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マネーフォワードCEO辻庸介氏「大人ベンチャー」への挑戦|スタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」登壇レポート

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2020年2月8日、日本最大級のスタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」(Coral Capital主催)が開催された。メインステージでは、各社スタートアップCEO陣が「スタートアップで働く」について多面的に講演、サブステージのパネルディスカッションでは職種別に仕事が深堀りされた。本記事では、マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介氏登壇のFireside Chat「メガベンチャーが振り返る〜起業、挫折、成長、上場、これからの挑戦」についてレポートする。

「大人ベンチャー」への挑戦

スタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」で、Fireside Chatに登壇したマネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介氏は、「一番難しく、一番時間がかかった」と、会社を辞める決断の難しさを振り返る。

辻氏はその時、35歳〜36歳。「お金の課題をテクノロジーで解決する」サービスを企画した。本当は、当時勤めていたマネックス証券でやりたかったという。しかし、リーマンショックの余波もありできなかった。

30代半ば、会社では責任ある仕事を任されていた。会社を辞める決断をしてから、実際に辞められるまでには、かなり時間がかかったそうだ。

「本当に辞めるんだろうか? 辞めたらどうなるんだろう? 怖いな。」(辻氏)

自分で考えた、心からやりたいサービスを手がけるためとはいえ、さまざまな想いが錯綜したという。

同時期、2012年〜2013年に起業した仲間は、ほとんどが20代や30代前半。「よくいえば大人ベンチャー、悪くいえばオッサンベンチャー」と辻氏は語り、現在700名もの従業員を抱えるメガベンチャーまで会社を成長させた歴史の中でも、脱サラの難しさは群を抜いていたことを説明した。

「決意すればやるしかない。それは、前に進むしかないしんどさ。会社を辞めるという決断は、それとは異なり一番難しかったです」(辻氏)

これに対して、モデレーターの西村賢氏(Coral Capital Partner & Chief Editor)は、「今と比べると、2012年、13年は、スタートアップという言葉も今ほど知られていなく、情報も少なかった。奥さんは反対しなかったんですか?」と聞いた。

「いや、説得は無理ですね。…無理ですね。」(辻氏)

実際に、スタートアップへの転職や起業というキャリア選択を、パートナーが反対するケースは少なくない。自らの強みと興味関心が生かされるところで働くのが人生の醍醐味なのだとしたら、その可能性を一番応援して欲しい人に理解されないのは苦しい思いもあるだろう。

誰もがスタートアップに向いているわけではないけれども、マネーフォワードへの転職希望者が嫁ブロックに悩む場合には、辻氏が夫婦で面談を行ったこともあるそうだ。

マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介氏。「ブロックしている方が、権威を感じているメディアへの掲載実績を見せたりして説得するのは、意外と効きます」と、嫁ブロックへの打ち手も語った

ミッションが最初から明確だった

「起業するかどうかは、3〜4年迷っていた」という辻氏。起業しようと決断した、最後の決め手は何だったのかという西村氏の質問に、こう答えた。

「創業6人でスタートしましたが、仲間がいないとできませんでした」(辻氏)

まず、ビジネスとして必要な機能を洗い出す。かつての同僚や、一緒に仕事をしたことがある人のコンタクトリストを作り、各機能を任せたい人に会いに行っていたそうだ。

例えば、「土曜日の午前中、暇? ミーティングしよう」と言って誘い出し、「こういうサービスがあったら便利じゃないか?」という話をひたすらする。こうして少しずつ自分事にしていった。

「最初は僕のプロジェクトでしたが、みんなで知恵を出し合ううちに、そのメンバーみんなのプロジェクトになっていきました。時間も知恵も出して作ったものが、自分のものじゃなくなるのは、みんな勿体無く感じるものだし、自分で手を挙げた人がやるのが一番成功確率が高いです」(辻氏)

そのコアにあったものが、ミッションだ。お金がなくてチャレンジできていない人がいる、日本では金融教育が不足しているので損をしている人もいる。そうした「お金の課題」を、テクノロジーを作って解決しようという想いは、その当時からぶれていない。

