インターンシップに関する契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
インターンシップに関する契約書とは
インターンシップとは「就業体験」のことであり、就職前の学生が一定期間企業で体験を通して実社会を感じられる機会として広く認知されています。
学生側は業界や企業を肌で感じることができ、採用面接へ向けて自分の人となりや就業姿勢を企業に知ってもらう良い機会です。企業側は就職前の学生へ自社をアピールし、優秀な学生と接触する機会が増えます。
インターンシップとして企業が学生を受け入れることに関しては、特に書面による契約の締結義務はありません。ただし、1日~数日間の職場見学やワークショップ体験ではなく、実務補助などの体験が数か月にわたる場合に、その労働(実業の補助)の対価として報酬を支払うケースがあります。
このように、労働力の提供の対価としてインターンの学生が金銭を受領する場合には、学生が「労働者」と見なされる可能性があります。労働者であれば、労働法の適用を受けて労働者の権利と義務が発生するため、目的や期間および報酬について「インターンシップ契約書」で条件を明文化しておかなければなりません。
インターンシップに関する契約書はなぜ必要か
多くの会社員は労働時間が契約で決まっており、会社から指示された業務を遂行し、給料を得ます。インターンシップでも、下記に当てはまる場合は労働者と見なされる可能性が高まります。
- 会社の指示どおりに業務をして利益につながったため報酬を得た(営業活動によりサービス契約を獲得したなど)
- 勤務時間や休日など会社の指示により時間を拘束された
インターンの中身が労働にあたる場合は、下記の3つの理由により雇用者と学生が「雇用契約」を締結しなければなりません。
インターンシップ契約書の作成義務
インターンシップの実施にあたり、契約書の作成に関する法的な義務はありません。しかし、インターンシップの目的や内容、事故やトラブル時の対応方法などを双方が明確に確認すべきであり、それらを書面にしておくことはとても重要です。
中長期にわたる就労型インターンシップ
インターシップでは契約締結が義務ではないものの「インターンシップ条件の書面による明示」が義務付けられるケースはあります。
就労型インターンシップで、学生が労働基準法第9条の「労働者」に該当する場合は「労働基準法」「労働契約法」「労働者災害補償保険法」「最低賃金法」などの対象となり、賃金の支払いが必要です。
これにより、労働基準法第15条第1項にある「使用者は、労働契約の締結で、労働者へ賃金、労働時間その他の労働条件を書面で明示しなければならない」という規定が適用されます。また、労働条件を明示した書類「労働条件通知書」の作成が必要になります。
なお、労働条件通知書とともに「雇用契約書」も作成するのが一般的ですが、雇用契約書やインターンシップの契約書同様に作成義務は法定されていません。それでも、労働契約法において「労働者が契約内容を正しく理解できるように、書面による契約内容の確認」を推奨するとされているため、インターンシップにおいても、契約書の作成が強く推奨されることになります。
経済産業省が発行するインターン活用ガイド
インターンシップの体験学習が実業務の従事をともなう場合に、実業務による利益や効果が事業に帰属し、かつ実業務の指導者と学生との間に「使用従属関係」が認められる場合には、当該学生は労働者に該当すると考えられます。
つまり、実業の補助が企業の本業の成果に貢献するなど、インターンの中身が労働にあたる場合は、雇用者と学生が「雇用契約」を締結しなければなりません。
※出典:経済産業省「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド」(2024年4月30日閲覧)
インターンシップに関する契約書の主な記載事項
目的
インターンシップの目的を記載します。インターンシップの実施で、誰が何を達成したいのかを明確にします。
令和4年6月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省合意による「インターンシップの推進にあたっての基本的考え方」が改正され、令和5年度から大学生などのインターンシップの取り扱いが変わります。改正のなかには「インターンシップ等の学生のキャリア形成支援に係る取組」を、タイプ1〜4に類型化し、目的に応じた対応が分かれています。
※出典:文部科学省・厚生労働省・経済産業省「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」(2024年4月30日閲覧)
期間
インターンシップの実施期間を記載します。
勤務地
どこでインターン実習を行うのかを記載します。なお、インターンの進捗や日程によって実習拠点が変わる場合には、インターン学生はどこに行けばよいのかがわかりません。
「本社◯◯会議室」「◯◯支店」「◯◯営業所」のように、具体的な実習拠点を記載します。
報酬
実務体験で受け取る報酬も必ず記載します。無償の場合は「無償でインターンシップを実施する」「インターンによる成果報酬は発生しない」などと明記しておきましょう。
報酬が発生する場合は、金額や支払時期および支払方法などの条件を記載します。給与の他にも交通費や備品代および昼食代など、インターンシップの実施に関連する経費の有無や内容についても記載します。
インターン学生が労働者に該当する場合は、労働基準法に従って業務に従事させなくてはなりません。インターンシップ学生であっても、法定労働時間の超過や、最低賃金以下の報酬や、社会保険や労働災害保険に加入させないのは違法です。
インターンシップであっても、報酬の有無についてはインターンシップ契約書に必ず記載しておきましょう。
秘密保持
インターンシップで実務の補助をする場合に、企業が保有する製品情報やノウハウ、顧客情報や特許技術および営業戦略などを見聞きする場合があります。
これらの情報は企業の財産であり、競合他社へ機密情報が漏れてしまうと、売上の半減や市場優位性、デザインや技術などの模倣につながります。そのため、秘密保持に関する項目も、一般従業員と同様に契約書に盛り込んでおくべきです。
情報の扱い方として、社屋や商品や製造過程などの撮影およびSNSへの投稿禁止、社屋のなかでスマートフォンを持ち込めないエリアや時間帯を設定するとよいでしょう。
インターンシップに関する契約書のひな形(テンプレート)
インターンシップに関する契約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、これからインターンシップに関する契約書を作成する方はぜひご利用ください。