ドローン前提社会・エアモビリティとは?Drone Fund主催シンポジウム取材レポート

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2019年7月4日、慶應義塾大学三田キャンパスのホールでDrone Fund主催の公開シンポジウム「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」が開催された。本記事では、最近よく耳にするようになった「ドローン前提社会」「エアモビリティ(空飛ぶクルマ)」というキーワードを解説しつつ、同シンポジウムの様子をレポートした。
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「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」開催概要

2019年7月4日(木)、公開シンポジウム「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」が開催された。主催はドローン・エアモビリティ特化型ファンドであるDrone Fundで、ドローン研究を積極的に行っている慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムが共催。

Welcome Speechで登壇した慶應義塾大学 古谷教授

シンポジウムではまず、古谷知之氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)、今枝宗一郎氏(衆議院議員/ドローン議連PT座長)、米山茂氏(内閣官房 副長官補室 内閣参事官)、千葉功太郎氏(Drone Fund 創業者/代表パートナー)が次々とスピーチ。その後、3つのセッションに分かれて、パネルディスカッションが実施された。

パネルディスカッションでは、大和証券、みずほ銀行、KDDIという新産業創造を牽引する大企業の経営者をはじめ、アカデミック、スタートアップ企業が次々と登壇。ドローンやエアモビリティを社会実装するための戦略などをテーマとし、白熱した議論は5時間にも及んだ。

千葉功太郎氏プレゼンテーション資料より引用

ドローン前提社会・エアモビリティ社会は、2022年に潮目

本シンポジウムを主催した、Drone Fundの創業者/代表パートナーである千葉功太郎氏は、「今日は、ドローン前提社会とエアモビリティ社会の未来の実現に向けたキックオフだ」と、ほぼ満席の会場に向けて力強く呼びかけた。

その裏付けとして注目すべきは、同シンポジウム開催の2週間前、6月21日に閣議決定された「成長戦略実行計画」と、同日に小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会より発表された「空の産業革命に向けたロードマップ2019」だ。

出所:未来投資戦略会議 「成長戦略実行計画」

出所:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会 「空の産業革命に向けたロードマップ2019」

衆議院議員で空飛ぶクルマ推進委員会 委員長をつとめる今枝氏は、「成長戦略実行計画」において、2022年にドローンのレベル4(※)実現を目指すと政府がコミットメントしたことや、政府がサービス実用化の時期を明確に示してコミットメントを発表するのは世界初であることを説明。「安全を守りながらも、世界で最も多くのドローンや空飛ぶクルマが自由に空を飛び、多くの方の利便性を向上したい」と意気込みを語った。

(※)レベル4:ドローンの有人地帯における目視外飛行のこと。

Video Messageで参加した今枝氏

内閣参事官 米山氏も、「ドローンだけではなく、空飛ぶクルマを含めて、有人航空とドローンが共存して行く世界を目指すためには、安全確保と社会受容性が重要だ」と強調。2020年の東京五輪を見据え、「万が一にもドローンを使ったテロが起こることがないよう、取り組みを進めている」とコメントした。

Special Speech登壇した米山氏

ドローン前提社会とは

ドローン前提社会とは、ドローンが当たり前のように空を飛び、万人に受け入れられている社会を指す言葉。日本は、生産年齢人口の減少、社会インフラの老朽化、大規模災害、気候変動などのリスクに直面する「課題先進国」だ。社会や生活におけるドローン実装を進め、社会的課題を解決し、日本国内で事業化できたソリューションを海外にも輸出して、持続的な経済成長を目指すことも視野に入れられている。

Presentationに登壇したDrone Fund千葉氏

千葉氏によれば、(同氏の母校である)慶応大学湘南藤沢キャンパスでは1999年頃、「インターネット前提社会」がこれから訪れるという言葉があったそうだ。同氏は「インターネット前提社会が実装されるまで20年かかった」という経験則から、ドローン前提社会の実現もこれから20年くらいはかかるだろうと予測。

「社会に新しい技術が入る時、社会にはアレルギーやバッシングが起こるもの。これから本質的に取り組むべきことは、こうしたネガティブな反応を、幸せや便利さに置き換えていくことではないか」と、千葉氏は本シンポジウムで問題提起した。

エアモビリティ(空飛ぶクルマ)とは

エアモビリティとは、通称「空飛ぶクルマ」とも呼ばれる、空域を利用した交通手段全般を指す。地球規模で人口推移をみると、ここ数十年で人口増加と都市部への集中が加速度的に進み、渋滞や環境の問題が深刻化すると予測される。こうした社会課題解決策の1つとして、注目されているのがエアモビリティ(空飛ぶクルマ)なのだ。

日本では、都市部における交通インフラが比較的充実していることもあり、むしろ都市間移動や地方への移動や物流、災害時対応をテーマにエアモビリティが推進されており、これは各国と比較し日本独自の路線といえる。

