コピー完了

記事TOP

電子請求書とは?電子帳簿保存法の要件や発行メリット・注意点

最終更新日:(記事の情報は現在から37日前のものです)
【比較表】電子帳簿保存システム
電子請求書とは、書面でやり取りしていた請求書を電子データ化したものです。請求書を電子化するメリットや、電子化における注意点を解説します。

電子請求書とは?

電子請求書とは、従来書面で作成していた請求書を紙ではなくデータで発行・受け渡しする方法のことです。デジタル請求書Web請求書とも呼ばれ、PDFなど電子ファイル形式で作成し、メール送付やクラウド上で共有可能です。紙の請求書と比べて印刷や郵送の手間が省け、法的にも有効なので、送信側と受信側の双方にメリットがあります。

一般に「電子請求書」は電子データで作成されたものを指しますが、広義には紙の請求書をスキャナで取り込みデータ化したものも電子請求書と呼称する場合もあります。

最初から電子データとして作成されたものと、紙の請求書をスキャナで取り込んでデータ化したものでは、電帳法で適用される規則が異なるため注意して扱いましょう。

電子請求書が普及している背景

電子請求書が普及している背景には、社会的な動きや法制度の変更が要因として挙げられます。

  • 電子帳簿保存法の改正
  • インボイス制度の普及
  • 企業活動の環境への配慮
  • 業務効率化による生産性向上
  • テレワークの普及
  • 郵送コストの上昇

業務のデジタル化(DX)推進にともない、ペーパーレス化テレワークの浸透、さらには脱印鑑(ハンコ不要)の流れもあり、請求書を電子データで発行・保存するケースが増えています。

電子帳簿保存法の改正

2022年(令和4年)1月に電子帳簿保存法が大幅改正され、紙の請求書等をスキャンして電子保存する要件緩和や、電子取引で受け取った請求書データは紙ではなく電子のまま保存することが2024年1月から完全義務化されました。

法改正によって国税に関連する書類の電子保存が認められ電子保存のハードルが下がり、逆に電子データを紙で保存することは認められなくなったため、帳票の電子化は広く一般に普及しました。

請求書も国税関連書類と判断されるため、この電帳法を活用して請求書を電子化する動きが加速していることから、電子請求書も社会に広まっています。

「電子帳簿保存法」をわかりやすく解説!改正点・対象書類・保存要件など
税務関係帳簿書類のデータを保存し、各種制度を利用することで、経理のデジタル化が図れる「電子帳簿保存法(電帳法)」を...
詳細を見る

インボイス制度の開始

2023年10月から適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が始まったことも電子請求書の普及を後押しする要因です。

適格請求書(インボイス)自体は紙・電子どちらでも構いませんが、適格請求書を電子データで交付する「電子インボイス」も政府により推進されています。

インボイス制度対応で請求書発行システムを見直す企業が増え、その流れで電子請求書の導入も加速しています。

インボイス制度対応の請求書発行システム14選!関連法や導入メリット、選定ポイント
インボイス制度対応の請求書発行システムをボクシル編集部が解説。請求書発行システムを選定する際のポイントや導入するメ...
詳細を見る

企業活動の環境への配慮

企業活動が自然環境に及ぼす影響を最小限に抑えるため、電子請求書を導入する事業者も多いです。近年では世界的にSDGsへの関心も高く、企業活動による環境への悪影響はますます社会から厳しい目で見られています。そのような状況で、電子請求書を導入することは環境負荷を軽減する施策として有効です。

企業が活動するうえで発生するムダな紙の量は膨大です。そこで、請求書をはじめとする電子化可能なものを紙ベースの書類から電子データに置き換えることで、ムダに消費する紙を削減することを目指す企業が増えています。CSR活動を重視しつつ、持続可能な社会の実現に貢献することを目的として電子請求書を導入する企業が増えていることも、電子請求書が社会に普及する要因の1つと考えられます。

業務効率化による生産性向上

電子請求書は業務効率化による生産性向上にも役立つため、積極的な企業での導入が進んでいます。少子高齢化によって生産年齢人口が減少している日本では、継続的に業績を上げるためには業務効率を向上させ生産性を上げることが重要です。

そこで、生産性の向上を目指す施策として注目されているものが、請求書や契約書といった書類業務の電子化です。ムダの多い紙による書類業務を電子化し効率的に行うことで、コアな業務に多くのリソースを集中し企業競争力を高めることが多くの企業で行われています。

