データマスキングツール比較!選び方やメリット【2024年最新版】
データマスキングツールとは?
データマスキングとは、元データの構造や意味を残しながら、特定情報を非表示にしたり別の数字や文字列に置き換えたりすることです。いわば「データの匿名化」であり、機密性やプライバシー保護を目的に行われます。
データマスキングを効率的に行えるのが、データマスキングツールです。データの匿名化処理をはじめ、不正アクセスや改ざん防止のできる機能が揃います。
従来、データマスキングにおける書き換えや削除を「手動」で行っていました。しかし、手動ではミスが発生しやすく、機密情報流出の原因の多くは従業員の不注意や過失にあるといわれています。データマスキングツールを使えば、マスキングの精度や効率が高まり、情報漏えいリスクを最小限に抑えられます。
マスキングの種類
マスキングは、次の5つ種類に分類できます。
マスキングの種類 | 特徴 |
---|---|
静的マスキング | 元データのバックアップを作成して、本番環境用のマスキングデータを作り出す手法 |
動的マスキング | データベースがクエリを受け取ったときに都度データをシステムが変更する手法 |
オンザフライデータマスキング | ある環境から別の環境にデータを転送するときにリアルタイムでマスキングする手法 |
決定論的データマスキング | 同じ入力値は常に同じ出力値にマスクされる手法 |
難読化 | データ内の統計的特性と関係を維持するように機密データの値を変更する手法 |
このようにマスキングの種類は多く、目的・用途によってマスキングを使い分ける必要があります。
データ暗号化との違い
データ保護の代表的な仕組みに「データ暗号化」があります。データを守るという本質的な意味ではデータマスキングと同じですが、両者は原理が異なります。
データ暗号化は、元データそのものを解読できないように変換する仕組みです。データを解読するためには、正しい復号化キーを使わなければなりません。キーがなければ解読は不可能なので、セキュリティ性が高いです。ただし、暗号化されたままではデータの構造や形式が失われる特性があります。
電話番号を例にあげると、「090-1234-5678」を「ABCDEFGHIJKLMN」に置き換えるのがデータ暗号化です。
対して、元データの特定部分を数字や文字列に置き換えるのがデータマスキングです。データの構造や形式が残したまま特定部分を隠すだけで、セキュリティを保持できます。マスキングが施されたデータが外部に流出しても、元データに復元するのは難しいです。
しかし、データの一部分だけを書き換えた場合、推測される可能性はあります。電話番号を例にあげると「090-1234-5678」を「090-1234-****」に置き換えるのがデータマスキングです。
データマスキングを活用すべきシーン
データマスキングの活用シーンとして、次のものがあげられます。
- テストデータを作成するとき
- データ解析や管理を外部委託するとき
- 社内の個人情報を保護するため
- データ転送時の流出を防ぐため
データマスキング活用の代表例としてあげられるのが、システムやアプリを開発する際の「テストデータ」の作成です。データを本番環境からテスト環境に移行する際、データをそのままコピーすると情報漏えいリスクが高まります。そこでデータを匿名化し情報を保護するのがデータマスキングの役目です。
他にも、社内外にデータを共有する際にもデータマスキングを用います。外部に共有する方がリスクが高いため、広範囲で複雑なマスキング処理をすべきといえます。
データマスキングツールの選び方
データマスキングツールを選ぶ際は、次の流れで確認しましょう。
- データマスキングツールの導入目的を確認する
- データマスキングツールの機能を確認する
- データマスキングツールを導入する際の注意点を確認する
- データマスキングツールの料金・価格相場を確認する
データマスキングツールの導入目的を確認する
まずは、データマスキングツールの導入目的を明確にしましょう。主な導入目的として次のものがあげられます。
導入目的 | 詳細 |
---|---|
個人情報を保護したい | サーバー上のデータを保護したい場合は、動的マスキング可能なシステムがおすすめ |
