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スペシャリストが語る、「エンタープライズSaaSを実現する Enablementの作り方」

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「ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO2019」が、11月7日に開催された。「エンタープライズSaaSを実現する Enablementの作り方」に登壇したのは、R-Square & Company代表取締役社長の山下貴宏氏。前職のSalesforceで大規模なEnablement組織を牽引したスペシャリストだ。

【登壇者プロフィール】
山下 貴宏氏 株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者
日本ヒューレット・パッカード、船井総合研究所、マーサージャパンを経て2012年にSalesforce.comに入社。同社のSales Enablement本部長/Senior Directorとして日本および韓国リージョンのEnablement部門を統括。Sales Enablementの市場拡大に向けて2019年8月よりEnablementサービスに特化したR-Square & Companyを創業。

前田ヒロ氏 ALL STAR SAAS FANDマネージングパートナー
2010年にスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。のちに、BEENOSのインキュベーション本部長、東南アジアなどを拠点とする「BEENEXT」を設立し、世界のスタートアップ100社以上に投資を実行。2019年SaaSベンチャーに特化した投資と支援行うALL STAR SAAS FUNDを設立。

SaaS業界で話題のEnablementとは何か

会場のおそらく半分近くが、Enablement(イネーブルメント)という言葉を初めて聞いたのではないだろうか。モデレーターの前田氏はこう切り出しつつも、「ARR1億円を超えたら、Enablementを考えないといけない、と個人的には思っている」と、その重要性を述べた。

前田氏が「日本で一番Enablementに精通する人物」と評する山下氏は、前職のSalesforceでEnablementチームメンバーを率いた経験を持つ。営業組織におけるEnablement担当者の最適な割合は、営業メンバーの1〜3%らしい。山下氏は、日本における大規模なEnablement組織運営の、間違いなく第一人者だろう。

今年8月には、R-Square & Companyを創業。Enablementに特化した事業を手がけ、スタートアップからエンタープライズまで幅広く支援している。12月に発売予定の書籍では、Salesforce、NTTコミュニケーションズ、Sansanの事例も掲載し、「世界最先端の営業組織の作り方」の実務面をまとめたという。

本セッションでは、山下氏の豊富なEnablement実務経験から抽出されたエッセンスがシェアされたわけだが、そもそもEnablementとは何か。山下氏いわく、Enablementとは「成果起点での営業人材育成」だという。

「営業が成果を出すためには必要な行動があり、その行動を取るためには、必要となる知識やスキルがあります。それらを習得するためのトレーニングやコーチングなどの実践的な育成プログラムを作成して提供し、ときには現場でのフォローを促しながら、行動や成果がどう変わったのかをITを活用して可視化する。このように、営業の成果と学習結果がきちんと相関しているのかどうかを、データで検証しながらビジネスサイクルを回していくことが、これからの人材育成に求められており、この役割を果たすのがEnablementです」(山下氏)

現状の営業人材育成では、成果と行動と学習が分断されているケースが多いという。これでは営業のパフォーマンスが上がらない。山下氏の指摘を受け、前田氏は「営業組織の2:6:2の法則があるが、6のマジョリティを上げられたらインパクトは大きい」と共感を示した。

提供:R-Square & Company

エンタープライズのEnablementとは

スタートアップとエンタープライズで、Enablementの取り組みはどう違うのだろうか。前田氏からの質問に対して山下氏は、「スタートアップでは、EnablementのテーマがOn-Boarding (中途社員の立ち上げ)になるが、エンタープライズでは、営業スタイルの変革を求められることが多い」と即答。エンタープライズの大きな特徴は3つだ。

【エンタープライズにおける3つの特徴】

  • プロダクトが複数ある
  • ステークホルダーが複数いる
  • いまいる営業人材のバックグラウンドや売り方がバラバラ

提供:R-Square & Company

また、顧客のニーズの変化に合わせて、営業スタイルを変えていくことも重要だ。エンタープライズでEnablementを始めるときの、ファーストステップは3つあるという。

営業機能を 「案件創出」と「提案受注活動」で分ける

複数のプロダクトで、複数のステークホルダーに対して、いろんな社内のリソースを巻き込んで、ソリューション提案していくという、いわゆるスーパーマン的な営業を全員に求めるのではなく、営業機能を 「案件創出」と「提案受注活動」で分けるべきだという。

