製造委託契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
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製造委託契約書とは
「製造委託」とは、下請代金支払遅延等防止法第2条第1項で以下のように定義されています。
この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。
引用:下請代金支払遅延等防止法 | e-Gov法令検索
当事者がこれに合意し、締結した製造委託契約の内容を書面化したものが「製造委託契約書」です。
製造委託の例
製造委託をよりわかりやすくするために、製造委託契約に該当する下記の4つの例を紹介します。
- 企業Aが自ら販売する目的で、部品や製品等の作成を、企業Bに委託
- 企業Aが請け負っている製品の作成で使用する部品の製造を、企業Bへ委託
- 企業Aが請け負っている保守修理で使用する部品の製造を、企業Bへ委託
- 企業Aが自らの製品の運搬等で使う梱包材などの製造を、企業Bへ委託
製造委託契約は、委託者からの発注に従って受託者が商品等を製造する点においては請負契約に該当します。一方で、製造物を引き渡す対価として報酬を受け取る点においては売買契約に該当します。
つまり、製造委託契約は請負契約と売買契約が混合した契約になると解釈できるため、民法の両契約の規定を適宜準用すべきです。この場合に、製造段階では請負契約の規定、製造後の引渡し段階では売買契約の規定を準用するのが一般的です。
しかし、民法上の請負や売買の規定ではあらゆる内容の契約に適切に対応できないため、紛争が生じた場合に民法の規定だけでは解決が難しい場合が数多くあります。したがって、想定されるトラブルやリスクとその解決策を製造委託契約書で規定しておくことが重要です。
製造委託契約とOEM契約との違い
製造委託契約と類似した契約の一つに「OEM契約」があります。OEM契約とは、自社で販売する製品の製造を他社にまるごと委託して、自社ブランドのロゴを付けて販売する契約形態です。OEMは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本語では「自社製品の製造」と訳します。
つまり、OEM契約は受託者が製造した製品を委託者へと供給するため、製造委託契約に包含される契約形態です。OEM契約では、製品の製造のみを委託する場合がほとんどですが、なかには製品の企画・開発、製造、販売のマーケティング戦略の策定までをトータルで委託する場合もあります。
製造委託契約書の主な記載事項
製造委託契約書の主な記載事項と、その内容や注意点について解説します。
製造物の仕様
受託者へ製造を委託したい製品について、詳細な仕様を決めて記載します。このときの仕様の記載は詳細であればあるほど望ましいものの、契約書の条項部分で仕様を事細かに記載してしまうと契約書自体が理解しづらくなります。
実務上は、別途で仕様書を作成して「製造を委託する製品の仕様は別添の仕様書の内容に合致させる」としておき、製品の詳細については仕様書の参照を促すのが一般的です。
なお、複数の類似する製品を依頼する場合には、仕様書の参照間違いがないように確実に特定することが大切です。
原材料
製造委託契約では、受託者が製品の製造で使用する原材料は、委託者から受託者へ供給するのが一般的です。これにより、「委託された製品の数量に対して原材料が足りず納期が間に合わない」、もしくは「原材料の価格が高騰して受託者側の製造コストが合わない」という問題が解消されます。
ただし、原材料の価格はどちらがどのようにして決定するのか、また原材料の費用の精算サイクルや方法、製品の納品代金と相殺ができるかなどを決めておきましょう。このとき、原材料の提供が有償なら「原材料の売買契約」、無償なら「原材料の贈与契約」を締結したと仮定すれば、規定すべき内容がイメージしやすくなるため、明確で抜け漏れのない取り決めができるでしょう。
仕様変更
製造を進めていく過程で、製品を改良して品質を上げるために仕様変更が必要になることがあります。また、市場の動向やトレンドの変化などによって製品の仕様を変更せざるを得ない場合も少なくありません。
そのような場合のために、下記のような仕様変更の方法を具体的に定めておきましょう。
- 仕様変更が一方からの通知だけで行えるのか
- 自由に変更できるのはどの範囲までの裁量なのか
- 同意が必要なら誰にどの書面で取り付けるのか
- 同意はメールや電子的な受発注書でもよいのか
- 費用が変動する場合はどのように精算するのか