分析データやテストデータを作成したい | 疑似データ作成や統計的な意味を変えずにマスキングができるシステムがおすすめ |
データマスキングツールの機能を確認する
データマスキングツールでできること、利用できる機能は次のとおりです。
機能 | 詳細 |
---|---|
機密情報抽出機能 | システムがマスキングすべき機密情報を自動で抽出する機能 |
マスキング機能 | 目的・用途に合わせてさまざまな手法でマスキングする機能 |
評価機能 | マスキングしたデータの匿名性と可用性のバランスを評価する機能 |
機密情報の抽出
データマスキングツールにおける機密情報の抽出とは、データベースの中から住所や電話番号、氏名といった個人情報だけでなく、社外秘の情報や決済情報、暗証番号など、マスキングすべきと考えられる情報を自動で抽出する機能を指します。
マスキング処理
マスキング処理とは、機密情報を匿名化する機能のことです。匿名化の仕方もツールによって異なり、自社が行いたいマスキング手法を備えたツールを探さなければなりません。
マスキング後の評価
データとして機密情報の痕跡を残さないようにマスキングすると情報は守られる反面、データ分析に活用しにくいといった可用性の低下を招きます。マスキングしたデータの匿名性と可用性のバランスを、システムが評価してくれる機能が「マスキング後の評価機能」です。
データマスキングツールを導入する際の注意点を確認する
データマスキングツールを導入する際、失敗しないために次の項目も確認しておきましょう。
確認事項 | 詳細 |
---|---|
どのような体制でマスキングするのか | どこに保存している何のデータをどう活用するときにマスキングがしたいのか、要件を整理してください。 |
不可逆的なマスキングでよいのか | 一度マスキングしたらデータを復元できないタイプのマスキングか、元のデータに戻せるマスキングかどちらがよいかを考えてください。 |
使用しているデータベース、ファイル形式に対応しているか | 使用しているデータベース(Microsoft SQL ServerやMySQLなど)、データを保存しているファイルの形式(CSVやParquetなど)に対応しているかを確認しましょう。 |
データマスキングツールの料金・価格相場を確認する
マスキングの柔軟性や用途によっても、マスキングツールの料金は異なります。文字を「X」で置き換えるといった単純な処理のみに対応しているツールであれば、5,000円程度の買い切りで利用できる場合もあります。
一方で動的マスキングに対応したり、マスキングのレベルを柔軟に変更したりできるシステムの場合は、運用規模によって料金は変動します。各社に見積もりをとって、具体的な金額を把握しましょう。
おすすめのデータマスキングツール比較
数あるデータマスキングツールの中でも、おすすめのツールを特徴とともに比較します。
AimeMasking – 株式会社アイメソフト
- AIや機械学習データのマスキングに特化したツール
- データの統計的な意味を保ちながらのマスキングを実現
- ネットワーク接続のないローカル環境でもマスキングできる
AimeMaskingは、AIや機械学習データのマスキングに特化したツールです。個人の氏名から会社名、場所名、電話番号、メールなど多数カテゴリーの匿名化に対応しています。ただたんに「*****」と表記するのでなく、「田中さん」は「鈴木さん」に置き換え、データの統計的な意味を保ちながらのマスキングが可能です。
固有表現認識や自然言語処理、辞書処理などさまざまなテクノロジーを搭載。インストール不要で、ネットワーク接続のないローカル環境でもマスキングを行えます。日本語だけでなく英語のマスキングもできるため、海外展開している企業にもおすすめです。
Data Sync Manager – EPI-USE Labs
- SAPのテスト利用に特化したデータメンテナンスツール
- 本番環境からテスト環境への移行に必要なデータを匿名化
- 金融や石油、医療など多くの業種で導入されている
Data Sync Managerは、イギリスのマンチェスターに本社を構えるEPI-USE Labs社が運営するデータメンテナンスツールです。
