もっとも活用進むSaaSでやっと40%、最新技術へ及び腰 – DX白書2023

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フリーライター 佐藤 信彦

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IPAの「DX白書2023」によると、日本企業は米国企業に比べて、DXに欠かせないITシステムの開発手法や開発技術の活用が不十分です。レガシーシステムが多く残っていることもDX推進の足かせになっています。AIやIoT、デジタルツインといった最新技術の活用も、遅れが目立ちます。

DXのうち「トランスフォーメーション」が置き去りに

デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性は繰り返し強調されていますが、日本企業の意識や取り組みは遅れているようです。情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2021」や、最新レポート「DX白書2023」(※1)で日本企業の現状や課題、取り組みの不十分さなどが指摘されています。
前回の記事 では、特にDX白書2023のDX人材面に注目し、「デジタル化」は進みつつあるものの、「トランスフォーメーション」「リスキリング」が置き去りになっている日本企業の弱点をみていきました。トランスフォーメーションの意味が理解されていないためビジネスモデルの変革に至らず、不十分なリスキリングでDX人材が不足している、という状態です。

根本的には、経営陣の関与が足りていない、という問題が浮き彫りになりました。
※1 IPA『DX白書2023』,

https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html

DXに欠かせない技術は活用できているか

今回は、DX推進に欠かせないITシステムの開発や技術を日本企業がどの程度活用できているかなどについて、DX白書2023の「第1部 総論/第5章 DX実現に向けたITシステム開発手法と技術」(※2)から確認しましょう。
※2 IPA『第1部 総論』,

https://www.ipa.go.jp/files/000108044.pdf

ITシステム整備の達成度が低い日本

DXを推進するためには、「ビジネス環境の変化に迅速に対応できるITシステムの整備」「社内外のシステム連携による競争領域の強化」「ビジネス上のニーズに合致するデータ活用と分析」が必要だそうです。こうしたITシステムに求められる各種機能の達成度を尋ねたところ、日本企業と米国企業の差が目立ちました。

さまざまな機能について「達成している」「まあまあ達成している」の合計が、日本企業は2割から4割、米国企業は6割から7割といった具合です。たとえば、「変化に応じ迅速かつ安全にITシステムを更新できる」は日本企業が27.4%、米国企業が67.6%、「小さなサービスから始め、価値を確かめながら拡張していくことができる」は日本企業が23.6%、米国企業が65.1%でした。

日本企業の達成度がもっとも高い「プライバシーの強化」が40.7%なのに対して、米国企業は61.9%あります。逆に、日本企業の達成度がもっとも低い「社内外の様々なソースから柔軟にデータ収集・蓄積が可能である」は16.1%で、米国企業は59.6%です。

いずれも、米国と比べて日本の達成度が著しく低いことがわかります。

ビジネースニーズに対応するためにITシステムに求められる機能(達成度)

開発手法・技術も活用できていない

ITシステムの開発手法と開発技術についても、日本企業の活用状況は芳しくありません。すべての項目で米国企業に比べ活用できていません。

ITシステムの開発手法・技術の活用状況(開発手法)
ITシステムの開発手法・技術の活用状況(開発技術)

日本企業の活用が比較的進んでいる開発技術として、「全社的に活用している」「事業部で活用している」の合計が40.4%の「SaaS」、同32.5%の「パブリッククラウド(IaaS、PaaS)」がありました。これついてIPAは、「自らがIT資産を構築・所有しないでサービスを利用する、という形態は拡大している」が、「マイクロサービス、コンテナなどを活用する割合は、1割から2割にとどまり、新たな開発技術の活用度合が低い」としています。

日本企業で新たな開発手法・技術の活用が進まない背景として、IPAは、「人材の『量』『質』の不足などの課題」や、「ユーザー企業・ベンダー企業双方が相互依存を継続し続けることで新たな開発手法や技術の採用や変革に消極的」といった理由を挙げ、「従来型の手法・技術から脱却できない」と分析しました。

多く残るレガシーシステム

老朽化した既存ITシステム(レガシーシステム)は、DX推進の足かせになります。

レガシーシステムの使用状況について、「半分以上レガシーシステムが残っている割合」(「半分程度がレガシーシステムである」「ほとんどがレガシーシステムである」の合計)は、日本企業が41.2%、米国企業が22.8%でした。この項目も日米の差が開き、日本企業のレガシー刷新遅れが明らかになりました。

日本企業のあいだでも、DXに取り組んでいる企業と取り組んでいない企業では、差が顕著です。一見すると、DXに取り組んでいる企業の方がレガシーシステムを多く使い続けているようで、奇妙な結果に思えます。

問題は、DXに取り組んでいない企業の「わからない」という回答が40.8%にも上ったことです。つまり、DX推進ができていない企業は、使用しているITシステムの状況把握すらできておらず、システムに対する理解度が低いと考えられます。

レガシーシステムの状況DX取組ありDX取組なし
既にレガシーシステムはない10.1%15.3%
一部領域にレガシーシステムが残っている37.5%7.6%
半分程度がレガシーシステムである22.3%12.7%
ほとんどがレガシーシステムである21.8%23.6%
わからない8.2%40.8%
レガシーシステムの状況

最新技術の導入状況は

DX白書2023では、AIやIoT、デジタルツインといった、注目されている最新技術の活用状況も調べました。いずれの技術も日本企業の遅れが目立ち、人材不足などが課題のようです。

AI導入は理解不足、人材不足が課題

日本企業のAI導入率(「全社で導入している」「一部の部署で導入している」の合計)は、2022年度が22.2%でした。ちなみに、米国企業はその約2倍の40.4%あります。

AI導入を進められない要因として、日本企業には「自社内でAIへの理解が不足している」「AI人材が不足している」といった課題があると考えられます。

AIの利活用の状況

IoTもまだまだ

IoTの導入率は、日本企業が23.3%、米国企業が48.4%で、AIと同じような状況です。「IoTに関する自社の理解が不足している」「人材が不足している」「予算が不足している」などの導入課題があります。

IoTの利活用の状況

日米で差が開いたデジタルツイン

「デジタルツインを構築・活用していない」という回答は、日本企業が58.0%、米国企業が15.3%と、特に大きな差がありました。活用されている領域についても、米国企業は多彩な領域で3割前後もありますが、日本企業は1割に届かないものばかりです。

デジタルツインの構築・活用

技術面に焦点を当てると、比較的活用が進むSaaSでさえ半数に達していません。最新技術の利活用も進んでいるとは言い難く、DXの真髄である「トランスフォーメーション」へ取り組めていない日本の現状が見えてきます。

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