なぜAI-OCR「AISpect」はプレビュー画面をなくしたのか?開発者が語る"本当の使いやすさ"とは

会計事務所の現場が抱える課題から生まれた、非定型帳票の読み取りに強いAI-OCR。クリックやドラッグ&ドロップを中心としたシンプルな操作性と、生成AIによる柔軟な情報抽出が特徴となっている。提供元の株式会社ASAHI Accounting Robot研究所は、RPAの導入支援もしているので、読み取り前後のデータ接続までスムーズである。
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鈴木 達也氏
株式会社ASAHI Accounting Robot研究所
AI-OCR「AISpect」をはじめとするAI事業の責任者。事業計画から開発までを一貫して統括し、現場のニーズをダイレクトに反映したサービス開発を推進している。ニックネームは「T2」。
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会計事務所の「使えない」から生まれた、非定型文書への強いこだわり
―――まず、AISpectが開発された背景についてお聞かせください。どのような課題から生まれたサービスなのでしょうか?
AISpectは、私たちの母体である税理士法人あさひ会計が現場で抱える切実な悩みから生まれました。日々の業務では、お客様から請求書や領収書、通帳のコピーといった多種多様な書類をお預かりします。これらの書類は、会社や店舗によって書式が全く異なる「非定型帳票」でした。
私たちが当時導入していた他社製のOCRは、読み取る場所があらかじめ決まっている、いわゆる「定型帳票」、例えばアンケート用紙のような書類には強いツールでした。しかし、会計業務の現場で扱う書類のほとんどは非定型帳票です。そのため、せっかくOCRを導入しても、うまく読み取れないケースが後を絶ちませんでした。

