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ゲーム理論とは?囚人のジレンマとの関係・関連本の紹介

最終更新日:(記事の情報は現在から1408日前のものです)
ゲーム理論とは、複数プレイヤーの利得はそれぞれの依存関係で決定するという経済学です。そのケーススタディで、ビジネスに応用されることの多い囚人のジレンマを中心に、ゲーム理論とはなにかを解説し、さらに深く知るための関連本の紹介も行います。

ゲーム理論とは

ゲーム理論とは、戦略的状況にある複数の意思決定主体の利得は、それぞれの相互依存関係により決定するという状況を、数学モデルを使用して研究する理論です。

ジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンの共著「ゲーム理論と経済行動」(1944年)で発表されたこの理論は、経済学だけでなく、経営・法・政治・人類・心理・工学などに応用されて研究され続けています。

ゲーム理論では、

  • 意思決定主体:プレイヤー
  • 行動計画:戦略
  • 行動の結果得られるもの:利得

それぞれを以上のように表し、行動様式の違いで「協力ゲーム理論」と「非協力ゲーム理論」に分けて考えられています。

協力ゲーム理論とは

協力ゲーム理論とは、複数のプレイヤーで拘束力のある合意が得られる場合のゲーム理論です。

複数のプレイヤーが提携、もしくは提携したグループ同士の戦略が分析対象となることから、「提携型ゲーム」「戦略型ゲーム」と表現し、分析の解(答え)には「安定集合」「交渉集合」「コア」「シャープレー値」「カーネル」などがあります。

簡単に言うと、協力ゲームではどのように協力や提携をすれば、仲間の利益が最も大きくなるのか、どれだけ結果に貢献したか、どのように利益を配分すれば仲間の納得を得られるのか、ということを考えます。

非協力ゲーム理論とは

非協力ゲーム理論とは、ゲームに参加する個々のプレイヤーが独立して行動し、拘束力のある合意が得られない場合のゲーム理論です。

非協力ゲームはプレイヤーの行動によって区別され、複数プレイヤーが同時に戦略を決定する戦略型ゲームと、交互に戦略を決定する展開型ゲームが存在します。その分析の解には、「ナッシュ均衡」「支配戦略均衡」「サブゲーム完全均衡」などがあります。

簡単に言うと、非協力ゲームではプレイヤー同士が競争をします。非協力ゲームでプレイヤーが協力している場合、そこには裏切りの可能性が秘められており、裏切るより協力していた方が利益が大きく、今は協力しているだけという状態なのです。

ゲーム理論と囚人のジレンマの関係

さまざまなケーススタディで分析・研究されているゲーム理論ですが、そのゲーム理論のひとつに「囚人のジレンマ」があります。

これはプレイヤー個々の利得に繋がる決定が、全体の利得に繋がらない状況を表しており、各プレイヤーの合理的決定が社会全体にとって望ましくない結果に繋がることから、社会的ジレンマとも呼ばれています。

囚人のジレンマとは

共謀犯罪で捕われた囚人A/囚人Bは、隔離された状況で個別に自白を迫られます。

  • 2人のうち1人のみ自白した場合、自白した方は無罪、黙秘した方は懲役10年
  • 2人とも黙秘した場合は、2人とも懲役2年
  • 2人とも自白した場合は、2人とも懲役5年

この場合の最適な解は、「A/Bともに黙秘、どちらも懲役2年」であり、このように全体の利得が最大化された状態を「パレート最適」といいます。

しかし、Aが黙秘してもBが裏切り(自白)という決定をすれば、Aは懲役10年になってしまうため、Aはリスク回避の合理的な決定として自白(裏切り)するしかありません。

この状況はBにとっても同様であり、結果、「A/Bともに自白、どちらも懲役5年」となります。このようにお互いにリスクのない合理的な決定をした状態を「ナッシュ均衡」といいます。

しかしこの場合、各プレイヤーにとってリスクのない合理的な「ナッシュ均衡」という決定をしたはずが、全体の利得が最大化された「パレート最適」と一致しないという、矛盾した状態になってしまいます。これが囚人のジレンマです。

囚人のジレンマのビジネスへの応用

ゲーム理論が経済学に限らず、さまざまな分野に応用・研究されていることからも分かるように、そのケーススタディである囚人のジレンマも、さまざまな分野で応用されています。

