タレントマネジメントシステムを選定するために、まず必要な要件を洗い出す必要があります。その後比較表でサービスを絞り込んで、試験的に導入する流れがおすすめです。具体的な比較方法は、こちらの記事にまとめています。

タレントマネジメントシステムとは、社員の有する経験やスキル、特性などの情報をデータ化し、一元的に管理できるシステムです。企業の収益を最大化するため、人事戦略に基づいて人材を有効活用するのが目的のシステムであり、うまく運用できれば適材適所の人材配置が可能になります。

さらに蓄積したデータを利用して社員教育を施すことにより、ES（従業員満足度）も向上し、事業収益の拡大にもつながります。

人事評価システムと同一視される場合もありますが、タレントマネジメントシステムは人材の情報を収集・管理するだけでなく、人事戦略の構築と実現に役立つ機能が多く実装されているのが特徴です。

【社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境の構築】

もともと、タレントマネジメントは90年代にアメリカで誕生した考え方で、2000年代には日本でも取り入れる企業が出てきています。
とりわけホワイトカラーの生産性が低いとされている日本企業において、社員の生産性の向上は急務であり、そのためには、各人が強みを発揮できる環境の構築が必要でした。

そこで、タレントマネジメントシステムを活用して、社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を構築し、組織全体の生産性向上を目指す企業が増えてきたのです。

近年は社員の経験やスキル、特性をデータ化し、多角的に分析することで、最適な人材マネジメントの実現を目指すのが一般的になってきています。

【慢性的な人手不足による人材獲得競争の激化】

少子高齢化を背景とした慢性的な人手不足に悩む企業は多く、新たな人材の獲得に注力するとともに、既存の経営資源をいかに効率的に活用するか、真剣に考えなくてはならない企業が増えている状況です。

たんに優秀な人材を獲得するだけでなく、適切な人材マネジメントによる生産性向上の必要性を強く感じている経営者が多く、タレントマネジメントの概念が積極的に導入される一因となっています。

優秀な人材に長く働いてもらうためにも、さまざまな福利厚生に加えて、一人ひとりの経験やスキルに関する情報を管理・分析し、それぞれが強みを発揮できる人材配置が求められます。

【人材データの一元管理が可能】

タレントマネジメントシステムを導入する最大のメリットは、各所に散在している人材データの一元的な管理が可能になる点です。

社員のこれまでの実績や能力、スキル、キャリアプランや行動特性など、さまざまな情報をデータ化して管理できるので、人事評価や人材配置に広く活用できます。

あらゆる人事データを統合管理することで、データの管理業務が効率化・簡略化でき、人事部の負担が軽減されるだけでなく、必要な情報をすぐに取り出せる環境を構築できます。

【最適な人材配置を実現できる】

一人ひとりの社員の情報を管理・分析することで、それぞれの強みを十分に発揮できる人材配置を実現できます。

システムに蓄積された人材データを多角的に分析し、客観的な視点で人材の強みや弱みを明確にできるのが、タレントマネジメントシステムの特徴です。

日常業務の効率化のみならず、各部門が協力体制を敷いて進めるプロジェクトの編成や、新規事業の立ち上げなどの場面で、必要な人材の割り当てがしやすくなります。

【社員のモチベーションの向上と定着率アップにつながる】

客観的な情報に基づいた正当な人事評価が可能になるため、社員の仕事へのモチベーションの向上と、職場への定着率アップが期待できます。各社員に対してデータに基づいた適切な職責や役割を与えられるので、社員側も自らの能力を最大限発揮できる環境で、存分に働けるようになります。

当然、全ての社員に最適な役割を与えるのは困難ですが、まずは全体最適な人材配置を目指す中で、徐々に一人ひとりに合った職責を与えるようにすれば、社員のエンゲージメントを高められるでしょう。貴重な人材の流出を防ぐことにもつながります。

【運用が定着するまで手間とコストがかかる】

タレントマネジメントシステムは、他の管理システムと比較しても、かなり大規模に導入されるケースが多く、相応の導入費用と手間がかかります。

導入コストの負担に加えて、既存の人事データを統合するのに時間を要するため、一時的に人事担当者への負担が大きくなる可能性が高いでしょう。

できるだけ簡単に情報を入力できるシステムを選択し、導入から運用までスムーズに進められるように、右傾ら体制を整えておく必要があります。人事担当者に過度な負担をかけないように、ベンダーのサポートをうまく活用しましょう。

【既存の人事システムの変更が求められる】

導入するタレントマネジメントシステムが、既存の人事業務プロセスと完全に整合する企業はまずありません。

大なり小なりミスマッチが発生するため、人事システムの修正が求められるでしょう。企業によっては、人事部門における業務体制の大幅な変更が必要な場合もあります。

また、さまざまな人事に関する情報を一元管理できるのが、タレントマネジメントシステムの大きなメリットですが、管理項目が多くなりすぎると、人事担当者の負担が大きくなってしまいます。管理する情報の取捨選択や優先順位付けにも工夫が必要です。

【必要な機能が実装されているか？】

タレントマネジメントシステムは、軸となる人材データベースの運用に加えて、人事評価に関する機能や採用管理、離職防止に役立つものなど、多様な機能が実装されています。製品によって機能構成が異なるため、まずは必要な機能が利用できるかを必ず確認しなければいけません。

人事評価の支援に特化したタイプや目標管理に強みをもつタイプ、人材活用に役立つ機能が多く実装されているタイプなどがあるので、環境に合った製品やサービスを慎重に選択しましょう。

【システムの使いやすさや連携性】

人事担当者はもちろん、ほかの部署の人員も利用する機会が多いタレントマネジメントシステムでは、操作性や使い勝手も重要な選択基準です。

誰にでも直感的に使いやすいシステムを選ぶのが大前提で、ほかのツールやシステムとの連携性も意識する必要があります。

すでに社内で運用しているツールやシステムと連携できれば、既存の運用体制の延長でタレントマネジメントシステムを導入できるため、現場での利用が定着しやすいでしょう。ベンダーによる十分なサポートが受けられるかも、事前に必ず確認しておくことが大事です。

タレントマネジメントシステムの導入に失敗しないためには、導入目的を明らかにして、全社的に共有しておく必要があります。

何のためにシステムを導入するのか明らかになっていないと、既存の体制から新たにシステムを活用した体制への移行が困難になってしまうでしょう。現場の社員が必要性を感じていないため、使われずに放置されてしまうケースは決して珍しくありません。

「宝の持ち腐れ」にならないように、システムの必要性や利便性を周知し、導入担当者が中心となって綿密な導入計画を立てておきましょう。導入後も定期的に効果を測定し、最適な運用体制を模索する必要があります。