人手不足による対応要員の確保難、増え続ける問い合わせ、拠点やチームごとに生じる応対品質のばらつき、そして会話の中身が見えないことによるコンプライアンスリスク——。顧客対応の現場では、いくつもの課題が同時に押し寄せています。
こうした課題に対し、ボイスボットによる自動応対から会話の分析、AI活用の共通基盤づくりまでを可能にするのが、株式会社コミュニケーションビジネスアヴェニュー(CBA)が国内で展開するAIソリューションブランド「NamiTech(ナミテック)」です。
今回は、同社Senior AI Consultantの土井 毅氏に、サービスの全体像から国内外での導入成果、日本語対応の裏側、そして今後の展望まで詳しくお話をうかがいました。

<お話をうかがった方>
株式会社コミュニケーションビジネスアヴェニュー
Senior AI Consultant(シニアAIコンサルタント)
土井 毅氏
対話・分析・基盤を1つに統合 業務全体をつなぐAIソリューション
――まずは「NamiTech」がどのようなサービスなのか教えてください。
土井氏: NamiTechは、弊社が日本国内で提供しているAIソリューションのブランドです。開発元はベトナムのNami Technology、通称NamiTech社で、弊社が日本のお客様への提供と、導入から運用までの支援を国内で担っています。
領域としては、ボイスボット、音声認識、文字起こし、声紋認証といった音声AIの技術を幅広くカバーしています。各ソリューションは単体でも導入できますが、共通基盤であるCHIプラットフォームを活用することで、複数の機能を連携させながら段階的に拡張していける点が特徴です。
――具体的にはどのような構成になっているのでしょうか。
土井氏: 中核にあるのが、企業向けのAI基盤である「CHI Contact Center AI Platform」(以下、CHIプラットフォーム)です。この上で、AIエージェントの「NamiGen」と、会話分析AIの「NamiSense Contact Center Suite」(以下、NamiSense CCS)が動いています。これらが、問い合わせ対応の自動化や応対品質の向上といった業務課題を解決します。
――それぞれがどんな役割を担っているのか、もう少し詳しくうかがえますか。
土井氏: NamiTechを一言で表すなら、「NamiGenが顧客と対話し、NamiSense CCSがすべての会話を分析し、CHIプラットフォームが業務全体をつなぐ」サービスです。
NamiGenは、エンタープライズ向けのAIエージェントです。顧客からの問い合わせに、有人対応のような自然な日本語で対応します。手続きや申請、設定変更といった業務フローに沿った案内、あらかじめ承認されたワークフローの実行も担います。そして、判断が必要な場面では、会話の文脈を保ったままオペレータへスムーズに引き継ぎます。
NamiSense CCSは、コンタクトセンター、いわゆるコールセンターの顧客対応をリアルタイムに支援する会話分析AIです。通話をリアルタイムに文字起こしして、内容の要約や応対品質の評価、コンプライアンス上のリスク検知などを自動化します。サービス品質の改善点や顧客体験を向上させるヒントを可視化し、コンタクトセンター全体の業務改善につなげます。

CHIプラットフォームは、NamiGenとNamiSense CCSの機能を、統制の効いた1つの基盤上で統合します。導入の進め方としては、まず効果を実感しやすい業務から始めていただきます。そこで整備したFAQやマニュアルなどのナレッジ、システム連携、運用ルールは、そのまま他の業務でも活用できます。そのため、2つ目、3つ目の業務へスムーズに広げていくことができます。
外部サービスに頼らない自社開発の強み 人とAIの協働を前提とした独自の設計思想
――対話、分析、基盤が見事に連携しているのですね。同じようにAIを活用した競合サービスもあるかと思いますが、NamiTechならではの最大の強みはどこにあるのでしょうか。
土井氏: 大きく2つあります。1つは、開発元のNamiTech社が中核となる音声AI技術を自社で深く保有していること。もう1つは、長期的な拡張を前提に設計された共通基盤(CHIプラットフォーム)を併せ持っていることです。
多くのソリューションが音声認識や生成AI、音声合成といった機能をそれぞれ外部サービスに頼って実現しているのに対し、NamiTech社は中核となる音声AI機能を自社で開発・最適化しています。日本語の音声認識・音声合成の中核技術を自社で持っているため、日本語性能の改善や業界固有の用語への対応、実際のコンタクトセンター環境に合わせたチューニングを、迅速かつ柔軟に行えます。

――中核技術を自社で持っているからこそ、日本語や業界特有の用語にもすばやく対応できるわけですね。では、もう1つの強みとして挙げられた共通基盤のほうは、どのような点が他社には真似しづらいのでしょうか。
土井氏: CHIプラットフォームは、顧客対応のナレッジやシステム連携、会話データ、業務フロー、運用ポリシーを一元管理する基盤です。ここに情報とルールが集まっていることで、2つのことが実現できます。