―――フォーマットの定まらない書類が多い会計業務の現場では、定型帳票向けのOCRはマッチしなかったのですね。
その通りです。さらに問題を複雑にしていたのが、たとえ社内で「定型」として扱っている申請書のような書類でさえ、現実の業務では「非定型」になってしまうことでした。お客様がFAXで送ってくださると印字が少し傾いたり、A4用紙の真ん中ではなく端に寄せてコピーされたりします。
こうしたほんの少しのズレが、従来のOCRにとっては致命的でした。読み取るべき場所が固定されているため、そこから少しでも情報がずれると、全く認識できなくなってしまいます。これでは、担当者がOCRの結果を一つひとつ確認する手間の方が大きくなり、かえって非効率です。
この課題を根本から解決するために、どんなフォーマットでも、書類のどこに書かれていても、情報を探し出して読み取れるOCRを作ろうと開発したのが、AISpectです。実際、お客様からも非定型帳票の読み取り精度に対して、高い評価をいただいています。
現場が使いこなせる「圧倒的なシンプルさ」
―――現場が使いやすいことを追求するうえで、他にこだわった点はありますか?
操作の圧倒的なシンプルさです。これも、他社ツールを導入した際に「操作が難しくて覚えられない」という理由で現場に定着しなかった苦い経験が元になっています。どんなに高機能でも、現場の誰もが使いこなせなければ、結局は一部の詳しい人が使うだけの宝の持ち腐れになってしまいます。
私たちが目指したのは、PC操作に不慣れな人でも、マニュアルを読まなくても、見ただけで「こうすればいいんだな」と直感的に理解できるツールです。多機能であるがゆえに設定項目が複雑だったり、画面にボタンが多すぎたりすると、それだけで使うことへの心理的なハードルが上がってしまいます。まずはツールに触ってもらうこと。それが、私たちがシンプルさに徹底的にこだわった理由です。
画像提供:ASAHI Accounting Robot 研究所
―――その思想は、具体的にツールのどのような機能に反映されているのでしょうか?
例えば、AISpectには多くのOCRツールが採用するプレビュー画面での修正機能を、あえて搭載していません。プレビュー画面での作業は、そのツールの操作を覚える必要があります。それならば、誰もが日常的に使い慣れているExcelで修正する方が簡単で早いという結論に至りました。ファイルをドラッグ&ドロップすれば、すぐにCSV形式で結果が出力される。この手軽さが、現場での定着に不可欠だと考えています。
―――操作をシンプルにすることで得られたメリットはありますか?
操作が直感的なので、使い方に関するお問い合わせがほとんどありません。ユーザー自身で解決できるので、サポートへの負担が非常に少なく、その分、私たちは新機能の開発にリソースを集中させられています。ユーザーの使いやすさが、結果的にサービスの進化を加速させるという、理想的な好循環が生まれていると感じています。
会計事務所から製造業へ。業界特化で広がる活用シーン
―――どのような業界での利用が多いのでしょうか?
その成り立ちから、やはり会計事務所のお客様が最も多いです。私たちの会計事務所が日々直面していた課題を解決するために作ったツールなので、会計業務特有のニーズに深く応えられる設計になっています。例えば、通帳やクレジットカード明細の読み取りは、金融機関ごとにフォーマットが全く違いますし、コピーのされ方一つでレイアウトが大きく変わってしまいます。
しかし、AISpectはどこに何が書かれているかをAIが判断するため、こうした変化に強く、安定してデータを抽出できます。トライアルを申し込まれた会計事務所様が、打ち合わせなしで即日契約に至るケースも多く、その手軽さと効果を実感していただいています。
―――そのほかの業界で導入されるケースはありますか?
次に導入が進んでいるのが製造業のお客様です。きっかけは、私たちがRPA導入支援を行っていたお客様から「図面の部品表も読めるのでは?」とお声がけいただいたことでした。図面上の部品表は、記載される位置や形式がバラバラで、従来のOCRでは対応が困難でしたが、AISpectの非定型文書を読み取る技術がその課題を解決しました。
画像提供:ASAHI Accounting Robot 研究所
さらに、生成AIを活用することで、その可能性は大きく広がっています。例えば「図面上のトイレの数をカウントする」といった、文字情報を超えた指示にも応えられるようになりました。これはもはやOCRの領域を超えていますが、お客様の「これをデータ化したい」という本質的なニーズに応えるための進化だと捉えています。
必要な時に必要な分だけ使ってほしい。柔軟な料金プラン
―――導入を検討するうえで、料金体系についても教えていただけますか?
AISpectでは、ユーザーがコストを予測しやすいよう、読み取る枚数に応じたシンプルな課金体系を採用しています。「1項目あたりいくら」といった複雑な計算は不要です。
また、契約期間は1か月単位から可能で、一度利用を停止していても18か月以内なら初期費用がかかりません。これにより「繁忙期だけ使いたい」「このキャンペーン期間中だけデータ化したい」といったスポットでの利用にも柔軟に対応できます。
出典:ASAHI Accounting Robot 研究所「ご利用料金 - AI OCR【AISpect】」
実際に、商店街の単発的なレシートキャンペーンにおいて利用いただいた事例もあります。無駄な固定費を発生させず、本当に必要な時に必要な分だけ使ってほしい。そんな思いから、この料金プランを設定しています。
AIの進化を追い風に、未来の業務効率化を見据える
―――直近のアップデートや、今後の開発についてお聞かせください。
直近の大きな進化は、やはり生成AIと、ユーザーが自由に指示を出せるプロンプト機能の組み合わせです。これにより、単に文字を読むだけでなく、「この情報とこの情報を組み合わせて、こういう形式で出力してほしい」といった、より高度で柔軟な指示に対応できるようになりました。読み取り能力は飛躍的に向上したと自負しています。
今後は、この生成AIを活用した帳票テンプレートを拡充し、ユーザーがプロンプトを自作しなくても専門的な帳票を読み取れるようにしていきます。また、チーム内で優れたプロンプトを共有できる機能の開発や、エンタープライズに向けた管理機能の強化も進めていく予定です。

―――開発において、特に重視していることは何ですか?
私たちが重視しているのは、スピード感とトレンドへの対応です。AI技術は日進月歩で進化しており、新たな技術が登場すれば、それをいかに早く我々のサービスに組み込み、お客様の業務効率化につなげられるかが勝負だと考えています。
さらにその先の未来として、私たちは図形の読み取りに挑戦しています。建設業のお客様から「図面上のコンセントのシンボルを数えたい」のような図形を読み取りたいご要望が多く寄せられていることから、AIの進化を追い風に、1〜2年以内の実現を目指しています。
諦めていた帳票のデータ化に、ぜひ一度お試しを
―――最後に、インタビューをご覧の方へメッセージをお願いします。
AISpectの最大の強みは、シンプルなOCRと最新の生成AIの組み合わせです。この力によって、これまで「これはフォーマットが特殊だから」「手書きが混ざっているから」とデータ化を諦めていた多くの帳票が、読み取りの対象になります。
一度OCRで挫折した経験のある方にこそ、ぜひもう一度、この新しい可能性を試していただきたいです。無料トライアルもご用意していますので、まずはお手元の帳票で、その実力を体感してみてください。ご連絡をお待ちしております。