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取引基本契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から226日前のものです)
繰り返し同じ取引がある場合に、毎回契約を締結するのは手間がかかります。このような場合には基本取引の契約と取引ごとに異なる契約の2本に分けるケースがよくあります。取引基本契約と個別契約の役割や相違点、一般的な契約条項とその規定の主旨などについて解説します。記事の最後ではすぐに使えるひな形がダウンロード可能です。

取引基本契約書とは

取引基本契約書とは、継続的な取引を行う際に使用される契約書です。この契約書は、同じ取引相手と何度も商品を購入したり、継続的に業務を依頼したりする場合に、今後の個別取引に共通する事項を定めておきます。

ビジネス上の商品の売買やサービスの提供では、買主が希望する仕様の商品を希望する数量だけ指定期日までに要求し、両者が合意する金額で売主が提供することを約束します。このような契約は書面がなくても双方の合意だけでも有効に成立しますが、合意内容の勘違いを防ぐ備忘録の役割や将来のトラブルを予防するため抑止力のためにも「売買契約書」もしくは「サービス契約書」など書面にしておく必要があります。

ただし同じ相手と同じような商品を反復継続する取引関係なら、毎回契約書を作成して記名押印するなどの締結作業は煩雑です。そのため、毎回同じ内容の契約部分と都度変更になる契約部分の2本に分けて契約を締結するのが一般的です。  

取引基本契約書が必要な理由

「1つの取引なのに、わざわざ契約書を2つに分ける必要があるのか」と疑問に思うかも知れません。しかし系統立てて2つに分けるからこそ、複雑な契約内容や毎回変化する仕様などにも適切に対応できます。

取引基本契約が必要である理由は下記の3つです。

  • 同内容の取引を継続的に行いやすい
  • 取引内容が系統立てて理解しやすい
  • 取引が迅速でスムーズに遂行できる   #### 同内容の取引を継続的に行いやすい

その取引ごとに実体に即した内容で契約書を作成して、取引実行前に締結することはミスや損害を防ぐためにも特に重要な手続きですが、同じ内容の契約書を継続取引をする相手と何度も作成して締結するのは大変です。

商品の種類や数量の指定部分など、文言が少し異なるだけの契約書を毎回作成するのではなく、異なる部分だけを抜粋して締結できれば、反復継続する定型取引でも契約作業が簡素化されるため手間を大幅に減らせます

取引内容が系統立てて理解しやすい

毎回の取引で共通する基本部分は基本契約書として取りまとめ、取引のたびに変動する部分を個別契約書として補足的に締結しておけば、取引の特徴が把握しやすくなるため内容が明確になります。

また、契約における大枠の内容や参照する頻度が低い内容な基本契約で規定し、通常の取引からの変更点や詳細な仕様および特別な指示内容などは個別契約に規定しておけば、日々の確認は個別契約に目を通すだけでよくなり理解度が上がります。
 

取引が迅速でスムーズに遂行できる

基本契約の内容がビジネスの当事者間で十分理解され浸透していれば、あえて毎回確認し合う必要がなくなり取引が円滑に進められます。なぜなら、基本的に変動しない契約の根幹部分や現場の末端の従業者が確認する必要のない内容が明確に分けられているためです。

つまり、現場で取引に携わる実行部隊は取引ごとに変動する部分が集中的に記載された個別契約書を確認するだけでよく、現場ルールの周知徹底や品質の平準化にも即時に活かされます。

取引基本契約書と基本契約書の違い

当事者間の継続取引において、基本となる事項を規定したものが「基本契約書」で、取引ごとに変動する個別条件を規定したものが「個別契約書」であり、1つの継続取引においてこの2つをセットで締結するのが一般的です。

なお、「取引基本契約書」も「基本契約書」も記載内容に大きな差異はなく、おおむね同じ意味で使用します。ただし、個別契約書との識別がしやすくなるように、契約書の表題部分に「取引基本契約書」と記載して契約形態がわかるようにしておくことが望ましいです。

基本契約と個別契約はどちらが優先されるのか

変動しない基本部分を取引基本契約書が担い、取引に応じた変動部分は個別契約で規定するという2部構成の契約書にした主旨に沿うなら、下記のように左側を優先するのが一般的です。

  • 個別契約書>取引基本契約書
  • 特約条項>基本条項

取引基本契約書はどちらが作成すべき?