1つは、AIの入力から出力までを統制できることです。AIが「回答してよい範囲」「回答させない範囲」「人に引き継ぐ条件」をルールとして管理でき、しかもそれをリアルタイムに制御できるため、安全性とコンプライアンスを確保できます。
もう1つは、人とAIの協働を前提とした役割分担です。手順を定義できる業務や大量に発生する対応はAIが担い、判断や配慮が必要な場面では人へ引き継ぐ。引き継ぐ条件そのものを基盤側で管理できるからこそ、この線引きが運用として成立します。これにより、業務効率化と顧客体験の両立を実現します。
通話後処理を約88%削減の事例も PoCで終わらせず現場の運用にフィットするAI基盤
――AIに任せる部分と人が対応する部分が明確に制御できるのは安心ですね。実際にご相談に来られる企業は、どのような課題を抱えていることが多いのでしょうか。
土井氏: 導入企業の多くは、人手不足や顧客対応コストの増加、問い合わせ件数の拡大による業務負荷の高まりといった課題を抱えています。運用面でも、拠点やチームごとに応対品質がばらついていたり、会話の内容やコンプライアンスリスクが見えていなかったりするケースが少なくありません。部門ごとに分散したナレッジをうまく活用できていない、という声もよくうかがいます。
膨大な顧客接点や問い合わせを抱える企業、なかでもサービス品質やコンプライアンスを維持しながら業務効率化を実現したい組織に「NamiTech」は向いています。代表的な導入先は、銀行、保険会社、電力・ガスなどの公益事業、通信会社、小売企業、BPO・コンタクトセンター事業者などです。
多言語対応やAI活用の高度化を求め、PoC(実証実験)で終わらせず、安全に長く使えるAIの共通基盤を構築したいというニーズから導入を検討されるケースが増えています。
――実際に導入された後、現場の業務は具体的にどのように改善されるのでしょうか。
土井氏: 顧客対応力、オペレータの生産性、品質やコンプライアンスの可視化、拡張性の4つの領域で改善が見られます。
NamiGenによる自動化で24時間365日の対応を支援し、入電が集中する時間帯でも応答率を維持しやすくなります。担当者は高度な業務に集中でき、リアルタイムガイダンスや自動要約により通話後処理も減るため、1件あたりの対応時間短縮につながります。
NamiSense CCSによる大量の会話データ分析では、リスクや改善ポイントを早期に把握でき、従来のサンプリング確認では見つけにくかった課題も可視化されます。
そして4つ目が拡張性です。CHIプラットフォームがあることで、新たなAI活用を展開する際の負荷やコストを抑えながら広げていける点も、大きな効果だと考えています。
――お客様からは、特にどのような点が高く評価されていますか?
土井氏: 高性能な音声AIを現場のコンタクトセンター運用に落とし込める点を高く評価いただいています。NamiTech社独自の日本語音声認識エンジンは、業界特有の用語や自然な会話、ノイズを含む環境でも高精度なリアルタイム文字起こしを実現し、お客様ごとの用語や運用環境に合わせた柔軟なカスタマイズも可能です。さらに、会話の内容に応じて適切な情報や推奨アクションを提示するリアルタイムのオペレータ支援や、大規模な応対品質評価の自動化にも対応しています。
承認済みの社内ナレッジに基づいて一貫性のある回答を提供できる点や、会話データからFAQ候補や未解決の問い合わせ、新たな顧客ニーズを把握し、改善に活用できる点も好評です。
――現場の運用にしっかりフィットするのですね。具体的な成果が出た活用事例があれば教えていただけますか。
土井氏: 東邦ガス様は、大量の顧客対応を行うコンタクトセンターで、応対品質と業務効率の向上を目的にNamiSense CCSを導入されました。日本語のリアルタイム文字起こしやオペレータ支援、AIによる通話要約などを活用し、平均対応時間(AHT)を約12%、通話後処理を約88%削減されています。本番環境では最大250名のオペレータを同時に支援し、サービス品質を維持しながら生産性向上を実現されています。

また、ベトナムの大手銀行VietinBank様では、NamiGenを活用して送金手続きやカードロックなどの問い合わせ対応を自動化しました。2026年2月から5月までの約3ヶ月間で63,148件の問い合わせを自動対応し、平均対応時間を210秒から約99秒へ短縮。自動化率は約28%、CSAT(顧客満足度)は99.6%、サービスレベル(一定時間内に応答できた割合)は99.4%と、業務効率と顧客体験の両面で成果を上げています。

スモールスタートと国内サポートで導入の壁を越える
――通話後処理が88%削減というのはものすごいインパクトですね。こうした目覚ましい成果が出やすい組織には、何か共通する特徴があるのでしょうか。
土井氏: 会社の規模よりも、現場が使いこなす準備が整っているかが重要です。「対象となるやり取りの件数が多い」「業務プロセスが明確に定義されている」「活用できるナレッジがある」「業務側の責任者が立っている」「成功指標について社内で合意できている」という5つの条件が揃っているほど、早く成果を得られます。
――現場の準備が何より大切なのですね。サービスを最大限に活用するために、企業側が意識しておくべきポイントはありますか?
