
2026年2月、日本オラクル本社(東京・北青山)にて、初開催となる「Oracle NetSuite Partner Developer Day 2026」が開催されました。
懇親会では株式会社チームスピリット 代表取締役CEO 道下 和良氏をゲストに迎え、NetSuite事業統括 営業統括本部 営業統括部長の福宮氏がモデレーターを務める対談が行われました。
1社あたりにおける複数のSaaS活用が一般化する中、企業の持続的な成長を支えるIT基盤はどうあるべきか。自社で5年ほどNetSuiteを利用するユーザー企業の代表という視点も併せもつ道下氏と共に、日本市場における「システム投資と連携戦略」が語られました。
「単体最適」から「プラットフォーム活用」へのシフト:なぜ今、協業が必要なのか

福宮氏:本日のセッションでは「日本市場におけるSaaS連携のリアル」をテーマにお話を伺いたいと思います 。まず本題として、昨今の日本市場におけるSaaS業界の盛り上がりをどう見ていますか。
道下氏:特に2020年以降、日本のSaaSは非常に元気があると感じています 。背景には利用するSaaSの数の劇的な変化があります。ある調査では、日本企業では1社あたり46個※のSaaSを併用しているというデータがあります。お客様の目の前には「この数のSaaSをいかに使いこなすか」という課題があります。
福宮氏:そうした「マルチSaaS」が当たり前の時代において、特定のシステムに機能を詰め込む「単体最適」の考え方は限界に来ています 。以前は自社製品の機能をいかに拡張するかが焦点でしたが、今は「いかに他社サービスと滑らかにつながり、エコシステムを形成するか」が顧客価値、そして企業の機動力を左右します。SaaSは今、個々が競う段階から、互いの強みを活かし合う「協調」のフェーズへと進化しています。NetSuiteとしても、ERPを「閉じたシステム」にするのではなく、あらゆるデータが集まり、流動する「オープンなプラットフォーム」として定義しています。
道下氏:経営的な視点で見れば、すべてを一から自社で開発したり、一つの巨大なシステムに固執したりするコストとリスクは無視できません。優れた外部サービスと迅速に連携できるNetSuiteのような柔軟なハブを持つこと自体が、変化の激しい市場における新たな競争優位性になると思います。
※出典:「Okta、業務アプリの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2025」 の結果を発表」(2026年3月19日閲覧)
日系SaaSとの「補完関係」:日本独自のガバナンスへの対応

福宮氏:日本市場には、特有の商慣習や極めて複雑な法制度が存在します。ここをどうクリアするかは、システム選定における重要なポイントになりますね。
道下氏:おっしゃる通りです。近年では日本の労働法制や税制はほぼ毎年改正されますが、こうした日本固有の説明責任や開示要件に、グローバルベンダーが単独ですべて対応し続けるのは現実的に難しい領域です。
福宮氏: 逆に言えば、そこは国内の法改正に即応できる日系SaaSが、最も強みを発揮できる領域でもあります。
道下氏:弊社では勤怠管理のSaaSを提供していますが、労働法制の改正や見通しに関して専門の社労士の先生と連携してキャッチアップし、加えて最新のAIを活用して膨大な行政文書から法改正のポイントを即座に抽出し、スピーディーに製品へ反映させる体制を整えています。こうした「日本ならではの緻密な対応」や「日本固有の開示要件」を日系SaaSが担い、グローバルな開示要件に耐えうる正確なデータを、NetSuiteが担います。この「補完関係」こそが、法への適合性とデータの信頼性を両立させる、日本企業にとって最も合理的な戦略になります。
投資効率を最大化する「ステップバイステップ」の導入

福宮: システム統合の際、作り込みによるプロジェクトの停滞や、限られた人員リソースの配分は経営上の大きな悩みどころですね。
道下: まさにそこが課題です。バックオフィスの人員は限られており、一気にすべてを入れ替えるのは経営リスクが伴います。弊社でもNetSuiteを導入することで中核領域を固め、そこから事業成長のフェーズに合わせてさまざまなSaaSを順次連携させていく手法を取りました。
福宮: 貴社の場合は、最初から個別のシステムで複雑な作り込みをせず、まずは基盤を安定させることが重要でしたね。
道下: その通りです。必要なところから連携領域を広げていく「ステップバイステップ」の設計こそが、無駄なリソース投入を抑え、着実に成果を出すための現実解だと思います。NetSuiteの柔軟な拡張性があったからこそ、こうしたアジャイルな投資判断が可能になりました。
NetSuiteのエコシステムが提供する、戦略的PMOとしての価値

福宮氏:AIが構築作業を効率化していくこれからの時代、NetSuiteが描くパートナー企業との「エコシステム」の提供価値はどのようにシフトしていくのでしょうか。
道下氏:AIによって単純な作業は減りますが、「どのデータを、どのタイミングで、どこに流し、どう経営のガバナンスを効かせるか」という全体像を描くことは人間にしかできません。
福宮氏:複数のSaaSを横断的にマネジメントし、最適解を提示する能力ですね。
道下氏:マルチSaaS環境においては、お客様自身が各システムのデータの整合性を管理するのは非常に困難です。そこをプロフェッショナルとして肩代わりし、経営を支える役割が今、最も必要です。
福宮氏:AIという強力なツールを活用しながら、高い専門性を持ってマルチSaaSを束ねる役割が必要ですね。本日お集まりいただいたパートナー企業の皆様と共に、NetSuiteのエコシステムを通じて、日本企業の次世代IT基盤を支えていきたいと考えています。本日はありがとうございました。
道下氏:ありがとうございました。