2026年3月開催の「BOXIL EXPO 人事・総務展 2026 春」にて、株式会社PHONE APPLIの渡辺 恭平氏が登壇しました。導入企業の約半数が直面している「エンゲージメントサーベイが現場に響かない」という壁を突破するための組織改善メソッドが公開されました。
人事が数字に振り回される現状を卒業し、現場主導でエンゲージメントを高めていくための仕組みとは何か。本セミナーでは、5分で完了するサーベイ活用術や、株式会社湖池屋の事例を通じた「認識ギャップの埋め方」など、明日から使えるヒントが多数紹介されました。
組織の「本音」を引き出し、変化を実感させるためのポイントをレポートします。
セミナー概要
なぜ、サーベイの結果は現場に響かないのか? 「数字に振り回される人事」を卒業するための組織改善メソッド
■開催日
2026年3月5日(木) 11:45-12:05
■登壇者
渡辺 恭平 氏
株式会社PHONE APPLI 事業戦略部 兼 キャリアデベロップメント 組織学会 準会員
株式会社PHONE APPLIに入社。営業職を経て、ウェルビーイング経営のコンサルティングに携わり、現在は「アライアンス」「新規事業開発」「人材・組織開発」の三本柱で活動中。また、組織学会や人的資本経営BARなどの外部コミュニティにも積極的に参加し、お客様だけでなく、自社の組織課題の解決にも取り組んでいる。
株式会社PHONE APPLI 公式サイト
従業員満足度調査ツール「ManejaS」
エンゲージメント向上は「売上」と「離職率」に直結する

まず渡辺氏は、エンゲージメントサーベイへの関心が高まっている理由をデータで示しました。
エンゲージメントスコアと売上の関係を示すデータでは、スコアのランクが上がるにつれて翌年の売上伸長率も向上する傾向が確認されています。また、エンゲージメントスコアと離職率の関係を示すデータでは、スコアが高い企業ほど離職率が低下した企業の割合が多く、両者に明確な相関があることが示されています。
こうしたデータを背景に、「従業員エンゲージメントを高めることが企業成長に繋がる」という認識が広まり、サーベイ導入の機運が高まっています。
実際、2025年時点でエンゲージメントサーベイを導入済みの企業は全体の47%に達しており、従業員規模が大きい企業ほど導入率が高い傾向があります。市場規模も年々拡大しており、導入企業数は今後も増加していくと見られます。
また、サーベイを実施する目的として最も多いのは「組織改善に向けた施策の検討材料とすること」であり、人事担当者がサーベイを通じて職場環境の改善を目指していることがわかります。
現場の7割が抱く不満と、人事のブラックボックス化

サーベイ導入が進む一方で、うまく活用できていない企業も多く存在します。人事担当者が抱える主な悩みとして、以下のようなものが挙げられます。
- 定期的に回答を集めるだけになっている
- サーベイの回答率が低い
- 個別の問題が見えず、組織課題を解決しきれていない
では、現場からはサーベイがどのように見えているのでしょうか。渡辺氏が示したデータによると、約7割の従業員が、働きやすさや組織への満足度に関する社内アンケートに対して「不満に感じたことがある」と回答しています。※
現場からは、具体的に以下のような声が出ています。
- 回答した結果が何に活かされているかわからない
- 回答するのに時間がかかる
- 回答した課題や不満に対する解決策が実施されていない
人事が抱える「施策まで実施できていない」という悩みは、そのまま現場の不満に直結しています。サーベイを実施したにもかかわらず具体的な改善アクションが取られないことが、従業員のサーベイに対する信頼を失わせる大きな要因となっていると渡辺氏は説きました。
※出典:バヅクリ株式会社「エンゲージメントサーベイツールに関するアンケート調査」(2026年3月23日閲覧)
組織改善を成功に導く3つのカギ