日本のエアモビリティ産業では、eVTOL機(電動垂直離着陸機)の2020年デモフライトを目指すSkyDrive、空飛ぶバイク(ホバーバイク)Speederの開発を手がけるA.L.I.Technologiesが有名だが、「課題先進国」である日本市場の動向は海外勢からも注目されている。

ドローンやエアモビリティの新たな産業・社会を創造するために

パネルディスカッション、1つめのセッションのテーマは「新しい産業・社会の創造」。中田誠司氏(大和証券株式会社 代表取締役社長)、髙橋誠氏(KDDI株式会社 代表取締役社長)、藤原弘治氏(株式会社みずほ銀行 取締役頭取)、日本を代表する大企業の経営者が登壇し、Drone Fund 千葉功太郎氏が進行役をつとめた。

討論のテーマは2つ。「日本でスタートアップエコシステムを形成するにはどうしたら良いか」と、「ドローン前提社会、エアモビリティ社会に、何を期待するか」。三者から共通して発せられたキーワードは、「IPOはゴールではなく、事業の持続的成長こそ重要」「社会課題の解決」だった。

ドローンやエアモビリティを活用した新産業を創造し、イノベーションを起こすことで、再び日本を元気にすることが期待される。既述の通り政府のコミットメントも高く、法や帰省の検討も進む。そんないま、必要となるのは、社会を変えるインパクトを持つ起業家が、その夢を追いかけ続けられることと、それを長期間に渡って応援してくれる投資家が増えることだという。

大和証券株式会社 代表取締役社長 中田誠司氏

中田氏は、「スタートアップを社会の成長にいかに取り入れて行くためには、日本の大企業からリスクマネーを供給させる仕組みを作ることが必要」と指摘。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋誠氏

高橋氏は、通信会社への5Gライセンス条件に地方創生が含まれること説明したうえで、5Gの活用からビジネスチャンスを創出したいと話した。

株式会社みずほ銀行 取締役頭取 藤原弘治氏

藤原氏は、日本の渋滞による経済損失は12兆円だと例を挙げて「社会課題は足元にある」と話し、次世代が憧れるような社会課題解決に取り組むグロース期のスタートアップ支援に意欲を見せた。

ディスカッションでは、千葉氏から「新しい産業が日本から生まれ、日本国内で醸成され、アジア・グローバルで戦っていける企業を日本から生み出し、世界をリードしていきたいと考えている。皆さんはどう考えるか?」と投げかけられるシーンもあった。

これに対し中田社長は、「高感度のセンサーがドローンにつく。これはイノベーション・革命である。これまでにないビジネスモデルが生まれるのではないかと期待している」と語った。また藤原頭取は、7月からみずほ銀行でも副業を解禁したことに触れて会場を湧かせ、「人の流れを作っていくことも重要だ」と話した。

千葉氏は、「5G、金融のバックアップで、空の革命は実現しそう。事業化がかなりのスピード感を持って進められそうだと、肌で感じられたのではないか」として、セッション1を締めくくった。

フィールドロボットが自動化する現状と課題

パネルディスカッション、2つめのセッションのテーマは「フィールドロボットによる自動化」。小橋正次郎氏(小橋工業株式会社 代表取締役社長)、太田裕朗氏(株式会社自律制御システム研究所 代表取締役社長)伊藤昌平氏(株式会社FullDepth 代表取締役)、濱田安之氏(株式会社農業情報設計社 代表取締役CEO)が登壇。Drone Fund 共同創業者で代表パートナーの大前創希氏が、進行役をつとめた。

前半のテーマは、「各社が強く認識している社会の課題」と「各社が社会課題を解決しようと取り組む中で、実際にいま抱えている課題」について。大前氏は、来場者にも同じような課題を抱えているはずだとしたうえで、今日から一緒に課題解決に向けて動ける"企業マッチング"にも期待をにじませた。

前半では、下水道やダム、海底ケーブル点検など、人にはきつい仕事、危険な仕事、やりたくない仕事で、かつ緊急度と頻度の高いものからロボット代替していくことが、黒字化のヒントであることが話題に上がった。例えば高所にあるダム湖での、高所潜水と呼ばれる特殊で危険な潜水など。

しかし、ロボットによる業務の自動化は、ほとんどの場合が機体やソリューションのカスタマイズが必要で開発費用がかさむうえ、技術的なイノベーションがまだまだ続く領域。稼ぎながら、全力で技術投資をしていく難しさも言及された。

また、小橋氏は「東京一極集中による地方と都市の乖離が、日本の衰退につながる」と指摘。ものづくりメーカーのエコシステムを、国内に東京だけではなく地方と都市部が連携した形で構築することが重要だと話した。

