2027年に創業100周年を迎える株式会社バルカー。ガスケットやパッキンといったシール材のメーカーとして歩んできた同社が、製造業の設備点検をデジタル化するサービスとして展開しているのが「MONiPLAT(モニプラット)」です。
TBM(Time Based Maintenance、時間基準保全)とCBM(Condition Based Maintenance、状態基準保全)を1つのプラットフォームで管理でき、導入社数は2,000社を超えています。20設備までは無料で使えるうえ、2025年9月にはIoTセンサーの計測値を点検表へ自動転記する「ZeroVisit(ゼロビジット)」もリリースしました。
今回は、同社H&S事業本部デジタルソリューション部 副部長の藤田 勇哉氏に、MONiPLATの特徴や導入効果、開発の考え方、今後の展望まで詳しくお話をうかがいました。

<お話をうかがった方>
株式会社バルカー
H&S事業本部デジタルソリューション部 副部長
藤田 勇哉氏
TBMとCBMを1つのプラットフォームで 20設備まで無料で試せる設備点検サービス

――まずは、MONiPLATがどのようなサービスなのか教えてください。
藤田氏: 製造業で従来アナログに行われてきた設備点検業務を、デジタル化して効率化するサービスです。TBM(時間基準保全)とCBM(状態基準保全)を1つのプラットフォームで管理できる点が特徴です。
TBM機能は、紙で行っていた点検業務をスマートデバイスでデジタル化するものです。CBM機能では、IoTセンサーと連携して設備の状態をとらえます。
――同じ課題を解決するほかのサービスと比べて、最も大きな強みはどこにありますか。
藤田氏: フリーミアムモデルを採用し、20設備まで無料で導入できることです。トライアルの段階ではコストがかからないため、自社の運用にフィットするかどうかを判断しやすくなっています。
資金力が潤沢ではない中小企業様でも、限られた設備でトライアルを行いやすくするためにこのような形式をとっています。
そのうえで、まず点検の効率化を進め、さらにTBMからCBMへと発展させられる点が、他社との大きな違いです。
センサーの計測値を点検表へ自動転記 現場に行かずに点検できる「ZeroVisit」
――CBM機能について、詳しく教えてください。
藤田氏: IoTセンサーを用いたサービス連携を行っています。2025年9月には、CBM機能の第1弾として「ZeroVisit」をリリースしました。
点検対象の温度・湿度・照度などのデータをIoTセンサーで計測して遠隔監視し、そのデータを点検表へ自動で転記できるサービスです。TBMで効率化した点検業務を、さらに効率化できます。
――点検表への転記まで自動になるのですね。お客様からはどのような点が評価されていますか。
藤田氏: 1つは、無線を中心としたハードウェア構成です。IoTセンサーによる遠隔監視では、これまで配線作業や工事のコスト・負荷が欠かせませんでした。無線中心にしたことでそれを抑え、パッケージとして非常に導入しやすい形になっています。
ただ、それだけでは従来の安価な遠隔監視サービスと大差がありません。私たちが最も意識したのは、センサーの遠隔監視データをTBM機能、つまり点検業務へダイレクトに連携させることです。お客様からは「効率化をさらに深めることができた」という評価をいただいています。
――他社が真似しづらいと感じる部分はどこでしょうか。
藤田氏: センサーによる遠隔監視を、最小20〜30万円から導入できるパッケージとして提供している会社は、ほとんどないと認識しています。
加えて、取得したデータを遠隔監視に使うだけでなく、従来の点検業務にそのまま活用するという思想は、これまでのサービスにはなかった画期的なものだと考えています。
――導入の決め手としては、価格と点検連携のどちらが大きいのでしょうか。
藤田氏: リリース当初は、安価な遠隔監視パッケージとして認知されていたと思います。最近は点検表と連携できることが知られるようになり、点検連携としての評価が大きくなってきました。
点検業務の効率化に加えて、計測時の読み間違いや転記ミスを防ぎ、点検を確実に行える点でも評価をいただいています。
――実際の活用例があれば教えてください。
藤田氏: ある自動車部品メーカー様の生産技術のご担当者が会社からさらなる効率化を求められていて、既存の仕組みを生かしてできることはないかとご相談をいただきました。同社ではもともとTBM機能で紙の点検をデジタル化し、効率化を進めていました。
