在庫管理での発注とは？発注方式、課題、効率良く行うコツ

在庫管理での主な発注方式は2つ

在庫管理で用いられる発注方式は「定期発注方式」と「定量発注方式」の2種類があります。どちらにもメリットやデメリットがあるため、在庫に合わせて使い分けるのが重要です。それぞれ詳しく解説します。

定期発注方式

定期発注方式とは、定期的に発注を行う方式です。毎週金曜日に発注する、毎月末日に発注するといった形で、一定のタイミングで発注をする方式になります。発注量は在庫状況や需要を鑑みて都度計算をして決めるのが特徴です。

発注タイミングが一定であるため、業務のひとつに組み込みやすく、発注漏れを防止しやすいのがメリットのひとつです。発注漏れを防ぐことで、在庫切れになるリスクを低減し、機会損失を防げます。

また、発注の際は発注量を計算してから発注をするため、需要の変動が大きい商品に適しています。

一方で、需要を正確に予測しないと過剰在庫や在庫切れになりやすいといった点がデメリットです。また、手間や時間がかかるため、発注担当者のリソースを十分に確保する必要があります。

定量発注方式

定量発注方式とは、一定の在庫を下回ったら発注をする方式です。たとえば、在庫が100にまで減ったら発注するといった形です。基準になる在庫数を発注点といいます。

発注タイミングは在庫数に依存するため、発注の回数を減らせます。したがって、最小限のコストで過剰在庫や在庫切れを防げるのが特徴です。また、発注点に達したタイミングで発注をするだけのシンプルな作業であるため、手間の削減もできます。

一方で、発注点に達したら決まった量を発注する方式であるため、需要の変動に対応しにくいといった特徴があります。そのため、年中一定の売り上げが見込める定番商品のように、需要の変動が少ない安定した商品向けの方式です。

発注点とは

発注点とは、定量発注方式において発注を行うタイミングとなる在庫量のことです。たとえば、在庫量が100にまで減ったら発注をかけるといったルールを定めていた場合、100が発注点になります。

発注量を決める際は、発注する量や数ではなく日数をもとに計算するのがポイントです。具体的には次の計算式で算出できます。

発注点＝1日の平均出荷量×調達期間+安全在庫

調達期間とはリードタイムとも呼ばれ、発注してから納品されるまでの期間です。安全在庫とは、需要や売り上げによって在庫が大きく変化しても在庫切れを防げる在庫です。

発注点を管理することで、定量発注方式を効果的に活用できます。発注点管理にはExcelや自動発注システム、在庫管理システムなどが利用されるのが一般的であるため、自社に合ったシステムを利用しましょう。

発注数、発注量の決定方法

発注量を決める際はコストをできるだけ減らしつつも、過剰在庫や在庫切れにならないように発注する必要があります。このような、コストを最小化した発注量を経済的発注量といい、EOQとも呼ばれています。

経済的発注量を考慮した発注量の計算式は次のとおりです。

経済的発注量＝√(2×1回あたりの発注費用×年間必要量÷年間在庫保管費用)

発注量を間違えると過剰在庫や在庫切れが発生してしまいますが、リスクを恐れてコストをかけすぎてしまうと、経営の圧迫につながる恐れがあります。したがって、計算式に当てはめて適切な発注量を決めるのが重要です。

しかし、人力で計算を行うと、計算ミスといったヒューマンエラーが起こる可能性があります。そのような場合は、在庫管理システムを導入することで効率よく計算ができます。

在庫管理と発注におけるよくある課題

在庫管理と発注における、よくある課題は次のとおりです。

• 発注ミス
• 業務の属人化
• 実在庫数とデータが合わない

それぞれ詳しく解説します。

発注ミス

在庫管理はExcelを用いた人力での管理が一般的であるため、発注ミスがよくある課題のひとつです。人力で在庫管理を行うと、さまざまなヒューマンエラーが起こる可能性があります。たとえば、Excelに在庫数を間違えて記入してしまう、記入そのものを忘れてしまうなどのミスです。

このように記入ミスをすると、在庫がまだ残っているにもかかわらず、新たに発注をしてしまい、過剰在庫になる可能性があります。

このような発注ミスを防ぐには、システム化が効果的です。たとえば、在庫管理システムを導入すれば在庫状況がリアルタイムで把握できるため、正確な在庫数を把握することで、過剰発注や発注漏れを防ぐことが可能です。

業務の属人化

業務の属人化が起きてしまうのも、在庫管理によくある課題のひとつです。従来のように在庫管理を人力で行っていると、発注担当者の勘や経験則をもとに発注数を決めがちになります。したがって、発注担当者が需要を読み間違えてしまうと、過剰在庫や在庫切れになるリスクがあります。

また、個人に依存するため、発注担当者が求職や退職をしてしまうと発注が困難になるのもデメリットです。

このような業務の属人化を防ぐには、業務の標準化が重要です。従業員がいつでも閲覧できるマニュアルを作成して、誰が発注を担当しても安定した在庫状況を保てるようにする必要があります。

実在庫数とデータが合わない

人力で在庫管理を行うことでヒューマンエラーが起きてしまい、実在庫数とデータが合わなくなるのが、在庫管理によくある課題のひとつです。

従来の在庫管理は、在庫数の確認を人力で行っているため、数え間違いをする可能性があります。そのため、実在庫と管理データが一致しなくなり、あると思っていた在庫がなかったり、過剰在庫になっていたりします。