業務効率化や生産性向上の観点から考えても、事業者が電子請求書を導入することは自然な流れで、ここにも電子請求書普及の一因があることがわかります。

テレワークの普及

世界情勢や働き方改革で在宅勤務が一般化したことも電子請求書が注目される理由です。紙の請求書だと出社して印刷・押印・郵送する必要がありますが、電子請求書ならネット環境さえあればどこからでも発行・送付・確認が可能です。

テレワーク中でも滞りなく請求業務を行えるため、多くの企業が電子化を検討しています。

郵送コストの上昇

紙請求書の発送に必要な郵送料や切手代が年々上がっています。実際、2024年10月に日本郵便は郵便料金を大幅改定し値上げしました。紙代・インク代・封筒代に加え郵送コストが増す中、電子請求書に切り替えれば郵送費の削減が期待できるため、コスト面から電子化を進める企業もあります。

電子請求書を発行するメリット

電子請求書には、紙の請求書にはない多くのメリットがあります。実務上どのような利点があるのか、主なポイントを解説します。

  • 請求業務を効率化できる
  • コストが削減できる
  • リモートワークに対応できる
  • 送付履歴の確認が容易
  • スピーディーに請求業務が完了する

請求業務を効率化できる

請求業務を効率化できることは、電子請求書の最大のメリットです。具体的には次のような手間削減と業務効率化を実現できます。

  • 請求書作成をパソコン上でできるため、作成や修正がやりやすい
  • ファイリングや保管庫への出し入れ作業をしなくていい
  • コピペを使うことで数字を記入する手作業のミスが削減できる
  • 郵送のために封筒に宛名書きをして封入する手間がなくなる
  • ポストや郵便局に大量の封筒を持ち込む必要がなくなる
  • 郵送のために必要な切手や封筒の購入に行く手間が削減できる

従来の紙による請求書発行で発生していた手間を削減し、業務を大きく効率化できることが電子請求書の大きなメリットです。また、電子請求書ならPC上で日付や取引先名で検索でき即座にアクセス可能です。また、再発行や金額修正もデータ上ですぐ行え、差し替え後の最新版が一目瞭然なのでミスが減るという点もメリットでしょう。

コストが削減できる

請求書業務を行うために発生していたムダなコストを削減できることも、電子請求書のメリットです。請求業務で通常発生していた次のようなコストをカットできるでしょう。

  • 請求書印刷に必要な紙代やインク代
  • 先方に請求書を郵送するために必要な封筒代や郵送費、切手代
  • 請求書業務に圧迫されて残業が増えている場合は従業員の人件費

これらはけっして小さくないコストなので、電子化で経費圧縮が期待できます。

リモートワークに対応できる

電子請求書を利用することで、在宅や出張先からでも発行・送付できるため、リモートワークにも対応できます。一部従業員は書類業務のためだけに出社しなければならず、出社格差を不公平だと感じている企業にとって大きなメリットです。

送付履歴の確認が容易

電子請求書の利用により送信履歴の確認が容易になる点もメリットです。メールやチャット、電子請求書システムで請求書を送付すれば、誰がいつどのようなファイルを送付したかログで簡単にわかり、未送や誤送などのトラブル発生の際にスムーズに対応できます。郵送での宛先不備で届かない、配達遅延で相手に到着しない、といったリスクが低減可能です。

なお、電子請求書システムでは、送付以外にも閲覧や修正などの履歴を確認できるものもあります。履歴を残すことでより強固なセキュリティで請求書データを守れます。

結果として代金回収の遅れや再発行の手間を防ぎ、信頼関係の維持にもつながります。

スピーディーに請求業務が完了する

紙の請求書の課題の1つが、請求書作成から先方の手元に届くまでのリードタイムの長さです。作成した請求書が相手方に届くまで日数がかかることで、その後の処理も遅れてしまいます。最近では郵便法が改正され土曜日の配送も廃止されたため、リードタイムはより長くかかるようになっています。

一方、電子請求書なら送付後すぐに相手方に届くため、タイムラグなく請求書の送付が可能です。請求書を受け取る取引先にとっても請求内容をすぐに確認できることで、月次処理をすぐに行えることがメリットです。

請求書を電子化するときの注意点

請求書を電子化するときには、次のようなことに注意が必要です。

  • 事前に取引先と調整を行う
  • 電子帳簿保存法に対応する
  • セキュリティリスクを把握する

事前に取引先と調整を行う

電子請求書を利用開始する際には、事前に取引先との調整が必要です。請求書を電子化する場合、自社と取引先双方に影響があります。そのため、自社の都合だけで電子請求書は導入できません。事前に電子請求書に切り替える旨の連絡を行い、同意を得られた企業にのみ電子請求書を導入しましょう。取引先が紙を希望するケースは依然あります。