SAP(ヨーロッパのSAP社が提供する統合基幹業務システム)のテスト利用に特化している同ツール。SAPシステムを利用するユーザーに対して、本番環境からテスト環境への移行に必要なデータの匿名化を行います。金融から石油、小売、医療などさまざまな業界で利用可能です。
DBMask - 株式会社ウィンシステム
- 買い切り型のデータマスキングツール
- 指定した文字列や1文字間隔での置き換えも可能
- トライアル期間では5回までマスク処理ができる
DBMaskは、株式会社ウィンシステムが提供する「買い切り型」のデータマスキングツールです。5,500円のライセンス購入によって利用でき、プライバシーに関連する情報を任意の文字でマスキング処理を行います。
すべての文字の置換はもちろん、指定した文字列や1文字間隔での置き換えもできます。無料トライアルも提供しており、期間内に5回までマスク処理が可能です。Windows10/Windows8のOSに対応しています。
Insight Data Masking - 株式会社インサイトテクノロジー
- 大規模言語モデルを活用したデータマスキングツール
- テストデータの生成やクラウド移行検証など幅広いシーンで利用可能
- データの「再現性」も柔軟にコントロールできる
Insight Data Maskingは、膨大なデータとディープラーニング技術による「大規模言語モデル」を活用したデータマスキングツールです。データの整合性や参照性、ユニーク性など特性を残したうえでマスキング処理を行います。
テストデータの生成はもちろん、データのクラウド移行検証、分析データの準備などさまざまなシーンに対応可能。日本語に最適化されたAIエンジンを搭載しており、一瞬で文字種を判別し、ファイルや文章データなどから個人情報を自動抽出します。
また、メールやチャットの内容からマスキング対象の単語を検出可能です。マスキング実施後、毎回同じ結果を得られるのはもちろん、異なる結果を得られるような「再現性」もコントロールできます。ファイル形式は、CSVからTSV、Parquetや固定長ファイルなどに対応。データベースではOracle DatabaseやMicrosoft SQL Server、My SQLなどに対応しています。
PK Masking - XLsoft Corporation
- 静的および動的マスキング処理によって高いセキュリティレベルを実現
- 必要に応じてテキストやファイル内の機密情報を削除できる
- 金融や行政、ヘルスケアなど多くの業界で導入実績あり
PK Maskingは、アメリカはカリフォルニアに本社を構えるXL soft社が提供するデータマスキングツールです。静的および動的マスキング処理を行うことで、高いセキュリティレベルを実現します。
静的マスキングでは、マスキング値から元データを取り出せない仕組みを構築。ファイルや画像、メールなどに機密情報が含まれていた場合、必要に応じて削除対応も可能です。金融や行政、製造、ヘルスケアなどさまざまな業界での導入実績があります。
tasokarena - NTTテクノクロス株式会社
- 個人情報保護法に準拠しながら効率的にマスキング処理を行う
- 独自手法によって難易度の高い部分も容易にマスキングできる
- AI機能や医療分野向けレセプトデータの変換などオプション機能も充実
tasokarenaは、NTTグループに属するNTTテクノクロス株式会社によるデータマスキングツールです。個人情報保護法に準拠しながら効率的にマスキング処理を行える同ツール。自治体や金融、医療、ヘルスケアなど、とくにプライバシーの配慮を慎重にすべき分野から信頼を得ています。
NTTが独自開発した「Pk-匿名化」を施すことで、受診履歴や購買履歴など「マスキングが難しい」といわれる作業も容易に行えるように。スタンドアロンで操作できる「スタンダード版」と、コマンド実行やデータベース連携など豊富な機能が揃った「エンタープライズ版」の2種類を提供しています。
また、AI機能や医療分野向けレセプトデータの変換、データ削除などオプション機能も充実しています。
テストエース - 株式会社システムエグゼ
- 本番環境と同等のテストデータを生成できるツール
- データ量が膨大でも「選ぶだけ」の簡単操作でデータ生成が可能
- 類似データ変換やランダム変換、ユーザー定義変換など変換方式も幅広い
