RJPとは?採用ミスマッチ軽減し社員を定着させるための人事用語

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RJP(Realistic Job Preview)とは
RJPとは、現実的な仕事の事前開示(Realistic Job Preview)を意味する英語の略称で、採用活動を行う際、よい部分も悪い部分も含め、ありのままの企業実態を求職者に情報提供することです。
「本音採用」(Realistic Recruitment)と呼ばれることもあり、企業と求職者間のミスマッチを防ぎ、定着率向上が期待できるため、多くの企業で注目を集めています。
RJPが注目される理由
近年では企業と求職者のミスマッチを防ぐことが大きな課題となっています。そのため、1975年にジョン・ワナウスが提唱し、アメリカで発展してきたRJP理論を採用に活かす「RJP採用」が注目されているのです。
過去には3年目までに3割が離職してしまうことを表す「3年3割」という言葉があったほど、高い数値で離職率が推移しています。
理由はさまざまですが、「入社前の期待と現実の食い違い」が多く挙げられるため、入社時点でのミスマッチをなくすことにつながるRJPが注目されています。
RJP採用とは
採用活動を行う過程で求職者と接する場合、お互いの正確な情報を必要としているにもかかわらず、自身を売り込もうという意識が働き、お互いがバイアスのかかった情報しか提供しない、という傾向があり、これがミスマッチの原因とされています。
RJP採用とは、これを解消するためにリアルな情報提供を行うことによって、求職者側に選択を促すものであるといえます。
RJPと従来の採用方法の違い
従来の採用方法では、求める人材像に見合った能力をもつ人物を、多くの候補者から「選ぶ」必要があり、母集団形成のために企業を「売り込む」アピールが重視されました。
これに対してRJP採用では、すべての情報を開示したうえで、それを理解する良質な候補者と企業とで、互いに「選び合う」ことを重視しています。
出典:堀田聰子氏 採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方
よって、従来の採用よりも、RJP採用では求職者と企業のミスマッチ解消、離脱しないような人材の確保を重視して採用手法が工夫されています。
具体的な事例は後述していますが、一般的な採用選考よりも、一人あたりにかける手間を増大させてでも企業理解を深めるようなコンテンツを用意したり、求職者の実務能力を見極めようとする選考を行ったりしています。
RJP採用が定着につながるメカニズム
RJP理論に基づく採用方法が発展してきたアメリカでは、「入社後の定着率が高まった」という効果が確認されています。こちらの図は、その定着のメカニズムを表したものです。
出典:堀田聰子氏 採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方
この中でRJPがもたらす具体的な効果は、次のとおりです。
ワクチン効果
過剰な期待を事前に緩和し、入社後の失望感や幻滅感を軽減する効果です。
従来の採用方法では、悪い情報を含めた実態が開示されないことによるミスマッチが、離職につながる大きな原因でした。リアルな仕事の様子を事前に開示していることにより、をRJP採用ではこの幻滅感を抑制できます。
スクリーニング効果
スクリーニング効果とは、充分な情報を得たうえで求職者自らが選択した、すなわち「スクリーニング」という判断を強化する効果です。
「すべてを理解したうえで判断した」という面が強化されることにより、入社後の責任感や納得感が大きくなります。また、選考の中で自然とその企業の働き方や雰囲気についていけないメンバーが離脱するので、自然と人材をふるいにかけられます。
コミットメント効果
コミットメント効果とは、企業自らが悪い情報提供も行うことで、求職者が組織の誠実さを感じ、企業への愛着や帰属意識を高める効果です。
これによって、たとえ困難な業務を遂行している企業だとしても、それに挑戦してみたいという欲求を高められます。これにより求職者のエンゲージメント向上が促され、生産性向上、離職率低下などさまざまな効果が期待できます。
役割明確化効果
RJP採用では、求職者に対してすべてをありのままに伝えることが基本となるため、「入社後に何を期待しているのか」「どんな役割を果たしてほしいのか」も明確にします。
これによって、求職者は入社後のイメージがつかみやすくなり、企業への適応と業務への満足度、モチベーションの維持という効果が期待できます。
RJP採用導入のガイドライン
企業と求職者のミスマッチを防ぎ、お互いのためのさまざまな効果が期待できるRJP採用ですが、こういった効果を最大化するには、ガイドラインに沿った採用活動を実施することが重要です。
- RJP採用の目的を求職者に説明する
- 誠実に情報提供を行い充分な検討と自己決定を促す
- 信用できる情報を開示
- 客観的な情報のみならず現役社員が自身の言葉で仕事や組織について考えを語る感情的側面を含める
- 実態にあわせてよい情報と悪い情報のバランスを考慮
- 採用プロセスの早い段階で実施する
また、RJP採用には新入社員の定着率が「高すぎる」企業と「低すぎる」企業には向いていないとされているほか、不況で雇用機会が少ない状況では機能しない、組織内での配置変更や異動よりも、外部からの新卒・中途採用で効果を発揮する、などが指摘されています。
日本におけるRJP採用
アメリカで発展してきたRJP採用が紹介されて間もないこともあり、日本では明確にその効果が確認されているとはいえず、どのように実施したらよいかわからない企業も多いようです。
しかし、企業や仕事の短所をさらけ出す「本音セミナー」をとおして、入社意志の強い学生を採用したリクルートワークス研究所が、新人離職率を30〜40%から10数%へと激減させた例もあり、定着促進への効果が期待されています。
すでに一部の企業が導入して成果をあげていることから、今後もRJP採用を切り口にして成功事例を作る企業が発生すると考えられます。
RJP採用に適した方法
ガイドラインでも解説したように、RJP採用はすべての場面で有効であるとは限りませんし、従来の採用方法との違いから、大量の母集団形成をしてから絞り込んでいく方法でもありません。

