を代表とする会計・経費精算SaaSなど、国内におけるSaaS化をリードしてきた領域でも票が集まりました。
バックオフィス系SaaSは企業のインフラとしてもはや当たり前に利用されるようになっています。
SOCSを体現する9つのSaaS
BOXIL SaaS AWARD 2019では、SaaS BEST 30に加え、ボクシルによる9つの賞、スポンサー企業による2つの賞、計11の賞を表彰しました。
ボクシルによる9つの賞は、ボクシルを運営するスマートキャンプのValues(行動指針)である「SOCS」を基準として表彰しました。
- Smart Thinking(スマートシンキング):テクノロジー活用によって今までにない賢い企業活動を実現している
- Ownership(オーナーシップ):優れたUXでユーザーのオーナーシップを引き出している
- Collaboration(コラボレーション):クラウド上でのデータ共有や共同管理などユーザーのコラボレーションを促進している
- Speed(スピード):日本企業の業務効率の改善に大きく貢献している
High SOCS(ハイソックス)賞
日本企業の生産性向上に、Smart Thinking, Ownership, Collaboration, Speedの観点で総合的に貢献しているSaaSとして、ビジネスチャットSaaSの「Chatwork」が選ばれました。
従業員規模、地域問わず多くの企業に導入され、チャット、ファイル共有、タスク管理などの機能を通じて企業のコラボレーション、スピード向上に大きく貢献している点が評価されました。
Chatwork株式会社 代表取締役CEO兼CTO 山本正喜氏(右から2番目)
Smart Thinking賞
テクノロジー活用によって今までにない賢い企業活動を実現しているSaaSとして、アクセス解析SaaSの「Repro」が選ばれました。
メディア企業の成長にとって非常に重要なアプリマーケティングの領域において、データをもとにしたA/Bテスト機能を提供することでユーザーの継続率を10%も改善した点が評価されました。
Repro株式会社 代表取締役CEO 平田祐介氏(右から2番目)
Ownership賞
優れたUXでユーザーのオーナーシップを引き出しているSaaSとして、名刺管理SaaSの「Sansan」が選ばれました。
属人的になりがちで組織であまり共有されない人脈情報を名刺管理ソリューションによって組織の財産へと変えることで、組織内外におけるコミュニケーションをスムーズにし、一人ひとりの自発的な行動や本質的な業務への集中を引き出している点が評価されました。
Sansan株式会社 Sansan事業部マーケティング部デジタルマーケティンググループグループリーダー 木下淳氏(右から2番目)
Collaboration賞
クラウド上でのデータ共有や共同管理などユーザーのコラボレーションを促進しているSaaSとして、プロジェクト管理SaaSの「Backlog」が選ばれました。
社内外、部門内外で多くのプロジェクト関係者がいるような場面で、リアルタイム性があり、いつでもどこでもアクセスできるプロジェクト管理機能、ファイル共有機能を通じて、コミュニケーションコストを大幅に削減している点が評価されました。
株式会社ヌーラボ サービス開発部Backlog課長 中村知成氏(右から2番目)
Speed賞
日本企業の業務効率の改善に大きく貢献しているSaaSとして、契約書管理SaaSの「クラウドサイン」が選ばれました。
契約書の製本、押印、郵送が1か月あたり150〜200件と膨大な量になっており、10名ほどで1日30分、1か月合計30時間かかってしまっていた状況に対して、クラウドサインの導入によって10分の1の業務量に大幅削減し圧倒的な生産性向上を実現した点が評価されました。
弁護士ドットコム株式会社 執行役員クラウドサイン事業部長 橘大地氏(右から2番目)
スタートアップ賞
スタートアップ企業の生産性向上に大きく貢献しているSaaSとして、採用支援SaaSの「Wantedly Admin」が選ばれました。
スタートアップ企業のカルチャーを重視した採用を支援し、社員20名のうち8名の採用(エンジニア4名、デザイナー2名、ビジネス2名)に成功、またWantedly経由で入社した社員の離職率0%を実現するなどスタートアップ企業の成長に大きく貢献している点が評価されました。
ウォンテッドリー株式会社 マーケティング部 山田賢輔氏(右から2番目)
中小企業賞
中小企業の生産性向上に大きく貢献しているSaaSとして、経費精算SaaSの「マネーフォワードクラウド経費」が選ばれました。
