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給与計算の基礎|支給・控除・手取額の計算方法

最終更新日:(記事の情報は現在から759日前のものです)
給与は生活を支える重要なものです。計算する際には、総支給額から控除を差し引必要があります。本記事では、給与の計算方法や控除に含まれるものについて解説するだけでなく、ボクシルおすすめの給与計算サービスを紹介しています。

給与計算とは

給与計算とは、従業員に毎月支払う給与を計算する業務のことです。給与計算の方法は、総支給額を算出し、税金や社会保険を控除、そして従業員の手取り額を算出し、給与明細で提示するといった流れで行います。

企業は、従業員に対して就業規則で定めた期日に給与を支払う義務があります。

給与の計算方法

給与の計算方法は、総支給額 − 控除額 = 手取額です。月給や時給によって計算され時間外労働などを加算した金額が総支給額です。手取り額は総支給額から、厚生年金や所得税といった控除額を引いて算出されます。

総支給額の計算方法

総支給額は、基本給各種手当(役職手当・家族手当・通勤手当・住宅手当・残業代など)を足し合わせた金額です。

基本給

基本給は給与の中心となる金額で、勤続年数や役職によって変動します。企業によっては、基本給の中でも役割や能力の計算を細分化することもあります。

各種手当(通勤手当)

通勤にかかる費用を補填する手当です。電車や自家用車など、交通手段によっては一定税金が控除されます。

各種手当(時間外手当)

時間外手当は、所定労働時間を超える労働に対し支給する手当で残業代とも呼ばれます。時間外手当は(基本給 + 役付手当)× 労働時間 × 1.25で計算されます。

1日8時間、または週40時間を越える時間外労働(法定時間外労働)が割増賃金の対象となります。1日の所定労働時間が7時間などの会社では残業代の計算が異なるため注意しましょう。

控除額の計算方法

給与の控除額には次の7項目があります。7項目以外にも組合費や財形貯蓄といった控除が課される企業もあります。

種類 名称
社会保険 厚生年金保険
社会保険 健康保険
社会保険 介護保険
社会保険 雇用保険
社会保険 労災保険
税金 所得税
税金 住民税

厚生年金保険

厚生年金は、国民年金とあわせて徴収される会社員向けの社会保険です。

健康保険

健康保険では、全国健康保険協会の「都道府県ごとの保険料額表」にもとづいて料金を支払います。

介護保険

介護保険は、40歳以上になると負担する社会保険です。介護の必要な方が適切な介護サービスを受けられるように支えるための負担金です。

雇用保険

会社員の働く環境を守るための保険で、失業した場合にお金を支給してもらうために必要です。

所得税

個人の所得に対して課される税金です。毎月の給与から天引きされる所得税は概算であり、年末調整時に正式な納税額が計算され調整されます。12月の給与で概算していた所得税が正式な納付額よりも多いと還付され、少ないと足りなかった分を徴収されます。

住民税

地域社会でかかる費用を住民に分担してもらう税金です。前年度の所得に対して課税された住民税が天引きされます。前年度の所得に対して課税されるので、社会人1年目の方で、前年度所得がなかった方には課税されません。

手取り額の計算方法

手取り額は、総支給額から控除総額を差し引いた金額で、最終的に振り込まれる額です。

給与計算のための事前準備

給与計算を行うためには、準備しておくべきものがあります。事前に必要なものには、次の3つです。

  • 就業規則の作成
  • 社員情報の収集
  • 社会保険の加入の有無

就業規則・給与規定の作成

就業規則は、労働時間や賃金といった雇用に関する条件やルールなどを定めたものです。従業員が10人以上の企業は、就業規則を作成し労働基準監督署長に届出が必要とされています。10人未満の企業は同様の義務はありません。ただし、就業規則がない場合には、労働基準法で定めた基準に基づいて給与計算を行います。

また、給与の支払いについては、就業規則で掲載が必須とされていますが、労使間でのトラブルを防ぐために、給与規定として別に定められるケースも多いです。給与規定を定めている場合には、給与規定に基づいて給与計算を行います。

社員情報の収集

給与計算を行うには、従業員情報の収集が必要です。給与の総支給額を算出するためには、諸手当や控除額の計算を行います。控除額や諸手当の算出には、家族構成や扶養家族の有無などの情報が必要になります。従業員の家族構成や扶養状況によって家族手当や控除額が変わることもあるでしょう。また、勤務地の変更や転居があった場合には、通勤手当が変更になります。

必要な情報がわかりやすいように、社員ごとに情報をまとめて管理しておくとよいでしょう。

社会保険の加入の有無

社会保険料は、社員情報とあわせて給与の控除額の計算に必要な情報となります。給与額は、総支給額から控除額を差し引いて計算するため、社会保険料の計算は給与計算に不可欠な項目です。

