経産省と東証が約500社から選ぶ「DX銘柄2021」 グランプリ2社のDX施策はどこがスゴい?
DX銘柄は、先進的なDX施策に取り組む企業をPRする狙いで創設された国の顕彰制度です。2015年から毎年上場企業を対象に調査、結果を発表しており、前身の「攻めのIT経営銘柄」を含めて今回で7回目を数えます。
今回は経産省の調査に回答した企業464社を選定対象とし、アナリストや監査法人代表など有識者7人でつくるDX銘柄評価委員会が、DX施策の企業価値貢献やDX実現能力などを評価指標に、業種ごとに1〜2社を選定しました。
グランプリは日立製作所とSREホールディングス
注目すべきは、選定要件に2020年5月に施行された改正情報処理促進法に基づくDX認定制度に申請していることが条件に加わった点です。同認定制度は、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応した企業を国が認定するものであることから、今回の選定企業28社はこれまで以上にDX推進に強い意識を持っていると考えられます。
DX推進により高い意識を持っていたとみられる今回の選定企業はどのようなDX施策に取り組んできたのでしょうか。グランプリに選ばれた日立製作所とSREホールディングスの2社に絞り、取り組みをご紹介します。
アナログだった不動産業界でDX
SREホールディングスは、ソニーの新規事業創出の取り組みの第1弾として2014年4月に設立した企業です。一般消費者向けに不動産仲介サービスを展開する一方、ITプラットフォームにも参入し、AI技術を活用した事業を展開。18年からは、自社のAI技術を他業界の事業者に提供する100%子会社の「SRE AI Partners」を設立し、AIソリューションを本格展開してきました。
SREホールディングスの事業そのものがDXと言えるのですが、DX銘柄2021でとりわけ評価されたのが、クラウドサービスを使った自社不動産の仲介事業の効率化です。
同社は、売手と買手それぞれに専任の担当者をおく片手仲介を展開しつつ、2015年から売手の集客と売手の仲介業務、買手集客、契約業務の4つのフェーズで自社不動産事業の効率化を行いました。
査定書作成の時間が従前の18分の1に削減
先駆的だったのが、売手の仲介業務のフェーズです。ソニーのAI技術を活用した不動産価格推定エンジンを開発し、マンションや戸建、土地といった多様な不動産の成約想定価格を提供。180分程度かかる査定書の作成の時間を10分に削減するなどの成果をあげました。
また、買手集客では、AIが顧客の希望にかなった物件情報や査定情報を作成し、自動で追客メールを送信するAIマーケティングオートメーション(MA)を開発。追客メールの作成時間を年間600時間削減した上に、過去反響の掘り起こしにつなげました。
不動産の売買交渉の山場となる契約業務では、重要事項説明書や売買契約書の作成を半自動化するクラウドサービスを開発し、作業効率が飛躍的に向上したと言います。
異業種企業にAIソリューションを提供
同社のDXの強みはこうした社内向けの取り組みだけではありません。SRE AI Partnersと共同でSaaSプロダクトを他社に提供している点も、同社のDX施策の真骨頂といえます。
このAI SaaSプロダクトの提供は、自社不動産事業の効率化で培ったノウハウやデータを、モジュール製品のように特定業界に応用し、AIクラウドサービスやコンサルティングサービスとして業界各社に提供する仕組みです。
現在、エネルギーや不動産などの各業界の企業2〜3社とパートナー契約を締結し、パートナーが保有するデータやナレッジと、SREホールディングスのAI技術を組み合わせたサービスを開発・展開を進めています。また、今後はAI技術を共有する提携先をESG(環境・社会・ガバナンス)など幅広い分野に広げていくとしています。
DX施策をがっつり進められた理由は驚きの体制
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