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クラウドサインの急成長を支えるセールス体制の最適化とテック活用
「クラウドサイン」は、契約書の製本・郵送・押印・スキャンなどにかかる手間を省き、契約締結のリードタイムを短縮するとともに、コスト削減も可能にするクラウド型の電子契約サービスだ。2015年にリリースされた新しいサービスでありながら、導入企業はすでに4万社を突破するほど高い人気を集めている。
「クラウドサイン」を運営する弁護士ドットコムのクラウドサイン事業部では、海外企業を参考にしたセールス体制を構築し、クラウドサインをはじめとするさまざまなセールステックサービスを活用することで、営業の効率化やスピード化を実現させたという。
本記事では、クラウドサイン事業部でセールスマネージャーを務める平皓瑛氏へのインタビューをもとに、生産性の高いセールス体制を構築する方法を解き明かしていく。
増え続けるリードに対応するために最善のセールス体制を模索
平氏は2017年10月入社。当時の状況をこう振り返る。
「社内のセールスの仕組みや体制が整っておらず、リードの対応や商談に追われる毎日でした。また、営業活動の進捗や課題分析ができていないことや、弊社が導入しているツールごとの連携が取れずデータが分散していることも課題でした。幸い受注には結びついていましたが、今後もリードがどんどん増えていく中で、組織としてどう対処すべきかを問われることになりました」。
インサイドとフィールドにセールス機能を分割
そんな状況を受けて2018年から取り組んだのが、セールス体制の見直しだ。まずはセールス体制を「インサイドセールス」と「フィールドセールス」に分け、顧客の規模やステータスに応じて役割を変えた(詳細は後述)。
「新体制を構築したことで、チームごとの役割がはっきりして、個人とチームの目標も明確になりました。その結果、アポ化率や受注率も向上しました。具体的な数値は非公開となりますが、一般的なSaaS企業で求められる数値よりも高い値となっています」。
実際、「クラウドサイン」の導入企業数の推移を見ると、平氏が入社した2017年10月時点で約1万社だったものが、その後の1年半で約4万社まで伸びてきている。言い換えるなら、年間2万社の成約を実現するための強固なセールス体制が整ったということだ。
海外モデルを参考にセールス体制を一新! 育成体制も整備
日本国内では、インサイドセールスやフィールドセールスといった概念はまだまだ浸透し切っておらず、営業スタッフ一人ひとりがアポ取りから商談まで行っている企業は多い。
そもそもインサイドセールスとは、リードに対して、メールや電話、Web会議などのツールを活用しながら、非対面で営業活動を行う営業スタイルを指す。「内勤営業」や「リモートセールス」とも言われ、顧客関係の強化・維持を行いながら商談機会を創出することが主な目的だ。
インサイドセールスはもともと、国土が広く訪問による営業が困難なアメリカで生まれた手法で、商談を行うフィールドセールスと組み合わせることによって、より効率的な営業活動が実現できるとされている。
インサイドセールス/SDRとBDR
クラウドサインのセールス体制は下図のとおり。インサイドセールスの役割は、顧客の問い合わせ(リード)に対応する「SDR」(Sales Development Representative)と、新規獲得を進める「BDR」(Business Development Representative)のほか、一部オンライン営業も含まれる。なお、今後はインサイドセールスというひとつのくくりではなく、SDRとBDRが独立したチーム体制を構築していく。
「SDRでは、MAツールのデータを参考にしながら、ホットリードに対して電話やメールでアプローチして商談につなげつつ、コールドリードをナーチャリングして質の高いリードに育てていきます。一方、BDRはクラウドサインにとって重要な業界の顧客をピンポイントで狙い、新規アポにつなげるものとなります」。
フィールドセールス/訪問とオンライン
フィールドセールスは、企業規模などによって、企業に訪問して商談する方法と、オンライン上で商談する方法の2つに分けている。また、3か月以上進捗がない商談については、失注扱いとして再びSDRに回し、リナーチャリングするようにしているという。また、フィールドセールスについても、インサイドセールスと同様、今後はオンラインとフィールドが独立したチーム体制となる。
「このほか、成約後のカスタマーサポート(CS)の対応にも注力しています。平均30秒以内でのチャット応答を実現しており、顧客満足度が100%となる月もあります。迅速なファーストアクションが高い顧客満足度につながっていると思います」。
スタッフ育成の仕組みを構築
クラウドサインでは、セールス体制を安定的に運用していくために、セールススタッフの育成を目的とした仕組みも設けている。新人をはじめとするスタッフにセールスとしての基礎知識やノウハウを行き渡らせることで、業務の属人化を防ぎ、スキルレベルを平準化させることが目的だ。
「セールスの業務理解やスキルレベルにバラツキがあると、体制がうまく回らなくなってしまいます。この仕組みについては、これからも社内体制の変化に伴い最適化していきます」。
クラウドサインをはじめとするセールステックをフル活用
前述したとおり、クラウドサインが少人数で大量のリードをさばき、アポや受注に結びつけているのはセールスの組織体制の改革によるところが大きい。そしてもうひとつ、セールステックの活用も営業の効率化やスピード化に大きく貢献している。
「きちんと体制を整えても人的な作業には限界があります。これが、セールステックサービスを導入・整備した背景です。また、弊社では自社サービスを自社で試すドッグフーディングも実践しています。実際、クラウドサインをはじめとするセールステックサービスの活用によって、アポ化からクロージングまでがスムーズに行えるようになりました」(平氏)。
クラウドサインとCRMやSFAを連携
クラウドサインでは、まず社内でバラバラに使われていたCRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)を「クラウドサイン」と連携させることで、データを統合的に扱えるようにした。加えて、書類の開封状況などが確認できるクラウドサインの機能もフルに活用することで、メールや電話で企業に確認しなくても、進捗をオンラインで確認できるようになった。
さらに、更新時期を知らせる自動アラート機能や、複数の書類を一斉送信する一括送信機能などを活用して業務の効率化を進めた。これにより、クロージングの時期の見極めや、更新日時の把握がスピーディに行えるようになったそうだ。
アポ取りや商談にもセールステックを活用
このほか、クラウドサインでは商談予約ツールやオンライン商談ツールなども積極的に活用しているという。
「商談予約ツールを使うことで、商談の日程調整が迅速に行えるようになりました。企業に都合のよい日を選んでもらってGoogleカレンダーと自動連携させているので、メールで日程調整のやり取りが繰り返されることはありません。また、商談の一部にオンライン商談ツールを活用することで、訪問数を減らし、一人あたりのアポ数を増加させています」。
まとめ
契約締結のスピード化とコスト削減、契約情報の電子化を実現できることから、多くの企業に導入されているクラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」。本記事では、クラウドサインを運営する弁護士ドットコムの事例から、生産性の高いセールス体制を構築する方法に迫ってきた。
ここまで紹介してきたとおり、生産性の高いセールス体制を実現するためには、体制の最適化とセールステックの活用がカギになる。全員がアポ取りから商談までをこなす組織の場合、業務が属人的になりがちだし、気合と根性の営業になってしまう可能性もある。また、営業にまつわる数字を見える化し、そこから効率的にアプローチすることも大切だろう。このようなクラウドサインの取り組みは、多くの企業にとって参考になるものだろう。