雇用形態に関係なく、アルバイト・パートを含めて、条件に当てはまる従業員は加入義務があるため注意しましょう。社会保険には、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険といった種類があります。労災保険を除き、月次で控除を行います。

労災保険については、役員を除くすべての従業員が加入対象ですが、保険料は全額会社負担となり、給与からの控除は行いません。

給与計算の原則5つ

労働基準法で定められた給与の原則や必要な要項について紹介します。労働基準法には給与支給についての5つの原則があります。この5つ以外にも均等待遇・男女同一賃金・最低賃金を下回らないことも当然として求められていることを忘れずにチェックしましょう。

通貨払いの原則

現物支給などはダメで、現金で支払うことが決められています。一昔前まででは、この原則にのっとって給料日に給与袋に現金を入れて渡していました。今はこのようなことをする会社は少なく、従業員の同意を得て指定する従業員の口座に振り込むのが一般的です。

直接払いの原則

これは第三者などを介入させず、従業員本人に直接支払うことが求められるというものです。これは支払う側はもちろん仲介する第三者が不正に搾取することを防ぐためのものでもあります。

全額払いの原則

定められた給与額の全額を支払うべきというものです。欠勤日数、遅刻早退での控除は例外として認められます。

毎月払いの原則

毎月きちんと給料を支払わなければならないということです。支払いが遅延すると労働基準法に違反してしまうので気をつけましょう。

一定期日払いの原則

毎月一定の日に支払うことが求められるものです。会社員であれば25日が一般的かと思いますが、他にもアルバイトなどであれば10日、15日、月末などもあります。

給与計算を行う際のリスク

給与計算の作業には次のようなリスクが潜んでいます。

  • 税務リスク
  • 個人情報の漏えいリスク
  • 労務リスク

それぞれの注意点について説明します。

税務リスク

給与計算は、税務リスクと隣り合わせであることに注意しましょう。

従業員の給与からは、所得税や住民税といった税金や社会保険料を控除する必要があります。もし、従業員の給与に過払いや不足、源泉所得税などに計算ミスがあれば、修正に工数がかかるだけではなく追加納付などの対応が必要になることもあります。

また、雇用保険や社会保険料の料率は、法律の改正により変動することがあることにも注意が必要です。担当者は常に最新の情報を収集・チェックしたうえで適切な対応が求められます。

個人情報の漏えいリスク

給与から控除する所得税は、扶養家族の人数に応じて金額が変わってきます。そのため、給与計算に当たり、従業員本人だけでなく家族の情報を管理することもあるでしょう。しかし、万一、個人情報の漏えいが発生すれば、個人情報保護法の違反となり、従業員から訴訟を受けるなどの恐れがあります。

2017年の個人情報保護法の改正から、個人情報を扱う企業はすべてが個人情報保護法の適用対象となりました。企業の規模などにかかわらず、漏えいによるリスクがあるため、情報の管理を適切に行うことが重要です。

労務リスク

給与計算では、残業代未払いによる労務リスクが発生する可能性があります。労働時間の集計ミスにより、万一残業代が適切に支払われなかった場合には、労働基準法の違反となります。

法定労働時間を超えた残業は、時間外労働に対しては、割増賃金の支払いが必要です。また、深夜帯に勤務する場合には、深夜手当として割増賃金を上乗せする必要があります。

残業代の未払いがあると、従業員とのトラブルに発展する可能性もあるため、残業時間を正確に把握して計算しましょう。

給与計算のミスが発生した場合の対応

給与計算はミスは重要な業務ですが、ミスをしてしまうこともあるでしょう。ミスが発覚したときには、次のポイントに注意して、早急に対応することが必要です。

  • すぐにお詫びを入れる
  • ミス防止に向けた対策をする

すぐにお詫びを入れる

給与計算のミスは、従業員からの信頼低下につながる恐れがあります。ミスが発覚した際には、すぐに本人にお詫びをしましょう。お詫びをする際には、「どのようなミスをしたのか」「今後の対応」についてもあわせて伝えます。

もし当月の支払いに不足があり全額が支払われていない場合には、労働基準法の違反となります。不足が発覚した場合には、すぐに対応が必要です。源泉所得税の控除分を確認し不足額を算出したうえで、正しい給与明細を発行し不足分を支払いましょう。

ミス防止に向けた対策をする

給与計算のミスが発覚したら、今後ミスを防止するための対策を立てましょう。

給与計算のミスが起こる原因として、担当者が保険料率の変更に関する情報を正しくキャッチアップできていないケースがあります。その場合は、保険料率の改訂を把握するために年間スケジュールを作成しておくと、情報を把握しやすくなりミスの防止につながります。

また、扶養の変更などや異動情報など、入力忘れが発生しやすい項目には、ミスを防止するためのダブルチェックを徹底するとよいでしょう。

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