当然ビジネスの現場でも、競合店が囚人のジレンマと同様のケースに陥っている、もしくは囚人のジレンマを応用した戦略を実行している、などの例を見つけることができます。

営業戦略としての囚人のジレンマ

ビジネスの現場での囚人のジレンマは、価格競争が最も分かりやすい例でしょう。
市場シェアの大半を少数の企業が占めている、寡占的なマーケットで起こりやすく、あるプレイヤーが値下げを行うと、他のプレイヤーも値下げをする、といった関係です。

囚人のジレンマでは、プレイヤー同士が同時に裏切りますが、このようにどちらかが裏切ったことに対し、もう一方が裏切り返すような状態を「一方向の囚人のジレンマ」といいます。

どちらの場合も、一度だけのことであれば「双方が裏切り」ますが、現実のビジネスでは価格競争が一度きりではない場合もあります。

このような「一度きりではなく、いつ終わるか分からない」囚人のジレンマを「無期限繰り返しゲーム」といい、この場合は双方が協調する可能性が生まれます。これが馴れ合いまで協調してしまうと、談合に発展してしまいます。

以上を前提に、囚人のジレンマをビジネスに当てはめて営業戦略として考えると、パレート最適、ナッシュ均衡以外に、自社の利得を最大化するアイディアがあれば、あえてリスクを取るという選択肢があることが見えてきます。

囚人のジレンマによるビジネスの具体例

携帯電話事業者の価格競争が激化していた2006年、ソフトバンクは「docomo、auが値下げした場合、24時間以内にソフトバンクも値下げする」というアナウンスを行いました。

これは一見、一方向の囚人のジレンマにも見えますが、アナウンスの時点で値下げを実行しているわけではありません。もちろん、アナウンスにも拘らずdocomo、auが値下げを断行すれば、ソフトバンクも値下げせざるを得ず、価格競争に巻き込まれる危険性もあったでしょう。

しかしこれは、囚人のジレンマに陥る状況を前に、アナウンスという「先手」を打つことによって相手を動けなくするという、ソフトバンクの戦略だったのではないでしょうか。ソフトバンクの担当者が、囚人のジレンマを応用して戦略を立てたのかは定かではありませんが、メカニズムを理解することによって、ビジネス面でさまざまな応用ができることは明白でしょう。

ゲーム理論で人気の本を紹介

すでに解説したように、ゲーム理論は数学モデルを使用して研究する理論であり、誕生から70年以上の間、研究され続けている理論です。ここでは分かりやすい解説を心がけましたが、より深くゲーム理論を知りたい方のために、おすすめの書籍をいくつかご紹介します。

ゲーム理論と経済行動|ジョン・フォン・ノイマン/オスカー・モルゲンシュテルン

ジョン・フォン・ノイマン/オスカー・モルゲンシュテルン共著「ゲーム理論と経済行動」刊行60周年を記念して、2004年に刊行された新版の翻訳本。ゲーム理論の専門家が新たに翻訳し直した、原書刊行時の経緯、当時の書評を含む決定版。

ゲーム理論 新版|岡田 章

1996年初版刊行以来、ゲーム理論の決定版テキストとして信頼と好評を得ている書籍。
2011年の新版では、90年代後半以降の重要なトピックや応用例を盛り込んだ他、進化ゲームの章で基本トピックの解説も行っており、日本語で読めるゲーム理論のテキストの最高峰という評価も多いです。

ゲーム理論を読みとく(ちくま新書)|竹田 茂夫

ゲーム理論を理解し、これから活用・応用しようとしている人に対して、ゲーム理論とは限られた条件の中でしか機能しないことから、大きな壁にぶつかっていると警鐘を鳴らす。ゲーム理論が政治や国家戦略に応用されたことを懸念している著者は、現代社会科学の支配パラダイムとなった「戦略的思考」からの脱却を模索している。

ゲーム理論の理解は交渉を有利にする

ゲーム理論は経済活動だけでなく、私たちの日常にも深く関連しており、複数の意思決定主体(プレイヤー)が存在するほとんどの場面に適用することが可能です。

たとえば、家族との外食はどこに行くのか、休日の旅行はどこにいくのか、ということでさえ相手の出方を読んだり、交渉を行う必要があり、その理由は、それぞれのプレイヤーが自身の利得を最大化する決定を無意識に行っているからなのです。

ゲーム理論は、そういった場合にも相手がなぜそのような決定を行ったのか、利得から読み取るというメカニズムを提供してくれます

同様に、ビジネスの世界でも、交渉相手の利得から相手の行動を予測し、対応策を考えることによって、交渉を有利に進めることができるでしょう。

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