テレワーク導入企業数が初めて半数超え、4分の3が「効果あり」- 総務省調査
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総務省のテレワーク利用状況調査
BOXIL Magazineでは、テレワークの利用状況がどう変わってきたかについて、いろいろな調査レポートを紹介してきました。今回は、総務省が2021年9月に実施した「令和3年通信利用動向調査」(※1)から、全国各地の企業がどう対応しているかみていきましょう。
※1 総務省『令和3年通信利用動向調査の結果』,https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf
テレワーク導入の最新状況は
企業のテレワーク利用はコロナを切っ掛けに急増し、定着しつつあるようです。
導入拡大は6割弱で頭打ち
総務省の調査によると、過半数の51.9%が「テレワークを導入している」と回答しました。2019年に20.2%だったものが、2020年には47.5%へ急増していて、コロナの影響がいかに大きかったか分かります。
「導入していないが、今後導入予定がある」と答えた企業は、2020年が10.7%、2021年が5.5%と減っています。これは、2020年時点で導入したいもののできなかった企業の一部が、2021年に導入できた、ということなのかもしれません。
「テレワークを導入している」と「導入していないが、今後導入予定がある」の合計は、2020年が58.2%、2021年が57.4%と、6割弱で頭打ちです。テレワークの利用は、もうこれ以上広まらないのでしょうか。
テレワーク未導入の企業に理由を尋ねたところ、「テレワークに適した仕事がないから」が81.7%あり、ほかの項目を大きく引き離しました。また、各項目の回答率は2020年と2021年で大差ありません。
このことから、テレワークの導入可能な職場はほぼ導入し終えており、社会のデジタル化やオンライン化がさらに進行しない限り導入率は上がらない、と予想されます。
目的は圧倒的にコロナ対策
テレワークを導入した企業は、何が目的だったのでしょう。
90.5%が「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」という回答を選び、圧倒的に多い理由です。
また、2020年に68.3%あった「非常時(自身、台風、大雪、新型コロナウイルス以外の感染症の流行など)の事業継続に備えて」が2021年に31.1%と急減しています。これは、2020年の調査では「感染症」として新型コロナウイルスを含んでいたことと、新型コロナウイルス感染症への対応という選択肢が2021年に新設された影響で、実質的に変化していない、と理解できそうです。
そのほかには、「勤務者の移動時間の短縮・混雑回避」(37.0%)、「勤務者のワークライフバランスの向上」(27.9%)、「業務の効率性(生産性)の向上」(27.6%)といった理由が多く選ばれました。
テレワーク導入は結局良かった?
さて、テレワークを導入した結果、企業はメリットを得られたのでしょうか。
4分の3が「効果あり」
テレワーク導入企業は、17.6%が「非常に効果があった」、56.7%が「ある程度効果があった」と答えました。つまり、導入したうちの約4分の3がテレワークをプラスに捉えていたのです。「マイナスの効果があった」は1.4%にとどまり、多くの企業が満足していました。
やや否定的な調査も
総務省の調査レポートをみると、テレワークの導入は現時点でかなり進み、好意的に受け止めている企業が多い結果です。ところが、帝国データバンク(TDB)が2022年2月に実施した別の調査(※2)は、少し異なっています。
TDBによると、テレワークを実施した企業は31.5%とやや少なく、61.5%は未実施でした。さらに、テレワーク実施企業の52.1%(全体の16.4%)が「(テレワークには)デメリットの方が多い」と答えたのです。
実は、TDBの調査は企業の経営者や管理職を対象にしています。このことが、結果に相違をもたらした可能性があります。以前紹介した調査レポートでも、企業と従業員には意識の差があると指摘されていました。
ちなみに、デメリットが多いとした企業は、「社内コミュニケーションが減少する、意思疎通が困難」(26.6%)、「できる業務が限られる」(19.3%)、「進捗や成果が把握しにくい」(14.6%)といった理由を挙げています。
※2 TDB『テレワークの実態!導入企業の経営者・管理職の52%が不満』,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000423.000043465.html
サイバー攻撃に引き続き警戒を
総務省のレポートには、サイバーセキュリティに関する調査結果もあります。それによると、なんと52.4%もの企業が過去1年のあいだに何らかの被害を受けていました。
攻撃の内容は、「標的型メールの送付」が33.1%でもっとも多く、仕事関係の知人から届いたメールだとしても、マルウェアかもしれないと常に用心する必要があります。
次に多いのは「ウイルスを発見又は感染」の31.1%です。2022年に入ってサーバー攻撃が急増したとの報告がありますし、経済的損失に直結するランサムウェアも増えています。
テレワークをする機会が増え、サイバー攻撃に弱い在宅勤務の環境が狙われやすくなっています。まずは、OSやアプリケーションを最新の状態に保つ、セキュリティソフトを導入するといった基本的な対策を徹底しましょう。そのうえで、総務省が示した「テレワークセキュリティガイドライン」などを参考にして、コロナ禍で変化した環境にも対応する必要があります。