都内9店舗を展開する日本料理店が「わずか3人」でバックオフィス業務を回せる秘密とは?
本格和食を都内9店舗で展開する「僖成(きなり)」
僖成(きなり)は、日本料理や和食店を中心に、コンセプトの異なる9つの店舗を展開している企業だ。店舗ごとにストーリーと魅力を打ち出しており、ゆっくりと落ち着いた空間で食事を楽しみたいファンに好評を博している。
青山に構える旗艦店は、9月から新たな屋号「日本料理 僖成」として再オープンしたばかりだ。「和の大家」と称される建築家、隈 研吾氏が店舗をトータルプロデュースしており、へりのない琉球畳を敷いた個室や、掘りごたつ式のスタイルと、い草が香るくつろぎの空間を演出する。
旗艦店の「暗闇坂宮下 青山」は、この9月から新たに「日本料理 僖成」としてスタート
また、江戸時代から花街として栄え、さまざまな風情のある日本の街並みを残す墨田区向島には、豊かな香りを紡ぐ自家製二八蕎麦が評判の「江戸蕎麦 僖蕎」(ききょう)がある。店舗には、島根県浜田市の伝統的な職人技である「石州和紙」を配し、モダン空間で江戸そば懐石を堪能できる。
これらは一見すると、異なる趣の個性的な店舗であるように感じられるが、そこに一貫して流れるコンセプトがあるという。
そのコンセプトとは、社名の「きなり」に由来する。きなりとは、染色される前の「色のない天然繊維」を表す言葉である。料理人出身で、現在は僖成のバックオフィス業務全般に携わる 同社 本部長 畑野 仁氏は、同社のコンセプトを次のように説明する。
僖成 本部長 畑野 仁氏
「日本古来の伝統や文化を大切にしながら、自分たちの『きなり(日本食)』をさまざまな色に染めあげることで、『人の喜ぶ場を成せる』ものと考えています。それぞれの料理も各店の料理長が一から考案したものです。我々のブランドの原理原則は、顧客や地域と一緒に成長していけるような店づくり、場所づくりを進めることです」
また同社は、「食のプロ」として、和食店の運営のみならず、歴史・生産者・郷土料理を結びつけた「日本文化の和食」の伝承をしている。地方自治体とも提携して、北海道、宮城、島根、高知、天草といった各地の加工品や郷土料理のギフト商品などを開発し、全国発送で販売しているのだ。正月に彩を添える「おせち料理」についても、三越や伊勢丹を通じて、毎年販売している。
独立によるオフィス移転で、ICT環境の整備が急務に
僖成の設立は2017年1月、本社機能をもつホールディングス会社の和食部門から独立するかたちで誕生したばかりの会社だ。
一部アウトソーシングできる業務については委託しているものの、財務・経理・総務・広報といったバックオフィス業務は、わずか3人ですべてを切り盛りしている。
そんな中、僖成は2017年5月、もとあった渋谷から高輪へと事務所を移転することになった。
ここで一つ問題が発生する。社内に情報システム担当(情シス)がおらず、電話回線やインターネット、PCのセキュリティといったオフィス環境の整備が難しかったのだ。これは、多くの中堅・中小企業に共通する課題だろう。
畑野氏は「バックオフィスは3人しかいませんので、情シスに代わって、ITに関する相談・サポートしてくれる役割が必要でした」と当時の事情を説明する。
オフィス移転の準備と合わせて、インターネットや電話回線の業者選定に着手した畑野氏は、インターネットでさまざまな情報を収集。そこで自分たちのニーズにピタリと合致するサービスが目に留まり、さっそく電話で問い合わせた。それが、NTT東日本の「まるらくオフィス」であった。
まるらくオフィスは、NTT東日本が「ICT担当者」となり、同社の通信インフラや機器を含めて、必要なICT環境を取りまとめて提供するサービスだ。まさに僖成のような企業やスタートアップにとって、救世主的な存在といえるだろう。
同社を担当したNTT東日本 第三ビジネスイノベーション部の藤浪 渚氏は「新しい事務所を早急に立ち上げる必要があるというご相談を受け、僖成さまの予算感を把握しながら、最もニーズに合致するプランをご提案させていただきました」と回想する。
NTT東日本 第三ビジネスイノベーション部 第二バリュークリエイトグループ 第二バリュークリエイト担当 コンシェルジュ 藤浪 渚氏