渡辺氏は、サーベイの全体像を「従業員の回答」「振り返りと課題抽出」「アクションの実行」という3つのフェーズに整理し、それぞれで押さえるべきポイントを解説しました。
1:従業員の回答:「サーベイをやる意味」を社員に持たせる
サーベイへの回答率や回答の質を高めるためには、まず従業員に「なぜこのサーベイに答えるのか」を納得してもらうことが不可欠です。具体的には、サーベイの実施目的や従業員が負担に感じる点を丁寧に説明した上で、「回答することでどのようなメリットがあるのか」「回答結果は誰がどのように活用するのか」を明示することが重要です。こうした取り組みによって回答時の動機付けが生まれ、本音の回答を引き出すことができるようになります。
一方、うまくいかない組織では「とりあえず可視化してみているだけ」「設問数・頻度・内容が従業員の負担として大きすぎる」「サーベイを実施してもアクションがない」「誰がサーベイの結果を見ているかわからない」といった状態に陥りがちです。こうした状態が続くと、そもそも人事施策への信頼が失われ、今後の協力が得られにくくなってしまいます。
渡辺氏はこの状況を「本来の目的は『組織を改善すること』であるはずが、『サーベイを取ること』が手段から目的に変わってしまっている。これがうまくいかない組織の特徴です。」と説明しました。
2:振り返りと課題抽出:速やかにリアクションする
サーベイ結果を受け取った後のフェーズで重要なのは、「タイムリーにリアクションをすること」です。
「何か大きな施策を打たなければならない」と身構える必要はありません。まずアクションが必要な課題があるかどうかを確認し、緊急の課題がなかったとしても「しっかり受け止めました」と従業員に伝えるだけで、「見てもらえている」という実感につながります。
アクションが必要な課題が見つかった場合は、人事が動くべき課題か、マネージャーが動くべき課題かを明確にした上で、すぐに解決できるものは即実行し、時間を要するものについては「受け止めた上で今後検討する」という方針を示すことが大切です。
うまくいかない組織では、「結果を見て課題を整理する」という分析の段階に時間がかかりすぎてしまい、その後の施策の実行がまったく進まないケースが多く見られます。これが従業員には「回答したのに何もアクションされない」「誰がどのようにデータを見ているかわからない」というブラックボックス化として映ってしまいます。
渡辺氏自身もこの経験をしたといいます。「Formsでサーベイを集計し、Excelでデータを分析し、レポートを作成し……と進めると、他の業務を並行しているため何営業日もかかってしまう。アウトプットを出したときには『あ、そんなのもあったね』という状態になってしまうことがある」と話しました。こうした状況を避けるためにも、ツールを活用して分析の工数を削減していくことが重要だと強調しました。
3:アクションの実行:人事と現場がセットで動ける仕組みをつくる
アクションの実行フェーズでは、「人事主導のアクション」と「現場主導のアクション」の両方が適切に機能していることが重要です。
人事主導のアクションとしては、全社横断的な施策や長期スパンの施策、またメンタルヘルス不調などへの個別フォローが挙げられます。一方、現場主導のアクションとしては、定性的な情報も踏まえながらスピーディーかつ高頻度で改善を回していくこと、より個別最適化した形で取り組みを推進していくことが求められます。
しかしエンゲージメントサーベイを導入している企業でよくある課題として、「人事がすべてを抱え込んでしまい、現場がおろそかになってしまう」というケースがあります。現場にサーベイの結果を共有している企業も多いですが、渡辺氏は「そのデータは本当に現場で使いやすいデータになっていますか?」と問いかけます。
現場にデータを手渡すのであれば、現場がアクションしやすい形に整えた上で渡す必要があります。人事と現場が乖離してしまうことこそが、「なぜサーベイの結果が現場に響かないのか」という問いの核心にある、と渡辺氏は指摘しています。
サーベイだけがすべてではない。4象限で捉えるデータ活用

渡辺氏はさらに、「サーベイだけが全てではない」という重要な視点を提示しました。組織改善に活用できるデータを4象限で整理すると、次のようになります。
- 定量×主観:エンゲージメントサーベイのスコア(これが一般的なサーベイデータ)
- 定量×客観:勤怠データ、目標達成率など
- 定性×客観:異動歴、資格情報など
- 定性×主観:価値観など
エンゲージメントサーベイは「定量×主観」の領域にあたりますが、組織を本当に良くするためには、これら4象限のデータを総合的に活用することが重要です。
サーベイの数字だけを見るのではなく、客観的な行動データや定性的な情報も合わせて参照することで、より実態に即した組織改善が可能になります。
PHONE APPLIの「ManejaS」とは