契約書の作成自体が法律上の必須条件として規定されていないため、取引基本契約書も必ず作成すべきものではありません。しかし、契約内容や取引の態様が「下請法に基づく下請取引」に該当する場合には、発注者には契約ごとの受注者への書面交付義務があり、書面に記載する事項も下請法で厳格に定められています。

そのため、同じような受発注が反復継続されるような取引なら、取引基本契約書に毎回同様で変動しない部分をあらかじめまとめ上げておき、取引ごとの変動部分だけを注文書(発注書)と注文請書(発注請書)で迅速に取り交わすのが一般的です。

契約書の作成は発注者もしくは受注者のどちらが行っても問題ありません。しかし、発注者が取引を要求する側であるため、契約内容の骨子を決定することが多く文書化しやすいといえます。また、発注側のほうが下請け側よりも契約書作成に携わる人員が多く、法務チェックなどの体制が整っている場合が多いため、取引基本契約書については発注側が作成するケースが多くなります。

一方で、注文書や注文請書は商品の種類、仕様、数量、納期、引き渡し方法などが簡易的に書かれているだけの場合も多いため、当事者間で書式が共有されていれば下請け側が作成するほうが迅速に締結できる場合もあるでしょう。

取引基本契約書の主な記載事項

取引基本契約書の主な記載事項は次のとおりです。基本仕様として定めておくべき条項やその内容を解説します。

  • 契約期間
  • 報酬
  • 適用範囲
  • 契約解除
  • 損害賠償
  • 優先事項
  • 所有権の移転
  • 通知義務
  • 秘密保持義務
  • 期限の利益喪失
  • 契約不適合責任

契約期間

反復継続して取引する全体の契約期間について定めます。また、取引基本契約期間が満了した場合の契約終了や再契約および更新の内容や書面の交付について定め、双方が異議を述べなければ自動更新にする場合はその旨も記載しておきましょう。

報酬

報酬の内容は双方の合意により自由に決められます。毎月定額の基本報酬と個別契約時の個別報酬、もしくは取引金額に応じたパーセンテージなど金額に関する規定をし、経費の報告および精算や、報酬の締めと支払日および支払い方法(振込なら口座と振込手数料負担など)などを規定し記載します。

適用範囲

取引基本契約書で最も大切な「基本的な取引内容」を規定します。取引内容が商品の売買であれば「甲が継続的に発注する商品を乙が指定期日内に指定方法で納品する売買取引」などのように、繰り返し行われる商品の売買契約であることを明確に表明します。

契約解除

契約の解除に関する基本ルールおよび解除予告期間と方法(解除の何か月前に書面で予告など)の内容を規定します。また、契約違反行為や特殊な事象によって、「期限の利益の喪失」にあたる条項に抵触すれば解除できる旨も併せて付記します。その際には契約解除によって発生する損害の賠償に関しても、詳しく規定して記載しておきましょう。

さらに、訴訟に発展する場合を想定した「管轄裁判所」として、どちらかの企業の所在を管轄する裁判所を基本契約書中に規定しておくのが一般的です。

損害賠償

契約違反および故意や過失で相手に損害を与えてしまった場合に、その損害賠償の範囲や金銭などの補填方法を明確にする必要があります。

事前にペナルティを決めるのは損害賠償の補償を実行する指針にするためですが、損害の発生を未然に防ぐ抑止力にもなるため、ビジネスの取引における契約書ではとくに重要な条項といえます。

優先事項

取引基本契約書の内容が日常の取引においてどの程度まで優先して適用されるかを規定します。とくに、通常とは異なるイレギュラーな発注量や時期および発注ミスがあった場合、もしくは個別契約書と取引基本契約書の内容が重複もしくは異なる場合に、どちらがどの程度優先するのかを具体的に定めておきましょう。

所有権の移転

取引対象商品の所有権が、いつ相手方に移転するのかという規定です。たとえば、「所有権は甲の引き渡し検査の合格時に移転する」のように記載します。

通知義務

商品の仕入れが大幅に遅れるような事象が起こった場合には、取り急ぎ納品先に一報を入れるのはビジネスマナーの範囲内です。ここでいう「通知義務」とは、企業の商号や屋号および所在や代表者の変更、取引口座の変更、経営権に関わる株式保有者の変更などがあった場合には、直ちに書面にて予告および通知するとの義務を課します。

秘密保持義務

取引基本契約書や個別契約によって入手した相手方の内部情報や営業上の秘密は、決して第三者に漏えいしてはならないという規定です。この義務は取引関係が終了してライバル企業へ情報が漏れないように、双方ともに一定期間は義務を継続させることが少なくありません。

期限の利益喪失

代金や報酬の支払いが不能な状態になった場合や差押え、仮差押え、仮処分、破産、会社更生の申し立てを行ったなど、取引の継続が困難になった場合には、取引基本契約書や個別契約書に規定された猶予期間を失うという規定です。

たとえば、相手方からの月末支払いを待っている売掛金があり、相手方が上記状態になり取引が危うくなった場合には、相手方がもっている月末までの支払猶予期間を失い、当方へ即日全額支払うよう請求できるというイメージです。

契約不適合責任

納品された商品に契約内容と異なる不具合(数量や仕様および品質や機能性など)があった場合に、対応方法を明記します。例えば、補修や不足分の追加納品、商品代金の減額や損害賠償などです。なお、この不適合が契約書に明記して告知し相手方も合意していれば、不適合責任は問われません。

取引基本契約書のひな形(テンプレート)

取引基本契約を検討している場合に利用できるテンプレートを用意しました。契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

取引基本契約書のひな形(テンプレート) 取引基本契約書のひな形(テンプレート)

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