土井氏: AI導入を単なるツール導入ではなく、継続的な業務改善の取り組みとして捉えることです。
まずは効果を測定しやすい業務(繰り返し発生する問い合わせ対応や通話後処理など)から始め、そこで成果を実証したうえで、他の業務へ広げていくことをおすすめします。将来的な業務拡張も見据えて、ナレッジやシステム連携、運用ルールを他の業務でも再利用できる形にしておくと、AI活用の効果をより大きく広げられます。
――実際に導入を進める際、ハードルになりがちなのはどのような点でしょうか。
土井氏: 導入前のお客様からは、「日本語の会話で本当に精度が出るのか」「誤回答やコンプライアンス違反をどう制御するのか」「既存システムと連携できるのか」といった、実務に直結する懸念を多くいただきます。
また、導入時の課題はAI技術そのものよりも、ナレッジの整備や既存システムとの連携、セキュリティ審査、運用体制の構築にあるケースが少なくありません。さらに、最初の導入がうまくいった後も、業務ごとに個別の仕組みを作ってしまうと、かえって運用負荷やコストの増加につながってしまいます。
――そうした不安や課題に対して、御社ではどのようなサポートを提供しているのですか?
土井氏: NamiTechの導入プロセスでは、まず実際の業務シナリオに基づいた精度検証を行い、回答を承認済みナレッジに限定します。エスカレーションの条件と運用ルールもあらかじめ設計し、セキュリティ審査資料の早期提供や、効果を測定できる範囲でのスモールスタートといったアプローチで不安を解消していきます。
具体的な支援としては、既存のドキュメントや会話データを活用したナレッジ整備、CRM(顧客関係管理システム)や電話システムとの連携支援、セキュリティやコンプライアンスに関する各種資料の提供などを通じて、導入の負担を軽減します。導入後も品質や利用状況を定期的に監視し、運用ルールや責任体制の整備をご支援します。
また、個別の仕組みが増えてしまう問題についても、CHIプラットフォームであれば、一度整備したナレッジやシステム連携、運用ルールをそのまま引き継ぐことができ、新しい業務を追加する際も効率的に拡張していけます。単発のプロジェクトで終わらせず、AI活用を続けられる形にしておくことが重要だと考えています。
弊社CBAは、要件の整理から既存システムとの連携開発、運用の定着までを国内で担います。単にAIを導入するだけでなく、企業がAIを安全に使い続けられる運用体制づくりまで支援しています。
方言や業界用語など日本特有の課題にも対応 顧客の声から進化し続ける
――導入から運用定着まで伴走してもらえるのは心強いです。そうした実務目線を徹底されている御社ですが、サービスを開発する上で最も大事にしている思想は何でしょうか。
土井氏: NamiTech社が大切にしているのは、先進的なAIを、実際の業務で安心して活用できる形で提供することです。高度な技術の追求だけでなく、安全性、信頼性、使いやすさを重視し、デモだけで終わらず本番環境で継続的に価値を生み出せる製品づくりに取り組んでいます。
――機能開発やアップデートの優先順位は、どのような基準で判断されているのですか?
土井氏: お客様のサービス品質や運用価値を高められるか、AIの導入・運用・拡張を迅速かつ費用対効果高く実現できるか、本番環境での安全性・信頼性・実用性を高められるかの3つの観点で判断しています。
日本市場で必要な要件(日本語の品質、待たされない対話、システム連携、コンプライアンス制御、運用監視、保守性)は、弊社CBAが現場の声を整理して開発元へ伝え、製品改善に迅速に反映させています。
――現場の声をしっかり吸い上げているのですね。顧客からのフィードバックはどのようにプロダクトに反映されているのでしょうか。
土井氏: 実際の運用現場から届く、音声認識の精度やAIが回答しづらい質問、業務フロー上の課題などを日々収集し、機能改善に反映しています。
日本市場では特に、漢字の読み方や同音異義語、住所や人名、業界特有の用語、方言といった日本語特有の課題への対応を進めてきました。方言については、現時点で関東・関西弁に対応しており、東北・九州弁の対応も開発中です。独自の音声AI技術を保有しているため、フィードバックを迅速に製品へ反映できるのが強みです。
ただし、いただいた要望をそのまま実装するわけではありません。お客様の業務や市場環境の変化を見据えたうえで改善内容を判断し、品質や安全性を確保するために十分な検証と承認プロセスを経てから、本番環境へ適用しています。
――チームや組織として、意思決定において大切にしている文化はありますか?
