OEM・ODMとは?生産形態の違いと複雑化する関係
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OEMとは
OEMとは、Original Equipment Manufacturingもしくは、Original Equipment Manufacturerの略称であり、委託者(他社ブランド)の製品を製造すること、または製造を受託する企業のことを意味します。
日本語で「相手先ブランド名製造」と訳されることもあり、生産を受託する側のことを指します。日本のみならず英語圏でも、供給された製品を自社ブランドで販売する委託者側のことを指す場合もあるようです。
OEMの形態
基本的なOEM生産の場合、製品の設計、図面、製造方法を含めたすべてを委託者が用意、時には技術指導までを行いつつ、受託者に製造を依頼する方式が一般的ですが、大きく以下のような形態に分類できます。
- 技術力の高いメーカーが技術力の低いメーカーを指導して行う垂直的分業
- 技術力が同等のメーカー同士で行う水平型分業
- 異なる製品による委託と受託の相互乗り入れ
ODMとは
ODMとは、Original Design Manufacturingの略称であり、委託者(他社ブランド)の製品を設計・製造すること、もしくはメーカーを意味します。
たとえば、ソニーが自社製品用に設計・製造するCMOSセンサーの供給を受け、デジタル一眼レフカメラを製造しているNikonの関係でいうと、ソニーがODMメーカーとなります。こういった形態は、半導体メーカーなどで多く見られます。
ODMの形態
ODM生産の場合、製造を行う受託者の技術力が委託者と同等、もしくは高いことが前提です。さらにODMメーカーの中には、マーケティング・物流・販売を含めた製品提供を、一貫して行う場合もあり、以下のような形態が主流となっています。
- 委託先ブランド製品の設計・製造と同時に自社ブランド製品の設計・製造・販売
- 自社ブランド製品のパーツなどを他のODM・OEMメーカーへ供給
OEMとODMの違いとは
OEM/ODMともに、委託者(他社ブランド)の製品を製造する受託者を意味する点では同じといえます。
しかし、OEM生産の場合では、委託者が主導権を持って製品の企画・設計を行うのに対し、ODM生産の場合、受託者が製品の企画・設計から製造までを行ったうえで、委託者に製品を供給する点で大きく異なっており、ある意味ODMはOEMを進化させた形態ともいえるでしょう。
OEMとODMの関係の複雑化
また、近年ではOEM・ODMを取り巻く状況も変化してきており、両者の関係性も複雑化しています。
先ほどのソニーとNikonの例でいうと、Nikonはソニー製CMOSセンサーの供給を受けていますが、一眼レフカメラの製造は東南アジアのメーカーに依頼しているケースがあります。この場合、ソニーからODMでパーツ提供を受けた東南アジアのメーカーが、OEMでNikon製品を製造する複雑な図式が成り立ちます。
OEMのメリット
OEM・ODMは、企業の経営効率を最適化するために行われることは上述しましたが、具体的に委託者、受託者それぞれにどのようなメリットが存在するのか、以下に挙げていきます。
委託者側
- 製品の需要変化に対して柔軟な生産能力調整が可能
- 設備投資・人員増強が不要
- 生産コストを重視した製品の競争力確保
- 品質・性能を重視した製品の競争力確保
OEMによって委託者が得られるこれらのメリットは、市場形成期には早期の市場参入、市場成長期には生産力の拡充、市場衰退期には生産力調整による低コストでの製品供給を可能とし、製造に関するコストを抑えながら、利益を最大化するのに役立ちます。
受託者側
- 生産設備の稼働率アップとそれに伴う操業の安定化
- 生産量増によるコストダウンと収益率アップ
- 受託生産による技術力の蓄積
受託する側のOEMメーカーにとっても、上記のようなメリットが存在します。中でも、OEM生産を行うことによって得られる技術力の蓄積は、OEMメーカーにとって大きなメリットとなり、ここで蓄積されたノウハウによって、自社製品の開発やブランドの立ち上げにつながることも考えられます。
ODMのメリット
委託者側
- 製品開発や生産に関するノウハウが不要
- 開発から製造にいたるリソースが不要なため大きなコストダウンが見込める
ODM供給を受けることによって、委託者が市場形成期にスピーディに市場参入することを可能にするだけでなく、開発や生産のノウハウが不要なため参入へのハードルも低いといえるでしょう。製品単体のコストはOEMよりも高額になりますが、膨大な開発費用を削減できるため、大きなコストダウンが見込めます。
受託者側
- 生産技術や設備の有効活用で、コストダウンと利益拡大が見込める
- デメリットやリスクが少ない
ODMメーカー側としてみれば、企画・開発・製造を行った自社製品やパーツを委託者に供給することにより、大量生産を行えるようになり、製品のコストダウンや利益率の向上につながります。
また、OEMメーカーの場合は下請けの意味合いが強くなりますが、ODMメーカーの場合は委託者と同等に近い立場となることが多く、デメリットやリスクが少ない利点もあります。
EMSとは
ここまでOEM・ODMについて解説してきましたが、これらと同種に扱われる生産形態にEMS(Electronics Manufacturing Service)があります。EMSは、電子機器の受託生産を行うサービスのことを意味し、電子機器生産に特化した製品・部品を製造すること、またはメーカーのことを指します。
EMSとOEMの違い
EMSメーカーは、電子機器に特化した製品・部品を受託生産するメーカーですが、製品の企画・設計・製造まで行う場合もあれば、委託者が企画・設計を行う場合もあります。
OEMと大きく違うのは、OEMメーカーが委託者の要望に応じて生産量をコントロールする場合があるのに対し、EMSでは基本的に、契約を元にしたロット生産となることです。
EMSとODMの違い
このようなEMSの形態は、90年代のPC・通信機器の普及とともに広がり、OEM・ODMなどの形態とは別に、製造にかかわる一連の業務をアウトソーシングする意味合いに近いといえます。
ODMメーカーと委託者との関係以上に、EMSメーカーと委託者の関係が深くなる場合が多いことも異なる点といえ、現在では、技術力の高い台湾で開発や設計を行い、製造コストの低い中国で生産するEMSメーカーが多くなっています。
複雑化するOEM・ODMとの協業は
カメラや携帯電話、コンピューターや自動車以外にも、気が付かない部分でOEM・ODM生産されている製品・部品が多くなってきており、すでに日常の一部になっているといっていいでしょう。
元々は、生産効率や経営効率を最適化するために必須であったOEM・ODMも、その生産形態が常識となり、手法が洗練されてきたことによって、それぞれの区別が単純にできなくなるほど複雑化しており、これからもさまざまな進化・変化を続けていくと思われます。
そのような状況の中、OEM・ODMメーカーと協業していく必要が生じた際には、有利な事業展開を進めるためにも、生産形態などの形式にかかわらない、必要な要素を見極める判断が何よりも重要になってくるでしょう。
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