「DX白書2021」DX戦略で日本企業が米国から10年遅れるワケ
独立行政法人情報処理推進機構が発行した「DX白書2021」。前編では、調査の意図や日米のDX戦略の策定と推進の現状などについて、同機構の古明地正俊さん、今村新さんに聞きました。後編では、求められるデジタル人材やDXを支える手法と技術などを解説していただきます。
前編はこちら
【インタビュー】
独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター
イノベーション推進部長 古明地 正俊氏
イノベーション推進部 今村 新氏
日米で求める人材像が大きく異なる
―DX戦略やデジタル利活用を担う人材について、現状をどう捉えていますか
今村:上の図表をご覧ください。日本企業と米国企業のDX戦略を推進するリーダーの違いを見ると、日本企業は「リーダーシップ」(50.6%)、「実行力」(48.9%)、「コミュニケーション能力」(43.8%)を重要な資質としています。
一方、米国企業は「業績志向」(40.9%)、「顧客志向」(49.3%)、「テクノロジーリテラシー」(31.7%)などを重視しており、明らかに注目点が違います。米国企業はすべてに顧客志向が顕著であり、顧客を見た上で自社の事業を考えて、デジタルが必要だということでDXを進めています。
日本企業は、そもそもどうやってDXを実行していくか、リーダーシップを発揮してコミュニケーションを図りながら引っ張っていくかということで、それを担える人材を求めています。マインド、スキル、リーダーシップなどとリーダーに求められているものが、日米の企業では違うということが明確に出たと言えるでしょう。
量的にも質的にもデジタル人材が不足
今村:次に、推進していく人材として見た時にボリュームゾーンや質はどうなのかというと、日本の課題はまず量的に不足していることです。どうやって採用していくかいうところに悩んでいます。
一方、米国で注目するのは、「過不足はない」と43.6%が答えているところです。日本が15.6%ですから、大きな開きがあります。一定レベルの人たちが既に社内にいたり、内製化したりと、人材をしっかりと抱えた上で仕事ができている企業が米国に多いと言えます。
質的に見ても「過不足がない」という回答が、米国企業では47.2%、日本企業は14.8%ですから、米国では質的にも自社で求めている人材が比較的社内にいるという状態にあります。これらからも、日本の人材不足や採用に関する課題が大きいというのが、改めてクローズアップされてきます。
日本では教育、研修の機会が乏しい
今村:次に、社内人材の学び直しをどうしているかを見てみましょう。日本企業では、「全社員対象での実施」が7.9%、「会社選抜による特定社員向けの実施」が16.1%であるのに対して、米国企業は、それぞれが37.4%と34.7%となっており、学び直しの方針の有無の差が大きいことがわかります。
さらに、ITリテラシーを持つことが重要であるという話も聞いています。「認識・把握している」を見ると日本企業は7.9%、米国は48%と、明らかに社員のITリテラシーレベルの把握状況が大きく異なることが見えてきます。
では、社員のITリテラシーの向上に関する新しい施策が打たれているかというと、日本企業は「社内研修・教育プランを実施している」が22%に対して、米国企業では54.5%で2倍以上の差が出ています。
最後に、変革を推進するための重要な取り組みで比較してみると、差がほとんどありませんでした。何が重要かと日本企業もわかってはいるものの、施策が打てていない、もしくはプログラムが展開できていないという状況であると言って良いでしょう。
経営がリーダーシップを持って取り組まない限り、進まないというのが見えてきます。ここは日米企業での大きな違いです。
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