理由は、1つのことに集中した方が生産性が上がるため。また、大きな商談が発生すると、営業はどうしてもクローズの方にリソースを割きがちになり、案件創出がおろそかになるという点も指摘された。

「顧客の意思決定の流れ」に沿って「営業フェーズ定義」を見直す

たとえば、見積もりを出したからといって顧客の意思決定が進んでいるわけではない。であれば、見積もり管理にはあまり意味がない。顧客の意思決定プロセスを意識して、営業フェーズを定義し、商談管理や営業活動管理を行った方がよい。

営業フェーズ定義を見直したら、受注率や商談期間など、ハイパフォーマーとそうではない人の成果を比較し、どこで最も大きなギャップが生まれているかを探るなどして、優先してテコ入れすべき営業フェーズを見定める。ちなみに、相対する業種などにより、営業フェーズは5〜8段階に分かれるそうだ。

営業実績データを元に育成テーマを決めて、実践プログラムを作る

テコ入れすべき営業フェーズが決まったら、営業実績データを元に、育成テーマを決めてプログラムを作る。ここで重要なのは、ハイパフォーマーの知識や行動を体系化し、実務的なプログラムを提供することだ。

たとえば、SFAデータ分析においてハイパフォーマーとそうではない人の受注単価を比較したときに差があれば、初期フェーズで大きく仕掛けるためのトレーニングを導入することで、営業生産性を向上できるかもしれないなど。

「ハイパフォーマーが何をやっているのかを知りたい人はとても多いので、その情報が組織内に流通するだけでもすごくよいこと。自社にとって一番いいやり方は自社にある」(山下氏)

提供:R-Square & Company

初期フェーズに課題があるケースが多い

話題がEnablementの実務におよぶなかで山下氏は、初期フェーズの課題があるケースが非常に多いことにも言及した。

「お客様のニーズを喚起しなきゃいけないのに、プロダクトセリングに陥って、お客様の経営課題や業務課題のヒアリング、またお客様が解決したい課題と自社が提供できる強みとのマッチングができておらず、予算が下りなくて失注したり他社に流れてしまう」(山下氏)

これを受けて前田氏も「最初はビジョンを語って売る。けれども販売社数が100社を超えて、実績やブランド力がついてくると、ビジョンを語らなくても売れるようになる。結果として、ビジョン戦略やヒアリングが手薄になっていく」と応じ、話題は社内にEnablementチームを置く必要性へと転換していった。

社内にEnablementチームを設置するために

営業組織が100人になったら、1〜3人のEnablement担当者を、兼任でもよいからアサインするべき、と山下氏は話す。経営マネジメントが「成果を上げるための育成である」とEnablementに取り組む意義や方向性を周知することは大前提だが、担当者不在ではプロジェクトが"空中分解"になりかねないためだ。

Enablementメンバーのバックグラウンドとしては、人事、人材開発、営業経験、ITに精通などのキーワードが挙げられた。日本では、Enablementメンバーを採用するといった動きはまだこれからだが、山下氏は3つの観点を意識するとよい、とアドバイスした。

提供:R-Square & Company

1つ目は、マインド。育成が好きじゃないと仕事にならないという点だ。2つ目は、スキル。ハイパフォーマーの提案書を、組織内で横流ししても意味はない。体系化スキルが重要になる。また、縦横のステークホルダーとのコミュニケーションし合意形成していくスキルも必要だ。3つ目は、知識。営業経験は必須ではないものの、苦に感じずキャッチアップできることが大切だという。

最後に、Enablementが追うべきKPIについても触れられた。ベンチャー企業など、リソースの問題でEnablement専任チームがない場合には、新規案件数、成約率、売上など営業成果をそのまま指標にして、マネージャーがEnablementの役割を果たす。対してEnablement専任チームがある場合には、営業の目標達成率の中央値、中途社員の立ち上がりスピード、平均商談サイズなど、営業生産性をみる指標にシフトするという。

【まとめ】営業のパフォーマンスを上げるために

管理ツールの導入や、人事主導のトレーニングプログラムを提供していても、営業のパフォーマンスが上がらずARRの伸び悩みに直面する企業は少なくない。これを機に、エンタープライズSaaSの実現に向けて、成果を出す営業人材を継続的に輩出できる人材育成の仕組み、Enablementを検討してみてはいかがだろうか。

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