Zoomは8位、緊急事態宣言で利用者が増えたアプリ - ビデオ通話の境界線は50代?
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感染拡大でデバイスの利用状況が変化
緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機はまだ去っていない。これからは、感染予防対策をとりつつ企業の活動や学校の授業を再開させ、新しい生活様式を取り入れつつ活動することになる。
外出自粛と学校休業によってテレワークや遠隔授業などを初めて体験した家庭も、今後はそれが当たり前の生活になるかもしれない。たとえば、Windows 10移行バブル後に大きく落ち込んでいたPC販売が、4月に増加へ反転しており、これも生活スタイルが変わった一例だろう。
COVID-19は、スマートフォンの使い方も変えたようだ。国内のスマートフォン所有率は9割ほどあり、若者や働き盛り世代にとどまらず、70代も過半数が使うデバイスになった。これだけ幅広いユーザー層に浸透したので、消費活動や行動様式の変化を敏感に反映するはずだ。その使い方を調べれば、新型コロナウイルスの影響を読み取れる可能性がある。
コロナが変えた、スマホの使い方
スマートフォンの使い方がどう変わったか知るため、フラーの調査レポートをみてみよう。
新型コロナはアプリのインストールを後押し
フラーは、スマートフォン用アプリの利用動向を、緊急事態宣言の発出前から解除直前にかけて調査した。そして、2020年1月15日から2月15日をCOVID-19拡大前の「平時」と定義し、下記4つの期間と比べている。
- 緊急事態宣言の前(学校に対する休業要請から緊急事態宣言直前:2月27日から4月6日)
- 緊急事態宣言の発出後(4月7日から5月3日)
- 緊急事態宣言の延長後(延長から宣言解除直前:5月4日から5月22日)
まず、iOS用およびAndroid用のアプリがどの程度インストールされたかについては、学校に対して休業が要請された2月27日以降、1日あたりの平均総インストール件数が増加していた。たとえば、緊急事態宣言の発出後は、平時よりインストール件数が10%多い。
増加の原因として、フラーは外出自粛による“巣ごもり生活”を挙げる。家で過ごす時間が増えて新しいアプリの利用が加速し、「人々の行動や可処分時間がオフラインからスマホアプリ上のオンラインに急速に置き換わった」というのだ。
利用者が増えたアプリ1位は?
利用者が増えた具体的なアプリについては、Android用アプリに限られるが、フラーは平均日間アクティブ・ユーザー(DAU)を指標として使い、各期間の状況を分析した。その結果、期間によって平均DAU増加数の多いアプリの傾向が異なっていたそうだ。
(1)緊急事態宣言の前(2月27日から4月6日)
「Yahoo! Japan」がトップになったほか、「dmenuニュース」「スマートニュース」「NHK ニュース・防災」など、ニュース系アプリの増加が目立った。学校休業や外出自粛要請といった生活変化に直面し、スマートフォンを情報収集ツールに利用する人が多かったためだという。
(2)緊急事態宣言の発出後(4月7日からから5月3日)
緊急事態宣言が発令されると上位の顔ぶれが入れ替わる。“Zoom飲み”で話題となったビデオ会議アプリ「ZOOM Cloud Meetings」が8位に入った。在宅勤務やオンライン授業で利用者が急増した影響だ。
これを抑えて1位はクラウドストレージ「Googleドライブ」だった。ビジネス用途を含めファイルのやり取りが増えたためだと推測される。13位に入った「NewsDigest」は、COVID-19拡大状況がリアルタイム更新されていたことから利用者が急増した。また、平均DAU増加の上位20アプリで6個のアプリがニュース系で、情報に対するニーズは高いまま推移している。
(3)緊急事態宣言の延長後(5月4日から5月22日)
ゴールデンウィークと重なったこともあり、余暇を動画視聴で過ごすためか「YouTube」が1位になった。「Amazon プライムビデオ」も、緊急事態宣言の発出後の期間と同じ15位で推移している。
「ZOOM Cloud Meetings」は順位を6位に上げた。リモート会議やオンライン授業のほか、オンライン帰省の効果も考えられる。
50代がビデオ会議利用の境界線
フラーによると、アプリ利用状況の変化には、年代ごとの相違も現れたという。
10代は、休校の影響を大きく受け、ほかの世代と違って教育アプリが増えた。特に4月7日以降は、「Google Classroom」「Studyplusアプリ」のようなオンライン学習に関係する教育系アプリの利用が急増した。ゲームや動画視聴に関するアプリも目立つ。
20代は、10代と同じくゲームおよび動画視聴が上位に多い。「メルカリ」と「Uber Eats」の利用者が多いことが特徴的だ。「ZOOM Cloud Meetings」の利用者も多い。
30代は、在宅勤務をする人が多く、「ZOOM Cloud Meetings」が上位にある。家庭で料理する機会が増えたせいか、「クックパッド」の増加もみられる。またほかの世代にない特徴として、「Twitter」が情報収集手段とされているらしい。
40代は、子育て家庭が多く、学校の連絡に使われる教育アプリ「マチコミメール」の利用が目につく。また、この世代からニュースアプリの利用が増え始める。
ここまでの世代は「ZOOM Cloud Meetings」の順位が高いのに対し、50代は緊急事態宣言の延長後に20位となっただけだった。ビデオ会議利用の境界線が50代にありそうだという。ニュースアプリの利用が多いほか、下位にドラッグストアのアプリが入っていて、マスクや消毒薬などに対する需要の高さがうかがえる。60代以上は、ニュースアプリの利用がメインとなった。
Withコロナ時代の生活はどうなる?
フラーの公表したデータは、緊急事態宣言が解除される前までの状況が反映されている。その後については、ニューノーマルの影響がどう現れるか興味深い。
フラーは、オンライン学習の実施を迫られた教育分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)の機運が高まることから、教育アプリの利用動向をウォッチする必要があるとした。新しい生活様式を捉えた新たなサービスが生まれる可能性も指摘している。また、外食産業ではアプリ利用の回復傾向がみられ始めているそうだ。
COVID-19拡大がこのまま収束するのか、第2波が訪れてしまうのか、現時点では不透明である。企業や家庭の行動もそれによって大きく変わり、予測できる状況でない。ただし、スマートフォン用アプリの利用動向などを調べれば、経済活動や消費行動の微妙な変化をつかみやすい。このような指標を活用して、適切な対応方法を検討するのもよいだろう。