ただ、製造環境の温度・湿度は、現場の方が見に行ってMONiPLATへ転記していました。そこで、温度・湿度を測る場所にバッテリー駆動の無線センサーを設置し、現場に行かなくても従来の点検業務に相当する作業ができる環境を整えました。本格的な運用はこれからで、具体的な変化は今後把握していく段階です。
1日1時間の削減と点検漏れ防止 下水道施設や工具管理で表れた導入効果
――導入前、お客様はどのような課題を抱えていることが多いですか。
藤田氏: 最も多いのは、点検業務がアナログで非効率であることと、点検漏れをなくして確実に安定操業を続けたいということの2点です。
ある工場では、1日に数回、人が現場へ温度を確認しに行き、その値を紙に記入していました。上長の承認を得た紙はキングファイルに保管し、さらにExcelへ転記して社内サーバーに格納する、という非常にアナログな運用です。
――記入から保管まで、何度も手作業が重なっているのですね。導入によって、どれくらい変わるのでしょうか。
藤田氏: 導入前後に立ち会った公共の下水道施設の事例では、始業前点検の準備から作業までに1日2時間、データ入力に30分、合わせて2時間半かかっていました。MONiPLATの導入後は、点検の準備・作業が90分、データ入力が0分になり、1日あたり1時間の削減につながりました。
――データ入力がゼロになるのは大きいですね。時間削減以外の効果はいかがでしょうか。
藤田氏: 点検漏れを確実に防げるようになった事例がいくつも出ています。
あるお客様では、ノギスや巻尺といった手持ちの工具を使う前に点検することが、ISOの管理で定められていました。ところが、なかなか徹底されていなかったのです。そこで、作業員が持つ工具にQRコードを貼り、読み取ってMONiPLATで点検する運用をご提案しました。その結果、運用がスムーズに回り、点検漏れも防げるようになりました。
計測機器を適切に管理できることで、検査精度の向上や不良品の流出防止、製品品質の安定にも寄与していると評価いただいています。
また、内部監査でペーパーレス化や作業性の高さを評価されたお客様もいます。年配の作業員を含めて全員が導入初日から迷わず使えたというように、シンプルな操作性も好評です。
――特に効果が出やすいのは、どのような企業ですか。
藤田氏: 多くの設備を漏れなく点検しなければならない企業です。点検対象の設備が多く、それを複数の担当者で点検し、その内容を管理者がしっかり管理する必要があるお客様ほど、効果が得られる傾向にあります。
業務としては、工場の稼働前にその日の安定生産を妨げないよう設備の健全性を確認する、日常点検・稼働前点検で特に効果が出やすいです。
――サービスを最大限に活用するために、企業側が意識しておくべきことはありますか。
藤田氏: システムはあくまで手段です。導入によって何を達成したいのかを、徹底的に意識するべきだと思います。
MONiPLATを導入する目的には、効率化と確実な点検の実施という2つの側面があります。どちらを重視するかによって、運用面でのアプローチが変わってきます。
代行入力と人によるチャットなどの充実した伴走サポートで自走を支援 2,000社以上の声を機能に反映
――導入時のハードルになりがちな点と、それに対するサポートを教えてください。
藤田氏: 私たちが最も意識しているのは、お客様が自走しやすい仕組みをつくることです。一番つまずきやすいのは導入初期の運用で、ここをクリアにするために、20設備まで無料のフリーミアムモデルに加えて、無料の代行入力サービスを用意しています。お客様の点検表をお預かりし、その内容を当社がシステムへ入力するものです。
この種のサービスでは通常、設定をベンダーが費用をかけて請け負うか、ユーザー側が多くの設定項目を担うケースが大半です。そのお金や人手のコストが課題となり、運用がなかなか進まないこともあります。そこを当社が肩代わりすることで、お客様が導入初期から垂直立ち上げできるよう支援しています。
――設定の負担を引き受けてもらえるのは、現場にとって大きな安心材料ですね。導入後のサポートはいかがでしょうか。
藤田氏: システム内のチャット機能は、よくあるAIチャットボットではなく、人がきめ細かく対応しています。この点もお客様から評価いただいています。
また、現在2,000社以上のお客様にご導入いただいていますが、有料・無料を問わず、原則すべてのお客様へ一度はこちらからコンタクトし、運用や伴走支援をご提案しています。
――そこで得た声は、どのように生かしているのですか。
藤田氏: 最も重視しているのは、紙からシステムに置き換えたときに、お客様が現場で違和感なく点検作業を行えることです。