おのずとRJP採用に適した方法が絞り込まれてきますが、そのいくつかを紹介しましょう。
インターンシップ
新卒採用の際に効果を発揮するのが、学生のうちに企業の業務を体験できるインターンシップです。ただし、いわゆる1dayインターンシップのように、簡単に仕事内容や社員とコミュニケーションを取るような簡易的なものでは効果が低いと考えられます。
RJP理論の趣旨に従え、実際に仕事現場に入って、そこで働く、メンバーと働いてみる長期インターンシップの方がよいといえます。
この方法は、学生側が業務内容だけでなく、企業文化などを感じ取れる利点があるほか、企業側でも学生のもつ能力や適応力、人柄を判断できるメリットもあります。
実務を通じてよい点悪い点を把握し、自身の業務適正も見極められれば、ミスマッチの可能性は低くなります。
入社前職場体験
入社前職場体験とは、実際の入社前に業務を求職者に体験してもらうプログラムであり、1日〜3日程度で実施している企業が多いです。
行うタイミングとしては、採用決定後や面接後で採用決定の前などです。重要なことは、よい面も悪い面も含めて体験してもらい、求職者の意思決定を促すことにあります。
リファラル採用
従業員が知人・友人を紹介するリファラル採用もRJP採用に適した方法といえるかもしれません。
リファラル採用の強みは、知人が勤務している企業という前提から、候補者が企業情報を得やすいことにあり、定着率の高い採用方法です。
これをさらに確実なものとするためにも、実際の面接でRJP理論を取り入れてみるのが有効だと思われます。とくに中小ベンチャー企業の場合は採用にそれほど投資できない、人材の当たりはずれをある程度見極めたうえで、簡単に離職されないようにしたいといったニーズが強いと考えられるので、RJP理論に則ったリファラル採用は有効です。