テストエースは、株式会社システムエグゼが運営するテストデータの生成ツールです。本番データにおける機密情報を変換し、本番環境と同等かつセキュリティ性の高いテストデータを生成。「簡単」「安全」「低コスト」にテストデータを構築できるとして企業やエンジニアから支持されています。
データ量が膨大でも、選ぶだけの簡単な操作でテストデータを作成可能です。個人情報をはじめとする機密情報を、特許取得の独自アルゴリズムで自動判別し、最適な変換処理を行います。
マスキング変換をはじめ類似データ変換、ランダム変換やユーザー定義変換などさまざまな変換形式に対応しています。レポート機能では、実行した変換処理の内訳(変換方式やテーブル情報、データ抽出要件など)を確認可能です。
フリーテキストマスキング - 株式会社アグレックス
- フリーテキストに含まれる個人情報をマスキングできるツール
- データクレンジング技術によって精度の高いマスキングを実現
- スタンドアローン型なのでオフライン環境でも処理が可能
フリーテキストマスキングは、株式会社アグレックスが運営するデータマスキングツールです。同ツールでは、アンケートの自由記述欄や応対履歴、SNS情報などフリーテキストに含まれる個人情報を自動判定し、マスキング処理を行います。
データクレンジング(データベース中の誤りや重複を修正する作業)のノウハウを豊富に持っている同社。それらをツールに集約することで、精度の高いマスキングを実現します。
営業日報や週報との連携によって従業員のエンゲージメント低下を予測したり、履歴情報をAI教師データとして活用したりと、ユースケースもさまざま。また、ツール自体がスタンドアローン型なので、オフライン環境でも実行できるうえ、セキュリティも強固です。
個人情報マスキングAIツール - 株式会社ユーザーローカル
- 個人情報や生成AI利用時のマスキング処理を行う
- ブラウザやWebAPIからデータをアップロードするだけの簡単操作
- クラウド版とオンプレミス版から選べる
ユーザーローカル 個人情報マスキングAIツールは、株式会社ユーザーローカルが提供するデータマスキングツールです。従業員や顧客情報を扱うときや、ChatGPTに代表される生成AIを利用するときの個人情報をマスキングできます。
同ツールでは、ブラウザやWebAPI(Webを介してAPIを呼び出す仕組み)からデータをアップロードするだけの簡単操作でマスキング可能。自然言語処理AIがテキスト中の個人情報を自動で特定し、マスキング処理を行います。
導入形態もクラウド版とオンプレミス版の2種類から選択可能です。初期費用やセキュリティ、導入までの期間など優先順位に合った形態を選べます。金融や行政といった高度なセキュリティが求められる分野から、流通や製薬、マーケティングなどざまざまな業界での導入実績があります。
個人情報秘匿システム
- テキストの種類を維持したままマスキング処理を行う
- 本番環境と変わらない高品質なデータを活用できる
- 金融業界での実績も豊富
個人情報秘匿システムは、株式会社アグレックスが提供する変換システムです。同ツールでは、個人情報データを架空のデータに変換し、情報漏えいリスクを低減。一般的なマスキングツールとは異なり、「数字→数字」「カナ→カナ」など、テキストの種類を維持したまま変換処理をします。
本番環境と変わらない高品質なデータを活用できることから、主にシステムテストでのデータ作成で利用されています。高いセキュリティレベルが求められる金融業界での実績も豊富です。
データマスキングツールで機密情報を保護しよう
データマスキングツールには機密情報の流出やデータ改ざんの防止といったメリットがあり、個人情報を保護しつつ事業を推進したい事業者におすすめのサービスです。選定の際は次のポイントに注意して選ぶのをおすすめします。
- どの程度柔軟にマスキングの手法を選択したいか
- 具体的な保護したい情報、その管理体制を決める
- データは不可逆的にマスキングしてもよいのか
データマスキングツールについてより深く検討したい方は、サービス資料を請求し比較するとよいでしょう。
BOXILとは
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