在庫の適正化ができなくなれば、機会損失や顧客満足度の低下につながってしまうでしょう。

このようなデメリットを回避するためには、棚卸を正確に行い、システムと連携させることが効果的です。棚卸は在庫状況を把握するための重要な業務ですが、時間や手間がかかります。しかし、在庫管理システムを活用することで、効率的な棚卸が可能です。

在庫管理システムを活用することで、少ない手間で在庫数をリアルタイムで把握できるようになり、効率的な在庫管理が可能になります。

在庫管理や発注を正確に実施する方法

在庫管理や発注を正確に実施するのであれば、Excelを活用することと在庫管理システムを利用するのが効果的です。Excelと在庫管理システムのどちらにも特徴があるため、それぞれ詳しく解説します。

Excelを活用する

在庫管理を行う代表的な方法が、Excelを活用することです。Excelによる在庫管理は、比較的簡単に始められる、システム導入よりも低コスト、紙より管理しやすいといったメリットがあるため、小規模運用に適しています。

Excelに品番や商品名、日時、繰越残高といった必要事項を記入して管理や発注を行います。テンプレートや関数があるのも特徴です。初めてExcelで在庫管理をする際は0から作る必要がありますが、テンプレートを利用すればすぐに始められます。

また、VLOOKUP関数やROUND関数といった関数を利用することで、自動計算ができ、業務の効率化が可能です。

在庫管理システムを利用する

在庫管理システムを利用することで、業務の効率化が可能です。在庫管理システムは、在庫のあらゆる情報を一元化するシステムで、リアルタイムで在庫の場所や数、賞味期限といった情報を把握できます。

出荷や仕入れで在庫数が変化した際にリアルタイムで情報更新されるため、発注ミスや業務の属人化、実在庫がデータと合わないなどの問題が起きにくいのがメリットです。また、棚卸作業もスキャナーを使用してバーコードを読み取るだけでよくなるため、正確性も向上します。

効率良く発注を行うコツ

効率良く発注を行うコツは次のとおりです。

• 無駄な在庫を持たない
• ABC分析で管理在庫の優先度を決める
• 日次棚卸で負担を軽減する

それぞれ詳しく解説します。

無駄な在庫を持たない

無駄な在庫を持たないことが、効率の良い発注につながります。無駄な在庫を持ってしまうと過剰在庫につながり、コストの増大や発注ミスなどが起きやすくなります。

無駄な在庫を持たないためには、生産リードタイムを短縮し、需要を予測して発注することで実現可能です。それぞれ詳しく解説します。

生産リードタイムの短縮

生産リードタイムを短縮できれば、製造工程における無駄な時間が減ります。したがって、生産効率が高められ、仕掛け在庫と呼ばれる製造過程の在庫を削減可能です。保管している在庫の多くを出荷できる状態にしやすくなり、効率的な発注が可能になります。

生産リードタイムを短縮するためには、従業員の適切な配置や仕入れ先との連携を見直すのが効果的です。スムーズな出荷ができる体制を整えることで、効率の良い発注ができます。

需要予測

需要を予測して発注を行うことで、過剰在庫を防ぎ、効率の良い発注につながります。需要を予測できれば、発注した商品の多くを出荷できるため、過剰在庫を防いで利益の最大化が可能です。

たとえば、過去のクリスマスケーキの販売数を活用すれば、クリスマスケーキの販売数を予測できます。市場の流れを学習したAIを活用するのも効果的です。

このように過去データやAIを活用して需要を予測すれば、効率の良い発注ができます。

ABC分析で管理在庫の優先度を決める

ABC分析で管理在庫の優先度を決めることで、注力が必要な商品の在庫切れを防げ、効率の良い発注ができます。

ABC分析とは、商品をABCの3グループに分けて重要度を決める手法です。売れ筋の商品を重点的に在庫管理を行い、売り上げが大きくは見込めない商品の在庫管理の優先度を下げることで、効率的に在庫管理を行えます。

管理在庫の優先度を決めることで、売り上げに貢献する商品のマーケティングを強化し、顧客の優先度を明確にして、より手厚いフォローを行うことが可能になります。

日次棚卸で負担を軽減する

日次棚卸を行って負担を軽減することで、効率の良い発注が可能となります。日次棚卸とは、その日の内に変動した在庫数を確認することで、在庫の誤差を迅速に発見し、正確な在庫を保つための方法です。

たとえば、売れ筋商品の日次棚卸を行えば、開店時と閉店時の在庫の変化がわかります。したがって、在庫数を把握できずに発注をかけ忘れることがなくなります。在庫状況を常に把握できれば慌てて発注することがなくなるため、負担が減るでしょう。

また、差異が生じても原因特定のための労力が減り、在庫状況を正確に把握できます。

在庫管理システムの導入で在庫管理を適正化しよう

在庫管理を適正化し、発注を効率よく行うためには在庫管理システムの導入が効果的です。在庫管理システムは、在庫に関する情報を一元化できます。リアルタイムで在庫の増減や在庫のある場所を把握できるため、在庫管理や発注の効率化につながります。

発注を人力に頼っていて業務が停滞しているのであれば、在庫管理システムの導入することで業務の効率化が可能です。在庫管理システムを導入する際は各ツールを比較し、気になるシステムの資料をダウンロードして自社に合うのか検討しましょう。