アルバイトからの正社員雇用
アルバイトからの正社員雇用もRJP理論からは有効だと考えられます。アルバイトを通じて会社の雰囲気や具体的な仕事内容を把握しているので、正社員化したとしてもミスマッチは少なく、社員定着率はまったく未経験者を採用するよりも高いと考えられます。
また、企業側もある程度その人材の実力を把握しているので、企業側の人材ポテンシャルに関する予測のブレも解消できます。
飲食業やサービス業といったアルバイトの割合の高い業種では有効な手法だと考えられます。
RJP理論を活用した採用の事例
すでにさまざまな企業がRJPを用いての採用活動を実施しています。具体的な事例を3例紹介します。
体感転職プログラムの事例
RJP採用に適した方法を解説したところで、エン・ジャパンが活用する、RJP理論実践例を紹介しましょう。
同社ではRJP理論を活用した採用手法として、体感転職プログラムを実施しています。
実施のタイミングと目的
体感転職プログラムとは、基本的には入社前職場体験です。
実施されるタイミングは面接のあとになり、この時点で採用は決定していません。
目的はもちろん「職場のリアルを体験してもらう」ことであり、入社促進ではありません。
そのため、営業職のプログラムではいきなり新規開拓のテレアポ業務が組み込まれています。
営業職の具体的なプログラムは次のとおりです。
- 09:00〜 朝礼
- 09:15〜 会社・仕事説明
- 10:30〜 新規開拓の電話練習
- 11:30〜 部門メンバーとランチ
- 13:00〜 顧客先訪問
- 16:00〜 社内打ち合わせ
- 17:00〜 振返り面談
企画職は業務内容が異なるため、職種ごとにプログラムが用意されています。
事例:入社後の定着に不安
プログラムを実施していく中で着実に成果を上げててきたエン・ジャパンですが、営業職を志望する転職者の事例を紹介します。
候補者は、適性テストや面接を行っていく過程で、理想と現実のギャップに弱そうだという印象を担当者に与えていたそうです。
体験内容:新規開拓のテレアポ・商談同席など、ギャップの起きやすい仕事を中心にしたプログラムを実施
結果:体験後も志望度が変わりなし。安心して採用
こうした取り組みを継続して行ったことにより、従来37%であった中途入社の離職率が大幅に減少しました。
プログラム実施者に関しては、離職率0%という成果を達成しています。
コーディング面接の事例
ITエンジニアの場合は、書いたソースコードを見ればその実力がおよそ予想できるといわれています。また、求職者側も実際に働いているエンジニアが書いたコードを見た方が、優秀な人材が集まる職場か、仕事は楽しそうかなどを見極めやすくなります。
このようなエンジニアの特性を活かして、IT企業のアプレッソ社では「コーディング面接」を実施しています。面接ではこれまでの経歴や自己PRといった抽象的なものとは別に、実際に書いたソースコードをベースに面接を行うことによって、企業と求職者のミスマッチを解消しようとしています。
面談用パスポートの事例
面談を人材をふるいにかける場ではなく、求職者の志望度・会社へのロイヤリティを向上させる場としてとらえて採用活動をしているのが、ブライダルやレストラン事業を手がけているノバレーゼ社です。
同社は求職者に面談用パスポートというものを用意して最大10回の面談ができるようにしています。面談が増えることによって一見求職者、企業ともに負担が増えるように思えるかもしれません。
しかし、最初から志望度合いの低い人材はパスポートを使用しないので影響はありません。また、志望度合いの高い人材はパスポートで面談を繰りかえすことによって、ロイヤリティを向上させて人材として定着すると考えられます。
採用プロセス最適化に重要な採用管理システム3選
RJP理論を活用した採用活動を行うにあたって、どの方法を選ぶにしても採用プロセスを最適化する必要があるでしょう。
おすすめの採用管理システムを厳選して紹介します。
HARMOS(ハーモス)採用管理は、採用活動のデータを可視化・分析し、戦略的な人材獲得を実現する採用管理システムです。
求人作成、応募者管理、コミュニケーション、進捗確認、アナリティクスといった業務を一元管理し、人材紹介会社とのやりとりや面接の評価などとともに、一体化した採用活動を実現します。
母集団形成に有効な魅力ある求人票の作成から、ソーシャルリクルーティング、リファラル採用などの採用方法にも対応しています。
JobSuite CAREER - 株式会社ステラス
JobSuite CAREERは、中途採用に最適な採用管理システムのロングセラーです。簡単に最新の募集状況を自社ホームページや募集媒体を通して公開でき、個々の選考履歴、全体の進捗状況などをすばやく把握し、タイムリーな対応を可能にすることで選考プロセスを大幅に加速し、選考途中の辞退者減少に貢献します。
また、応募受付後の取りまとめ業務を自動化し、担当者が「人を選ぶ」業務に集中することを可能とし、集計機能によるデータ分析で今後の採用戦略の改善を実現します。
JobSuite FRESHERS - 株式会社ステラス
JobSuite FRESHERSは、採用活動の効率化と、応募者とのコミュニケーション活性化に役立つ採用管理システムです。
LINEとの連携やメッセージの送受信機能などにより、人材とのコミュニケーション活性化を目指せます。ほかにも、職種や応募者の状況に応じて選考プロセスをカスタマイズする機能や、Web上で説明会や面接の予約、アンケートを提出できる機能など搭載しています。採用担当者と応募者双方にとって「採用活動における次のアクション」が起こしやすくなる設計になっています。
その他の採用管理システムについてはこちらからご覧になれます。

RJPのメカニズムで企業体質改善
企業にとっても求職者にとっても、ミスマッチによる離職は不幸なことであり、互いに一番避けなければならないことだといえます。しかし、従来の採用手法を行うと、求職者も企業もお互いのよい面しか選考段階では見せず、入社してからはじめてミスマッチに気づきます。
これを回避するための手法がRJP採用です。インターンシップやリファラル採用、アルバイトからの正社員雇用など、さまざまな施策が講じられ、それなりの効果が確認できたかもしれません。
そういった試みをさらに押し進め、RJP理論を採用プロセスに活用してみてはいかがでしょうか。
お互いのコミットメントが高まり、離職率低下、エンゲージメント向上といった効果が期待でき、よりよい方向へ企業体質を改善することにもつながるかもしれません。


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