最後に渡辺氏は、これらの課題を解決するためのソリューションとして、PHONE APPLIが提供する「ManejaS(マネジャス)」を紹介しました。ManejaSは、マネジメントの「わからない」を解決し、感覚に頼らないマネジメントを支援するプロダクトです。
1:マネジメントフィードバック
マネジメントに必要とされる8つの要素を定義し、マネージャー自身による自己評価(5段階)と、メンバーによるマネージャーへの評価(「現在どのようにマネジメントされているか」「どのようにマネジメントしてほしいか」の5段階スコア)を収集します。これにより、マネージャーは「自分が思っていた以上にできていなかった点」「メンバーがもっとやってほしいと思っている点」を客観的に把握した上でアクションを取ることができます。
人事担当者向けには、マネージャーを横軸・マネジメントの8要素を縦軸にした一覧表示で、「誰が何に困っているか」を一目で把握できます。これにより、フォロー対象の優先順位付けや、研修・改善施策の打ち手を検討する際に活用することが可能です。
2:性格傾向診断
メンバーが働く上で何を大切にしているのか、その人の強みは何かを把握した上でマネジメントを行えるよう、マネージャーをサポートする機能です。
3:エンゲージメントサーベイ
マネジメントフィードバックと性格傾向診断を踏まえた上でマネージャーとメンバーのコミュニケーションが深まった結果、それがエンゲージメントサーベイにどう反映されるのかを、ひとつのソリューション内でセットとして確認できます。
ManejaS活用イメージ

マネージャーが「マネジメントフィードバック」と「性格傾向診断」の結果を意識しながら日々のマネジメントや1on1を実践することで、メンバーとの信頼関係が深まりエンゲージメントが向上していきます。そのプロセスを定期的に測定し改善を回し続けることができます。
人事担当者にとっては、エンゲージメントサーベイの結果に加えて「マネジメントフィードバック」という現場の実態が見えるデータも活用できるため、より実態に合わせた研修・支援を企画し、マネージャー・メンバーそれぞれに対してリアルタイムで必要な支援を届けることが可能になります。
さらに、人事とマネージャーがセットで動きながら効果測定を回す仕組みを整えることで、メンバーの変化を人事・現場ともにリアルタイムでキャッチアップし、休職や離職のリスクへの早期対応も実現できます。
ManejaS導入事例:株式会社湖池屋

ManejaSの活用事例として、株式会社湖池屋の取り組みが紹介されました。同社では、社歴の浅い若手メンバーがベテラン社員の数を上回る状況となり、世代間のコミュニケーションギャップが課題となっていました。
そこでまず、月1回の1on1面談をスタートさせましたが、実際に運用してみると「何を話せばいいかわからず数分で終わってしまうペアがいる」「マネージャーが一方的に話すだけの1on1になってしまっているケースがある」といった新たな課題が浮上しました。
こうした状況を受け、マネージャーとメンバーが認識のギャップを定量的に把握した上でコミュニケーションを取れるようにすることを目的に、ManejaSを採用しました。1回あたり約5分で完了するアンケート形式であるため、従業員への負担が少ない点も採用の決め手となりました。
「数字に振り回される人事」を卒業するために
エンゲージメントサーベイは、「取ること」が目的になってしまった瞬間に機能しなくなります。サーベイの結果を現場に響かせるためには、従業員への意義づけ、タイムリーなリアクション、そして人事と現場が連携して動ける仕組みという3つの要素を整えることが不可欠です。
また、サーベイ単体に頼るのではなく、定量・定性・主観・客観という4象限のデータを総合的に活用することで、より実態に即した組織改善が可能になります。
「数字に振り回される人事」から脱却し、現場を動かすサーベイ運用の実現に向けて、ぜひ本セミナーの内容を参考にしてみてください。
