労災(労働災害)とは?種類・認定の条件・労基署への申請・手続き
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労災とは
「労災」とは「労働災害」の略で、業務上の事故や災害による怪我・業務が原因の病気・通勤中の怪我などに対して必要な保険給付を行う国の制度のことを指します。
職場の階段で落ちてしまってけがをした場合や、人間関係などのストレスで病気になる場合など、労災の種類はさまざまです。
労災認定とは
労災認定とは、労働基準監督署で判断される労災認定の可否のことです。個別の事案ごとに業務と病気・怪我との関連性が調査されます。
この際に注意しておきたいのは、仕事内で起きたことがすべて労災認定されるわけではないことです。たとえば、前日に遊びすぎてしまって寝不足や二日酔いなどが残った状態でケガなどをした場合は、自身の管理不足であるため労災とは言えません。
労災認定の種類
労災認定を受けるためには、業務遂行性と業務起因性が条件になります。業務遂行性と業務起因性とは具体的にどのような意味合いなのかを詳しく解説します。
業務遂行性
業務遂行性とは、業務を行っている最中に起きてしまったけがや病気であるかです。この業務遂行性が認められる基準は次の3つの場合となります。
1.事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
契約で決められた時間内に業務を行っている場合には、事業主の管理下で業務を行っているとみなされるため、ここで起こってしまった災害は認められます。
しかし、それが意図的であると判断されたり、いたずら目的であることなどが発覚した場合には認められません。
2.事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
具体的には、昼休憩や就業の前後などの、業務外の時間のことをいいます。
この時間に発生した災害は基本的に認められませんが、事業場所のオフィスなどの施設自体に問題がある場合や管理に問題があると判断された場合には認められます。
3.事業主の支配下にあるが管理下を離れて業務に従事している場合
出張や営業回りなどで外出している場合の災害は認められます。
事業場所にいないことになりますが、労働者としての業務を行っているからです。しかし、外出が仕事とは全く関係ない私用であった場合の災害の発生は認められません。
業務起因性
業務起因性とは、「行っていた業務が原因で起きてしまったけがや病気であるか」です。これは、業務中に発生したものではなく、家に帰ってからストレスを抱えて鬱になったり、睡眠不足や残業続きによる過労死などの問題を判断する際に必要となります。
このような問題において業務起因性、つまり仕事が原因であることを証明できなければ、労災認定を受けられない可能性があります。業務遂行性がなければ業務起因性もないですが、業務遂行性があれば業務起因性があるわけではないことを理解しておきましょう。
労災認定で給付されるもの
労災認定で給付されるものは次のとおりです。
- 療養給付
- 休業補償給付
- 障害補償給付
- 傷病補償年金
- 介護保障給付
- 遺族補償給付
- 葬祭料
療養給付
業務上や通勤時に負傷をしたり、病気にかかった場合に行われる給付です。
原則として支給される方法は、労災指定病院で治療を行い、定められた形式での給付請求書を病院窓口で提出することで、医療費が支給されます。対象となるのは基本的に治療費・入院費・検査費用・通院費などです。
休業補償給付
業務上の病気や怪我で仕事を休んだ時に受け取れる給付です。
労災による病気や怪我のため休業せざるを得ない労働者の賃金を補填するもので、給付基礎日額の60%が休業4日目から賃金の補償として支給されます。また、特別支援金として20%が支給されます。
障害補償給付
労災によって生じた病気や怪我によって、障害が残った際に受け取れる給付です。
障害等級によって給付内容は異なり、障害等級第1級から第7級までに該当する場合は給付基礎日額の313日分から131日分の年金、障害等級第8級から第14級に該当する場合は503日から56日分の一時金が給付されます。
傷病補償年金
労災による病気や怪我が1年半以上経過しても治っておらず、障害が労災保険法で定める傷病等級に該当する場合、休業補償給に代わって受け取れる給付です。生涯の程度に応じ、給付基礎日額の313日から245日分の年金が給付されます。
介護保障給付
障害補償年金、もしくは傷病補償年金を受け取る資格のある方が、一定の障害を患ってしまい介護を受けている状態であれば受け取れる給付です。
遺族補償給付
労災によって死亡してしまった労働者の収入で生活をしていた家族に対して、支払われる給付です。
遺族の人数に応じ、給付基礎日額の245日から153日分の年金が支払われるほか、遺族の人数に関わらず遺族特別支給金として一律300万円が支給されます。
葬祭料
労働者が労災によって死亡した際に、葬祭を行った方に支払われる給付です。
支給額は、315,000円と給付基礎日額の30日分で、金額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分が支給されます。
※出典:厚生労働省「労災保険給付の概要」(2022年6月7日閲覧)
労災認定の申請方法
労災認定の申請方法は次のとおりです。
- 請求書を入手
- 請求書に記入
- 請求書と添付書類を労働基準監督署に提出
- 労働基準監督署による調査
請求書を入手
所轄の労働基準監督署あるいは厚生労働省のホームページから請求書をダウンロードしましょう。
請求書には、療養補償給付たる療養の給付請求書、療養補償給付たる療養の費用請求書、休業補償給付支給請求書の3種類があり、どの請求書も会社で提出できます。補償の種類によって請求書が異なるので、注意が必要です。
請求書に記入
請求書のダウンロードページには、書き方の見本も掲載してあるので、見本を見ながら記入していきましょう。また、請求書には事業主の署名欄もあるので、労災申請を行いたい旨と合わせて、署名もしてもらうようにしましょう。
請求書と添付書類を労働基準監督署に提出
請求書が完成したら、必要となる添付書類とともに労働基準監督署に提出しましょう。請求書の内容に基づき、労働者・会社・病院に聞き取り調査が行われ、労災が認められるか調査が行われます。調査にそなえて、業務災害や通勤災害と証明できる証拠を用意しておくとよいでしょう。
労働基準監督署による調査
期間は早くて1か月、長い場合は1年以上かかることもあるため、すぐに労災認定が受けられるわけではありません。労災は労働基準監督署による調査によって、認定されれば給付金を得られます。もし、万が一非認定でも労働者災害補償保険審査官に再審査を請求できます。
労災について知っておくべきポイント
労災で大事な次の2つのポイントを説明します。
- 労災指定病院なら手続きがスムーズ
- 労災には時効がある
労災指定病院なら手続きがスムーズ
治療や申請の際は、労災保険の指定医療機関を受診するとスムーズです。労災指定病院では、労災保険保証を「現物の医療行為」として提供しているため、医療費が無償になります。また書類作成手続きもスムーズに進むメリットがあります。
一方、労災指定の病院でない場合には、治療費を一時的に建て替える必要があります。手間もかかるので、近くに労災指定病院があればそちらに行くとよいでしょう。
労災には時効がある
労災には種類があり、時効が成立すると労災認定を請求できない場合があるので注意が必要です。労災の時効期間は、障害や死亡に関する労災が5年、治療や休業補償に関する労災が2年と決まっているので、「労災ではないか?」と思ったらすぐに申請を行いましょう。
在籍する会社が保険に未加入でも請求できる
企業にとって労働者の労災保険の加入は強制ですが、まれに保険料を滞納しているケースがあります。この場合には、労災認定の申請はできないのではないか?と不安に思うかもしれませんが、労働者はこの場合でも労災認定を請求できます。
労災を詳しく知って万が一に備えましょう
以上が労災認定の条件と労基署への申請方法についてです。労働者である以上、いつ労災に巻き込まれるか分かりません。労災にあってしまった時に適切な対処をできるようにするためにも、労災についての知識を持ち、万が一に備えることが大切です。
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