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取締役委任契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から285日前のものです)
取締役とは、会社法に権利や義務が規定された役員のことです。法人と役員とは、雇用関係ではなく委任関係でつながり、あらかじめ与えられた責任や義務の範囲内であれば業務の自由度は高いポジションです。ただし、会社内部の秘密情報を知っていて従業員よりもはるかに権限が強いため、行動範囲の規制やルールを破った場合のペナルティは重くなります。また、退職後の約2年間は同種の事業を行う職業に就けなかったり、就業する地域や業種にも規制があるほどです。取締役委任契約書の各項目について解説します。

取締役委任契約書とは

取締役は会社と委任契約を締結しています。委任契約とは民法第643条の「法律行為を相手方に委託し、相手がこれを承諾することで成立する」と規定された関係です。委任契約は、受任者(役員)が委任者(会社)から指示されたことを達成しても原則として報酬がない(民法648条第1項)ため、取締役委任契約書の報酬規定や特約で報酬について定めます。

身近な委任契約としては、税理士に確定申告を依頼する場合や不動産登記を司法書士に依頼する場合などが該当し、会社員は役員と会社にある委任関係ではなく「雇用契約」を締結する雇用関係です。

取締役委任契約書の主な記載事項

取締役の責任の範囲は、会社の方針やその役員の経験・知識・スキルなどによって異なります。そのため、取締役の在任期間中の業務内容や責任の範囲を明確にするために、就任時に次のような内容の委任契約を締結します。

  • 目的
  • 任期
  • 遵守事項
  • 報酬
  • 競業避止義務期間
  • 秘密保持条項
  • 反社会的勢力排除条項

目的

「目的」の項目は「甲(会社)は、令和〇〇年〇〇月〇〇日付臨時株主総会において、乙(役員)を甲の取締役として選任し、乙は就任を承諾するものとする」のように、役員を選任した株主総会の開催日程を特定する記載を行います。

なお、取締役の設置自体の目的は「代表者の独断による経営方針決定を避け、監視機能や自浄作用を持たせるため」です。また、2015年(平成27年)からは、さらに会社の透明性をあげるために、会社からの独立性が高い社外取締役・社外監査役の権限が強化されました。

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任期

取締役の任期に関する規定で、多くの上場企業では「乙の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」という内容になっており、なかには1年に短縮している場合もあります。なお、非公開の株式会社(株式に譲渡制限を付している)では、取締役の任期を10年に延長できます。

委任関係はいつでも自由に相互解除できる契約関係であるため、従業員との雇用契約とは異なり、辞任や解任で委任契約関係を好きなときに解消できます。ただし、その場合でも原則として従業員としての法的地位は解消されません

遵守事項

会社と役員は雇用ではなく委任関係(並列)であり、主従関係(上下)のように上からの命令や指揮はありません。役員は、業務遂行にあたり会社から業務上の指揮命令を受けず、あらかじめ与えられた裁量権を使って自由に動きます。

ただし、会社に対しては善管注意義務や忠実義務があり、これらの義務を守らずに行動した結果会社に損害を与えてしまった場合は、会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。契約書では「乙は、甲の取締役として業務を遂行するにあたり、甲の定款や社内規定その他の規則を遵守する義務があります」という内容です。

報酬

取締役の報酬は株主総会や取締役会での決定事項ですが、月給のような報酬の支払いサイクルは、会社法上は役員についての定めはありません。年俸制を採用する会社もありますが、多くは労務管理の手間を省くために、他の従業員と同じ支払いサイクルに統一しています。

契約書の規定は「乙の報酬は毎月〇日に、甲の就業規則、給与規則その他社内規則に定める期日に限り、年俸を12か月に均等割りした金額を乙の指定する口座に振り込む」という規定になります。

競業避止義務期間

取締役が退任後に同種の事業を行うことに対する制限、すなわち「競業避止義務」は、契約や会社の定款によって設定されます。この義務は、退任した取締役が以前の勤務先と競合する事業に関わることを制限するものです。ただし、競業避止義務の期間や範囲は、具体的な契約内容や会社の方針によって異なります。

一般的に、この期間は過度に長く設定されるべきではなく、個々のケースに応じて合理的に決定されるべきです。2年以内を目安とすることが多いですが、この期間は憲法で保護された「職業選択の自由」を不当に制限しないように注意深く検討される必要があります。

秘密保持条項

取締役は会社の重要な決定に関与し、機密情報にアクセスする立場にあるため、秘密保持条項の重要性が高まります。この条項は、取締役が知り得た会社の機密情報を保護するために設けられます。具体的には、下記の情報が含まれます。

  • 特許技術
  • 独自ノウハウ
  • 顧客リスト
  • 内部の経営情報

取締役は、これらの情報を不正に使用したり、第三者に漏洩したりしないことを契約で約束します。

秘密保持契約(NDA)は取締役が在任中はもちろん、退任後も一定期間、情報の保護を義務付けることが一般的です。この期間や範囲は契約によって異なりますが、退任後も機密情報を不当に利用したり、競合他社に開示したりすることを防ぐために設定されます。

また、退任時には保管している機密情報や作成した資料、複製したデータを適切に消去または破棄し、会社に返却することが求められることがあります。

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反社会的勢力排除条項

反社会的勢力排除条項は、取締役委任契約書において重要な役割を果たします。この条項は、暴力団・半グレ集団・危険なカルト教団などの反社会的勢力との関係を持つことを禁止するものです。取締役がこれらの勢力と関係を持つことが判明した場合、会社は委任契約を無催告で解除する権利を有し、場合によっては損害賠償を請求することができます。

この条項の存在は、会社の信頼性と社会的責任を保護するために不可欠です。ただし、このような条項が全ての契約書に必ず含まれるわけではありませんが、多くの企業では標準的な慣行として採用されています。とくに、公的な評判や企業のイメージが重要な場合、このような条項を設けることは、企業のリスク管理の一環として重要視されます。

取締役委任契約書のひな形(テンプレート)

BOXILでは、取締役委任契約を検討している場合に利用できるひな形(テンプレート)を無料でダウンロードできます。契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

なお、業界特有のルールや所属団体の方針および業法の改正などに対応するために、適宜リーガルチェックを受け、最新の状態が維持できるようメンテナンスしておきましょう。

取締役委任契約書のひな形(テンプレート) 取締役委任契約書のひな形(テンプレート)

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