少しでも違和感があって改善を要望する声は、リスト化して事業部内でまとめ、全営業員に共有しています。そのうえで、多くのお客様の改善につながる機能を最大公約数としてシステムに実装しています。
――開発で大切にしている考え方を教えてください。
藤田氏: 従来の製造業のシステム開発のようなウォーターフォール型ではなく、まず市場にサービスをリリースし、ユーザーの声や反応を柔軟に反映するアジャイル開発を行っています。
例えば、リリース直後は点検表の判定項目をOK・NGの2択から選ぶ形でした。しかし、「○・△・×で選びたい」「8択の選択肢が必要」という声が多く寄せられたため、「カスタム選択肢」という機能をリリースし、点検結果を複数の選択肢から選べるようにしました。紙でできることはすべて電子でもできるように、大小を問わず機能をリリースしています。
――機能開発の優先順位は、どのように決めていますか。
藤田氏: SaaSとして、幅広いユーザーにとって価値がある機能かどうかを事業部内で議論し、優先度を決めて開発へ実装を依頼しています。特定のユーザーだけが非常に喜ぶ機能よりも、2,000社以上のユーザーに広く使っていただける機能を優先しています。
点検データをAI活用へつなげる 創業100周年のバルカーが目指すCX起点のサービス
――今後、特に力を入れていく開発テーマは何ですか。
藤田氏: TBM機能は、リリースから継続的に改善を重ね、幅広いお客様に満足いただける品質に達したと判断しています。現在はIoTセンサーと連携するCBM機能の開発に注力しており、ZeroVisitに続いて、設備の稼働率そのものを監視する機能など、点検業務と親和性の高い機能の検討を進める予定です。
中期的にはこのCBM機能の充実を優先します。長期的には、MONiPLATで得られたデータをAIで分析していつもと違う兆しを捉え、異常の予兆検知に生かすところまで進めていきたいと考えています。
――設備点検や保全の現場は、今後どのように変わっていくと見ていますか。
藤田氏: これまで人にしか判断できなかった意思決定の領域は、ますますAIに置き換わっていくと思います。一方で、現場に行き、目や耳、肌感覚で状況を確かめて設備の健全性を担保する点検業務そのものは、AIがどれだけ発展しても機械に置き換わるものではないと考えています。
だからこそ、点検業務の負荷を最大限効率化すること、そして得られたデータをAIの判断に活用しやすい形で提供することが、点検管理サービスに求められていると考えています。
――現場の点検は人が担い続けるからこそ、その負荷を減らす仕組みが欠かせないのですね。その先にあるプロダクトとしての理想像はどのようなものでしょうか。
藤田氏: もともとの設計思想は、日常的な点検業務をTBM機能で代替しつつ、お客様が求める価値ある機能をCBM機能として提供するというものです。まずはこの方向で開発を愚直に進めます。
そのうえで、得られたデータをAIエージェントで活用したり、AIに取り込みやすいよう前処理したりと、AIとの連携を容易にする形で発展させていくのが理想像です。
――点検データの活用まで、構想が広がっているのですね。最後に、導入を検討している企業担当者へメッセージをお願いします。
藤田氏: 設備保全サービスは市場に数多くあり、どのサービスにも一長一短があります。何らかの形で現在の運用をサービスに合わせ込む必要があるのは、避けられない事実です。
そのうえで私たちが意識しているのは、導入を始めるお客様がつまずきにくい仕組みです。20設備まで無料のフリーミアムモデルで限られた範囲から運用を確認でき、無料の代行入力サービスで初期設定でのつまずきも減らせます。
MONiPLATは、設備点検の効率化と確実な点検の実施にフォーカスしたサービスです。設備点検を改善したいとお考えのお客様に、必要最小限の機能をローコストで提供できます。企業によってはセキュリティなどのハードルもあるかもしれませんが、まずは20設備以下の無料枠で、実際の運用を回してみてください。
そのなかで出てきた改善点は、営業担当やシステム内のチャットを通じてお寄せいただきたいです。可能な範囲で改善に生かし、より使いやすい機能を提供することで、お客様の運用のゴールに近づけていきます。
バルカーは2027年に創業100周年を迎えます。これまでガスケットやパッキンといったシール材をBtoBで販売してきた老舗製造業が、製品の提供にとどまらず、顧客体験(CX)を起点としたサービス企業へと進化する。MONiPLATは、その象徴となるサービスです。
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