ホームページ制作の契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
ホームページ制作に関わる契約とは
ホームページ制作の業務を受託する際は、「業務委託契約書」や「請負契約書」もしくは「保守業務委託契約書」を作成するのが一般的です。そのなかでも業務委託契約は、個人もしくは法人がホームページ制作やサイト運営などのWeb制作業務を、自社で行わずに外部企業へ委託(外注)する際に締結することが多い契約形態です。
請負契約書も外部企業に業務を委託する目的で作成および締結しますが、請負契約は請け負った側が必ず業務を完了させるという目的をもっています。つまり、ホームページ制作業務に関する請負契約を締結した場合には、ホームページの完成という目的を達成してはじめて報酬が受け取れます。
一方で、業務委託契約は、依頼された業務を行うという大まかで自由なイメージの契約であり、請負契約のように業務の完結という確定した結果は必ずしも必要ではありません。そのため、業務内容や目的や事情によってホームページが完了しない状況の想定も含んだ契約です。
たとえば、業務委託契約というタイトルの契約であっても、注文建築でマイホームを建てる場合には完成という結果が必要であるため、実質的には請負契約に分類されます。他方、請負契約と書いてあっても機械などの保守メンテナンス業務であれば、終わりのない業務を反復継続するので、実質的には業務委託契約になります。
ホームページ制作に関わる契約書の主な記載事項
ホームページ制作を請け負う際に締結する業務委託契約書に盛り込むべき10の内容を解説します。
- 作業範囲
- 仕様詳細
- 対応ブラウザ
- 定期連絡
- 再委託
- 検収
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)
- 契約不適合責任の4つの請求権
- 所有権や著作権
- 損害賠償
作業範囲
まずは委託や請負業務の内容および範囲を記載します。制作したホームページの納品までとするのか、サイトを引き渡した後もサイト運営や保守メンテナンスまで行っていくのかを明記します。
サイトの完成までを委託範囲とするなら、ドメインの取得やレンタルサーバーの設定は業務範囲内ですが、サイト公開後のブログ記事などのコンテンツ作成や複数のSNSと連動した情報発信、サイトのメンテナンス更新および緊急対応やシステム復旧などは業務範囲外になるでしょう。
業務委託契約書は作業範囲を詳細に明示して、業務の線引きと責任の所在を明確にしておきましょう。
作成したサイトを引き渡したあとに、追加でサイトのメンテナンスやコンテンツ作成などのサイト運営を追加で依頼するなら、継続取引についての基本契約を締結するのがよいでしょう。
仕様詳細
納品物の仕様は、ホームページの作成ではトラブルになりやすい項目です。次のような仕様面で、クライアントと認識のズレが生じることは少なくありません。
- Webサイトのレイアウトやデザイン
- サイトの情報ボリューム
- コンテンツの規模や網羅性
- サイトの方向性
- 管理者の主張内容
認識の違いによって求める成果がズレないように委託内容は仕様書としてまとめておき、業務委託契約書や請負契約書から仕様書を参照するようにしておけば、認識のズレやトラブルを大幅に減らせるでしょう。
対応ブラウザ
ホームページは、使用するブラウザによって見え方が異なります。たとえば、サイトを利用する顧客の多くがMacOSなのに作成環境がWindowsで、MacOSでのサイトの表現力や動作チェックをしなかったために正常なバランスで表示しなかった、というような事態も起こりえます。
そのため、新たなサイトやサービスを展開するなら必ずその環境で動作確認をしてからリリースすべきです。具体的には、次の項目に関して明記しておきましょう。
- OSの種類
- システムやアプリのバージョン
- ブラウザの種類
- パソコンの処理能力
- 大手セキュリティソフトの干渉の検証の実施
また、ホームページをすべてのブラウザに対応させるのは困難です。そのため、サイトに対応ブラウザを明記して非対応ブラウザでの閲覧は推奨しない旨を示しておけば、クレームやトラブルに発展するのを防げるでしょう。
定期連絡
報告の頻度やタイミングを契約で決めておけば、委託者は業務の進捗や課題の把握が密にできるようになり、受託者も懸念点の報告や要望を発言しやすくなります。
また、受託者は委託者からの問い合わせにいつでも応じるという原則はあるものの、毎回委託者側から問い合わせをするのは委託者の業務量を考えても大変です。
下記のように規定すれば、互いに発言しやすく提案の準備もしやすくなります。