また、次のロットから仕様変更を要することが確定した場合に、仕様書を変更する方法や、仕様変更後の製品の納期などについても定めておけば、急な仕様変更があってもスムーズに対応ができるでしょう。
支払
支払い額が確定する締日や実際の支払などのサイクルを明記します。そして、支払日が休日・祝日となる場合には、締め日や支払日がいつになるのかも決めておきましょう。
支払方法は、支払いの証拠を残すためにも銀行振り込みが一般的であるため、支払い口座の表示とあわせて、振込手数料がどちらが負担なのかも記載すべきです。
また、製品の納品代金と原材料の購入代金など、双方が相手方へ金銭債権をもっている場合には、相殺によってそれぞれの支払いが済ませられるのかも定めておきましょう。
再委託
委託者は、その受託者の技術力や経営状況を信頼して、委託契約を締結したはずです。それなのに、受託者が勝手に第三者へ再委託してしまうと、委託者が期待する製品の品質や生産能力が満たされず、原因の究明や補償が満足にできないなど、予想外の結果を招いてしまう恐れがあります。そのため、委託者の許可なく受託者が勝手に再委託することを禁止するのを原則として、次のような3パターンのいずれかで規定するのが一般的です。
- 再委託を認めない
- 再委託を条件付きで認める
- 再委託を常に認める
他方、再委託の際は受託者側にも注意すべき点があります。再委託では、再委託先との関係や業務遂行の方法が下請法違反にならないよう注意する必要があります。下請法の適用の有無は、取引内容や当事者の資本金のバランスで決まるため、事前の確認が重要です。製造委託契約では、次のいずれかに該当する場合に下請法が適用されます。
- 委託者の資本金額が3億円を超え、かつ受託者の資本金額が3億円以下
- 委託者の資本金額が1,000万円を超え3億円以下、かつ受託者の資本金額が1,000万円以下
また、下請法が適用される場合、親事業者である委託者には立場や力関係を利用して受託者を苦しめる行為が厳格に禁止されます。
品質保証
契約書にある仕様と製品のスペックが、製品として販売できないほどの乖離があった場合には、受託者は委託者から「契約不適合責任」を問われる場合があります。
契約不適合責任(民法562条、その他)
納品された製品の種類・数量・品質が製造委託契約書に記載された仕様書に適合していない場合、受託者は委託者に対して契約不適合責任を負います。
契約不適合責任の4つの追及方法
- 履行追完請求:不具合などで不足する数量を後から追加して満たす
- 代金減額請求:製品の不具合や不足による損失に見合う額を減額する
- 損害賠償請求:委託者が被った損害や信用の失墜に対し賠償金を払う
- 委託契約解除:委託契約を解除する、あわせて賠償請求も可能
民法では「不適合を知ったときから1年」という期間を定めていますが、納品から11か月後に不適合を発見した場合には、製品の納品日から2年近く責任が続くことになり、受託者の負担が重くなる可能性があります。そのため「納品検収の完了日から1年間」もしくは「1か月・3か月・6か月」というように期間を短縮するなど、責任が受託者側へ偏重しないような配慮が必要です。
製造物責任法による責任
市場で販売され世に出回った製品に欠陥があり、消費者などが損害(ケガなど)を被った場合には、製造者である受託者が製造物責任を負う可能性があります。この責任を受託者(製造者)だけに課すのは公平とはいえないため、製造委託契約書に、委託者と受託者の間で製造物責任の分担を規定しておくほうがよいでしょう。
所有権
製品の所有権が委託者から受託者へと移転する時期についても、製造委託契約書に明示しましょう。移転時期を検収完了時としておくのが一般的ですが、納品時とすることもあります。
なお、製品が不可抗力で滅失(過失の失火で焼失など)した場合の「危険負担」責任の移転時期については、所有権の移転時期と揃えておくのが一般的です。
一方で、製品の所有権はそれが原材料・半製品・完成品のいずれの状態であるかに関わらず、委託者に帰属するとするケースもあります。この場合の受託者は、製品の管理を委託者から任されているとして厳重な保管義務があると見なされます。
納品・検収
製品の納品方法や委託者の検収方法を規定する条項です。製造委託契約では、検収に関する規定は特に重要な条項だといえます。なぜなら、検収の時期や不具合の発見が、受託者の責任や補償などの対処内容に大きく関わるからです。
時期や不備内容に見合った対処方法をあらかじめ規定して、委託者から異議なく検収期間が過ぎれば受託者の責任が免責されるなど、いずれかに責任が偏重しないように規定しておくことが大切です。
製造委託契約書のひな形(テンプレート)
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