しかし想いのこもった新サービスが、いきなり爆発的に成功することはなかった。

「逆説的だけど、10年間サービスを続ける方法を、何とか考えることができれば、成功するのではないか。諦めたらそこで終わりです」(辻氏)

と、信じることをひたすら地道に続ける重要性を強調した。

左:Coral Capital Partner & Chief Editor 西村賢氏、右:マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介氏

問題が起きる前に、予想して手を打つのが理想

「個人向け資産管理で、マネタイズできている企業は、世界的にも珍しい」と西村氏が切り出して、話題は拡大期へと展開した。

創業当初からB2Cビジネスを手がけてきたマネーフォワードだったが、B2Bにも参入したのは、ちょうどB2Cが軌道に乗り始めた頃だったという。

常にリソースが足りない状況で、ユーザーからのニーズとはいえ、辻氏がB向けを口にし始めた頃の社内の反応は微妙だった。議論がヒートアップし、

「辻さん、集中と選択っていう言葉、知ってますか?」

と詰め寄られたことも。何が制限要素なのかを聞くと「人的パワーと資金」だったので、資金を調達した。

また、30人の壁、100人の壁など、規模拡大に伴う組織崩壊は、「必ず起きる」と断言。みんなが自分の価値観で判断し始めた時こそ、ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャーを再定義することが重要だと説明した。

ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャーは、パソコンでいうOSだという。「OSをちゃんとアップデートしていないと、アプリケーションをいくら作ってもワークしない」のだ。

かつては、勝ちパターンを分かっているスタートアップはいなかった。しかし最近は、先人達に話を聞いて、学ぶことができる。

「学生起業するよりは、成長中のスタートアップに入って、ビジネスを立ち上げるとはどういうことかを学ぶのもおすすめだ、という意見もよく耳にします」(西村氏)

辻氏も、いきなり起業やシード期のスタートアップにジョインする勇気がないという方に向けて、こうアドバイスした。

「ある程度大きくなっているベンチャーで疑似体験をして、課題解決するための引き出しを増やすのもよいです」(辻氏)

要は、スタートアップにおいて起きうる課題と解決法について、あらかじめ情報を得られる時代に入ったということだ。問題が起きる前に、予想して手を打つのが理想であり、その方が本質的なことに時間をかけられる。辻氏も、1000人規模以上の経営者に、積極的に話を聞きに行っていると明かした。

西村氏が「メルカリでは、コアメンバーが過去にいろんなところで苦渋を舐めた経験を生かして、先手を打って組織を運営している」と成功要因を指摘する場面もあった

これを超えたら、参入障壁が高くなる

最後に、スタートアップのエコシステムについて意見が交わされた。米シスコではエグゼクティブの3人に2人が元ファウンダーだという例を挙げて、日本も米国のように、スタートアップのエコシステムはIPOだけではなく、M&Aが増えてくると言及された。

「経営者って会議で、みんなが無理だと思うようなことを、やろうと言い出す。そんなとき、起業家が組織にいるといいです。彼らは、"いいね、やろう”と言う。そうすると、できるような気がしてくる。できると思ったら、どうやるかを考え始められる。できると思う人が組織にいることは、すごく大事です。人は見えないもののリスクを怖がるけれど、チャレンジしなければ世の中が前に進まない」(辻氏)

辻氏は、「自分自身の能力がストレッチできる場所を探して、そこに飛び込み身を置くことで成長できる」とエールを送った。この言葉は、「これを乗り越えたら、市場価値がさらに高くなる」と、個人のキャリアに置き換えて読むこともできる。

「つらい状況でも説明責任を果たすなど、きつい時でも信頼関係を作り続けていれば、経験を大企業が買うかもしれないし、リスクは思っている以上にないのではないか」(辻氏)

VUCAの時代だ。自分の志向を深く理解し、自分自身の能力をストレッチさせ、世の中をより良い方向へ前に動かす、そんなキャリアを選択することこそ、最大のリスクヘッジとなるのかもしれない。

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