電子契約は契約書の印刷は不要!理由や印紙の扱いについても紹介
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電子契約では契約書の印刷や紙での保存は必要ない
電子契約では契約書の印刷や保存は原則として必要ありません。なぜなら、電子契約では電子契約のデータを原本として扱えるためです。
ただし、契約書をはじめとする国税関係の書類を電子データで保存するためには、電子帳簿保存法(電帳法)の保存要件を満たさなければなりません。また、7年間の保存義務もあるため、法対応が十分にできていることを確認してから電子契約や電子データでの契約書保存を検討しましょう。
印刷した電子契約書で収入印紙が不要な理由
印刷した電子契約書では、基本的に収入印紙が不要です。その理由には次の2点が挙げられます。
- 印紙は原本が紙のものであるときに必要
- 電子契約はデータが原本のため収入印紙は不要
紙の契約書で収入印紙が必要な理由と比較しながらわかりやすく説明します。
印紙は原本が紙のものであるときに必要
電子契約は電子データが原本なので、課税対象文書の原本が紙ベースで作られた場合に必要な収入印紙は必要ありません。課税文書作成者が印紙税を支払ったと証明するために印紙は利用されるもので、原本として扱う契約書が紙で作成されることが、印紙税が発生する要件とされています。
電子契約はデータが原本のため収入印紙は不要
国税局の2つの照会と回答を参考にすると、電子データが原本である電子契約には収入印紙は不要であると判断可能です。
1つ目の照会は、「建設工事を受注する際に書面の注文請負書に代えて、受注記録を電子メールで送信する場合は課税対象か?」というものです。これに対して、「電磁的記録は課税物件に該当せず、課税対象ではない※1」と国税庁が回答しています。
2つ目の照会は、「写本や副本を作成して単なる控えとして正副2通の契約書を取り交わしたときには、写本や副本にも印紙を貼るべきか」との照会です。この紹介に対して国税庁は、「双方の署名や押印があり契約成立を証明する仕様になっている場合は印紙税が発生する可能性を指摘しつつも、単なる控えであれば原則として課税文書とはならない※2」と回答しています。
※1 出典:国税庁質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(2025年1月17日閲覧)
※2 出典:国税庁質疑応答事例「写、副本、謄本等と表示された契約書の取扱い」(2025年1月17日閲覧)
これらの照会と回答を踏まえると、電磁的記録で作成された電子契約は収入印紙が不要と考えて問題ないでしょう。詳しくは次の記事で解説しています。
電子帳簿保存法における印刷物の取り扱い
電子契約で契約書を電子データとして保存できる根拠である電子帳簿保存法(電帳法)において、印刷物の取り扱いがどのように規定されているか解説します。
原則的に電子契約は印刷して保存できない
電子データによる電子契約を行った契約については、電帳法の原則により印刷して保存はできません。電子契約が印刷して保存できない理由は、電子契約が電帳法における電子取引に該当し、データのまま保存することが法的に義務付けられているためです。
電帳法における3つの保存区分は次のとおりです。
要件 | 概要 |
---|---|
電子帳簿等保存 | 電子契約システムや会計ソフトで作成した国税や決算などに関係する書類の電子保存について定めている。 要件を満たせば電子データで保存してもよい。 |
スキャナ保存 | 自己作成や、取引先と授受した紙の請求書や領収書をスキャナで読み取って電子保存することについて定めている。 こちらも要件を満たせば電子データで保存してもよい。 |
電子取引 | 注文書や契約書といった取引や、国税に関する情報を電子データでやり取りしたものの電子保存について定めている。 原則として一定の条件を満たしてデータのまま保存することが法的に義務付けられている。 |
このように、電子帳簿保存やスキャナ保存は任意であることに対して、電子取引についてはデータ保存が義務とされているため、基本的に電子契約の印刷保存はできないと考えましょう。
2024年1月以降は要件を満たせば印刷保管も可能
2024年1月以降、原則的に電子取引はデータのまま保存することが完全義務化されています。しかし、一定の要件を満たすことで、2024年1月以降も印刷して保管できます。電子取引を印刷して紙で保存する要件は次のとおりです。
- 所轄税務署長により相当の理由があると認められる場合
- 電子取引データのダウンロード求めに応じられること
- プリントアウトした書面の提示・提出に応じられること
2024年1月以前の宥恕期間には定めのなかった、電子取引データのダウンロード求めにも応じなければならなくなったことが大きな変更点です。この要件があるため、電子取引を印刷して保存する場合でも電子データ自体は保存しなければなりません。
紙とデータそれぞれの管理が必要なため、電子取引を印刷して保管する場合はより管理業務が煩雑になると考えましょう。
※参照:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」(2025年1月17日閲覧)
契約書の印刷を不要にする電子帳簿保存法の保存要件