小橋工業株式会社 代表取締役社長 小橋正次郎氏。小橋工業は、農業の社会課題を解決することを目的として約100年前に創業した、ものづくりスタートアップの"先輩"企業にあたる。

株式会社自律制御システム研究所(ACSL) 代表取締役社長 太田裕朗氏。昨年マザーズに上場を"一番乗り"で果たし、日本郵便のドローン配送実証実験に機体提供した実績豊富な企業だ。

株式会社FullDepth 代表取締役 伊藤昌平氏。つくば大学発のベンチャーで、水中ドローンの開発およびクラウドによるサービスを提供。未知なる水中に特化したドローンスタートアップ企業だ

株式会社農業情報設計社 代表取締役CEO 濱田之氏。トラクターやコンバインなど農業機械・農業車両に搭載し、圃場内の直進作業サポートするAndroid用GPS/GNSSガイダンスアプリGPS/GNSSガイダンスシステムなどを提供している。

後半では「ロボット社会に対する期待と現状の差」に話題が及んだ。濱田氏は、小橋氏に配慮を見せながらも「トラクターなど作業機側のインテリジェント化が遅れているため、データの連動が進まない」ことを指摘。地方におけるスタートアップエコシステム構築のためには、週末移住など関係人口の増加、金融機関の意識改革、保険の拡充などの課題が挙げられた。

ちなみに、水中ドローンはケーブルがなくなると、現行法では「漂流物」として扱われるらしい。今後、海の中で自動で動くドローンを開発できたとしても、実用化を後押しするべき法規制がなければ、日本人が"大好き"なPoCの域を超えられないという話題では、会場がどよめいた。

次世代モビリティ社会実現のために

最後のパネルディスカッション、3つめのセッションのテーマは「次世代モビリティ社会への展望」。古谷知之氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)、伊藤貴紀氏(製造産業局 総務課 課長補佐)、福澤知浩(株式会社SkyDrive 代表取締役)氏が登壇した。進行役はDrone Fund パートナーであり最高公共政策責任者の、高橋伸太郎がつとめた。

高橋氏は冒頭で、パネルディスカッション全体を振り返って、こう総括した。

「セッション1では、20世紀、21世紀日本社会を作り上げてきた会社のCEOの視点から、セッション2では、ドローンを大量生産していくため、ものづくりスタートアップの先輩として小橋工業と、陸海空それぞれの領域で開発を手がける現代発のスタートアップ企業の視点から、ドローン前提社会について議論してきた。

セッション3では、学術的、政策的、ベンチャーの視点で議論を深めたい。去年までなら、ドローン前提社会の夢や期待を語るのでよかったが、2022年にドローンのレベル4実現を明確に打ち出したいま、年内に基本方針を定めて、2020年には関連法案審議を行わなければ間に合わない。「進行形」の課題やアイデアを共有することが重要だ。(高橋氏)

慶應義塾大学総合政策学部教授 古谷知之氏

古谷氏は、「この1年でフューチャーモビリティに関する国際シンポジウムが増えてきた」「エアモビリティは世界各国で感触がよい」と各国のドローン・エアモビリティ事情に精通したリアルなコメントを寄せた。

製造産業局 総務課 課長補佐 伊藤貴紀氏

伊藤氏は、国交相と経産省が両輪で行う官民協議会、企業から提示されたビジネスモデルを前提に制度を議論する進め方は、従来の政府にはない新たな取り組みであることを説明した。

株式会社SkyDrive 代表取締役 福澤知浩氏

福澤氏は、通勤ラッシュ、乗り換え、インフラ老朽化など、人間の貴重な時間やエネルギーが阻害されていることを指摘。道路がなくても意のままに移動できる社会実現への意欲をのぞかせた。

セッションの最後に強調されたのは、「エアモビリティの社会的受容性」だ。航空機や自動車が普及した歴史を振り返ると、たくさんの方の犠牲の上にモビリティが成立している。安心安全かつ便利で快適なエアモビリティ実現のために何が必要か、一人ひとりが考えるべきではないかと投げかけれた。

既存モビリティの負の部分を解決するという点では、エアモビリティの発展は人類共通の命題といえる。官民協議会のグローバル化や国際シンポジウムの開催など、グローバルでの連携へと話題は広がりを見せた。「ドローン前提社会・エアモビリティ社会が、やること前提で話されている」ことは、去年までと大きく変わった点だ。

ところで、本シンポジウム以外の場でも、東京五輪で空飛ぶクルマのデモをしたい、空飛ぶトラックの実装を目指しているなど、2019年に入ってから日本企業からの積極的な声を聞くようになった。新しい技術に対して、無視や、過度なアレルギー反応やバッシングをするよりも、その可能性と実現性を自分ごととして捉えたほうが、人生はうんと幸せになるなのではないだろうか。

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