ブロックチェーン企業に出資相次ぐ、業務システムへ活用も - セキュアなデータ基盤構築へ
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暗号資産に再び脚光
データを分散型ネットワークで管理するブロックチェーン技術は、応用例の1つであるビットコイン(BTC:Bitcoin)などの暗号資産で注目を集めました。ICO(Initial Coin Offering)という資金調達手法や、スマートコントラクトのような応用技術も考案され、フィンテックの要として期待されています。
関心の高まりからビットコインの価格は2018年初めにかけて高騰し、2万ドル弱に達しました。ただし、価格上昇はサイバー犯罪者も引き寄せ、取引所やユーザーが攻撃の被害に遭ったのです。その影響か関心は薄れ、その後1万ドル(約111万円)前後で推移しています。
ところが、2020年の終盤からこれまでにない急上昇をみせ、2021年3月には史上最高の6万ドル超となりました。
今回の高騰は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで投資先を失った資金が流れ込んだなどの影響があるのでしょう。高騰の要因はどうあれ、ブロックチェーンに対する期待は失われていないと、改めて認識させられました。
ブロックチェーンに対する期待度は?
ブロックチェーン全体に対する期待がどの程度あるのか確認しましょう。対ソリューション支出の堅調な拡大が見込まれるほか、関連企業への大型出資が相次いでいます。
対ソリューション支出額は拡大続く
IDCの「Blockchain Solutions Will Continue to See Robust Investments, Led by Banking and Manufacturing, According to New IDC Spending Guide」によると、ブロックチェーンソリューション市場は堅調です。
レポートを公表した2020年9月時点で、2020年における世界全体の対ブロックチェーンソリューション支出額を、前年比50%以上多い41億ドル(約4,531億円)と予測。そして、同市場は今後も拡大を続け、2024年には179億ドル(約1兆9,781億円)弱の規模になり、その間の年平均成長率(CAGR)を46.4%としました。
市場が成長する主な要因は金融業界だそうです。2020年に支出額全体の3割弱を金融業界が占めるという予想でした。しかも、CAGRは45.3%と高く、順調に拡大しそうです。国際的な決済や契約などにブロックチェーンを利用するとのことで、フィンテック分野での期待の根強さが感じられます。
ブロックチェーン企業への出資も盛ん
ブロックチェーン技術を扱う関連企業の人気も高く、大型出資が相次いでいます。
財務会計システムを提供するミロク情報サービスは1月、ブロックチェーンネットワークの開発企業であるToposWareへ7億5,000万円を出資すると発表。「ゼロ知識証明」という理論を活用しデータ秘匿性を担保する同社の技術に着目しており、「次世代の新たなビジネス・プラットフォームの構築を目指して共同で研究開発を行う予定」としています。
またブロックチェーンに関するコンサルティング事業のHashPortは3月、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)とセレスから約3億5,000万円を調達しました。
海外に目を向けると、文字通り桁違いの資金調達事例がいくつもあります。ブロックチェーン分析事業を手がけるチェイナリシス(Chainalysis)は1億ドル(約111億円)、ブロックチェーン技術を各種金融サービス向けに提供しているブロックファイ(BlockFi)は3億5,000万ドル(約387億円)といった具合です。
メルカリが子会社「メルコイン」を設立し、ブロックチェーン事業へ参入するというニュースも話題となっています(出典:メルカリ「株式会社メルコイン設立に関するお知らせ」2021/4/2発表)。
進むブロックチェーン技術活用、金融以外へ
ブロックチェーンは、期待されているだけにとどまらず、金融以外の領域でも実際の活用が始まりつつあります。
電気自動車の購入やワクチン接種の管理に
暗号資産のうち、ビットコインなどは以前から商品購入やサービス利用の決済手段として使われてきました。とはいえ、テスラの電気自動車(EV)がビットコインで買えるようになったのには驚きました。
米国ニューヨーク州では、COVID-19ワクチンの接種状況などを証明するため、ブロックチェーン技術をベースとするスマートフォン用アプリ「Excelsior Pass」をリリースしました。IBMの「Digital Health Pass」というソリューションをベースに開発したそうです。
最近は「NFT」が話題
2021年に入ってからは、「非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)」と呼ばれるブロックチェーン応用技術への注目が集まっています。ツイッターの創業者で現CEOのジャック・ドーシー氏がNFTを使って世界初のツイートを競売にかけ、3億円を上回る金額で落札されたりしたからです。
NFTは、画像や音声、動画などのデジタルデータを保護し、所有権を設定するための技術です。デジタル著作権管理(DRM)と異なり、データのコピーなどを防ぐことはできませんが、データの所有者や識別情報をブロックチェーンで証明します。つまり、"唯一無二”だと証明することでデジタルデータに資産価値を生じさせることができるのです。
芸術界では特に注目度が高く、たとえば、村上隆氏はNFT取引サイトのOpenSeaに「Murakami.Flowers」という作品を出品しています。
このようにブロックチェーンの応用可能な分野は多種多様です。金融やアートの領域にとどまらず、セキュリティを担保したデータ基盤の構築が欠かせない業務システムの領域でも活用が期待されています。そのため、IDCなどが予測したように、ブロックチェーン関連市場の可能性も広大なはずです。