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コンプラ対応からリテンションへ、働き方改革ステップアップの鍵

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2020年2月5日、デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)と一般社団法人at Will Work(以下、at Will Work)は、「働き方改革の実態調査2020」を共同実施した結果を発表した。発表会では調査結果の概要説明のあと、働き方改革成功企業への3つのステップが紹介された。本記事では、調査結果と発表会での意見から、コンプラ対応からリテンションにつなげる、働き方改革ステップアップの鍵を探った。

「世の中をよくしたい」という共感から、協働へ

「働き方改革の実態調査2020」は、デロイト トーマツが2013年から日本企業を対象に実施してきた「働き方改革の実態調査(旧称:ワークスタイル実態調査)」の4回目。2015年、2017年を経て、今回は、at Will Workと共同で調査を実施した。

at Will Workは、働き方改革への感度の高い方には、すでにおなじみの団体。2016年、働き方改革という言葉が表舞台に出る少し前に立ち上がり、「働き方を選択できる社会づくりの実現」を目指して、アニュアルカンファレンスやWork Story Award開催など、精力的に活動を続けている。「5年」という期限を設けている点にも本気を感じる。

今回、デロイト トーマツとat Will Workは、「世の中をよくしたい」という互いの想いへの共感から、働き方改革の実態調査を共同で行うに至ったという。

本調査では、働き方改革を単なる長時間労働の是正ではなく、「生産性と働きがい、両方の向上」と定めて、8つの項目で取組状況や組織風土の調査・分析を行った。N数は277社とコンパクトながら、いずれも手を挙げて調査に参加した企業。なお、調査参加企業には、参加企業全体および業界別の働き方の実態を定量・定性の両面から集計・分析したレポートが無料で提供されるという。

調査項目(プレスリリースより引用)

2019年は、「コンプライアンス対応」に重点

本調査によると、働き方改革を実施した企業は、89%に達した。しかし一方で、効果を感じた割合は、53%に止まった。そもそもKPIがなく、モニタリングできなかった企業は、24%だった。

働き方改革実施企業が急増したのは、2017年だった。政府による「働き方改革実行計画」が発表された年だ。同年9月の衆議院解散によって、働き方改革関連法案の審議が先送りされたものの、「人づくり革命」「生産性向上革命」などの指針が次々と発表され、働き方改革への注目度は一気に高まった。

そして2019年4月、働き方改革関連法が施行された。目玉は、残業時間の上限規制、有給休暇取得の時季指定義務化。今回の調査結果からは、これら法令遵守に重きを置いたコンプライアンス対応を、「ひとまずやりきった」という企業の苦労が伺える。

働き方の取り組み状況(プレスリリースより引用

しかし、目的別の効果実感値には、ばらつきが見られた。実施目的の第1位は、従業員満足度の向上・リテンションで、88%。しかし同項目における、効果実感企業は61%だった。一方、コンプライアンス対応を主目的とした企業は50%だが、効果実感割合は80%ともっとも高かった。

つまり、実施目的と効果実感が、必ずしも連動していない。今後は、リテションおよびリクルーティングに有用な働き方改革をいかに実施できるかという点が、論点となりそうだ。

働き方改革の目的(プレスリリースより引用)

働き方改革の目的に対する効果実感割合(プレスリリースより引用)

働き方改革を成功させる3つのステップ

2020年も、同一労働同一賃金や、中小企業に猶予されていた残業時間の上限規制適用など、引き続きコンプライアンス対応が求められるが、多くの企業が本来の目的とする「従業員の満足度向上」「リテンション」「多様な人材の獲得」に効果を得るためには、どうしたらよいのだろうか。

本調査結果からは、「3つのステップを意識して、段階的に働き方改革を進めること」という成功セオリーが浮かび上がった。

複数部門の連携による推進体制の整備や、経営者のメッセージ発信など経営層からの働きかけや積極的な関与は、どのステップにおいても重要になるが、3つの各ステップを成功に導く主要因は異なるようだ。ポイントを絞って紹介する。

"本質的"な働き方改革への推進に向けて(プレスリリースより引用)