万が一システム導入に同意が得られない場合、紙の請求書と電子請求書を併用する必要があります。紙の請求書の発行数が少なくなればなるほど手間やコストを小さくできるため、電子請求書は取引先にもメリットがあることを伝えたり説明を丁寧に繰り返したりして、できるだけ多くの同意を得ることが必要です。

電子帳簿保存法に対応する

電子請求書を利用する際は、電子帳簿保存法に対応しなければなりません。電子帳簿保存法の対応要件を満たすためには、真実性と可視性の要件をそれぞれ満たす必要があります。真実性の要件を満たすと請求書が本物で改ざんされていないことが担保され、可視性の要件を満たすとが確保されると、データを必要なときに検索・閲覧できることが担保されます。

具体的に要件を満たすために必要な機能は、請求書へのタイムスタンプ付与機能や、操作説明や閲覧・検索機能の搭載などです。これ以外にも法対応を守るために必要な条件がさまざまあるため、自社のみで電子帳簿保存法に対応することが難しい場合には電子請求書システムの導入を検討しましょう。

セキュリティリスクを把握する

電子請求書は電子データを利用するためなりすましや改ざんなどのセキュリティリスクがあります。紙の請求書では発生しにくかったセキュリティリスクのため、電子請求書導入の際にはあらためてこれらのリスクを把握し対策しなければなりません。

電子請求書システムを導入すればこれらのリスクにも対応できているため、ユーザーが過度に対策を取る必要はないでしょう。

ただし、電子請求書をメールやチャットツールで送付する場合は、正しい請求書を正しい相手に送付できる体制の構築が必要です。具体的にはメールのダブルチェック体制や、パスワード別送などでミスに気付きやすい体制を構築しましょう。

電子請求書発行システムの導入方法

電子請求書システムを導入する方法は次のとおりです。

  • 請求書業務の課題や導入目的を明確にする
  • 課題を解決し目的を達成できるものを比較する
  • 導入フローやルールを策定する
  • 社内外に導入を周知する
  • 運用する中でフローやルールを改善する

請求書業務の課題や導入目的を明確にする

電子請求書システム導入を決めたら、まず請求書業務の課題や導入目的を明確にしましょう。課題や目的が明確になっていると、多くあるシステムの中からどのようなシステムが自社に最適か判断しやすいためです。

反対に、課題や目的が曖昧なままシステム導入を進めると、価格やサービス提供企業の知名度などでシステムを選んでしまいがちです。このようにシステムを決定してしまうと、実際に必要な機能をもっていなかったり、必要な機能がオプション機能で割高になってしまったりと、導入後に不都合が発生しやすくなります。

よって、まずは課題や目的を明確にして、課題解決や目的達成に必要な機能をもつシステムを選ぶ形でシステム選定を進めましょう。

課題を解決し目的を達成できるものを比較する

課題や導入目的を明確にできたら、その課題を解決し目的を達成できるシステムを比較しましょう。システム選定がこの段階まで進んだら、操作性やコストも選定基準として考えましょう。

操作性が悪いシステムを選んでしまうと社内でシステム利用が浸透しないことや、取引先から電子請求書導入に対して同意を得られない可能性があります。また、電子請求書発行により削減予定のコストが導入コストを上回れば、新しくシステムを導入するコストを相殺できます。

課題解決や目的を達成できる機能があることを前提として、他の選定基準を比較しながら導入するシステムを選定しましょう。

導入フローやルールを策定する

導入するシステムが決定したら、システムに合わせて導入フローやルールを策定します。これまで紙の請求書を送付していた場合、システムを利用することで作業が大幅に異なります。請求の各ステップにかかる時間も大きく変わるため、今一度フローを見直しましょう。

また、紙の請求書でさだめていたルールが適用できないシーンも出てくるかもしれません。システムの導入によって変化する実態に合わせて、フローやルールも調整が必要です。

社内外に導入を周知する

フローやルールが定まり、いよいよ本格的にシステム導入が開始したら、社内外に導入を周知しましょう。社内には一時的に増加する質問に備えて専用窓口を設置し、社外へは取引担当から取引先へ丁寧な説明をするよう指示します。

どれほど社外から電子請求書の同意が得られるかによって、コスト削減効果が変わるため、社外への導入周知は重要であると考え丁寧に行いましょう。

運用する中でフローやルールを改善する

システムが本格的に稼働し始めたら、運用する中でフローやルールを改善してよりシステムを使いやすい環境に整えます。紙の請求書からシステムに移行するときは、初めてのことばかりで想定していないトラブルや質問が発生する可能性があります。