電帳法の保存要件を満たすために必要な項目は主に次の4つです。
- 操作履歴やタイムスタンプで真実性が確保されている
- 書面を表示する機能で見読性が確保されている
- マニュアルが完備されている
- 検索機能がありいつでも書類を閲覧できる
タイムスタンプや操作履歴で真実性が確保されている
タイムスタンプの付与や操作履歴を残すことで、契約データの真実性を確保することが電帳法の要件の1つです。真実性を担保することで、取引が正当なものであると主張できるため、電帳法でも重要な保存要件として位置づけられています。
タイムスタンプを残す具体的な方法としては、タイムスタンプが付与された電子データをやり取りするか、データをやり取りしたのち速やかにタイムスタンプを付与し、保存者や監督者がわかるようにするなどが挙げられます。
もしくは、データの訂正や削除をした履歴が残るか、そもそも訂正や削除ができないシステムを使うこと、不正な訂正や削除の防止に関する規定を定めてその規定に従って運用することでも真実性の確保は可能です。
いずれかの方法によって真実性を確保することで、取引が適切に行われたと判断できるため、電帳法対応にはタイムスタンプや操作履歴の残る仕組みが必須であると覚えておきましょう。
書面を表示する機能で可視性が確保されている
書面を表示する機能があり、可視性(見読性)が確保されていることも電帳法対応要件として重要です。そもそも、書面を表示する機能がなければ従業員が電子契約を行うことも不可能です。また、万が一税務署職員が調査に入った場合にも、速やかにデータを表示できなければならないため、閲覧機能をもつシステムであることも電帳法要件として規定されています。
データを閲覧できる場所に接続可能なパソコンや、パソコンを操作する機器、画面を表示するディスプレイが設置されていることがこの見読性を確保するための条件です。市場で提供されている電子契約システムを導入している企業であれば、この条件を満たすことは難しくないため、この要件のために必要な作業が増える事業者は少ないでしょう。
マニュアルが完備されている
マニュアルが完備されていることも電帳法対応の要件の1つです。電子データに真実性が確保される処置が適切に行われ、それを表示する機器がすべて揃っていたとしても、マニュアルがなくどのように操作すればよいのかわからなければ画面に契約データを表示できません。結果として、可視性が損なわれてしまうため、電帳法に対応できていないと判断されます。
電帳法に対応するためには誰もが電子データを表示できるためのマニュアルが必要であり、新規採用の従業員でも税務署職員でもデータが閲覧できる環境を整えなければなりません。なお、マニュアル自体は紙媒体でも電子データでも構わないと定められています。
検索機能がありいつでも書類を閲覧できる
検索機能があり、いつでも書類を閲覧できることも可視性確保のために重要です。検索機能として求められるものは次のようなものです。
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索ができること
- 日付や金額の範囲指定で検索できること
- 2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できること
これらの機能をもっているシステムを利用していれば、電帳法に対応した電子データ保存が可能です。ただし、改正後の電帳法では、税務署職員によるダウンロードの求めに応じられる場合、検索要件は取引年月日・取引金額・取引先のみが検索できればよいとされています。
さらに、事業者の規模によっては検索機能のすべてが不要になるケースもあるため、電帳法対応前に専門家に確認し、どこまでの対応が必要か見極めが必要です。
7年以上の保存ができる
電帳法の保存要件ではありませんが、法人税法に対応するために7年以上の保存ができる電子契約システムを利用することも重要です。繰越欠損控除を利用する場合は10年の保存が必要なため、長期間のデータ保存が可能なシステムを利用しましょう。
とくに、タイムスタンプを付与する際に電子証明書も合わせて利用している場合には、電子証明書にも有効期限が設定されていることに注意が必要です。長期署名に対応しているシステムであれば電子証明書の有効期限を伸ばすことも簡単なため、長期間タイムスタンプを付与した電子データを保存する場合は、長期署名対応のシステム利用を検討しましょう。
印刷不要の電子契約で契約業務を効率化しよう
電子契約のデータは基本的に印刷は不要で、データのまま保存が可能です。印刷した場合にもデータが原本として判断されるため原則的に印紙税はかかりません。
2024年1月以降は改正電帳法によって、電子取引を電子データのまま保存することが義務化されており、印刷して保存することは基本的に認められていません。一部条件を満たす事業者は印刷して保存も可能ではあるものの、紙と電子データのそれぞれを管理しなければならないため、業務が煩雑化しやすいデメリットがあります。
電帳法への対応はすべての事業者に義務付けられているため、まだ電帳法に対応できていない事業者はシステム利用も検討しつつ、早急な電帳法対応を目指しましょう。
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