導入の決め手となったのは、NTT東日本の長きにわたって培ってきた実績がある点と、夜遅くまで営業している飲食店を24時間でサポートしてくれる点だ。畑野氏は、決め手になったポイントを語る。
「我々も、実績の高いNTT東日本ならば信頼できると思いました。万が一、何かあっても、365日24時間にわたり有人サポートセンターが対応してくれるため、とても心強く感じました。特に我々のような飲食業では、日曜・祝日や夜遅くでも営業しているため、何かトラブルがあると大変です。いつでも一括して問い合わせできる点が、今回の導入の大きな決め手です」
これについて、NTT東日本の藤浪氏も「まるらくオフィスは、故障時の365日24時間の有人サポートだけではなく、サービスに関する故障以外のお問い合わせや、WordやExcelといったOffice製品の使い方といったご相談も、21時まで受け付けています」と補足する。
基本セットに加えて、オンラインストレージやセキュリティ対策も
まるらくオフィスのメニューには、光アクセスサービス(FLET'S光)やWi-Fi、サポートを提供する基本セット「まるらくオフィスWi-Fiセット」のほか、この基本セットに電話環境もまとめた「まるらくオフィス電話セット」が用意されている。
「まるらくオフィス」のサービス体系。多くのオプションも用意されており、セキュリティ対策も万全だ。
さらにオプションとして、高セキュリティなオンラインストレージを利用できる「FLET'S・あずけ〜るPROプラン(まるらくオフィス対応)」や、ネットワークセキュリティ対策の「おまかせサイバーみまもり」、端末のウイルス対策が可能な「おまかせアンチウイルス」といったサービスも選べる。
最終的に僖成は、このWi-Fi基本セットに加え、FLET'S・あずけ〜るPROプランの10GBプラン(まるらくオフィス対応)、おまかせサイバーみまもりと、4台分のおまかせアンチウイルスを導入することになった。
これらのサポートは一元的に管理されており、僖成では、同一の電話番号に問い合わせてサポートを受けられる。
FLET'S・あずけ〜るPROプラン(まるらくオフィス対応)については、主にスケジューラ機能を中心に活用しているところだ。当初、スケジューラの使い方に少し戸惑ったものの、これも電話問い合わせしたところ、NTT東日本のオペレータの説明だけで解決できたそうだ。
「セキュリティに関しては、我々にとって何が危ないのか目に見えない部分でした。別のベンダーに頼んでしまうと担当者が分かれて管理が面倒になるため、これも一緒にお願いすることにしました。ひとつの電話番号にかければ、オフィス環境のあらゆる課題を解決できるので、非常に助かっています」(畑野氏)
そして、移転後1〜2週間程度というスピードで、すべてのICT環境を期待通りに整えられ、業務をスムーズに引き継げるようになった。すでに導入後から数か月が過ぎた現在でも、滞りなく運用ができている。
畑野氏は「ICTの設備面で大変満足しています。今後、NTT東日本に期待する点はソフトウェアの充実でしょうか。もし財務・経理・会計システムなども一括してご相談できるようになったら、ぜひお願いしたいところです。『まるらくオフィス』というネーミングのとおり、バックオフィスの基本業務もオプションでサポートいただければ、さらに新規事業の立ち上げに威力を発揮できると思います」と、期待を膨らませる。
都内各地に店舗展開している僖成だが、将来の選択肢として、各店舗の回線も一本化できるのではないかと将来の構想を語る。
「現在のところ、まだ各店ごとに異なる通信事業者の回線サービスが入っています。業務上すぐに回線を変えることは難しいかもしれませんが、ゆくゆくは回線を1本化していきたいと考えています」(畑野氏)
回線サービスを1本化すれば、拠点間通信により、セキュアなデータ共有が可能になるほか、光電話プランで内線通話が無料になる。運用・管理面とコスト面も含めて、長い目で大きなメリットを得られる点が、まるらくオフィスの強みだろう。
僖成のように、数人のバックオフィスで店舗や現場の業務を支えている、という会社は多いだろう。本サービスは、目指す中堅・中小企業のICT環境を整備し、業務効率化を実現するための大きな味方になってくれるはずだ。