車や電車移動による営業の交通費精算が多い中小企業において、交通費精算のうち約90%(全体の精算では75%)を自動連携によって入力、結果として約50%の工数削減とデータの正確性向上を実現するなど、中小企業の生産性向上に貢献している点が評価されました。
株式会社マネーフォワード クラウド経費本部コミュニケーションデザイン部インサイドセールスグループリーダー 原彩香氏(右から2番目)
エンタープライズ賞
エンタープライズ企業の生産性向上に大きく貢献しているSaaSとして、リファラル採用支援SaaSの「MyRefer」が選ばれました。
エンタープライズ企業におけるリファラル採用において従業員による紹介の手間を削減し、結果として利用開始8か月で利用前の10倍のリファラル応募を獲得。また応募決定率は通常の採用と比較して7倍など、質の高い母集団形成を実現している点が評価されました。
株式会社MyRefer 代表取締役社長CEO 鈴木貴史氏(右から2番目)
地方企業賞
地方企業の生産性向上に大きく貢献しているSaaSとして、組織改善SaaSの「wevox」が選ばれました。
明治45年に創業し、大阪府堺市の地場産業である包丁を中心とした地方メーカーに対して、9つのキードライバーから構成される「エンゲージメント」という言葉を社内共通用語化。
組織の状態の見える化や絶対値での比較に基づく施策の優先順位付けを実現するなど、地方企業の組織変革に貢献している点が評価されました。
株式会社アトラエ 湊健二氏(右から2番目)
行動変革・集合知活用に取り組む2つのSaaS
また、「BOXIL SaaS AWARD 2019」ではスポンサー企業賞として、株式会社ネットプロテクションズ様によるValue for Innovation賞、株式会社FORCAS様によるAnalysis to Change The World賞の2つが表彰されました。
Value for Innovation賞 by NET PROTECTIONS
日本企業に大きな行動変革を起こすインフラとなるSaaSとして、マニュアル作成SaaSの「Teachme Biz」が選ばれました。
ネットプロテクションズ中原氏は選定理由として「マニュアル作成によってアルバイトスタッフの業務効率化と離職防止を実現しているだけでなく、外国人の定着率を向上させた点は、国全体で抱えている外国人労働者問題の一助になると感じました。」とコメントしており、生産性向上のさらにその先の行動変革を実現している点が評価されました。
株式会社スタディスト 開発部副部長TeachmeBizプロダクトマネージャー 磯野秀明氏(右)
BOXIL SaaS AWARD 2019 特集としてネットプロテクションズ中原氏に「NP掛け払い」やSaaSが提供する価値、そして「Value for Innovation」賞に込めた思いについてインタビューさせていただきましたのでぜひご覧ください。
Analysis to Change The World賞 by FORCAS
データが集まるSaaSならではの特性を活かし、集合知をさらなる価値につなげていくSaaSとして、採用管理SaaSの「HRMOS採用管理」が選ばれました。
FORCAS佐久間氏は選定理由として「既存業務をクラウドに置き換えていくだけに留まらず、蓄積されたデータの分析、可視化を通じて付加価値を創出しており、また集合知を多くのユーザーに還元する取り組みに力を入れている。」とコメントしており、集合知を価値につなげようとしている点が評価されました。
株式会社ビズリーチHRMOS採用管理事業部事業部長 古野了大氏(右)
BOXIL SaaS AWARD 2019 特集としてFORCAS佐久間氏にFORCASやSaaSが提供する価値、そして「Analysis to Change the World」賞に込めた思いについてインタビューさせていただきましたのでぜひご覧ください。
優れたSaaSは「課題解決のストーリー」が確立している
「BOXIL SaaS AWARD 2019」においてSaaS BEST 30、および11の賞を受賞したSaaSはいずれも「課題解決のストーリー」が確立しており、このストーリーを事例として多く蓄積し発信している点が共通していました。
SaaSの導入検討フェーズにおいては、この「課題解決のストーリー」をともなった導入事例が重要なインプットとなります。そのため、SaaS企業は導入事例づくりに注力すべきであり、SaaS比較サイト「ボクシル」としても導入事例の充実化に力を入れていきます。来年の「BOXIL SaaS AWARD 2020」も楽しみにしていてください。
