アルバイト雇用契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
アルバイト雇用契約書とは
雇用契約書とは、雇用主と被雇用労働者とで合意した労働条件や就業ルールが書かれた書類です。民法上は雇用契約は諾成契約(口頭の合意のみで成立する契約)であり、書面による締結は契約成立の要件ではありません。そのため、アルバイトやパートタイムなどの非正規雇用では雇用契約書を作成しないケースもあります。
また、雇用契約書と類似する書面として「労働条件通知書」があり、被雇用者に必ず明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項)。そして、これを怠った場合には30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法第120条第1項第1号)。
なお、労働条件通知書は書面交付が原則ですが、労働者が希望した場合で労働者側にパソコンやスマートフォンなどで労働条件通知書の電子データが受け取れる環境にあるならば、Eメールでの提示も認められます。
アルバイトでも雇用契約は必要?
書面での締結や交付が必須でありませんが、アルバイトやパートタイム労働者であってもトラブルを回避するために雇用契約書を取り交わしておくべきです。試用期間も法的に雇用契約が締結されているとみなすため、試用期間が始まる前には締結が完了している状態にすべきでしょう。
労使間の認識の違いによって、賃金や賞与および労働時間などに関するトラブルが起こる場合があります。雇用契約書の作成は任意ですが、雇用契約書がないために労使間で合意した雇用契約の存在や雇用条件の合意内容が立証できず、揉めごとの解決が難しくなる場合があります。
また、雇用契約書は必ず2部作成して双方が手元に控えを保有します。ペーパーレスの電子契約なら電子印や電子サイン、もしくは専門の雇用契約管理システムなどを使います。そして、いつでも雇用内容や合意締結の履歴を確認したり、第三者へ証明ができるようにしておきましょう。
アルバイト雇用契約書の主な記載事項
アルバイト雇用契約書の主な記載事項は次のとおりです。なお、2020年6月に内閣府・法務省・経済産業省の連名で「契約書には必ずしも押印の必要はない」という見解が発表されましたが、契約の合意を証するためにも契約書には記名押印欄を設けたほうが望ましいでしょう。
雇用形態
雇用される形態には下記の7つがあり、待遇や規定される法令などが異なるため、契約書に記載して明示します。
分類 | 形態 | 詳細 |
---|---|---|
雇用 | (1)派遣労働者 | 人材派遣会社と労働契約を結ぶが、派遣先の会社からす指揮命令を受けて働く |
雇用 | (2)契約社員(有期労働契約) | 3年以内の雇用期間の定めがあり、常用雇用の正社員とは異なる |
雇用 | (3)パートタイム労働者 | 同じ事業所内の正社員より労働時間が短い短期間労働者で、パートタイマーやアルバイトとも呼ばれる |
雇用 | (4)短時間正社員 | フルタイム正社員より労働時間や労働日数が短いが待遇はフルタイム正社員と同等 |
業務委託 | (5)業務委託(請負)労働者 | 事業主として委託された仕事を完成して報酬を受ける、労働者としての保護は受けない |
業務委託 | (6)家内労働者 | 事業主として仕事を受託するが、委託者との関係は使用者-労働者に似ている |
業務委託 | (7)自営型テレワーカー | 事業主として委託された仕事を完成して報酬を受ける、事業所へは出社せず情報通信機器を介して委託者と連絡をとる |
なお、2024年4月1日から無期転換申込権が発生する有期雇用契約者に対して、「無期転換申込権の説明と無期転換後の労働条件」の説明が必要になります。
雇用期間
雇用期間の定めがない場合はその旨、ある場合はその期間を記載します。有期雇用契約の場合は更新の有無や更新を決める判断の基準についても明確に記載し、被雇用者が不明瞭感や不公平感を抱いてトラブルにならないような配慮は必要でしょう。
2024年4月1日からは、有期雇用契約者に対して「契約期間や更新回数の上限有無とその理由」の説明が必要になります。
勤務場所
便宜的に会社の「本社」を記載するのではなく、所属する部署および支店・店舗名など実際に勤務する店舗など、具体的な場所を指定するとより丁寧です。また「業務ごとに勤務場所を変更する可能性がある」と付記して、複数の候補店舗場所を記載しておくとなおよいでしょう。
仕事の内容
実際に従事する仕事の内容を全て記載します。一般的には「経理業務」「調理業務」「接客販売業務」などの大まかな業務区分を記載することが多いですが、仕事の内容は具体的であるほど丁寧です。また勤務場所と同様に、時期や時間帯や役職などによって変更する可能性があれば、その旨を明記します。
2024年4月1日から、すべての労働者に対して「就業場所や業務内容が変更される可能性のある範囲」の説明が必要になります。
勤務時間・休憩時間
始業時刻や終業時刻、休憩時間を記載します。とくに、時給制のアルバイトでは拘束時間から休憩時間を差し引いた「実質労働時間」を記載すると、給与計算で勘違いが起こりづらくなります。
シフト制の場合は、シフトが決まるサイクルや希望シフトの提出期限なども記載すべきです。また、休暇については「年次有給休暇、夏季休暇、慶弔休暇」と記載しますが、多岐に及んで複雑になる場合は「詳細については、パートタイム・有期雇用労働者就業規則の記載を参照」として別途で表記可能です。
休日
労働しない日および会社や店舗が休みの日などの休日を、「土・日・祝日」「隔週火曜日」「毎週」のように記載します。「年次有給休暇」がある場合には、その取得要件や基本日数および加算条件なども記載します。
所定外労働
所定外労働の有無と、ある場合は最大でどの程度の時間になるかを記載します。休日労働についても同様です。ちなみに、所定外労働は1週・1か月・1年の時間で、休日労働は1か月・1年の日数をそれぞれ明確に記載します。
賃金・昇給
基本給や所定外の加算および支払日や方法を、下記のように詳しく記載します。
- 基本給となる時間給や諸手当および計算方法
- 所定外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金率
- 賃金締切日、賃金支払日、賃金支払方法
さらに、アルバイトが短時間労働者に該当する場合、「昇給・退職手当・賞与の有無」を記載する必要もあります。
退職関連事項
定年制の有無や適用年齢、定年後の継続雇用制度の有無と適用年齢、自己都合退職の告知期限などについて記載します。継続雇用の要件や判定時期なども記載しておくとなおよいでしょう。
アルバイト雇用契約書のひな形(テンプレート)
BOXILでは、アルバイト雇用契約に使える無料のテンプレートをダウンロードできます。契約書を作成する際にはぜひご利用ください。
なお、業界特有のルールや所属団体の方針および業法の改正などに対応するために、適宜リーガルチェックを受け、最新の状態が維持できるようメンテナンスしておきましょう。