土井氏: 実務で使える技術、日本市場が求める水準のサポート体制、そしてお客様と一緒に改善を続ける姿勢です。AI導入をゴールではなくスタートと考え、業務や市場の変化に合わせてソリューションを進化させていくことを重視しています。弊社CBAも、運用が定着するまで伴走することを前提に日本のお客様に向き合っています。
チャットボットから業務を実行するAIエージェントへ 人とAIが強みを活かして協働する未来
――これまでのお話で、NamiTechが実務に直結するプラットフォームであることがよくわかりました。市場環境や技術トレンドが目まぐるしく変わる中、今後はどのような変化を見据えていますか?
土井氏: 今後は、単機能のチャットボットやAIアシスタントから、業務システムと連携して実務を実行するAIエージェントへ移行していくと考えています。文脈を理解し、承認済みの企業ナレッジを活用しながら、人と協働して業務を進めるAIです。
同時に、AIの活用が広がるほど、企業に求められるものも増えていきます。成果を測定し続けられる仕組みや、セキュリティとプライバシーの確保、AIの判断根拠を確認できる透明性、重要な判断における人の関与、そして複数のAI活用を効率的に管理できる共通基盤が求められます。
――AIが自律的に動くようになるからこそ、統制のとれた共通基盤がより求められるのですね。そうした未来に向けて、NamiTechが目指す「プロダクトとしての理想像」はどのようなものですか。
土井氏: NamiTech社が目指す未来は、顧客や従業員とのあらゆる会話を、業務改善やサービス品質の向上につながる価値ある情報として活用することです。
CHIプラットフォームは、会話データや企業ナレッジ、AI、業務システムを1つの基盤でつなぎます。これにより、企業はAIを安全かつ効率的に活用できるようになります。会話の分析や業務の自動化を進めながら、人とAIがそれぞれの強みを活かして協働できるようになります。AIのスピードと人の判断力を組み合わせることで、企業が安心してAIを活用し、継続的な業務改善につなげられる世界を目指しています。
――AIに任せきりにするのではなく、AIのスピードと人の判断力を組み合わせるという考え方に深く納得いたしました。そのビジョンの実現に向けて、今後特に注力していく領域などがあれば教えていただけますか。
土井氏: 包括的なエンタープライズAIエージェントプラットフォームの提供企業としてさらに発展していくために、重点領域を4つ定めています。
1つ目は、CHIプラットフォームの拡張です。AIエージェントや会話分析、企業ナレッジ、業務システム連携を、統制と監視まで含めて支える共通基盤として広げていきます。2つ目は、日本語品質をさらに高めること。3つ目は、導入から拡張までの時間を短縮すること。そして4つ目は、日本の組織体制、パートナーエコシステム、現地でのR&D対応を強化することです。
――人とAIが協働する未来に向けて、日本市場を支える御社の手厚いサポートがより一層重要になってきそうですね。最後に、現在コンタクトセンターの課題を抱え、AI導入を検討している企業の担当者様へメッセージをお願いします。
土井氏: AI導入を成功させるためには、「AIをどこで使うか」ではなく、「どの業務課題を解決するか」を明確にすることが何より重要です。
繰り返し発生する問い合わせ対応、長い対応時間、応対品質のばらつき、コンプライアンス対応の負荷、あるいはナレッジが活用されていないこと。こうしたリアルな課題に対してAIをどう活用できるかを、まずは検討してみてください。単体のツールを入れて終わりにするのではなく、拡張できる共通基盤を構築し、生産性やサービス品質を根本から改善したいと考える企業様ほど、NamiTechは大きな価値をご提供できます。
――まずは自社の課題としっかり向き合うことが第一歩なのですね。実際に検討を進める際、自社に合うかどうかをお試しできるプランなどはあるのでしょうか?
土井氏: お客様の実際の業務に近い環境で検証していただくためのPoCやパイロット導入をご用意しています。
AIの効果は、業界特有の用語やナレッジ、業務フロー、既存システムとの連携などによって大きく変わります。そのため、実際の運用環境で、問い合わせ受付の自動化やリアルタイム文字起こし、通話要約などを試していただくのが一番の判断材料になります。
――なるほど。実際の環境で試すからこそ、本番導入後のイメージが明確になるのですね。
土井氏: おっしゃる通りです。重要なのは「AIが質問に回答できるかどうか」だけではありません。それが本当に業務効率やサービス品質の向上につながるのか、安全かつ継続的に運用できるかを見極めることです。
弊社CBAは、検証するテーマの設計から結果の評価までをしっかりとご一緒させていただきます。導入後の活用イメージまで具体的に描けるよう、段階的なAI活用を全面的にサポートいたしますので、ぜひ安心してお声がけいただければと思います。