そのようなトラブルや質問に対応する中で、フローやルールに反映したほうがよいものがあれば、それらをもとに修正を加えましょう。いかに優れたシステムでも、社内外にシステム利用が浸透しなければ意味がないため、利用者が不便なくシステムを利用できる環境を整備しなければなりません。

電子請求書に関わる法律と保存要件

電子請求書を導入するうえで、関連する法律と保存ルールについて押さえておきましょう。とくに重要なのは前述の電子帳簿保存法です。

改正電子帳簿保存法と電子取引データの保存義務

電子帳簿保存法の改正により、電子取引で受け取った請求書は電子データのまま保存することが義務化されました(2024年以降)。たとえば、メールで受信したPDF請求書や、WEB上でダウンロードした請求書データは、紙に印刷して保存することが認められません。必ず電子データで保管し、税務調査に備えて提示できるようにする必要があります。

電子請求書の法定保存要件

電子データで請求書を保存する場合、次のような要件を満たす必要があります。

要件 詳細
検索機能の確保 取引日付・金額・取引先で検索できるようにする。フォルダ分類やファイル名付け、またはシステム機能で対応。
改ざん防止措置 タイムスタンプを付与する、または事務処理規程を定め運用する、あるいは改ざん防止機能のあるシステムを利用する等の措置が必要。
見読性の確保 必要に応じてディスプレイで鮮明に表示・プリントアウトできるようにしておく(ファイル形式や保存媒体に注意)。

これらは電子帳簿保存法で定められた真実性の確保・可視性の確保要件と呼ばれるものです。対応が難しく感じる場合、後述する専門システムを利用することで比較的容易にクリアできます。たとえば、JIIMA認証(日本文書情報マネジメント協会の認証)を取得した請求書システムであれば、法要件を満たす保存・検索機能を備えています。

紙の請求書のスキャナ保存制度

ちなみに、紙で受領した請求書を電子データ化して保存するスキャナ保存制度もありますが、こちらは事前の税務署届出が必要など条件が多いです。一方で、最初から電子で受け取った請求書(電子取引データ)は届出不要で上記要件を満たせば保存できるよう緩和されています。

このように電子請求書は制度面でも優遇されており、将来的には取引のデータ化が一層進むと考えられます。

電子請求書の発行方法・種類

電子請求書を発行・送付する方法にはいくつかパターンがあります。代表的な方法とそれぞれの特徴を紹介します。

方法 概要 メリット デメリット
メールでPDF請求書を送付 請求書PDFをメールに添付して送信。システム導入不要で手軽。 ・導入コストがかからない
・手軽に始められる
・小規模取引に適している
・誤送信や改ざんリスクあり
・受領確認や返信管理が必要
・請求先が多いと手間が増える
請求書発行システムを利用 クラウド型の専用システムで発行・送信・保存までを一元管理。 ・電子帳簿保存法に対応しやすい
・改ざん防止・検索機能あり
・業務の自動化・効率化が可能
・導入・運用コストがかかる
・取引先に新フローの説明が必要
EDIやオンラインポータル EDIや取引先のポータルサイトで請求情報を送信。 ・データ連携が可能で業務効率が高い
・大企業との取引に適している
・業界や取引先ごとに仕様が異なる
・中小企業には導入ハードルが高い
【2025年】請求書発行システムの比較23選!シェアが多いおすすめサービス
【経理担当者必見!】請求書処理を強化するために不可欠な請求書発行システム。代表的な機能や種類、各システムのメリット...
詳細を見る

電子請求書で請求業務を効率化しよう

電子請求書とは電子データによって作成された請求書で、電帳法が改正されたことや事業者の生産性向上意識が高まったことから、広く一般に使われるようになっています。請求業務を効率化できることはもちろん、ムダなコストが削減できたり、リモートワークに対応できたりと多くのメリットがあります。

電子請求書を利用することで、請求業務は効率化し生産性も大幅に向上するでしょう。自社のみでの電子請求書の発行や法対応が難しい場合は、電子請求書システムの利用が向いています。導入目的を明確にしたうえで、目的を達成できる機能をもつシステムを検討しましょう。

812_電子帳簿保存システム_20240404.pptx.pdf
電子帳簿保存システム
選び方ガイド
この記事が良かったら、いいね!をしてください!最新情報をお届けします!
貴社のサービスを
BOXIL SaaSに掲載しませんか?
累計掲載実績1,200社超
BOXIL会員数200,000人超
※ 2024年3月時点
電子帳簿保存システムの最近更新された記事