- 毎業務終了後にその日の進捗や懸念事項を報告する
- 週1回のオンライン面談で懸念事項や提案を報告する
- 提案は解説資料や参考サイトを添えてイメージを伝える
- 委託企業の担当者へはメールで報告し、CCで上席にも共有する
- 担当者が求めれば受託者はいつも要望に応じ説明をする
再委託
業務の質向上や時間短縮のために、イラストの作成やコラムの執筆などパートを細分化して、さらにフリーランスなどへ一部業務の再委託する場合があります。ただし、これを受託者の自由意志に任せてしまうと情報やノウハウの漏洩、著作物の無断使用、アクセス権限のない外部者がシステムに侵入するなどの問題が起こる可能性があります。
再委託自体は当事者が承諾していれば問題ないため「委託者の承諾がある業務に限る」と条件を付け「再委託先の行為の一切につき受託者が全責任を負う」としておけば安心です。
再委託をうまく使えば、バナーの制作はデザイナー、セールスライティングやナレッジコラムはWebライター、SNSの運用はSNSコンサル企業など、質の高いサイトを構築するために専門家を参画させられます。
検収
検収とは、受託者から提出された成果物が、委託者が発注した内容(数量・仕様・品質など)を満たしているか確認して納品物を受け取ることです。
納品から検収完了までの期間が曖昧だと、納品しても仕事が完了したことにならず、いつまでたっても受託者に報酬が支払われない状態になります。そのため「納品から〇〇日経過しても委託者から連絡がない場合には、その成果物は承認され委託業務は完了したものと見なす」という規定を設けるのが一般的です。
なお、この検収の猶予期間は短すぎると委託者にとって不利になるため、プロジェクトの納期や委託者の業務量などにより、双方が無理のない期間で設定するようにしましょう。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)
瑕疵担保責任とは、納品後にサイトの不具合が見つかった場合には、受託者がサイトを修正して不具合を除去したり、実損があれば弁償したりするというものです。
2020年4月1日より前の改正前民法では「発注者が受注者に対して担保責任を追及できる期間は、原則として目的物の引渡しなどから1年以内に限る」とされていましたが、委託者がその瑕疵に気付けなければ責任期間が短くなるため、委託者に不利な条件でした。
2020年4月1日以降の改正後民法からは、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」との名称に変更され、責任期間は契約不適合を知った時から1年以内に変更されています。
なお、契約不適合責任とは、納品物が契約書で委託者が指示していた仕様(種類、品質、数量など)とは異なる場合に、受託者が負う下記の4つの責任のことです。
契約不適合責任の4つの請求権 | 内容 |
---|---|
履行の追完請求権 | 契約に適合したものへ修正して再度納品するよう求める |
代金減額請求権 | 依頼した仕様に満たない分だけ代金の減額を求める |
損害賠償請求権 | 納品されたものから発生した損害の補償を求める |
契約解除権 | 業務委託契約の解除を求める |
ただし、小規模なサイトではなく大規模なECサイトやオウンドメディアなどでは、引き渡し後すぐにサイト全体の動作確認を完了させるのは難しいです。そのため、責任期間をできるだけ長く設定でき、1年以上も設定可能です。
所有権や著作権
ホームページの制作では受託企業が著作権を保有しますが、そのままでは委託者にサイトの修正や改編の権限がないため不具合を更新できません。そこで、著作者であるホームページ制作の受託企業から委託企業へ著作権を譲渡し、著作権が委託者へ帰属するように権限を変更するのです。
なお、所有権と著作権の権限の違いは下記のとおりです。
- 所有権:ホームページを保有・売買する権利
- 著作権:ホームページを変更・利用する権利
損害賠償
委託者が委託した内容と受託者が納品した成果物が合致しない場合には、受託者は契約不適合責任を負い、場合によっては委託者は受託者に対して損害賠償請求ができます。
損害賠償の請求期間や範囲をあらかじめ明確にしておかないと、ホームページを公開したものの効果が薄かったという理由でも損害賠償を請求される場合があります。そのため、どのような場合に損害賠償を請求して、いくらまでが損害賠償の許容範囲なのか、そして「ホームページの集客効果を保証するものではない」という内容を明確に設定しておくとよいでしょう。
ホームページ制作に関わる契約書のひな形(テンプレート)
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