<ステップ1>「健康経営」を取り入れる

ステップ1である「コンプライアンスの徹底」を成功するには、残業時間の削減、有給取得の促進、長時間労働の是正が不可欠。しかし、闇雲に早く帰らせようとするだけではダメ。コンプラ徹底成功の鍵は、「健康経営」にあるようだ。

発表会では、「コンプラインアンスの徹底に成功した企業では、47%が健康経営を取り入れているのに対して、未成功企業では27%。20ポイントの開きが見られた。これは、ツール導入や業務プロセスの見直しといった他の施策と比べて、もっとも差異が大きい項目だった」と指摘された。

プレゼンティズム、アブセンティズムは、企業に大きな損失を与えるといわれる。従業員の心身の健康を意識したコンプラ対応によって、働き方改革のネクストステップが見えてくるはずだ。

<ステップ2>「従業員目線」でのKPI・施策

ステップ2は、「既存業務の効率化」。働き方改革の本丸である効率化を実現するには、従業員目線で評価指標を策定することが有用だという。やらされ感では効率化は進まない。「従業員各人が、自らの成果実感を持てるよう工夫しながら、業務プロセスや会議ルールの見直しを進めることで、働きがいを感じやすくなる」という。

たとえば、上司層の反対が障壁となる会議ツール導入においては、日常生活でもITツールを抵抗なく使いこなす若手世代にツール選定から任せるなど、資源や権限を委ねる。あるいは、普段使っているチャットツールから会社に導入するなど、自らの施策で自らの便益を実感できるよう、ミドルアップ、ボトムアップの内発的な動機付けを図り施策を進めることが効果的なようだ。

<ステップ3>カウンセリングやコーチングで自律性向上

ステップ3で、働き方改革実施企業は、「イノベーション創出企業」へと変貌を遂げる。既存業務をスリムにし、可処分時間を増やすことで、イノベーションを誘発するのだ。調査対象における成功企業数は23社と少ないものの、「マネジメントスタイルの改善」が成功要因であるとの見方があった。

イノベーション創出成功企業は、オフィス外勤の促進、デジタルツールの導入、組織風土改革などに、満遍なく取り組んでいる。このような全方位的な取り組みも特徴的だが、カウンセリングやコーチングの実施割合差は、イノベーション成功企業と未企業とでは4倍以上もの開きがあったという。

「年1回や半期に1回しか目標設定を行わず、気づいたら環境が変化して目標がそぐわないという状況は、多くの企業で見受けられるが、イノベーション創出成功企業では、四半期に1回以上の目標設定や、高頻度でのフィードバックが見られる」との調査結果も紹介された。

目標達成支援や、働きがいを持って働けるような上司からの積極的なコミュニケーションが、イノベーションを誘発しやすい自律的な組織づくりにつながっているようだ。

経営層のKPIも変化している

いま、「経営層のKPIは成果だけではなくなりつつある」とデロイト トーマツ グループ アソシエイトディレクター 田中公康氏は指摘する。

レストラン選びで口コミを見るように、いまや経営もガラス張り。従業員の生活を守る重責に加えて、法人としての姿勢、社長個人の働き方、従業員満足度など、あらゆることが社内外から見られていることを、経営者は強く意識しつつあるという。

発表会に出席した経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 弁護士 堀田陽平氏からも、「株主総会においても、人材関係の議論が増加している。人材戦略と経営戦略が紐づいていないという課題もある」と話があった。従業員のスキルシフトにつながる副業・兼業も、今後は働き方改革の重点テーマとなりそうだ。

働き方改革は、「働かせ改革」との揶揄も多いが、単なるコンプラ対応からリテンションへと「進化」させるためには、統一コンセプトの策定およびミドルアップ、ボトムアップの内発的な動機付けが欠かせない。

at Will Work日比谷氏からは、「従業員のモチベーションや心理状況を計測するエンゲージメントツールを導入して功を奏した企業もある」と事例共有もあった。2月20日にはat Will Workカンファレンス 2020が開催される。

「働き方改革は経営課題」との認識が一般化しつつあるいま、多様な成功事例から自社にフィットする方法をモザイク的に取り入れカスタマイズすることこそ、働き方改革のネクストアクションと言えるのではないだろうか。

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